9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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脱落者

 

 何度も攻撃を仕掛けた。息が切れても走り、幾度の傷を受けても体にムチを打って動かした。

 

 けれど……

 

「うぐっ!」

 

 敵は……ディオスは空想から武器を作り上げて予測もできないタイミングでカウンターを仕掛けてくる。

 

 尽くそれを喰らい続ける俺がまだ動けるのは春風のおかげだろうか? この戦闘が始まって数十分、1度も休むことなく能力を使い続けている。

 

 それは彼女の光る胸元を見れば一目瞭然だった。

 

 けれど状況は劣勢、なんなら徐々に不利になっていっている。その理由は一つ。力の差がありすぎるんだ。

 

 ただでさえ強力な雷の力。それだけでなく空想上の武器を生成して攻撃してくる。そして何より……

 

反射鏡(リフレクション)!」

 

「中々しぶといですね」

 

 右側から攻めてきた雷を能力で弾き飛ばし、何とか春風の体を守護る。その代わりに左側から飛んできた鋭利な武器が……

 

「っらぁ!」

 

 俺に当たると覚悟していたら、飛び込むように割り込んできたゴーストが飛んできた武器の軌道を逸らすようにはじき飛ばした。

 

「ぼさっとしてんな!」

 

「悪い……!」

 

 上手く身体を俺の隣に寄せたゴーストは、チラッとレナ達の方を見た後に舌打ちをする。

 

「アイツらは使えねぇ……クソッ」

 

「このままじゃジリ貧だ……!」

 

「んこたぁわかってるよ!」

 

「お二人共! 上です!」

 

 ゴーストとの会話に意識を持っていかれた少しの隙を突かれ、俺たちの頭上に大きな塊が落ちてくる。

 

 それは俺たちの体なんていとも容易く潰してしまうような……そんな物。

 

 こんなの避けられない。

 

反射(リフレ)……ッ!」

 

 咄嗟に抵抗するように能力を使おうとした時、ゴーストは俺の襟を掴んで強く引っ張った。

 

 そして次の瞬間、まるで時間でも止めたかと勘違いするほどに早い速度で俺とゴーストは攻撃を回避できる場所へと移動していた。

 

 これは……

 

「瞬間移動……!」

 

 そう、これはあの時に希亜と友に戦った相手が所有していた力。

 

「なんでお前が────」

 

「今それを聞いてる場合かよ!」

 

「……」

 

 そうだ。理由は分からなくていい。コイツが幻体である以上はその契約者が何かしらの方法を使って瞬間移動を自分のモノとしたんだ。

 

 そしてゴーストは俺を助けてくれた。

 

 今考えることじゃない。

 

「わかった」

 

「でもどうする? このままじゃ拉致あかないぞ」

 

 正直向こう側のみんなの心配をしている余裕すらない。早々にこちらで決着をつけて応援に行きたいのだが……

 

「オレの力を使えば不意を突くことは出来る、1度だけだけどな」

 

「1度……」

 

 やや歯ぎしり気味にそう言うゴースト。そりゃそうだ、状況だけを見れば最悪に近いんだ。でも元々コイツらは奇襲を仕掛けるつもりでいたはず、という事は何かしらの対抗手段が用意されているのかもしれない。

 

「それを使おう!」

 

 それが何かは知らないけれど、攻める手立てが作れるのなら、チャンスを生み出せるのなら全て使う! 

 

 そう思って俺はディオスの元に向かって走り出す。

 

「あっ! クソ……馬鹿が……! もういい! そのまま走り続けろ!」

 

 そうしてヤケクソにも感じ取れるゴーストの指示を聞き、走る。するとディオスは能力を使用し、何も無い無の空間からかつて見た顔のない大男を召喚した。

 

「どけっ……!」

 

 そして俺は前方へとジャンプする。右拳を強く握り締め、大きく振りかぶりあの薄っぺらい顔面を撃つ為に。

 

 その時、俺の肩に誰かの手がトンと置かれた。

 

 それを認識した瞬間、俺が見ていた景色は一瞬にて大きく変わる。

 

 目の前にいた大男はいつの間にかディオスの姿へと変わっており、見事相手の虚をつくことができた。

 

 ディオスは大慌てで体を動かして構えを取ろうとするが……そこで不自然に雷の壁から光の枝がディオスの体に流れてきた。

 

 本当に()()だ。

 

「今ですッ」

 

 そして聞こえてくる春風の声。

 

「行け……!」

 

 俺を後押しするように背中を叩くゴースト。

 

「喰らえッ!」

 

 狙うは隙だらけになっている顔面、この一撃で流れを変える! 

 

 そうして真っ直ぐに伸びた俺の拳は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念です」

 

 奴の頭にはクリーンヒットはしなかった。拳がぶつかるその瞬間に僅かに体をずらされ、相手の肩へと直撃したのだ。

 

「ぐっ……!」

 

 しかし確実に殴った。すかさず連撃をしようと攻撃を続けようとすると、空いたディオスの右手が俺の視界を覆い隠す様に伸び、顔面を鷲掴みにされた。

 

 そして…………

 

強奪(デロべ)

 

 突如として輝き出す奴の右手。目が焼き潰れる程に眩しい閃光を放たれた俺は全身に襲いかかる激しい痛みと共に何かを吸い取られるような感覚に苛まれた。

 

「うがぁぁぁぁ!!!!」

 

 そしてそれが終わると、俺は雑に投げ捨てられる。

 

「オイ! 蓮…………!」

 

「貴方は消えてもらいますよ」

 

 無様に投げ捨てられた俺に気を取られたゴーストはディオスが何かをしていることに気がついていない。

 

 考えたくは無い恐ろしい何かを。

 

「がはっ……! ご……! ゴースト……! 前……ッ」

 

 整えていない声を絞り出すように出すが……

 

「……! しまっ──」

 

 敵はゴーストに向かって真っ直ぐに人差し指と中指を立て、青白く光るなにかの力を指先へと溜めていく。

 

「Adieu」(永遠にさようなら)

 

 そしてその指先の光が一際強く輝いた後…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前からゴーストが消えた。

 

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