9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
いや、今はやめておこう。今思い出してもしょうがないし…………九條さんの、女の子の前で弱い所を見せる訳にはいかない。
そんなところは見せたくない。
「とにかく、別に九條さんの事が嫌いとかじゃないから。単に俺がワガママ言ってるだけ」
そう、俺がずっと逃げてるだけなんだ。多分俺はこれからも逃げ続ける。ずっと、ずっと……
「それじゃあ……竹内くんは、なんで石化事件を追っているの?」
「なんで? って……聞くまでもないか、そうだな…………」
俺は別にこの事件に興味を持ったわけじゃない。この事件をキッカケに色んなアーティファクトが存在する事を確信しただけだ。俺の目的は……
「特に理由はないさ。強いて言うなら……せっかく手に入れた異能力、もっと色んな力を使いたかっただけ」
まただ。また俺は言わなくてもいい余計な事を伝えている。
「正義感なんて何も無い、ただ興味本位で動いてるだけさ」
「……嘘」
「え……?」
真っ直ぐと俺の目を見て九條さんは強く語る。
「竹内くん、悪をハッキリと悪だと言った。こんな事件も悪いのはアーティファクトじゃなくてそれを扱う人間だって」
「いや、それは──」
「それにいつだって私に危険性を伝えてくれる。心配してくれてる。それって……やっぱり許せないんでしょ? 能力を使って罪を犯してしまった人が」
「…………」
そんな事ない。
俺は最初にこの《鏡》の能力を得た時、もっと色んな能力のアーティファクトが欲しいと思った。だからこそ行動してたんだ。してたはずなんだ。
「竹内くんはとっても優しいから、さっきも私の分もジュース代出してくれてたでしょ? ありがとう」
そういいながら九條さんは自分の財布を取り出してその中身を取り出そうとする。
「あ、いや、やめてくれそういうの。別にたかが飲み物一杯分の金なんて貰ってもしょうがねぇし」
「たかがっ!? 竹内くん! お金は慎重に使わないとダメなんだよ!?」
金を軽視した事を言うと、九條さんは凄い前のめりになって身を乗り出してくる。
「おっ、おうっ!?」
アンタは金持ちの子供なんだから別にそんな事しなくてもよかでしょ。…………とは言えないから胸の内に秘めておこう。
「わかったわかった……ごめんて……」
…………
……
……
なんて会話をしていると時刻は九時を過ぎており、流石にこれ以上の長居は迷惑がかかると判断し、家に帰る流れになった。
まだ店の奥にいた九條さんのお祖父さんにお礼と挨拶をして、店を出る。
つかさ、この店って九條さんのお祖父さんが経営してたのね。金持ちはやることすげぇな……
「じゃあ今日はごめん。ありがとう…………と言いたいところだけど」
「気をつ──え?」
「一応ある程度の所まで送る。ユーザーが襲ってくる危険性もある、俺なら何とかなりそうだし」
物を盗む能力。それに九條さんのステータス。…………もし九條さんがユーザーに襲われでもしたら、多分抵抗すら出来ずにやられるんじゃねぇかな。
「大丈夫だよ、その時は自転車に乗ってガーッて行くから」
「いや、一応ついて行く。さっきも軽く話した通り俺と戦った奴は遠距離能力持ちなんだ。しかも目線を合わせると身体が麻痺する」
「…………ふふ、じゃあお願いします」
「あぁ」
能力を乱用する奴が既に1人現れてる。しかもそいつは複数の能力持ちなんだ。その危険性もそうだし、同じようなやつが現れないなんて確証はない。
今九條さんを守れるのは俺だけ…………
……
やっぱり変わったな、俺。
兄弟の血は争えないってか……。
「それじゃあ行こうか」
「うんっ」
それからは本当に雑談。他愛もない話をしながらひたすらに九條さんの家があるであろう方向に向かっている。
色んな話をしているんだが……九條さんはある事に触れようとしない。それに関しては本当に助かってる。
優しい人でよかった。
なんてことを思いながら街灯に照らされている夜道を歩いていると……どうもさっきから気になることが。
「竹内くん、どうかした? さっきからチラチラと後ろの方を見てるけど……?」
「気が付かない?」
「えっ?」
「俺たち、誰かに付けられてる」
間違いない。気配がする。
ナインボールを出たばかりの時はこんな気配はしなかった。歩き出した途中からだ、しかもずっと俺たちの後ろをコソコソと付いてきてる。
偶然じゃないだろう。
「誰かにって──」
「振り向いちゃダメだ。気が付かれる方が面倒、今は気がついていないフリをして適当な曲がり角を曲がって待ち伏せしよう」
「えっ、えっ!?」
可能性があるとしたら、ユーザーを狙った犯行か…………シンプルに九條さんのストーカーだな。
……どっちも面倒だぞ……九條さんのストーカーならだいぶんマシなんだけどな、アーティファクトユーザーだった場合が更にだるい。もう一戦闘ありそうだ。
それにまだ時間は遅すぎるって時間じゃない。まだその辺には人が全然うろついている時間だし、暗い道って訳でもない。こんな所で能力なんて使われたらそれこそ大惨事だ。
と、その時にモックの店の近くを通りかかっていることに気がついた。
……よし。
「九條さん、隣の駐輪場に自転車置いて、あのストーカー野郎を誘い出してみよう。流石にこんな所で能力を使われると……巻き添え食らう人が多くなる」
「でも、まだアーティファクトユーザーって決まったわけじゃ……それに危ないよ! このまま交番まで歩いて警察の人に連絡した方が──」
「ストーカーがユーザーだった場合の対処が無理になる。それに今どうにかして対処しておかないと、下手すれば九條さんがずっとストーキングされる可能性もあるだろ? 家まで特定されて〜みたいな」
「……っ。怖い……」
「毎日毎日風呂やトイレを盗撮されて〜なんてのもあるかもよ? それを色んなやつに売られたり、自分の部屋に大量に飾ったり……おぉー怖ぇ」
「ひっ……!」
ま、そんなことはほぼ無いでしょうけどね。金持ちの家ですよ? セキュリティくらいえげつない強さのもの準備してるでしょ、どーせ。
一旦モックの駐輪場に九條さんの自転車を置いて鍵をつける。二重に付けられたロックを確認して、チラッと歩いてきた方を覗き見ると……
やっぱり建物の影から俺たちを覗き見ている奴がいた。これで確定だな。
「でも、やっぱり危ないんじゃ……」
「大丈夫、俺が守ってやっから。じゃ…………こっち」
「あっ……」
適当に見つけた裏路地に入る為に、九條さんの手を持って二人で移動する。
割と汚い道に連れてきてしまったことを心の中で謝りながら、曲がり角で息を潜めてストーカーを待つ。
金持ちの美人さんをストーカーなんて……気持ちはわからんくもないが、結構大胆なやつなんだろうな。一度後を付けている以上はこの裏路地にもやってくるだろう。
なんて思いながら、お互いが無言のまましばらく時間が経過する。
「あ……あの……、竹内くん……その……!」
「静かに……」
九條さんが沈黙に耐えきれなかったのか、言葉を話した瞬間に歩いてきた方からゆっくりと足音が聞こえてくる。
「きた……」
そしてその足音がもう目前まで迫ってきた瞬間──
「はいどーも、お疲れさん。ストーカーはここまでだ」
校内火事事件の際、九條 都を助けますか?
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助ける
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助けない