9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
出会い、そして再び
ピピピピピピッッッ!
「ん…………」
母親代わりのアラームに叩き起され、電気のついていない部屋を明るくするために窓際のカーテンを開ける。
今日も目が焼ける程に日差しが強く、暖かな陽光を浴びて大きく背伸びをする。
昨日のあの壮絶な一日を終えた後のこの天気。とてつもなく気持ちがいい。学園に行かなくてよければ尚良かったのに。
「なんて言ってても変わんねぇよなぁ……」
回復しきっていない疲労と戦いながらも、身体を動かして適当な朝食を作り食べる。そしてそのまま家を早めに出て、俺は前々から気になっていたある場所へと歩いて行った。
その道中の道すがら、特に理由はないがスマホを取り出して適当なアプリのログインをしていると、ネットニュースの告知が通知される。
その一文には、白巴津川で起こったあの事件に関することが記載されていた。
『行方不明の少女、石像姿で発見される』
見出しだけで怪事件の匂いを漂わすその記事には、俺の知らない情報まで載っていた。
まず、事件の前日にあの石にされた子は突然家に帰らなかった事。そしてあの石像の出現期間と一致すること。つまり……
間違いなく、石化の力を持つユーザーが彼女を殺したのだ。今まではほぼ予測で考えていたが、この件で確実になったと言ってもいいだろう。
石化……しかも中途半端な状態だった。出血していたということは、中身は生きていたか、死んだ直後という事。
……惨い事件だ。
他の文面には彼女の両親のコメントや、事件に関することを取材したものが記載されている。俺たちのことは…………載っていないようだ。
殺人……ねぇ……。
つい昨日まで、こんな他人の悲劇などを目の当たりにしてもそんなに心を動かされることはなかったが、あのフードの女と戦闘になった時から、昔のことをよく思い出すようになった。
そのせいか、自分のでも気がつくことが出来るくらいに変わってしまっている。昔に……戻っている気がする。
……純粋だったあの頃に。
なんて考えていると、俺の目的の場所の駅前のパン屋さんにたどり着いた。ここは結構前から学生たちには人気の場所で俺も一度行ってみたいと思ってたところ。
しかしいざ来てみると結構人が並んでおり、やっぱり止めようと判断しそうになる。並ぶのが不得意な俺からしたら行列なんて心底嫌なのだ。
諦めて別に日にしようかと思って一歩引き下がると…………
ドンッと誰かとぶつかってしまった。
「悪い、俺の不注意でぶつかっちまった。謝る」
咄嗟に謝罪をしながらそのぶつかった人の方へと振り向くと……
「大丈夫よ。貴方だけじゃなくて、私も同じでよく前を確認してなかった。気にしてない」
目の前に立っている人は女性だった。制服的に…………玖方に通っている子だろう。黒髪で短髪の……なんで横だけ髪がちょっと長いんだろう。
……じゃねぇや。黒髪の赤目の子。
赤い目の子が多いな……
でもねぇや。まずはしっかりと謝っとかねぇとな。
「本当に済まない。……っと」
そこで気がついた。何かのお守りが俺の足元に落ちていたことに。それを拾ってとりあえず眼前の子に確認してみる。
「交通安全…………このお守り、君の?」
その予想は当たっていたようで、彼女は自分の元々付けていたのであろう場所を確認した後に、見せたお守りを受け取った。
「ええ。落ちてしまったみたいね、ありがとう。礼を言うわ」
「別にいい、俺がぶつかったのが悪いんだしな」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると…………彼女の後ろ、俺の視線の先で、不自然にこっちを見てニヤッと笑っている人が見えた。
俺は……その人の事を見たことがある。
服装……というか、衣服のカラーリングは違うが、あの時の姿とほぼ変わってねぇ。
黒色のパーカーを身につけ、フードを被っているその人は、顔に紋章を浮かばせながらこちらを見ている。
あれは…………昨日俺に襲ってきたあの女!
わざわざ俺が気がつくのを待っていたのか、わざとらしく片手を俺の方へと向けて、一本の槍を飛ばしてきた。
「なっ……!?」
高速で飛んでくるその槍は、俺を目掛けてとばされているが……その間には黒髪の女の子がいる。
アイツ……、この子ごと俺を攻撃するつもりか!?
咄嗟に目の前の女の子の肩を自分の方へと寄せて、その槍を躱す。すると彼女は目を見開いて完全に動揺していた。
「いきなりすまん! とにかくここから逃げてくれ!」
彼女に一言声をかけて避難を指示した後に、あのフードの女の方を確認すると、人影がなさそうな場所へと俺を煽るようにして歩いていく。
「どこかれ構わず能力使いやがって……クソが……!」
「えっ! あっ、ちょっと!」
これ以上好き勝手暴れられちゃあ面倒だ! 俺を挑発する為の行為だとしたらすぐにでも止めさせねぇと被害が大きくなる! 幸いさっきの槍は人には当たってないようだし、俺が明らかなこの敵の罠にハマれば俺だけを狙うようになるだろう。
そう判断した俺は女の子の横を素通りしてフードの女の元へと走っていく。
…………
……
……
細い道を抜け、奥へ奥へと走っていき、たどり着いた場所は鍵も何も閉められていない錆だらけの門に守られた廃ビルだった。
完全に誘い込まれてはいるが……ここなら俺も遠慮なく能力を扱うことが出来る。逆に考えれば俺も抵抗ができるってことだ。幸運と思おう。
ゆっくりと歩みを進めていき、薄暗い階段をのぼり、辺りを探索する。そしてしばらく進んだ所で、あのフードの女は相も変わらずニヤッと怪しい笑みを浮かべたまま俺の事を待っていた。
「やっと来たな、反射の能力者」
「当たりめぇだ……! 街中であんなに喧嘩を売られちゃあ黙って逃げるわけにゃあいかねぇだろ」
校内火事事件の際、九條 都を助けますか?
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助ける
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助けない