9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
とある廃ビルの中、その三階の広場……というのだろうか? 大量のコンクリの柱が並び立っている以外は本当に何も無い埃っぽい場所。
なるほど……戦闘するにはもってこいかもな。
「俺になにか用があるんだろ? わざわざあんな人が多いところで挑発してきやがって」
「またオレの練習相手になって欲しくてさ、楽しい時間を始めようぜ?」
「ふざけんなよ……ったく……!」
やっぱりそういう事かよ。薄々感じてたけど、コイツ生粋の戦闘狂だな……やっぱりあん時にぶん殴っときゃあよかったか!?
「アレからオレもちったぁ練習をしたんだぜ? 褒めてくれよ」
パチンっとフードの女が指を鳴らすと、その背後に六つの槍が出現する。
「おいおい……あれからまだ半日しか経過してねぇぞ……!?」
初撃のジャブで既に昨日よりも数が多いんだが!? あんな数避けきれねぇだろ!?
「本当は止められてたんだが……やっぱり我慢できなくてさ。それじゃあ……始めようぜ!」
気合いの入った掛け声とともに、あの六本の槍が俺に向かって飛んでくる。数こそは増えているが……速度は特に変化は無し。それならなんとか何本かは避けられる。
慌てて鞄を投げ捨て、ギリギリのところで槍を躱す。コンクリの柱などに時折身を潜めたりしながら、上手く自分の姿を隠しつつその場をやりきる。
さっきは避けられないとか言ってたけど、意外と全部避けれそうだけど……どの道相手の槍を反射しないと俺に勝ち目はない。
五本目をやり過ごした後に、タイミングを合わせてギリギリまで自分の身体に槍を引き付けて、《鏡》の能力を使って一本だけ槍を返す。
「
しかしこれはもう不意打ちでも何でもない攻撃。当然距離が離れていることもあり簡単に避けられてしまう。
「これだよ、これ! その辺の適当な奴を相手にしても、こうしてカウンターは飛んでこなかったからなぁ! やっぱりテメェとの殺し合いが一番楽しいぜ!」
……!?
「ちょっと待てよ……」
楽しそうに次々に槍を飛ばしてくるフードの女の言葉が気になり、身体を動きをピタリと止める。
その間に飛んでくる槍は全て一つ一つ丁寧に返してやった。
「お前……能力を手にしてから「今」まで、一体何人殺してきたんだ……!」
「じゃあテメェは「今」まで何匹の蚊を殺してきたんだ?」
その言葉と共に飛んできた槍を女目掛けて弾き返す。耳鳴りがしそうなほどの高音が鳴り響く中、しっかりと相手の言葉は聞こえていた。
「害虫駆除と一緒だってのかよ……!」
「よく言うぜ、テメェらも散々殺してきてるだろ。食用と名付けた生き物。自然の摂理に従う生き物。それに……あの石像も、テメェら人間が殺してきてたじゃねぇかよ」
「……!」
「特にあの石像だ。能力を手にした奴が好奇心で使ったんだろ? みんなそうなんだよ、力を持ちゃあ使いたくなるもんだ。オレも似たようなもんだしな」
「なるほど……」
ほんっと、こんなことを思うような性格じゃなかったと思うんだけどなぁ……全部九條さんのせいだ。あの人と関わってから俺の全部がおかしくなり始めた。
「だったらお前を俺は許さねぇ。殺人者と同じ罪人であるお前を許す訳にはいかねぇ」
「だったらオレを倒してみろよ」
絶対に影響を受けたわ……元々俺はそういうタイプだったからな、ガキの頃から仮面ライダーマンをよく真似してたもんだ。
九條さん……ちょっと分けてもらうぞ、アンタの正義感。
「当たりめぇだ!」
緩やかなカーブを描きながら、俺はフードの女に向かって近づいていく。もちろん全力ダッシュで駆け寄っており、女の方は槍を次々に飛ばしてくる。
可能な限りは無視して避け続け、当たる可能性があるものだけ《反射》を使ってやり過ごしていく。
そして前回のようにあの技を使おうとすると……
「
「させるかよっ!」
前面に鏡を出現させた瞬間に左右から同時に槍が姿を現す。
「やばッ──」
咄嗟に左側に鏡を移動させて一本を反射させるが……右側から襲ってきた槍に反応が遅れてしまい、身体を少し掠ってしまう。
「ぐっ……!?」
しかしそこを見事に付け狙われ、前方に鏡を無くした俺は、その方向から飛んできた三本の槍に連続で身体を突き刺された。
「がっ……!?」
一本目の二本目の槍はそのまま身体を突き抜け、激痛を感じているところに三本目の槍が俺の身体を持ち上げて、そのまま数メートル離れたコンクリの柱に激突される。
なんだこれ……!? 痛てぇどころの話じゃねぇ……! 意識がまともに保ってられねぇ……!
「なんだぁ? オレを許さねぇんじゃなかったのか? もっと全力でこいよ」
「クソ……野郎……!」
「もっと力についてお勉強しておくべきだったな。せっかくおもしれぇ奴を見つけたと思ったのに……この程度か」
抜けねぇ……俺の身体ごとコンクリの柱にくい込んでるのか。
つか……刺された場所から出血してねぇ……!? でもしっかりと痛みは感じる……
なるほど、身体に外傷を残しはしねぇが、感覚のみ相手に伝えられる槍……か。道理で犯人が特定されねぇもんだ。この方法でずっと警察の目から逃げ続けてきたのか……!
「悪いけど、アンタにゃぁ死んでもらう。鏡の能力は結構ウザかったしな。それが手に入ればオレはもう誰にも負けねぇだろうし……じゃあな、楽しかったぜ」
「俺は死なねぇよ……! これ以上お前を野放しにさせてたまるか……ッ!」
俺はここから動くことが出来ねぇが……タイミングを合わせて能力を使って弾き飛ばしてやる……!
「へぇ……得意の反射……か」
フードの女は再び怪しく笑みを浮かべると、さっきの量とは比べ物にならない量の槍を周囲に出現させる。
「じゃあこの二十本の槍のうち、どれを反射させるんだ?」
眼前に広がるのは無数の槍。前方だけでなく、俺を囲うように扇の形に槍が出現し、その全てが俺に先端を向けている。
「なっ……!?」
「誰も六本が限界だなんて言ってないぜ? お兄さん」
……っ
絶望だった。
心のどこかでは絶対に負けないと思っていた。反射の能力を俺なら完璧に使いこなせると思い込んでいたんだ。でも実際は違った。
でも……諦めない。借り物の正義感でも俺はそれに誇りを持ってる。
その土壇場で理解出来た。なんで俺がほんの少しだけ変われたのか。なんでこんなことを思うようになったか。
九條さんが兄貴に似てたんだ。心が似てたからだ。
だからこそ……
「それでも俺は諦めねぇ! 悪は必ず俺が裁くッ!」
「そうかいそうかい。じゃ……またな」
フードの女が俺を見て片手を上げて準備をする。そしてその腕が振り下ろされそうになった時──
「パニッシュメントッ!」
校内火事事件の際、九條 都を助けますか?
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助ける
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助けない