9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
……せっかく格好つけてなんかいい感じのチーム名叫んでもらったところ悪いけど、何それ……?
「ヴァ、ヴァル……?」
「…………」
「決まった……!」
この状況には流石のフードの女も心底呆れている。あえてツッコミがない所が結構キツイんだけど!? 俺に言えってか!?
つかなんだよこの状況! 明らかに戦闘パートに入る流れだっただろ! 一人は困惑して、一人は呆れて、一人はドヤ顔ってどゆこと!?
希亜の方をチラッと見ると、もうこの時点でものすげぇ満足そうな顔してるんですけど!? え? 何!? 俺も大概だったけど……この子もしかしてやばい人!?
「はぁ……」
ほらー! あのフードの人ため息吐いてますけど!
「おい……! どうすんだよこの空気……テメェのツレだろ何とかしろよ」
「俺に言うなよ、俺だって困惑してんだから」
何故か敵の女と味方の扱い方を相談するはめになるとは。つかなんだよお前も! さっきまでなんか手の付けられない様な悪人だっただろ!
「さぁ……受けなさい、私たちの制裁を!」
「まだやってんぞオイ」
「だーかーら! 俺に言うなよ!」
つってもなぁ……もうお相手さんも構えを解いてるしなぁ……
今やんわりと感じたんだけどなんか……あのフードの人もそんなに悪いやつじゃない気がしてきたんスよ。もしかして、人なんて殺してないんじゃね? って。よく考えりゃあ「人を殺した」なんて一言も言ってないし。俺の想定で勝手に俺がキレてただけなんじゃね? って。
全部口だけだろ、多分。だって本気で俺を殺すつもりならいくらでもチャンスはあったろうに。わざわざ昨日も俺に自分を認識させてから戦ったし……本当に俺を殺したかったら不意打ちで一撃で仕留めりゃいいんだ。
でも、そうしなかったって事は……つまりはそういうことだろ。
「はぁ……もういい。そんなムードじゃなくなったわ」
「正義の裁きを受けた時、貴女は──」
「いやもういいつってんだろ。明らかに今終わる流れだっただろ」
「いや……なんかもうごめんなさい。彼女もきっと結構混乱してるんです、でも悪い子じゃないんでその……そっとしてあげてください」
逆になんか申し訳なくなっちゃったよ!
ほら、絶対そうじゃん! ガチの悪人ならここでそんな反応にはならんでしょ!
「テメェも大変だな、オレんとこにも似たような奴がいるから気持ちはわかるぜ、同情するよ」
「……なんかお前とは気が合う気がする。悪いことさえしてなけりゃ根本は結構似てるしな」
能力好きでトゲのある発言で多分周りの友人は結構少ない派だろ? 公園で初めて会話した時もなんか、目的は似てたし。
それに……槍で貫かれた場所も、もう痛みは全然感じない。これ、多分殺傷能力低いな?
「……希亜、今日はやめとこう。確かにアイツを罪人と見なしてたけど、よく考えたら十分な証拠が無い。全部俺の……俺たちの推測だし、決定的な証拠を掴んでからでもいいだろ?」
「……」
「つか、大体本物の悪ならこのタイミングで奇襲するなりなんなりするって」
「…………蓮太がそう言うのなら」
はぁ……何とかなった。
つかコレあれだろ、絶対さっきのチームの一員になってるだろ。希亜の頭の中で。
「但し厳重注意の元、最大限の警戒をする。思想は極めて危険な人物。それは蓮太も身をもって経験したはず」
「そりゃわかってる。危ない片鱗が見えたら、その時は……な」
「えぇ、約束の地で集いましょう」
どこだよ。
「助けてくれてありがとな」
「礼はいい。私は蓮太の正義の意志に心を重ねただけ」
「え……あ、はい。ほんとにありがとう」
「また会いましょう」
希亜はクールに後ろを振り向き、ゆっくりと下へ降りる為の階段に向かって歩いていく。
いや、さっきは本当に助かったんだけど……俺とはまた違ったジャンルで友達いなさそうだなぁ……せめて、話は合わせてあげよう。
それでもヴァルハラなんちゃらには入らないけど。
でもまぁ……悪い人じゃなかったよな。
なんて思っていると、ツカツカツカツカーっと希亜がこちらに戻ってきた。
「これ、忘れ物」
「……ID?」
希亜に手渡されたのは何かのIDが記載された紙切れ。
「私のRINGのID。ヴァルハラの仲間として伝えておく」
「え、あ……うん。後で連絡しとく。ヴァルハラじゃないけど」
「今度こそ、また会いましょう」
「うん。またいつか。ヴァルハラじゃないけど」
再び希亜はくるりと後ろを振り向き、コツコツと足音を鳴らしながらどんどん離れていく。
ヴァルハラじゃないって一応伝えたけどアレだな? 聞いてないな?
……まぁ、いいか。
「さて……と、やっぱりお前、根っからの悪じゃないな」
「あ?」
「本気で殺すつもりならいくらでもチャンスはあったろ、今」
「……知らねぇよ、少なくとも「オレ」はそのつもりはねぇ。ただ楽しみたかっただけだ」
コイツもコイツで友達いなさそうだな。変な奴が周りにはいるみたいなこと言ってたけど……多分相当少ないだろ。
「だとしても、暇なら別に能力の練習くらいなら付き合う。こっちの条件を呑んでくれるならな」
「なんだ?」
「関係ない人を巻き込まないこと。能力を悪用しないこと。とりあえずはこの条件を守ってくれるのなら、何時でも相手になるぜ。能力の特訓なら俺もしてみたいしな」
「いいのか? オレみたいな奴を簡単に信用して、テメェ自身オレに何度か狙われたんだぜ?」
「水に流す。これから変なことをしないと約束するんなら全部忘れてやるよ」
さぁ……どう出る。
ここの反応次第で…………決めるか。
「……わーったよ。「オレ」はその条件を呑んでもいい。「オレ」は別に殺したりすることに興味はねぇしな」
「さっき俺を殺しかけておいてよく言うぜ」
「そう言わなきゃテメェ全力出さねぇだろ」
「……そうだったかもな」
なんて話をしながらふと疑問に思い時間を確認すると…………登校時間はとっくに過ぎていた。
「……やっべ、完全に遅刻だコレ」
「……あ? 遅刻?」
「学園だよ。おもっくそ遅刻確定だ。……見た感じ歳は近そうだけど、お前はどこに通ってんだ?」
「オレはどこにも行ってねぇよ」
「そうか」
今から慌てていくのもなぁ……どうせ遅刻して怒られるんなら昼休みくらいに行った方がいいよな。
……力を使ったせいか腹も減ってきたし、なんか食うか。
「とりあえずなんか食いに行くけど、一緒に行くか?」
「別に腹は減らねぇからいい…………と思ったけど、暇だしついてくわ。金持ってねぇけど」
「財布くらいもっとけよ」
と、そんなこんなで大遅刻覚悟の上で、適当なところで時間を潰すことにした。ちなみに現段階でスマホの方に学園から電話が何件か来ていたが…………まぁもちろんガン無視です。
場所は……そうだな、適当に歩いたところで探すか。
「そう言えば名前は?」
なんて名前を聞くと、黒いパーカーのフードを取って赤い目を俺の方に向けながらちゃんと答えてくれた。
「ゴースト」
……まぁいいか。
「そっか、俺は蓮太。じゃ、いこーぜゴースト」
「あぁ」
校内火事事件の際、九條 都を助けますか?
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助ける
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助けない