9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
それとご報告……ちゃんと生きてます、笑
今日はいい天気だ。雲ひとつ無い晴天の空に春とは思えないほどに眩しい太陽。それに加えて優しく俺の身体を包み込むように吹く風。
日曜日だということもあって、心地の良い外の空気を肌で感じながらも、洗濯機から取り出した洗い物たちをベランダにでて干していく。
タオルや衣服。ついでに布団やシーツも一緒に洗ってしまい、一仕事終えて背筋を伸ばす。
「ん〜……っ! よし! 全部真っ白!」
とそんな時だった。気持ちよく休日を満喫していると不意に背後から強烈な蹴りを入れられる。
「おいっ……!」
「おろぉっ!?」
いきなりすぎるその攻撃に素早く対応できるはずもなく、俺はどこかの流浪人のように情けない声を上げて転げてしまう。
そしてそんな俺に追い打ちをするように仰向けに倒れた俺の顔面を生暖かい足が襲い始めた。
「むぐっ……!?」
「真っ白! じゃねぇだろ大将……! 今日のアレどうすんだよ……!」
ストッキング越しに伝わってくるレナの(何故か蒸れているような感覚)温かさを直に感じながら、その言葉について考えていた。
そう、今日は11月2日。都の誕生日なのである。そんなめでたい日に何故俺は彼女でもある都と一緒にいないのかというと……実は今日、都はバイトに入っていて会うことが出来ないのだ。
いや、厳密に言えば会うことそのものはできるんだが……どうせプライベートとして会うことが出来ないのなら、その時間を上手く使って何かサプライズでもしようかと考えていた。
彼女にはバイトの終わる時間である夜になったら迎えに行くと伝えていて、内容は2人で俺の家で夕飯を食べようと約束しているだけ。サプライズにはもってこいだろう。
……なのだが。
「あのなぁ大将。都を喜ばせようとするその心意気は大したもんだがよ……結局今の今まで肝心な内容が決まってないってやばくねぇか?」
「…………だよなぁ」
大きな問題点。そう、都が喜ぶようなサプライズを思いつかないのだ。
身近な女の子であるレナやルナに色々と質問をしてみたり、天ちゃんや成瀬センセにも相談したのだが……如何せん全く解決しないのだ。レナルナの2人は「そういう感性をオレ達に求めるな」との事。…………エッチには普通に乱入してきたのに?
天ちゃんと成瀬センセは物も大事だけど、いちばん大切なのは気持ちだと言われた。いやわかる。わかるよ? でもやっぱり心のこもった物と気持ち、両方揃ってこそじゃないか?
「……そういえばルナは?」
そんな考え事をしている途中で気がついた。この場には珍しくルナがいない。基本的に2人とも姿を現している時は近くにいるのに……だ。
「アイツはなんかでっかいモールに行った。アンタが情けねぇからプレゼントを選びにでも行ったんだろ」
……アイツならやりかねないかも。なんだかんだで世話好きだし。文句も多いけど。
「だから大将もさっさと動け、じっと考えてもしょうがねぇだろ。店に行きゃあそれなりのもんがあるんだから何かは見つかるはずだ」
グリグリと更に強く顔を踏むレナ。
…………パンツ見えてる。
「そうだなぁ……それじゃあもうちょっとこの足を堪能してから────」
「今動けッ!!」
「ごフッ!?」
と、俺の考えを読まれたのか、やや顔を赤くしたレナにサッカーボールキックを当てられて渋々家を出るのであった。
〜ショッピングモール〜
「んでなんかあった?」
軽く着替えを済ませて家を出て、ショッピングモールにたどり着くと、割と直ぐにルナとの合流に成功。そこから別にあまり期待はしていない結果の確認をする。
期待をしていないってのはルナを信用していない訳じゃなくて、あくまで何かを持ってきてくれていたら参考にするつもりでいたからだ。やっぱり渡す物は俺が決めなければ。
「んや、別に。時期が時期だからな、来月のクリスマスや年末のイベントに向けて準備してんのかどこの店も特段特別なモンはねぇ」
「だろうな……11月ってなんとも絶妙なタイミングだもんな」
なんて話をしながら覚まさな店を巡るようにウィンドウショッピング。2つペアのマグカップ。これからの時期を考えたマフラー、綺麗なインテリアとして扱えるオシャレな小道具、ゴゴゴ氷。
う〜ん……どれもなんか違うよなぁ……
「無難にペアのアイテムを買った方がいいんじゃね? 日用品とも使えて特別感も出る。かさばることも無いしやっぱこれだろ」
そう言ってレナが手に撮るのは空色と桃色の淡い色をしたコップセット。
都の事だ、高すぎるものを買ってもそっちの方を気にしてしまうだろうしこれくらいがちょうどいいのかもしれない。だが……どこか納得のいかない自分がいる。
それはきっと同居をしていないから……かな? 別に2人同時にコップを使う理由もないのだが、まさかプレゼントを自分の家に置く訳にはいかない。持って帰ってもらうだろう。それだと特別感が……いや、別にあるか。
何気ない時に使ってくれれば良いし……な。
「おい、蓮太。そっちもいいけどやっぱり防寒着の方がいいんじゃねぇか? 雪が降る季節になるとどうせ必要になるだろうしよ」
ルナが持ってくるのはモコモコとした生地の良いマフラーや手袋。そして少し大きなコートも持ってきていた。
「いや、まぁ……うん。その気持ちは分かるんだけど……都のサイズに合わせられなくね? この場に本人いないんだしさ」
マフラーや手袋はともかくコートはなぁ……ガシュアルチックで似合いそうではあるが……まぁでも余程のことがない限りは買い直すなんてことはないだろうが。
だかそれは冬時期を考えたらって話だ。期間限定な物を渡すのはどうしたものか……
なんて既にこの時点で半日以上費やしている訳だが……一向にコレ! と言ったものが見つからない。それの求めているものは、いつでも扱えて、値段も都が納得できる範囲のもので、貰ったら嬉しいと思える物。
「そうなかなか上手くは見つからねぇよなぁ……」
手作りの料理なんてお互いに沢山食べてきた。俺たちが付き合うことになった5月から既に半年。何度も小さなことから大きなことまで沢山の思い出を作ってきた。
それでもやっぱりプレゼントというのは考え込んでしまうものだ。
そんな時だった。ある一つの物を見つけたのは。
「…………これは」
それを1つ手に取り、マジマジと見つめてみる。
…………これならいけるんじゃないか? 普段使いもできて、値段も高すぎない。そして喜んでくれそうじゃないか?
「……なぁ大将。気に入ったものが見つかったのはいいんだけどよ、それ都普段から使ってなくねぇか?」
「確かにこういう系統は使ってないかもしれないけど……ケア、つまり手入れくらいはしてるだろ。だからこれだけじゃなくて……コッチもさ」
「ふーん……ま、いいんじゃね? 蓮太にしちゃあ上出来だろ。知らんけど」
……おい。
「決まりだな。よし……」
と、そんなこんなで都へのプレゼントが決まった俺は、買い物を済ませたあと夜まで準備をし、時間になる頃には家を出て都を迎えに出発した。
喫茶店“ナインボール”へ……