9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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ReAliZe

 

 俺が炎に反応できなかったその時、まさかの新海が身を挺してまで俺たちを庇ってくれた。そんなに仲が良かったわけでもないにもかかわらず、俺と九條さんのピンチに迷わずに助けてくれた。

 

 正直信じられなかった。到底俺にはそんな真似は出来ないだろう。

 

「おい! 新海ッ! 大丈夫か!?」

 

 炎の勢いに押し負けた新海はその場でバランスを崩し、俺に倒れかかるようにして迫ってくる。

 

 咄嗟にその身体を支えた後、新海は問題ないと答えてすぐさまその場に立ち上がった。

 

 九條さんも彼の事を心配してはいたが、能力の方に意識を持っていかれているせいか、全ての反応が遅い。

 

「とにかく何かアクセサリーを取らなきゃいけないんだろ!? 俺はどうしたらいい!?」

 

「どうするも何も、まず非能力者のお前じゃあ……」

 

「ダメっ! 能力範囲内から逃げちゃうっ」

 

「クソッ!」

 

 そうか、別に相手を拘束している訳じゃないから、範囲外へと容易に脱出できるのか。

 

 だとするとやっぱりここは俺が無理してでもどうにかアイツの動きを止めないと……

 

「……範囲ってことは、何メートル以内だったらいいんだ?」

 

「十だ」

 

「……よし、じゃあ俺がアイツの動きを止めてくる! その間にその超能力で何とかしてくれッ!」

 

「はっ!? 嘘だろおい!」

 

 ダダダっ! と俺たちの返事を待たずに炎をかきわけて新海は男の方へと突っ走る。

 

 おいおいマジかよ……! 馬鹿というかなんというか……

 

「え、待っ……新海くんっ!」

 

 アイツはもう俺たちの声なんか聞いちゃいねぇ! だが訳の分からない状況で自分が死ぬかもしれないリスクを背負ってまで、それでもと俺たちを信じてくれた! だったらもう俺たちもやるしかねぇ! 

 

「意識を能力に集中させろ九條ッ! あの勇者(バカ)を死なせたくないのなら、少しでも早くアーティファクトを回収するんだ!」

 

「で、でもっ!」

 

「危険を自ら引き受けるのは「無謀」ではなく「勇気」! アイツを勇敢な者にさせるためには九條が是が非でも奪うしかねぇんだ!」

 

「助けるぞッ! 迫ってくる炎からは俺が全て守ってやる!」

 

 危険を承知の上でも迫り来る炎に怯まずに立ち向かうバカは、俺が九條さんを説得している間にあの狂った男の腕を鷲掴みにして、その場で取っ組み合いになる。

 

 暴れ回る男を必死に抑えている間に、首からあるアクセサリーがぶら下がっているのが見えた。それは銀色の十字架のようなネックレス。つまりは……

 

「「アーティファクトッ!!!」」

 

 俺と九條さんがそう叫ぶと、どこからともなく「正解よ」と聞こえてくる。だかそのすぐ直後に──

 

「やめろぉぉぉぉっ!! 俺のそばに近寄るなぁァァァァッ!!!」

 

 男は更に能力を暴走させて炎の火力を上昇させる。それは少し離れている俺にも十分に灼熱のような熱さを感じさせるもので……

 

 これ以上は新海が危ない! 

 

「新海ッ! ソイツの首からぶら下がってるアクセサリーを奪え! それがアーティファクトだッ!」

 

「……ッ! これかッ!」

 

 新海はそのネックレスを力任せに引きちぎり、俺たちに見えやすいようにその腕を高く上げる。

 

 彼は無意識だろうが、それは大正解。あくまで「九條さんの能力」で奪わないと「所有権」は得られない。俺たちが所持していても、何も意味は無いのだ。

 

「九條ッ!」

 

「竹内くん、新海くん……あなた達のこと、尊敬するっ!」

 

 無駄にカッコイイセリフを言いながら、九條さんは再び左手を前へ差し出すように伸ばす。するともう一度その手の甲に紋章が現れ、瞬く間に青い光がその紋章から解き放たれるかのように輝き出した。

 

「お願いっ、成功して……!」

 

 祈るように強く拳を握り、九條さんは身体全身に力を込める。

 

 とうとうあのアーティファクトを奪えたかと思っていたのだが……

 

「ふざけるなぁぁぁっっっ!!!!」

 

「うおわっ!?!?」

 

 最後の力を振り絞るように狂気の男はギリギリのところで新海からアーティファクトとを奪い取ってしまった。しかしそれでも所有権を奪えるのなら……と期待していたのだが……

 

「と、取れない……! 力が……強すぎる……!」

 

 険しい表情で重い九條の言葉が俺の後ろから聞こえてくる。

 

「取れない!? どういう事だ!?」

 

「わからない……っ! まるであの人から引っ張られてるみたいに…………!」

 

「キィャァァァァァァァッッッ!!」

 

 どんどん広がっていく火炎。

 

 その勢いは衰えることは知らずに、とうとうこの廊下を超えて様々な場所が燃え広がってしまっていた。

 

 もう火に触れていなくても自分の身が焼かれているように熱い。

 

 それでも……新海はあの男から自由を奪い続けていた。

 

 

 

 助けなきゃ。

 

 

 

 異能力で作られた炎とはいえ、肉体にダメージはなくてもちゃんと痛みはある。苦しみはある。

 

 少なくとも数メートル離れている俺がこんなに苦しいんだ。ほぼゼロ距離であの男を押さえ込んでいる新海の苦しみは……計り知れない。

 

 俺が……俺が……! 

 

「お兄ちゃんッ!!!」

 

 教室の窓からさっきの銀髪の子が決死の思いで新海に叫んでいる。ボロボロに泣きながら、崩れた顔で……

 

 

 

 

 ────誰も死なせないッ! 

 

 

 

 

 心の奥で叫ぶ。決意を胸に意志を固める。

 

 記憶の底の底、俺が最も憧れた世界で一番偉大な男になるために……

 

 これが俺の正義、これが俺の本当の心。

 

「絶対助けるッ!」

 

 そう叫ぶと俺の右掌がありえないほどの輝きを放つ。その光は思わず目を閉じたくなってしまうほどの青い閃光で、辺り一面を真っ青に写してしまう程に……

 

 そしてその光輝く右手を、九條さんの左手に重ねる。

 

 すると、それの掌から輝いていた紋章は消失し、俺の「右手の甲」に形を変えて現れた。その紋章はまさに九條さんの左手の甲に現れているモノとほぼ同じモノ。

 

 そう、「ほぼ」。

 

 俺の右手の甲に出現した紋章は、九條さんのモノとは「左右対称」で出現したのだ。

 

 そしてそのまま能力を使用すると……視覚ではなく、感覚でアーティファクトを鷲掴みにする。

 

「っ!?」

 

 その感覚は、アーティファクトだけではなく、誰かの手も巻き込んで掴んでいるような感覚がした。

 

 そしてそれを掴むと、本当に相手側へと引っ張られるかのようにグンっと力の限りに奥へと引き込まれそうになる。

 

 例えるのなら……綱引きのように。

 

 溜まった疲労感のせいでこの力は長くは持ちそうにない。短期決戦で仕留めるしか……! 

 

「行くぞ九條ッ! 意地でもこのアーティファクトを引っ張り抜いてやるッ!」

 

「やっぱり……! この手は竹内くんの……!?」

 

 二人でグッと腰を下ろし、能力に全意識を集中させて全力で引っ張る! 

 

「……! 頑張ろう、みんなでッ!」

 

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