9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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気持ち、前向きな一歩

 

「…………」

 

 目が覚める。そこは知らない天井だった。いや、一応見覚えはあるが……

 

 恐らくここは保健室。蛍光灯で照らされたこの部屋を見渡すと、薄緑色のカーテンで囲まれた所のベッドの上で寝転がっていた。

 

 そして俺の右側の一番近いところに九條さんが、その反対側に新海兄妹が座っている。

 

「ん……」

 

 重い身体を動かし、とりあえず上体を起こす。

 

「あ、目が覚めた?」

 

「九條……さん? それに新海たちも……」

 

 頭が若干クラクラとする。そうか……そういえば俺はあの校内火事の流れで気を失って……

 

「心配したんだよ? 大丈夫? 痛いところとかはない?」

 

「あぁ、別に問題はない。悪いな、心配かけて」

 

「急に倒れたからな、やっぱりあの超能力の代償……とかなのか?」

 

「わかんねぇ、けど……多分そうだろ。能力使ったらアホみたいに疲れるし」

 

 それに……あの時の能力。あれは明らかに俺の能力じゃなかった。あれは……九條さんの能力。なんで俺が使えたんだ? 

 

「それで……妹さんだろ? そっちは大丈夫なのか? 怖かっただろ?」

 

「あっ……、どうも、「新海 天」です。大丈夫です、ご迷惑おかけしてすみませんでした……」

 

 ……あんな恐怖を経験した後だからか、天と名乗る女の子はオドオドしく、弱々しい声で自己紹介をしてくれた。

 

「そうか、それならいいんだ」

 

 寝ていた身体を起こすようにぐーっと背伸びをし、ベッドから下りる。

 

「もう大丈夫なの? もう少し寝てた方が……」

 

「んや、大丈夫。それにいつまでもここにいるわけにはいかないだろ。あ、それと、あの後どうなったんだ?」

 

「え? あ、そうだね。ちゃんと説明しておかないと……」

 

 どうやら九條さんの説明によると、俺が倒れたあとはサイレンの音が急激に集まりだし、消防や警察が素早い動きで消化と避難の準備をするが、もちろんその場には炎の欠片も出現していない。

 

 不思議に思いながらも、あの発狂していた男を保護して、事情聴取で終わったようだ。

 

 その後に体育館で全校集合、軽い校長の話があった後に解散となったのだが……みんな下校の令がでていて帰る人が続出する中、俺の事を心配してくれていたようでわざわざ残ってくれたという。

 

 ちなみに新海と九條さんは、教員たちからのありがたーいお説教を食らったらしく、気を失ったのはラッキーと思ってしまった。

 

 それはそれとして……もう一つの興味深い出来事が。

 

「それで、人形が空を飛んでたってのは?」

 

「うん。ついさっきまでいたんだよ? アーティファクトの説明を軽くしてくれて、話の流れでそのアーティファクトの収集を手伝うことになってね」

 

「俺と九條でひとまず協力しあって、《魔眼》のユーザーを探すことにしたんだけど、どうだ? 竹内も協力してくれないか?」

 

「協力してくれったってなぁ……」

 

 いきなり過ぎてわけがわかんねぇよ。えぇっとまずは……

 

「順を追ってちゃんと説明してくれ、俺だってアーティファクトについては詳しくは知らないんだから……」

 

「あ、うん。えぇっとね──」

 

 

 

 

 

 

 少女説明中……

 

 

 

 

 

 

「……要するに、もう一つの世界。「異世界」に存在する魔術を誰でも扱えるようにしたのが《アーティファクト》そしてそれが、《世界の眼》の崩壊を合図にこちらの世界に流失した……と」

 

「どうやらそうみたいだ。そんで集めるのを手伝って欲しいんだとさ。そして数あるアーティファクトの中で、最も注意すべき能力が石化の能力。名前は《魔眼》のアーティファクトらしい」

 

「なるほどねぇ……」

 

 そして九條さんの能力は、全てのアーティファクト所有者に対しての決定打となる力を持っている。理由は、アーティファクトを《盗む》ことでその能力ごと奪うことができるから。条件さえ整えばどんな相手の能力も奪える最強の手段となる。

 

 だからこそ九條さんにそのぬいぐるみ……「ソフィーティア」は協力をもちかけた。

 

 けれど、どうやら新海はそのソフィに何やら危険視扱いを受けているようだ。その理由は、実は新海も《アーティファクトユーザー》だったという事。しかし手元にアーティファクトを所有しておらず、どんな能力なのかも一切不明。そんな事前例がない異常事態らしく、最大級の警戒をしているらしい。

 

「ソフィによると、竹内の能力も上手く扱えば最強と呼べるほどの強さを持ってるらしいんだ。最初はアイツ、竹内のアーティファクトも回収しようとしてたんだけど……九條が必死になって止めてた」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。「竹内くんは絶対能力を悪用なんかしません!」ってさ」

 

「…………っ!」

 

 チラッと九條さんの方を見てみると、何故か顔を真っ赤に染めてわたわたと身体を動かして、目をかなり泳がせていた。

 

 

 

 

 

 蓮太を心から信じてくれていた人が、少なくとも何人かは絶対にあの場にいたはずだぜ? 

 

 

 

 

 そんな兄貴の言葉を思い出す。

 

 本当だった。こんな俺を信じてくれている人が……本当にいたなんて。

 

 ……嬉しい。

 

「そっか、ありがとう。九條さん」

 

「わっ、私は絶対に竹内くんは大丈夫って信じてるからっ! ただそれを伝えただけだよっ」

 

「ははっ。否定になってないぜ」

 

 思わず笑ってしまう。やっぱりそうだ。優しくされたからなのかわからないけど……やっぱり俺は九條さんを信用してる。他の人はともかくとして、九條さんにだけは心を開いてしまっている。

 

 

「それで……、どうだ? よかったら俺たちと協力して欲しいんだけど」

 

「協力ねぇ……」

 

 もちろん協力はしてあげたい。仲間は多い方が絶対に得する事が沢山あるが……あくまで俺が信用したのは九條さんだ。それに……ないとは思うが、最悪の結果九條さんが俺を裏切ったとしても、ダメージが少なくなるように、下手に仲良くなりすぎるのはまずいかな。

 

 まだ俺も慣れてないんだ。少しずつ、少しずつ仲良くなれれば……

 

「俺はそういうの苦手だから悪いけど断るよ。でも、力が必要になった時、連絡してくれたらどこだろうと駆けつける。少なくとも……味方と考えてくれてもいい」

 

「……まあ、今はそれでもいいか。じゃあ何かあった時は頼む」

 

「あぁ」

 

 このくらいが丁度いいだろう。下手に仲良くなりすぎず、けれども敵対はせず……いざって時の戦力は大きい方がいいだろうしな。互いに利用し合う仲ってことだ。悪い気はしない。

 

「そろそろ帰ろうぜ、みんな下校してるんだろ? 俺も休むなら家で休みたいしな」

 

「あっ、私送っていくよ」

 

「いいって、別に普通に歩けるから」

 

「昨日のお礼に」

 

 九條さんは、振り向き際にパチッと目配せをして、可愛らしい笑顔を見せる。

 

「別に大したことしてないんだけどなぁ……」

 

「翔の兄貴、これは空気を読んだ方がいいやつでは?」

 

「お前さっきまでテンションガタ落ちだっただろうがよ。急になんだよ」

 

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