9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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鏡、その力

 

 時刻は午後三時、もうすっかりと他の生徒が下校しきった道を、九條さんと二人で歩いていた。

 

 なぜ二人なのかと言うと……頑張って元気を出そうとしている妹さんが、なんか大慌てで兄を拉致ったからだ。

 

 一応アーティファクト関連の話を聞いている時も、何食わぬ顔でその場にいたから、あの妹さんもその辺の話は理解しているんだろうけど……まぁなんか理由があって兄を連れ回してるんだろ。

 

「別に大丈夫だって言ったのに」

 

「それでもダメだよ。あっ……そうだった……はい、これ」

 

「……ん?」

 

 何かを思い出したかのように、九條さんはカバンから取り出したものは、俺が今日の朝買ったばかりの伊達メガネだった。

 

 律儀にタオルのような物で包んでくれている。

 

 そうか、またいつの間にか無くなったと思ってたら九條さんが持っててくれたのか。

 

「傷がなくてよかったね、あんなに激しく動いていた中、廊下に落ちてたからちょっと心配だったんだけど」

 

「ありがとう。確かにそうだ、これは大切にしなくちゃいけなかったからさ」

 

「竹内くん、メガネ新しくなってるね。買い換えたの?」

 

「あぁ、前のやつが壊れたからさ。ほら……こないだの夜の件で」

 

「ああ〜……」

 

 そんでもってこれは、アイツが選んでくれたやつだからな。またすぐ買い替えたりしたら気分も悪くなるだろ。

 

 だから大切にしないと。

 

「にしても連日で変なことに巻き込まれるなぁ俺。これもユーザーになった運命なのかね」

 

「その度にこんな怪我をしてたら大変だもんね」

 

 そう言って九條さんは俺の右腕を指さして笑う。

 

 つか今気がついたんだけど、なんか腕の手当が事件前よりも綺麗になってないか? 

 

「あれ……、そういえばなんか綺麗になってる……?」

 

「えっ? …………あっ!」

 

 またほんの少し顔を赤らめて、「しまった!」といった表情をする九條さん。もうそれで全てを察することが出来てしまった。

 

「そういう事ね。ありがとう、前回より上手くなってるな!」

 

「ちち、違うよ! 私じゃないよ! これは……そう……新海くんが──」

 

「そっかー、違うのかー、せっかく包帯の巻き方を教えてあげたのに全然活用してくれなかったのかー」

 

 わざとらしく棒読みでイタズラしてみる。すると「そういう訳じゃなくって──」と予想通りにあたふたとし始めた。

 

 なんだこの可愛い生き物。

 

「わ……私が……頑張りました……」

 

 簡単に認めちゃったよこの子。結局散々言い訳を考えた結果何もいい案が出なかったのかよ。

 

 てかそもそもなんで隠そうとしたんだよ。普通に言えばよかったのに、上手くできてる? みたいなノリで。

 

「はい、調子に乗りましたごめんなさい。でも本当にありがとう助かったよ」

 

「い、いいよこのくらい。助けてもらったのは私の方だし……?」

 

「あれは……まぁ咄嗟にだよ。見たところ怪我もなさそうだしよかった」

 

「おかげさまで、ありがとう」

 

 そして何気なしにこんな会話をしながら帰ってますけど……これってなんかカップルっぽくない? だって女の子と二人で下校だぞ? これ冷静に考えたらヤバくない? 

 

 帰り道が一緒な訳でもないのに二人で並んで帰るって……なんだろう凄い! 

 

 しかも相手が九條さんだからなぁ。この状況に若干の嬉しさはあるけど、一番怖いのはこの姿を見られて噂される事だよな。

 

 前までの俺なら「どうでもいいや」って投げてたんだろうけど、今となっては少し気になる。

 

 まぁでも……それはそうなった時に考えればいいか。

 

「竹内くんのお家ってどの辺りなの?」

 

「ん? あ〜そうだな……ぶっちゃけもう着く頃だから、別にこの辺まででもいいぞ?」

 

「あ、ちゃんとお家まで行くから大丈夫だよ。そっか、それじゃあ…………竹内くんのお家に上がっていいかな?」

 

「お家……お家ッ!?」

 

 え、なに急に、怖い。

 

 人間怖い。

 

「なして!?」

 

「ちょっとお話しておきたい事があってね、何処彼構わずに口にするわけにはいかないから…………ダメかな?」

 

「んや、別に俺は構わないけど……まぁいいか。じゃあ上がってけよ」

 

「うん。ありがとう」

 

 とそんなこんなで俺の家に社長令嬢を上がらせることになったが……大丈夫か? 俺。粗相のないようにしないと社会的に殺されるかもしれないぞ。

 

 しかもこんな美人でみんなの憧れの巨乳っ子……下手したら男子たちからも背後から刺されるかもしれない。それに……九條(父)にでも知られてみろ、「私の娘に何をしたァ──ーッ!!」ってなったりしたら…………

 

 ……よし、最低限の会話で済ませてさっさと帰ってもらうか? 首ちょんぱ、身体ちょんぱよりはマシだろ。

 

 

 

 …………

 

 ……

 

 ……

 

 

 

「ど、どうぞ……」

 

「お邪魔します」

 

 とりあえず、自分の家の扉を開けて、先に中に入ってもらう。

 

 色々考えはしたけど俺には丁重なおもてなしは無理だ! もうなるようにな〜れ。

 

「先奥行って座っててくれ、適当に飲み物持ってくから」

 

「私も手伝うよ、何もしないっていうのも失礼だし……」

 

「いーから、お客さんはくつろいでろって」

 

 玄関を開けて直ぐにある廊下の奥に、ググーっと九條さんを押しやり、大量に余らしているみかんジュースをコップに注いで持っていく。

 

 一応適当なお菓子も持って。

 

「つまらない物ですがどうぞ」

 

「そ、そんなにかしこまらなくても……」

 

「よ……よろろすおねがいするます」

 

 今からどんな話をされるんだろう。わざわざ男の部屋に上がってまで話さなきゃいけないことがあるってことだろ? 

 

 まぁ冷静に考えりゃあアーティファクト関連だろうが……

 

「それで、話って?」

 

「うん。あの時のこと覚えてる? 十字架のアーティファクトを『二人で』回収した時のこと」

 

 ……なるほど。確かにそれは話しておきたいことだな。俺もちょっと気になってた。ここで話し合って見るのはいい判断だと思う。

 

「あぁ覚えてる。どうして俺が九條さんの能力を扱えたか……だろ?」

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