9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
急いで身支度を整え、飛び出すように家を出る。さっきまで九條さんと一緒にいたとはいえ、電話をしている間にそれなりの時間は経過した。しかも相手は自転車だから、ナインボールにバイトしに行ったのならばとっくに着いていてもおかしくはない。
少しでも早く、あの危険性を伝えるために大急ぎでダッシュしているが……
よく考えたらRINGで伝えればいいんじゃね? 俺連絡先知ってっし。
アホじゃん俺。馬鹿みたいに飛び出さなくても普通に連絡手段持ってんじゃん。とポケットの中を確認するが……出てきたのは家の鍵と小銭入れ。あー……これは……
「スマホ忘れてる」
思わず声に出してしまった。さっき九條さんにむかって偉そうに周りが見えなく〜なんて言ったばかりだろう、全然モットーを守れてねぇじゃん。
仕方ない、ここまで来たら直接ナインボールに行った方が早い。確認に行くか。
……つか身体がやけに重たい。
昼間の能力を使ってしまった反動だろうか? ほんの少し全力で走っただけで溜まっている疲労感が半端じゃない。こういう時は甘いものを食べるに限る。ナインボールに行ったついでにパフェでも食べるか。
今日はそうだな……マンゴーパフェかなぁ。
もうとっくに全種類のパフェをコンプリートしてはいるんだが、何度も何度も食べたくなる美味しさなんだ。
そういえば俺、小銭入れしか持ってきてないけど中身は…………おお、五百円玉が六つも!? こんなに溜め込んでたのかよ。
これなら金銭面はあんまり考えなくても良さそうだ。
…………
……
……
ガラン……
店の扉を開けて、取り付けられた鐘の音を聞きながら入店する。すると中はまだ平日の夕方なのにも関わらず、珍しくガラガラだった。
ただ一人、奥の方で本を読んでいる、真っ黒なゴスロリ服の女の子を除いたら俺のみだ。
……ん? てかあれって…………?
「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」
「あ、いや……多分知り合いがいるんで一人じゃないです」
知らない店員はニコッと笑って、「かしこまりました」と返事をして、そのまま去っていく。
まぁ察するよな。俺以外はあのゴスロリちゃんしかいないし。
そんな一人寂しそうに角の席に座っている女の子の前へと向かっていき……
「お前ここにいたのかよ……希亜」
「だからわざわざ待っててあげてたのよ」
「いるなら言えよ……希亜がいるんなら俺はここに来る意味なかったじゃねぇかよ……」
「貴方が暇を与えずに一方的に電話を切ったのでしょう」
栞を挟んでパタンと本を閉じ、希亜は改めて俺の方を見る。
「つかお前学校どうしたんだよ、サボりか?」
「違う、今日は全生徒下校となったの。近くで起きた火事が原因でね」
「へー、そりゃラッキーだったなぁ」
と、そのタイミングで丁度よく店員さんがこちらに来て、水を置いてくれたので、そのまま食べたかったマンゴーパフェを一つ注文する。
つか夕食を済ませずにパフェ頼む俺って……?
「そうね」
「随分と適当な返事なこって」
一応チラチラと店の奥の方を見たりしているが……どうやら九條さんは今日はバイトではないようだ。
そんなキョロキョロとしていた俺に気がついたのか、希亜が呆れたようにため息を吐いて手元の水を飲み始めた。
「彼女はいないわよ。少なくとも私がいる間はね」
「そうか、一応新海の危険性を伝えておきたかったんだが……帰って連絡するしかないか」
「それなんだけど」
と、希亜が何かを話そうとした時にマンゴーパフェとストロベリーパフェが届く。
……ん? ストロベリー? あぁ、希亜が頼んだのか。
俺たちの手元に届いたパフェをとりあえずお互いに一口食べて、さっきの続きを語り始める。
「彼女たちが協力しあっているのであれば、その危険性を伝える事は止めておいた方がいいと思うのだけれど」
「はぁ? なんでだよ、もし魔眼のユーザーだった場合は九條さんが一番──」
「むしろ安全じゃないかしら」
「安全?」
なんでだ? 一番身近にいるんだから真っ先に狙われるんじゃ……
「蓮太にハッキリと協力していると断言したのでしょう? そのすぐ後に彼女が石化の状態で発見でもされたら、まず自分が疑われると思うはず」
「あぁ……まぁ……確かに」
「まずは自分とは関係の無い人を巻き込む可能性が高い。かと言って警戒を解く訳では無いけれど」
そうだな……協力関係になってすぐに殺してしまったりなんかしたら、まず容疑者として扱うだろう。言われてみればそうだ。
「なるほどな……」
「それに、せっかく仲間として行動を共にすることになった直後に、「貴女の仲間が黒幕の可能性がある」なんて言われたら、きっと気を悪くするんじゃないかしら」
「……九條さんの性格的には……有り得るかも? あの人も正義感の塊みたいな人だから」
はむはむとパフェを口にしながら淡々と話していく。
……マンゴー美味しい。
「ひとまずは私たちだけで留めておいた方が得策ね。下手な警戒をされても困る。捕らえるのなら、油断した瞬間を狙うべき」
「せっかく俺が近づけるからな、使えるもんは最大限に使った方がいいか」
「理解出来た?」
「あぁ、バッチリだ」
そうだな、俺は警戒されているどころか協力しないか? という勧誘まで受けているんだ。少なくとも多少の信頼はある状態なんだろう。それを崩すのはもったいない。
それが九條さんを守ることの出来る為の作戦になるのなら、俺はなんだってする。
「にしてもアーティファクトを手に入れてから毎日がキツいぜ……たまには羽を伸ばしたい気分だ」
「そんな事を言っている暇なんてないでしょ、私たちにはやるべきことがあるのだから」
「……? なんのこと?」
「ヴァルハラ・ソサイエティは闇に潜む悪を許さない。石化の聖遺物を手にした者に必ず裁きを与える」
……これやっぱりそうだよな? 俺もそのヴァルハラ……に入ってるよな?
つか聖遺物って呼んでんのかよ。
「悪を許さないって気持ちはわかるけどよ……俺は別にそのチームには──」
「さぁ向かうわよ。円卓へ。人が集まってきた」
だからどこだよ。
「どっか用意してるのか? 簡単に取れる個室なんてカラオケぐらいしか……」
「貴方のアジトがあるでしょう?」
俺ん家かよ。
「へいへい……分かりましたよ、リーダー」
「…………!」
冗談半分で『リーダー』と呼ぶと、目をキラキラと輝かせて少し興奮気味に、こくんっと首を縦に振る希亜。
え、なに。もしかしてリーダー呼びが嬉しかったの? 朝は自分で希亜でいいって言ってたのに? てか俺はマジでそのチームに入る気は無いんだけど?
…………ちょっと試してみるか。
「じゃ、俺たちのアジトへと向かうか。力無き民の為、我ら選ばれし者が世界の混沌を止めなければ」
……これ言うのめっちゃ恥ずかしいんですけどっ!? こんな感じであってる!? ねぇこれ大丈夫っ!?
「わかっているわ、私たちは神の掌で踊るつもりは無い。私たち自身の正義で運命を切り開くッ!」
………………やべぇわ、もう目が輝いてるわ。輝きすぎて怖さすらも感じるわ。
……とりあえず格好つけてるとこ悪いけど、会計済ませないと。
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