9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「ありがとうございました〜!」
笑顔で一礼してきた店員に愛想笑いをして、希亜と二人で店を出る。
ものすごい恥ずかしかった。ずっとレジ打ちしてくれていた店員さんは笑うのを我慢してたし、店の奥からはヒソヒソと笑い声が聞こえてきた気がする。
もう二度としない。あんな口調は絶対マネしない。
でもこの店にはこれからも行くと思う。だって安いし美味いもん。
そして適当な会話をしながら俺の家の方面へと向かう途中、赤信号に捕まって切り替わりを待っている時、違和感を覚え始める。
いや、正確にはもう少し前からなんだが……このタイミングでハッキリと理解できるレベルになった。またこのパターンかよ……
そう、誰かに後をつけられている。あれなの? 俺が女の子と二人でいると決まって誰かに追いかけられてるけど何かの呪いかな? そんな呪い要らないんですけど。
でも、あの時と違って今から向かうところは俺の家。別にわざわざ待ち伏せて追い返す必要も無い。
また深沢が付いてきてたとしても、別にダメージはないしな。
「…………」
「希亜? どうした……? 行かなきゃまた信号が変わっちまうぞ?」
「ええ……。そうね」
青信号に変わっても中々一歩を踏み出さずにいる希亜は、チラッと背後を見た後に俺に続いて歩き始める。
なんだ、気がついてたか。だったらこの違和感は気のせいじゃないってことだ。やっぱり本当に誰かにつけられてるんだろう。
「できるだけ人が多い道から行くか。だる絡みをされたら面倒だ」
「気づいていながら放置をするの?」
「別に何するにしても人それぞれだろ。ハッキリと犯罪行為に手を出していたら話は別だが……今はまだその時じゃない俺が危惧しているのは──」
「石化の能力者のように無造作に私たちを殺そうとしている場合」
「あぁ、だからいつでもすぐに能力を使って対応できるように気を張ってる」
そう、能力者であった場合の対処は考えなくちゃいけない。こっちの方のやつなら最大限の警戒をしなくちゃあいけないんだ。わざわざ俺たちの後ろをつけてくるようなやつだ、間違いなくチャンスを待っているはず。
自分の能力が最大限に生かせるタイミングを……
とそこで気がついた。今日という日の不自然な出来事に。
「あのさ、なんで今日に限って通行人が極端に少ないんだ?」
「偶然か……それとも」
俺たちは今、普段俺が使っている道を歩いている。いつもならこんなにも人が一人もいないなんて有り得なかった。しかもまだ五時を過ぎたあたり、時間を確認はしていないけど、間違いなく五時から六時の時間帯だろう。
おかしい……よな?
特に背後を気にしながら歩いていると、隣にいた希亜がその歩みをピタリと止めた。
「嵌められたわね」
「は? 何言って──」
返事をしながら前を向くと、一本道の奥から人影が一つ出てきた。緑色のジャージを着ていることはわかるが……ここからじゃあどんな顔すらかもわからないほど遠くに。
そして後ろを振り返ると、今度は15メートル程後ろに男の二人組が姿を現した。
「挟み撃ちかよ」
一人じゃなかったのか……!? まさか三人とも手を組んでたり……
「ご苦労さん、おかげで二人も捕まえられた」
してるよなぁ……。
とりあえずは会話で様子見……か。
「何の用だ? こちとらデートの途中なんだ。邪魔しないで欲しいんだが」
「そうね」
……いやメンタル強いな!? いきなりデートをしてるって言われて動揺もしねぇのかよ!? しかも軽く話を合わせてくれてるし! 頼りになるなぁ。
「いやいや、俺たちは君たち二人の邪魔するつもりは無いよ。『あるもの』を素直に渡してくれたらね」
「こんなアクセサリーを持ってないかな?」
そう言って二人組のうちの一人がチラッと見せてきたのは少し大きめの、リングのようなあのシルバーアクセサリー。つまり……アーティファクト。
「さぁな、知らねぇ」
「嘘は良くないなぁ……《反射》のユーザー」
……!?
なんでこいつ俺の能力まで知ってるんだ!? どういう事だ!?
「さぁ、始めようか、能力を使った奪い合いを」
「誰がッ──」
目の前の男の一人は、首元に紋章を浮かび上がらせて、余裕の笑みでこちらを見てくる。
あの顔……既に何度か人を襲ってやがるな。
「蓮──ッ!?」
隣から聞こえてくる希亜の声。
なにかに驚くような……焦っているような声。そんな声が途中で途切れた。
そんな希亜の方を振り返ると、あのジャージの男が希亜の髪を鷲掴みにして楽しそうに立っていた。
……あの距離をこの短時間で移動してきたのか!? いや、それよりも……!
「希亜に何してんだァッ!」
躊躇わなかった。あの時とは違って、俺は心の底からただ一つのことを思っていたからだ。もう俺は無意味に人を傷つけたりはしない。あの時の兄のように……!
守るための拳を……!
大きく振りかぶったが、俺の拳が当たる寸前で希亜の髪を引き抜くように乱暴に引っ張り、
「痛っ……!」
身体をよろけさせた彼女をすぐさま支えて、怒りの矛先を男たちの方へと向ける。
すると目の前にいた男たちは二人から三人へと増えていた。その中にあのジャージを着ている男がいる。
「大丈夫か? 希亜……」
「ええ……! 少し油断しただけっ」
男たちの三人中二人が紋章をハッキリと浮かばせてニヤニヤと笑っている。
「ありがと、これで俺も能力が満足に使える……」
一人の男はジャージの奴からある物を手渡して受け取る。それは今希亜から引き抜いた数本の頭髪だった。
そしてそのまま──
「あぁ……ん」
それを口の中に入れて食べてしまう。……こいつどんな性癖してんだよ……!
「ご馳走様」
「ふざけん──ッ!」
「やめといた方がいいよ」
いてもたってもいられずにその男に殴りかかろうとしたその瞬間、相変わらず怪しい笑みを浮かべたまま、俺に向かって「止まれ」と言わんばかりに手を向ける。
「今俺に手を出せば、傷つくのは君の大切な人だ」
「あぁ? 意味わかんねぇよ……!」
「だろうね…………オイッ」
その男はクイッと顎を動かすと、ジャージを着ていない方の男が、いきなり偉そうにしている男に向かって全力で殴りかかった。
何やってん──ッ!?
そしてその拳が男の腹に当たった瞬間、当たり前だが殴られた男は苦しそうにダメージを負う。
それは当然だ、当たり前だ。殴られたんだから。でも──
「うっ────ッ!?」
苦しそうな声を上げたのは希亜だった。
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