9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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4月21日 BAD(続)
血の涙


 

 あれから……どれほどの時間が経過しただろう。

 

 あれから……どれほどの涙を流したのだろう。

 

 あれから……

 

 

 何度死にたいと願っただろう。

 

 

 実際、何度も何度も身体を傷つけた。数え切れないほどに、ボロボロに。でも、もう痛みすらも感じない。

 

 虚無感に包まれた俺は、何をすべきかもわからなかった。

 

 ただただ、生きてほしいと、やり直したいと願うのみだった。

 

 けれどそれら全てが無駄。俺だけ願おうが、後悔しようが、無駄なことに過ぎない。

 

 叫んでも、絶望しても、結果は結果。負けは負け。死人は死人。

 

 そんな時、バキバキと音を立てて、希亜の石像が崩れ始める。ゴーストと同様に雑に身体が分割されていき、その場に崩れ落ちてしまった。

 

 その瓦礫の中には銀色に光るシルバーリングが……

 

「…………」

 

 俺はそれをスっと拾い、ポケットにしまいこむ。

 

 そして、俺のせいで石になってしまった三人の頭を持ちあげた。

 

「帰ろうか。みんな」

 

「帰ろう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家の扉を開けて、重い頭を三つ持ったまま部屋の奥へと歩いていく。そしてただ一つだけある机にその頭を三つ並べて、その目の前に座る。

 

「ここが俺の家だ、みんな初めて来ただろ?」

 

 電気もつけずに、着替えもせずに。

 

「汚くてごめんな、まぁゆっくりしてくれよ」

 

 ただ話しかけ続ける。

 

「そういえば香坂さんはナインボールにはあんまり行ったことないんだよな?」

 

「だったよな、あそこのオススメはパフェなんだ。他のメニューも美味いけどパフェが最高なんだよ、なぁ? 希亜」

 

「こないだも希亜はパフェ食ってたもんな。ゴーストは…………また甘いとか言ってバカにしてきそうだけどな」

 

「コイツ、モックのシェイクを奢ってやったのに文句言ってきたんだぜ? 中々の奴だよな」

 

「はは…………はは……」

 

 カチカチと時計の音が鳴り響く。

 

 暗闇が包む部屋の中ではあるが、こうして四人て話すことが出来てる。それだけで俺は幸せだよ。

 

 今までごめん。でも、もう失敗はしないから、俺が三人を守るよ。

 

「ごめん、俺疲れたせいか腹減った。今からなんか作るけど……みんなは何かいるか?」

 

 その場を立ち上がり、冷蔵庫の中身を確認する。

 

 中にはみかん味の様々な飲食物が殆どで、ほんの数量だけ卵等のなんとか夜食に使えそうなものがある。

 

「って女の子を夜食に誘うなんて逆にダメだったか。そもそもとして材料がそんなになかった、まぁ食べたくなったらちょっとやるよ」

 

 ちゃっちゃっと食材を焼きながら味付けをする。

 

 そうして作った簡単な物を三人の首元まで持っていき、コトンっと皿を置く。

 

「俺って意外と料理するのは好きなんだ。男がこういうことするのって変かな?」

 

「そう? そう言ってくれるのはありがたいよ。今度、ちゃんとした時にみんなに俺の料理を振る舞うからな」

 

「そんな文句言うなって、ゴーストだって経験がないからそう思うだけだ。試しにまずはみんなで何かしてみようぜ?」

 

 パクッと一口。ゆっくりとそれを食べながらみんなと話す。

 

「みんなの好きな物って何なんだ? 好きな食べ物とか、好きな場所とか、好きな動物とか」

 

「何なんだ……?」

 

 

 

 

 

 何も知らない。

 

 何が好きで何が嫌いかなんて、聞いてなかった。

 

 普段どんなことをしてるとか、将来の夢とか。

 

 何も知らない。

 

「…………何やってんだろ」

 

 中途半端に料理を残し、三人の首をもう一度抱きしめる。

 

 そんな時だった。玄関の扉が激しくドンドンと叩かれたのは。その奥から声が聞こえてくる。

 

「おい竹内! 無事かッ!? そこにいるんだろ!? 竹内ッ!」

 

 鳴り止まない扉。この声は………………

 

「竹内くん! お願い! この扉を開けて!」

 

 続けて女の子の声を聞こえてくる。

 

「ち、ちょっ!? にぃに止めなよ! 扉壊れるって!」

 

「竹内ッ! 竹内ッッ!!」

 

 もう返事をする元気すら出てこない。扉を叩いているのが誰なのかも興味が無い。そこにいるのが誰なのかも興味が無い。

 

 もう勝手にしてくれ。

 

「クソっ…………」

 

 そうして扉から音が鳴り止んだ。それからは声が聞こえなくなったが、さっきと同じ声が、今度は俺の真横にある窓から聞こえてくる。

 

「いるっ! やっぱり中にはいたんだ! おい竹内! 返事しろ!」

 

「ねぇ…………竹内先輩が持ってるのって────」

 

「…………ッ!」

 

「九條、天、離れてろ!」

 

「新海くん!? どうするつもりなの!?」

 

「決まってんだろ! この窓をぶち割る!」

 

 その声が聞こえてきた後、数秒経過した後に激しい騒音が部屋中に鳴り響いた。

 

 何かの破片がかなり乱雑に散漫し、それを合図に次々に窓から俺の部屋に人が上がり込む。

 

 その人達は俺の姿を見ながらも、その場に立ち尽くしていた。

 

「竹内…………お前……」

 

 俺はゆっくりと頭を上げてボロボロと涙を流しながら、先陣切って入ってきた新海を見る。

 

「やあ、いらっしゃい。新海 翔。そして…………新海 天、九條 都」

 

「ソフィから大体の事は聞いた、それは…………魔眼使いからやられたんだな」

 

 優しい声で話しかけてくれている新海。あぁ、客だ、飲み物くらい出さないと。

 

 三つの頭を横に置いて、俺はゆっくりと立ち上がって冷蔵庫へと向かう。

 

「飲み物……柑橘系しかないんだ、我慢してくれよな」

 

「竹内先輩…………」

 

 そして三人にも飲み物の希望を聞いてなかったことを思い出して、歩いた場所を戻り、三つの頭の前に座る。

 

「あぁ、そういえば先に来てた三人も飲み物はそれでいいか?」

 

 当たり前だが……返事は返ってこない。

 

 いや、ただ一つの別の返事が返ってきた。

 

「竹内くん……ダメだよ、そんな事しても返事はこないよ…………」

 

 その声を聞いて、俺はその場に崩れてしまう。

 

 分かってるよ。分かってるんだよ。でも、こうしてたらいつか喋ってくれるかもしれないじゃん。

 

 いつかは動いてくれるかもしれないじゃん。

 

 何事も無かったかのように。

 

「うぅ………………! なんで…………みんな死んだんだよ………………ッ! ふざけんなよ……ッ!」

 

「みんな…………みんな殺されちまった…………。為す術なく殺された…………! 俺のせいだ。俺がしっかりしなかったから。俺が信用しなかったから。俺が…………」

 

 涙が止まらない。後悔も、怒りも、悲しみも、絶望も、終わらない。

 

「ダメだよッ! 竹内くん! それをやめて!」

 

 必死になって、九條さんが俺の動きを止めるように力一杯に抱きしめてきた。

 

 これじゃあ両腕が使えない。

 

 下を見ると、俺の指先からボトボトと大量に血が落ちている。

 

 そして俺が涙だと思っていたのは…………

 

 

 

 自分の顔を力の限り掻きむしった痕から出てきた真っ赤な血液だった。

協力相手は?(2度目)

  • ヴァルハラ・ソサイエティ
  • リグ・ヴェーダ
  • ********(意味無し)
  • ソフィーティア
  • イーリス
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