9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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異変の可能性

 

 指先からぽたぽたと液体が落ちる。さっきまでほぼ無音だった部屋の中で、誰かが啜り泣く声が聞こえてくる。

 

 そんな彼女たちを無視しながら、不意にある一つのモノに目が移る。

 

 希亜と香坂さんの間に置いていた一つの首。《何故か》一番に守ろうとした首。ゴースト。

 

 ……おかしくないか? ()()()()()()()()()()()()()? 

 

「九條さん…………大丈夫だから、俺から離れて」

 

「で、でも……ッ!」

 

「何か……分かるかもしれない」

 

 アイツはあくまで幻体だ。死んだとしても関係なしにいくらでも出現させることができるんじゃないか? 

 

 そもそも、幻体を固定化なんて出来るんだろうか? いや出来ているからこそこうして目の前に石になったゴーストがいるんだろうが……

 

 じゃあ、そしたらこのゴーストは《白》のゴースト? 意識を乗っ取った後にわざわざ殺したのか? 

 

 いや、それなら石にする必要は無いはずだ。オリジナル色に完全に染めることが出来たのであれば切り捨てることはしないだろう。だからあくまでこれは《黒》のゴーストだ。

 

 いや……なんで俺は《白》と《黒》が()()()()()()と思ってるんだ? あくまでアイツらは一つの身体を奪い合うような事になって────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊薬を使って契約を破棄できたとしても、人格が別れるとは思えない。その進行は止まることは無いでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故……ソフィはあの時に()()()()()()なんて言ったんだ? 

 

 俺はそんなことは思ってもいなかったし、口に出してもいない。それに────

 

 

 

 

 

 

 

「私からも一つ質問。あなた、今何度目かしら」

 

 

 

 

 

 

 何度目……? 何度目? 

 

 もしかして………………アイツ、知っていたのか? これから有り得るであろう未来の可能性を。

 

 もしかしたら………………俺は踊らされてる? 

 

 

 

 

 十分にある、この可能性…………

 

 

 

 だってよ……よく考えれば、誰が希亜と香坂さんを石にしたんだ? 

 

 あの場で、()()

 

「誰かいたんだ……あの場に、犯人が…………」

 

 そうだ、ゴーストに気を取られていてそれどころではなかったが、あの石像を発見した時にはまだ希亜は生きていた。

 

 今は……、殺されてしまったけど、俺が目を離したあの隙にやられた。つまり、あの場には間違いなく幻体か本体のどちらかがいた……

 

 そしてさっきの疑問、閃き。

 

 だったら──

 

「一応……貰っておくよ、希亜」

 

 ポケットからあのシルバーリングを取り出し、それを思い切って自分の口の中に放り込む。

 

 少し硬かった変な塊は、俺の喉を通ると共に解けるように形を変えて、おそらく胃の中に送り込まれる。

 

「竹内……? 今、お前何をしたんだ?」

 

「知ってるだろ? 新海。死者のアーティファクトを取り込んだんだ。これは…………希亜の力」

 

 ちょっと鉄の味がしたけどな。

 

「もう一度俺は白陀九十九神社へと向かう。もしかしたら…………石化のユーザー…………魔眼の所持者を見つけられるかもしれないから」

 

「だったら俺たちも行く、いや……俺たちが行く! 魔眼のユーザーは俺たちが必ず捕まえるから──」

 

「生ぬりぃよ」

 

 この期に及んで《捕まえる》ね。そんなんじゃダメだ。それじゃあ報われない。

 

「え……?」

 

「捕まえなんかしなくていい。俺が…………殺すから」

 

「何言ってんだ……? お前……」

 

「俺が犯人を殺す」

 

 その発言で、一瞬で俺たちの空気感が変わる。

 

 ただひたすらに沈黙。新海たちは絶句と表す方が正しいだろう。俺の発言を信じられなさそうに目を見開いて驚いていた。

 

「俺が魔眼のユーザーを殺せば、アーティファクトは手に入る。お前たちはそれが目的だろ? 安心しろよ、上手く行けばちゃんとお前たちに渡す」

 

 そうだろ? それが俺の覚悟だ。初めてここまで人を殺さなければと思った。黒幕だけは殺さなければいけないと強く思った。

 

 俺は今、俺の大切な人たちが最も嫌う罪を犯そうとしている。でも構うもんか、悲しみの連鎖はここで断ち切ってみせる。

 

「じゃあな、みんな。ごめん」

 

 するりと九條 都と新海 天の間を抜けて、そのまま家を後にする。もう二度と帰ってこないであろう事を思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 走る、走る、走る。

 

 ひたすらに走る。

 

 多分だけど……ゴーストは生きている。いや……正確には《白》ゴーストは生きている。

 

 ソフィの発言、あのタイミングであの言葉が出てくるのはおかしい。間違いなく知ってたんだ。未来を。

 

 もしくは……別世界を。

 

 イーリスも、ゴーストも、アンブロシアも、全てあいつは知っていた。そして俺を試していた。今の俺がそれらの事を知っているのかどうかを。

 

 だからこそ俺も今気がついた。あいつの言っていることは全て正しいんだ。全て()()()()()()()()なんだ。

 

 ただし、それは別世界、いわば平行世界で。

 

 だからこそ、俺は既に奇跡を起こしていた。ゴーストを救えていたんだ。

 

 俺の考えが正しいのなら………………

 

 

 

 

 

 そうして俺は神社へと戻ってきた。

 

 相変わらず崩れた石の塊が落ちている。しかし、その上には見覚えのあるどこか懐かしい後ろ姿が。

 

「やっぱりいたのか…………ゴースト」

 

 その女は振り返る。

 

 赤い目を光らせながら、月に照らされ微笑みながら。

 

 白いパーカーを揺らし、俺を見る。

 

「おかえり、蓮太君? 随分と派手なメイクじゃねぇか」

 

「あぁ…………ただいま。偽物、お前を殺す為に帰ってきたぞ」

 

協力相手は?(2度目)

  • ヴァルハラ・ソサイエティ
  • リグ・ヴェーダ
  • ********(意味無し)
  • ソフィーティア
  • イーリス
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