9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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戦闘

 

「オレを殺すねぇ……。嬉しいぜぇおい。やっとマジになって殺りあえるのかよ」

 

 言わずもがな、やっぱり《白》は殺る気マンマンだ。ただコイツは純粋に殺し合いを楽しみたいのだろう。

 

 考えてみれば、このゴーストもオリジナルに利用される為に生まれてきたのだと思うと……いたたまれない気持ちにはなる。けれど…………

 

「ただ一つ……聞かせてくれ。お前が、希亜と香坂さんと……ゴーストを…………殺したんだよな」

 

「オレ以外の二人はわかんねぇよ。連れのお友達の事なら……そうだな、オレが殺した」

 

「なんで……殺した」

 

「なんでっつったってなぁ…………創造主サマはテメェの事を殺したがってたし、あと……アレだな、テメェの力を欲しがってた奴もいたか」

 

 きっとイーリス本人か……その手駒の事だな。それにオリジナルは本当にアイツの言う通りに俺の事を殺したがっているようだ。

 

「だったら、俺を殺せばいいだろ。俺だけを殺せばいいだろ……! なんで三人を殺したッ!?」

 

「ばーか、普通に殺しちゃ面白くねぇだろ。マジのお前と殺り合える為なら、オレはいくらでも殺すぜ? なんならもっと殺してやろうか? あの……ほら、まだお友達が三人いただろ? アイツらとか」

 

「それは…………お前の意思なのか?」

 

「あぁ。オレはお前が大好きだからな。お兄さん?」

 

 そうか。

 

 誰かの差し金じゃなくて、あくまでコイツ自身の意思で殺したのか。

 

 わざわざこの瞬間の為に。

 

 この…………一瞬の為に……ッ! 

 

「死ぬ覚悟は出来てんだろうな…………」

 

「安心しろよ、もうテメェには負けねぇ。死ぬのはテメェだ」

 

 パチンっと《白》が指を派手に鳴らすと、その背後から無数の赤い槍が出現する。この間とは比べ物にならない数だ。二十なんて数じゃない。おびただしい数の槍が全て俺の方へと向かってきている。

 

「まずはこれだな。そらよっ」

 

《白》の合図で、俺に向けられた槍が一斉に飛んでくる。かつてのように次々にではなく、その全てがほぼ同時に。

 

「ぬりぃ……」

 

 力を使って鏡を出現させる。一枚の板のような鏡の形を曲げ、自分の前面へと出す。そうするだけでおぞましい数の槍は全てが乱反射した。

 

「俺は楽しみに来たんじゃねぇ。お前の先を殺しに来たんだ」

 

 覚悟を決めて、自分の中で三つのステップを踏んでいく。

 

 第一ステップ…………俺は審判者。

 

「ジ・オーダー………………」

 

 挑むは早期決着。

 

「テメェ……あの能力を奪ったのかよ……! 本当にイカレてやがるなッ」

 

 これは、今までの俺を否定する行為だ。俺だけじゃない。俺の為に力を貸してくれたみんなを否定する行為だ。

 

 でも……後悔はしない。今から俺は…………人を殺す。

 

 第二ステップ…………狙うアイツは罪人。

 

「アクティブ…………」

 

 その瞬間に、左眼に不思議な力が宿っていく。熱にも感じるその力は、俺自身の眼を焼き付くさんとする勢いで、ありったけの力が圧縮されていく。

 

 この力は…………下手に扱うと俺自身が死んでしまうな。それはダメだ。

 

 オリジナルを確実に殺すまでは俺は死ぬ訳にはいかない。

 

「クソ……! 殺られる前に殺ってやる……!」

 

 そう言って《白》は目元に紋章を浮かばせながら、再びあの槍を出現させる。

 

 コイツ……とうとう能力の同時使用が出来るまで練度を上げたのか。

 

 まずい……な。俺はそんな器用なことは出来ない……

 

 でも、この攻撃は止めない。

 

 攻撃される事を覚悟の上で、ありったけの想いを込めて、引き続き左眼に力を溜める。

 

 そして次々に俺の身体を赤い槍が貫く。

 

 実際に外傷は現れてはいないが、ちゃんとした痛みはハッキリと伝わってくる。

 

 騒ぐ余裕が出てこないほどの激痛が俺を襲う。けれど……絶対に止めない。

 

「よし……オレを見たな……! テメェ、多分今は《反射》の方は使えねぇんだろ? だからわざわざ攻撃を全て受けたんだ」

 

「あぁ……俺はそんなに器用じゃないからな。でも、確実に標的を殺す為に……ありったけの力を込めてる」

 

 正直、この借り物の能力の力が強力すぎて、俺の左目は光を失っていて何も見えない。

 

 今となっては熱すらも感じることの出来ないほどになっている。それだけ強力な力を込めているんだ。ほぼ暴走に近い形になっているのだろう。

 

「オレもだ、力をフルに使ってお前を石化させてる。ほら、もう足元の色が変わってきたぜ?」

 

「んな事言われなくても……」

 

 とっくにわかってた。

 

 さっきから歩こうとしてもくるぶし辺りがもう動かない。そもそもとして身体全身が痙攣してまともに動かせない。

 

 段々と足の感覚も無くなってきている。

 

「チッ……! これだけ威力を上げてもまだ完全に石化しねぇのかよ……! どうなってんだ!? テメェ……ッ!」

 

「まだだ……! ありったけの力を込めろ……! 確実に、堅実に、最大威力で殺せるように……ッ!!」

 

 パキパキと俺の身体が音を立てながら、痙攣が止まっていく。それは決して耐性がついたとか、効かなくなったとかそんな物ではなく、単純に俺の身体が徐々に石になってきているからだ。

 

 足はももの辺りまで固まってしまい、腕はもう完全に灰色に染っている。

 

 偽物が力の限りに能力を発動させたからだろうか? 先程までとは違いすぎる速度で俺を身体を蝕んでいく。

 

 流石にギリギリまで粘って扱えませんでした。じゃ話にならねぇ……ここで決める! 

 

 第三ステップ……判決は……死刑ッ! 

 

「身勝手に民を殺し、欲がままに心に溺れし者よ……裁きの雷に焼き消えろッ!」

 

 狙うは……偽物と繋がっている命。誰かは知らないが、目の前のアイツと魂が繋がっている相手。見えない影でほくそ笑んでいる黒幕。

 

「クソっ間に合えよッ!」

「パニッシュメントッ!」

 

 そして力の限りに能力を解放する。

 

 俺の左眼から放たれた赤黒い雷は、遊ぶことなくあちこちへと飛び回り、偽物を目掛けて降り注ぐ。

 

 荒れ狂う轟音。

 

 空を斬る音。

 

 聞こえる偽物の悲鳴。

 

 弾け飛ぶ身体。

 

 最後の力を振り絞った俺は、アイツの悲鳴の声が聞こえてきたのとほぼ同時に、意識が遠のき始め…………

 

 眠りに誘われるように意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 俺はきっと正しくはないだろう。俺のやってきたことは間違ってるだろう。結局は自分の為に能力を扱ったんだ。だから、みんなの元へと行けなくてもいい。

 

 俺の罪は…………

 

 罪は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *(視点切り替え)

 

 

 

 舞い上がる土埃。

 

 突如として吹き荒れる突風。

 

 そして…………弾け飛んだオレの腕。

 

「あぁー……痛ってぇ……」

 

 右肩からその先全てが無くなっちまった。ついでに脇腹辺りも。

 

「あの野郎……オレを狙ってなかったな……!」

 

 オレと殺し合う中で、アイツが最後まで殺すつもりでいたのは創造主サマの方だ。オリジナルだけを狙っていた。

 

 本当はオレに危害を与えるつもりはなかったのかもしれねぇが……またまだ扱いきれてなかったんだな。

 

 まぁなんにせよ……

 

「オレの勝ちだな」

 

 オレは消えていない。つまりはオリジナルは生きているって事だ。オレが幻体である以上は本体が死ぬと同時に俺も消える。

 

 だけど、オレは消えていない。つまりは……そういう事だ。

 

 そして……

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 オレの目の前には苦しそうにオレを見ている石像が。

 

「結局は他人の力に頼っちまったのがアンタの敗因だ。あの嬢ちゃんの力を使わなけりゃあオレとアンタは決着がつくことは無かった」

 

 意地でも嬢ちゃんの力で殺したかったのだろうが……不慣れな力に頼っちゃこんな結果にもなる。

 

 まぁ、マジで死ぬかと思ったけどな。

 

 特に理由はないけど、なんとなく石になったコイツの頬に残った手を当ててみる。

 

「もうお前みてぇに純粋に楽しめる奴はいねぇだろうな」

 

 ここ数日間、楽しかったぜ。

 

 考えることは全てお前の事だった。どうやって殺そうか、どう動こうか、どんな隙を突こうか、お前ならどうするか、お前は何をしてるか、どんな能力の使い方をするか。

 

「好きってのはあながち間違ってなかったのかもな。オレにはわかんねぇけどよ」

 

 オレのこの感情は間違っているだろうしな。

 

「きっと、《黒》の方もオレに近い感情だったろうぜ。もう確認のしようはねぇけどさ」

 

 チラッと今の時間を確認してみると、22時28分。

 

《黒》が死んでからは三時間くらい経ってるのか。確か……こいつらがここに来たのは……その一時間後くらいだったか? 

 

「あーあ、惜しかったな」

 

 ゆっくりと触っていた手を離し、後ろを振り返って月が登る方向へと歩いていく。

 

「アンタは壊さねぇでおく、せめてもの慈悲だ。じゃあな」

 

 本当はあのアクセを奪うべきなんだろうが……生憎オレは興味がねぇ。だからこそ放置する。

 

 そして神社の屋根上へと飛んで登り、お気に入りの場所に座ってアイツらを待つ。

 

 ある一つの飲み物を飲みながら。

 

「……んっ……んっ。《黒》にも感謝だな、オレもまさか物を飲み食い出来るようになるたァ思わなかった。人間ってすげぇよな、こんな変なもん作って飲んだりするんだから」

 

 あのバカから貰った金で、なんとなく買ったもんだけど……全然美味くねぇなこれ。

 

 なんでオレこんな物買ったんだ? 

 

 それに……さっきからこう……なんだこれ……。ムカムカじゃなくて、ザワザワでもなくて……こう、モヤモヤする。

 

 クソ……んだよこれ。

 

 初めての感情だ。ぜんっぜんわかんねぇけど……すっげぇ辛い。

 

「……!」

 

 何故かオレは涙を流している。

 

 ぽたぽたと何かが落ちてると思ってたら……オレ、泣いてたのか。

 

「アイツがオレのオリジナルなら……まだ楽しかったのかな」

 

 創造主サマから感じる感情は無の感情ばかりだ。アイツは何がしてぇのかがわかんねぇし。

 

「ま、そんなこと考えても仕方ねぇか」

 

 なんて思いながらも飲み物を飲む。すると奥の方から男が一人と女が二人歩いてくるのが見えた。

 

 女の一人は知っている、あれは《九條 都》だ。アイツと前に歩いてたからな。

 

 さて……石像を増やしますかね。

 

 石になったアイツを見つけて驚いている三人を殺す為に、オレは飲み物を置いて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

「まだちょいと金はある、これが終わったらまた買いに行くか…………モックのバニラシェイク」

 

協力相手は?(2度目)

  • ヴァルハラ・ソサイエティ
  • リグ・ヴェーダ
  • ********(意味無し)
  • ソフィーティア
  • イーリス
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