9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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4月21日 (続)
運命の分岐、その道の先


 

「…………ッ!?」

 

 突如として襲ってきた頭痛。その痛みに怯むように、俺は頭を抑えて下を向く。

 

「なんだよ……クソ……」

 

 偏頭痛か? いや、そんな感じじゃなかったし……

 

 まぁいい。痛みを感じたのは一瞬で、別に大した問題じゃないしな。

 

 多分アレだろ、難しいことを考えすぎ──とかそんな事だろう。

 

「あれ……? 俺って何をしようとしてたんだっけ……?」

 

 今の俺のいる場所はナインボールの外。入口の横にある窓際。そして俺の手に握られているスマホには、RINGの通話機能の準備をしている途中だった。

 

 その相手は希亜。

 

 あぁそうか。俺は確か……香坂さんと神社に行く予定で、それを伝えようと……

 

「……………………止めとくか」

 

 必要ないだろう。もし本当にゴーストについて知ることが出来たら、そこで初めて伝えればいい。少しでも効率を良くするために申し訳ないけどまだ希亜には探ってもらった方がいいだろう。

 

 それに…………なんか、伝えちゃまずい気がする。

 

 起動していたアプリを落とし、特に何もせずに店内へと戻る。

 

「……? どうなされました? 何かお忘れ物でも?」

 

「いや……なんか、なんだろ? やっぱり止めとこうかなって思って」

 

「よろしいのですか? ご友人の方に何もお伝えにならなくて」

 

「あぁ。後で連絡する事にした。それに……なんかダメな気がするんだ。アイツを巻き込んじゃいけないような……」

 

 例えようのない悶々とした感情。なんなのかは分からないけど……これが直感ってやつなんだろうな。

 

「安心して下さい、私は口出し致しません。蓮様の意志を尊重致しますわ」

 

「助かる」

 

 よし、そうと決まれば……とりあえず少しだけでもこの人から情報を聞いておこう。今のところは俺に協力的だし……質問すればある程度のことは教えてくれるかもしれない。

 

 でも気持ち的には21時とは言わずに直ぐに行きたい。だから必要最低限のことを聞いたら直ぐに出発しよう……って。

 

 ………………いや、待てよ。

 

「話は変わるけどさ、香坂さん。その……これから会う『司令官』ってどんな人なんだ?」

 

「そうですわね……、少々説明が難しいのですが……」

 

 うーん。と説明のために頭を悩ませる香坂さん。

 

 え? 何? そんな簡単に説明が出来そうにもないような人なの? どれだけ個性的なの? 

 

「実際にお会いした方がわかりやすいかと」

 

 ま……丸投げしやがった…………

 

「そ、そっすか……」

 

 

 

 

 …………

 

 ……

 

 ……

 

 

 

 

 結局、予定では21時に集合ということは変わらずに、その少し前、20時半頃に近くの公園で香坂さんと集合することにした。

 

 それまでにまだ時間はそこそこあるので一旦ここでお別れだ。

 

 今は自宅にいて、家に帰っている途中も色々と考えていたが、やっぱりなるようになれ精神でやるしか無さそうだ。

 

 事前に色々と調べるにしても、今更何かを知ったところでできる対策なんてたかが知れている。

 

 ソフィもなんかノリで行けよ的なこと言ってたし……とりあえずは約束の時間に向かうしか…………

 

 と、そんな時に不意にあの黒い伊達メガネが視界に映る。

 

 アイツに選んでもらった物。

 

 アイツの好きな色。

 

 アイツの…………

 

 時刻を確認してみると、今は19時2分。今から全力で向かえば20分足らずで神社には辿り着くだろう。

 

 予定よりも一時間以上早くに待つことになる。

 

 行こう。

 

 香坂さんとの待ち合わせの時間になっても姿を現なけりゃ、一旦公園へと向かえばいい。それまでに会うことが出来れば……ゴーストの事を聞けるかもしれない。

 

 考えられる対策はほぼないんだ。持ちカードがない以上は全力で動こう。がむしゃらに足掻こう。走ろう。

 

 もしかしたらそれが、何かを変える一歩になるかもしれねぇ。

 

 俺の直感がそう言ってる。

 

「よし…………ひとっ走りするか」

 

 そうこれからの行動を決めると、黒いメガネを掛けて俺は家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 ひたすらに走ってはいるが俺はなんでこんなに急いでいるんだろう。

 

 なんでこんなに焦っているんだろう。

 

 あの頭痛からだ。何故か不思議と直感を感じることが多い。

 

 でもいくら考えてもそんなものの答えは出てこないだろう。概念的な物をいくら考えたって、頭が悪い俺にとっては無駄な時間だ。

 

「はぁ……はぁっ…………!」

 

 走ること約20分。とうとう神社にたどり着いた。19時過ぎという微妙な時間だからだろうか? 全然この辺りに人の気配がしない。

 

 だから一目見てそこにいる人たちが直ぐに確認できた。

 

「あれは………………ゴーストッ!?」

 

 俺の走る先にいる黒いゴーストは、両膝を地面に着けて立ち上がらずに目の前の()()()()()()()()()()()の方を見ている。

 

 しかも……白の方の背後から赤い槍が出現していた。

 

「わけわかんねぇけど、とりあえず…………ッ!」

 

 ぴょんとジャンプした後に両手を伸ばして塀を登り、そこから勢いをつけて少し離れた大きな木の枝に飛び移る。そしてそのままの勢いで自分の身体を飛ばして、空中で能力を発動して《鏡》を足場にしてその鏡を蹴る。

 

 俺の蹴りが跳ね返り、より遠くへと俺の身体を跳躍させて、勢いをつけて二人の側へと駆け寄る。

 

 今にも白いゴーストが赤い槍を投げ飛ばしそうだ。

 

 間に合え────ッ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反射鏡(リフレクション)ッ!」

 

 黒板でも爪で引っ掻いたような高音が鳴り響き、飛んできたであろう赤い槍を弾き飛ばす

 

 何故そんな挙動になったのかは…………想像通り。俺が《反射》したからだ。

 

「……ッ!?」

 

 土埃が風に飛ばされると、俺を見て目を見開いて驚いている《白》ゴースト。そして俺の後ろには同じように声を失っている《黒》ゴーストがいた。

 

 なんで……ゴーストが二人になってるんだ? つかそもそもなんでゴーストがいるんだ? 

 

「マジかよ……良かったじゃねぇかオレ。本当に来てくれたぜ?」

 

「あ? なんの事だよ」

 

 二人の間に割り込むように入り込み、《白》の方を睨みつける。

 

「まさか本当に来るたぁなぁ……ビックリしたぜ」

 

「そりゃ俺のセリフだっての。まずなんでお前がここにいるんだよ、つかなんで二人に増えてるんだよ、なんでコイツを攻撃してんだよ」

 

「質問は一つずつにしろよ……」

 

「順番に答えろ」

 

《白》の目を真っ直ぐに見る。大体は予測はついてるっちゃあついてるが……直接本人の口から聞き出さないことにはな。

 

「…………はぁ。わーったわーった、説明してやるから落ち着けよ」

 

 しばらく俺と視線をぶつけていると、《白》は諦めたように浮かばせていた紋章を消し、ポケットに手を入れる。

 

 どうやら戦闘の意思は無いようだ。

 

「あっさり引くんだな」

 

「ぶっちゃけ、テメェとオレは相性が最悪だからな。一方的に有利を取られる都合上、下手に手を出すとこっちが負けちまう」

 

 まぁ……確かに能力相性は俺の方が勝っていると言えるだろう。俺が知る中でアイツは相手を麻痺らせる能力と赤い槍を放つ能力があるんだ。それら二つはどちらも俺の能力で反射できる。

 

 となると純粋な能力勝負じゃケリはつかない。

 

「まぁ気を抜けよ、無駄な争いはしねぇ派なんだ。…………ガム食うか?」

 

「…………貰う」

 

 雑に投げられた小さな包物を受け取り、それを口に入れる。歯でそれを噛むと口の中にラムネの味が広がっていった。

 

「まず……オレたちがここにいる理由だったな。そんなもん理由は特にねぇけど……強いて言うなら()()がここに来たんだよ」

 

「はぁ? んだよそれ」

 

「だから、()()がここに来たんだ」

 

 そう言って《白》は《黒》の方に指を指す。

 

「それが気になってた。なんでこうして二つの人格が分裂しているんだ?」

 

「知らねぇよ、オレが聞きたいくらいだぜ。オレ……ってこの呼び方は面倒だな。《黒》の方がいきなりオレの魂から飛び出したんだ」

 

 魂から飛び出したって……どういう事だ? 一つの魂が二つになんてありえるのか? 

 

 チラッと《黒》の方に視線を向ける。

 

「オレもわからねぇんだ……。昨日からずっと、身体の芯がモヤモヤとしてた感覚はあったんだがよ……まさか消失じゃなくて分離するなんて……」

 

「分離……」

 

「だからオレが二人もいたらややこしいだろ? 最後の質問の答えはそういう事だよ」

 

 この会話から察するに……この二人は心が繋がっている訳じゃなさそうだ。感じている感情そのものが違いすぎる。

 

「ん……、まてよ……。それじゃあ、この《黒》の方は誰がオリジナルなんだ!?」

 

 幻体である以上は誰かの能力でこうして現れてるってことだ。つまり契約者がいるってこと。

 

 普通に考えれば同じ奴だと思うが…………

 

「多分いねぇよ、その《黒》の方は。力の感じ方が曖昧だからな」

 

「そうなのか? ゴースト」

 

《黒》の方に声をかけるが…………

 

「多分……な。創造主がいるような感覚はしねぇ……多分オレは今……誰の力でもない気がする。それに────」

 

《黒》のゴーストは目を瞑る。すると、その胸の内からほんの少しの輝きが放たれ……………………

 

 試験官のような物が《黒》のゴーストの手に握られた。

 

「契約物がアイツとは別にあるんだ……」

 

「…………」

 

 その中身は液体が入っている。固形ではないアーティファクトは契約者がいない証だ。

 

 つまり…………自分自身で能力を扱っているってことか? なんで最初からあの容器に入っているのかは謎だけど。

 

 それってこの《黒》のゴーストはどうなるんだ? 主人がいない幻体なんて、絶対にありえないだろ? でも現にこうしてその特殊な幻体がいるんだが…………

 

「じゃ、話終わりっ。オレは帰らせてもらうぜ」

 

 パンっと手を叩いた《白》ゴーストは、これが区切りと言わんばかりに無理やり話を終わらせる。

 

「あっ、ちょっ、待て! まだ聞きたいことは沢山──」

 

「ソイツに聞きゃあいいだろ、いちいちオレに聞くな」

 

 いやどっちも同じゴーストだろうけどさ。

 

「じゃあな、またどっかで会った時はよろしくな。そん時は全力で殺り合おうぜ」

 

「だから────」

 

 俺が《白》を止めようと声をかけている途中で、《白》は軽くジャンプをした瞬間にその場から消えた。

 

 ……アイツ、更に他の能力も扱えるのかよ。

 

 マジでオリジナルが人を殺してるのか……? 

 

 いや、今はそれよりも…………

 

 

 

 

「待たせたな、ゴースト。大丈夫か?」

 

 未だに膝を地につけている《黒》に手を差し伸べる。

 

「………………………………あんがと

 

 慣れないのか《黒》のゴーストは、目を逸らしながら無愛想に俺の手を掴んだ。





どうも主です。
事前に告知していた通り、現在行っているアンケートを今回で終了させていただきます。投票ありがとうございました!

また次回のアンケートを開始する時は、事前に告知させていただきます。

その時はどうぞよろしくお願いします。
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