9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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黒と蓮、想いの欠片

 

 にしても幻体……かぁ。

 

 まさか俺を選ぶなんてなぁ……コイツわっかんねぇな。いや、ゴーストが置かれている状況を考えると怖いのはわかるけどよ……

 

 まぁ、本人はこれで納得してるみたいだし、別にいいの……か? 

 

「…………」

 

 チラッと俺の隣で手すりに寄りかかっているゴーストを見る。どうやら俺の考え全てが伝わっているわけでは無さそうだ。しかも、その逆……つまりゴーストの思考や気持ちはこっちには分からない。

 

 これもうどっちが本体かわかんねぇな。

 

「ん? どした?」

 

 そんな俺に気がついたのか、気さくに声をかけてくるゴースト。

 

「いーや、別に。これからどうすっかなぁ〜って考えてた」

 

「あぁ、そういやアンタ香坂さんと会うんだったな」

 

 …………人格がオリジナルに似るってのは本当みたいだな、俺の知ってるゴーストならぜってぇ「さん」なんて言わねぇと思うから。

 

「……なんか違和感あるわ。敬称つけるなんて」

 

「んだよ、別にいいだろ……つかアンタがそう呼んでんじゃねぇか」

 

「別に強制はしてないだろ? 好きに呼べよ」

 

 でも、本当にどうしよ。俺はもう目的は半分達成したみたいなもんだし、それに《司令官》とやらもまだここにはいない。だから俺はって………………

 

「なぁゴースト。お前さ、《司令官》や《魔眼》のユーザーについて知ってることがあるんじゃねぇか?」

 

 元々《司令官》の方は、ゴーストと接点があるって言われたから接触する流れになったんだ。しかも、あの時にゴーストは石化の犯人は自分にヒントがあるって言ってた。だったら間違いなく答えを知ってるだろ。

 

「知らね」

 

「嘘つけぇっ!」

 

「いや本当に知らねぇんだって、なんつーか……こう、記憶が欠けてるんだ」

 

「欠けてる?」

 

 あー、なんかそれっぽい理由がでてきた。この感じだとなんかマジっぽいな。

 

「前の創造主を思い出そうとすると……フィルターが掛かったみたいに思い出せなくなるんだ」

 

 思い出せ…………

 

「だからさっき怖がってたのか」

 

「怖がってねぇよ、ふざけんな」

 

 中途半端な存在になっちまって、オマケに記憶も中途半端にない。そんでもって常に消滅する可能性…………か。

 

 やっぱり、ちょっと似てる。

 

 俺が……コイツを守らねぇと。

 

「まっ、安心しろよ、これからは俺の肩揉み放題、マッサージし放題、掃除し放題、買い物行き放題、料理作りたい放題だ」

 

「こき使う気満々じゃねぇか」

 

「あぁ、そんでもってずっと一緒だ」

 

 正直、このアーティファクトたちをどうしたらいいかは正解がわかんないけど、九條さんが言うには結構な数が散らばってるらしいから……せめてそれらが全て集まるまでは、かな。

 

 いつかは別れなきゃいけないけど………………《今》はいいか、そんなこと。

 

「………………死ね」

 

「照れんなよぅ!」

 

「消えろバーカ」

 

「ひでぇ」

 

 そんなゴーストはクスッと笑っていた。

 

 …………不覚にもほんの少し、ほんの少しだけその笑顔に目を奪われる。

 

「どうした? 急に黙り込んで、なんかあったか?」

 

「いや、可愛いなって思ってさ」

 

 事実俺は………………いや、そんなことは無いだろう。きっと同情に近いモノだ。それとも幻体という特殊な存在故にだろうか。

 

 妙に心が落ち着くのは。

 

「アンタって簡単にそんな事言うよな」

 

「そうか? 別にそんな事ねぇと思うけど」

 

 そもそも言う相手がいないからな、俺。そりゃ美人さんって思うような人はいたけど……可愛いとはあんまり思ったりはしなかったような……? 

 

「しかも自分の分身に」

 

「じゃあ可愛いし、かっこいいし、天才だわ」

 

「ははっ、バーカ」

 

 と談笑していると、俺のスマホに通知が入る。

 

 それは香坂さんからのRINGのメッセージだった。

 

『どうやら司令官さんは急用ができてしまって来られないらしいです。こちらから誘っておいてすみませんが、今夜の待ち合わせは中止ということで……』

 

 司令官は来られなくなったのか。もしかしたら、あの《白》のゴーストが何か言ったのかもな。何かしらの繋がりがあるみたいだったし。

 

 可能性が高いのは、やっぱり石化能力者は《白》ゴーストの契約者。そしてそれっぽいのは新海だと思ってたが…………司令官が怪しいな。

 

 このタイミングで急用ってのが怪しい。

 

『わかった、ありがとう。こっちこそ無理言ってごめん』

 

 そう送ってスマホをしまう。

 

「とりあえず帰るか。もうここに用事はなくなったから」

 

「ふーん…………、ま、オレはアンタに付いてくだけだし、どこへでも勝手に行ってくれ」

 

 一旦色々と考えておきたい。これからのこともそうだし、あの《白》の事も。《魔眼》の事もどうにかしなきゃとは思うし、それにはきっと仲間もいる。

 

 けれど信頼ができる相手じゃないと厳しい。

 

 そんなやつはいねぇけど…………最悪、俺とゴーストの二人でどうにかしなきゃいけないかも……な。

 

 

 

 

 

 だってアイツ…………あの《瞬間移動》を使ってたよな。元々使ってなかった、あの能力を。

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