9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「あ、あぁ……。軽くだけど」
「そうかそうか! 君はハルーシュの素晴らしさがわかるのだなっ!」
心の底から嬉しそうに目を輝かせ、少し興奮気味にバンバンと俺の両手を叩く。そんな圧倒的な圧に流されることしか出来ない。
「あ、いや……数話見たことがあるくらいで…………」
「なんとっ!? いや、いいんだ、それぞれ事情があるだろうからな、仕方がない。だがっ! 数話見たということは続きが気になるほど面白かったということだろう!? どうだろうっ! いい機会だ、これから二人で続きを見ようではないかっ!」
長ぇよ! 興奮しすぎだよ! 勝手に納得すんなよ!
いやアンタが言ってることは別に間違っちゃいねぇよ、確かに続きは気になったけど……まぁ……うん。
「まぁ落ち着けよ、ここじゃアレだ。せめてガッコーには行こうぜ」
赤髪の男の両手を掴んで優しく戻す。多分根は良い奴なんだと思う、わざわざパンを譲ってくれたし、ただ…………この性格というか、独特すぎる雰囲気のせいで大分損しているよな。
「おっと済まない。私としたことがやや興奮してしまっていたようだ。非礼を詫びよう」
「気にすんな、ちょっと金払ってくっからとりあえず待っててくれ」
……うん。やっぱり普通に根はいい奴だよな。
少なくとも俺なんかよりは…………なんとも言えない気持ちになる……けど。
そんなこんなで会計を済ませ、ひょんなことから出会ってしまったこの男と並んで学園へと向かう。
ただ……多分だけど年下か年上だよな。こんな独特な同級生は多分いなかっただろうから。同学年だけでも三百人程度の人数がいるからハッキリとは覚えてないけど……多分いなかったと思う。
「そういやまだ名乗ってなかったな、蓮太、『竹内 蓮太』だ。よろしくな」
俺がこうして見ず知らずの人と普通に話すようになるとはなぁ……本当、何度も思うけどしみじみとするわ。
「ほう、奇遇だな。私も『蓮』の名があるんだ。私の名はそう! 蓮夜。『高峰 蓮夜』。よろしく頼む」
「あ、あぁー……そうか。よろしく」
慣れねぇ……この感じに。なんかあれだな、希亜と相性良さそうな奴だよな、コイツ。
学園同じだったら友達になってたりしたのかな? わかんねぇけど。
「ちなみに……、竹内蓮太、君は他に好きなアニメなどはあるのか?」
「あー、そうだな…………。それなりに色々と見てきたけど、パッと思いつくのは『カン節マン』とか『北斗の拳士』とか? どっちかっつーと俺はゲームの方を結構やってたからな。それこそ『ドラファン』とか」
「王道の道を往く……か。うむ、悪くない」
「だろ? 特にカン節バスターとカン節ドライバーの合体技、ジョイントドッキングはかっこよさの極みだな」
「わかる、わかるぞ! 主人公であるカン節マンの二大必殺技のドッキング! 男ならば燃えないはずはない!」
「わかるか!? 二代目カン節マングレートとのあの合体技! 5次元殺法コンビに食らわせたあの瞬間! たまらなかったぁ〜! それでな────」
なんて二人してアニメやゲームの話ですっげぇ盛り上がりながら学園に登校した。
つい夢中になって色々と話していたが、俺って意外とコミュニケーション力があるんだな〜と不意に思ったんだ。だって、初対面でこんな感じで仲良く話せるって結構凄くね!?
まぁたまたま趣味が似てて、相手が普通に良い奴ってのはあったけど……なんかおかしいくらいに話が噛み合ったんだよなぁ。
いやほんっとに思う。あの俺がこんなに人と喋るなんて思いもしなかった。まさかここまで変化があるとはな……、ビックリだ。
そう、ただこんな自分にびっくりしてただけだったんだ。この時は…………
一限終了〜
「んん〜……!」
やっとこさ面倒な授業が終わった、この数分間の休みの一時がなかったら俺多分死んじゃう────
「竹内蓮太っ! 探したぞっ!!」
「うわっほいっ!?!?」
授業終了後、直ぐに俺のクラスに高峰がやってきた。嘘だろ? 十分くらいしかないんだぞ? 休憩。
「さぁ! 私と共に思う存分語り合おうではないかっ!!」
「十分で何を語るんだよ!? せめて時間がもっとある時に来いよ!?」
なんて会話を済ませて、なんとか説得して高峰を帰らせる。
二限終了〜
「かぁ〜……」
終わった終わった、面倒な授業が二つ終わった〜。ちょっと喉が乾いたし、適当に自販機にでも行って────
「竹内蓮太っ! 今回は少し授業が早く終わったから来たぞ! さぁ、私と共に思う存分────」
「十分しかねぇのは変わんねぇだろうがっ! ちったぁ学べよっ!!」
とツッコミをした後に、なんとか説得して高峰を帰らせる。
三限終了〜
「さーて、次の準備をするか」
流石の俺もそろそろ警戒する。きっと俺には気の抜ける瞬間は来ないであろう。うん。そしてアイツは来るだろう。
なんて考えていると、案の定教室の扉が開き────
「竹内────」
「帰れっ!」
バンっと開いた瞬間に扉を閉める。つかコイツメンタル強すぎだろ! 俺以外に友達いねぇのかよ!?
ガタガタと外から開きそうな扉を必死に抑えて力を込める。
「なんだ、恥ずかしいのか? なぁに気にする事はない! 私たちは既に、親友ではないかっ!」
「待て待て待て待て……! 何時から俺たちは親友になったんだよ……! つか力強えよ! 離せよ! 帰れよ!」
プルプルと俺の腕と扉が震えている。どうやら扉の向こうからアイツも何とかして開けようとしているようだ。
そんな時だった、俺の後ろから誰かが声をかけてきたのは。
「あの……竹内くん? 今、お取り込み中……?」
「その声…………! 九條さんか……! 悪ぃ、今戦闘中ぅぅぅ…………!!」
「あ、あの……扉が、壊れちゃうんじゃ……」
「壊れてんのはアイツの頭だろ……っ!」
あはは……と、どう答えたらいいかわからないのか、苦笑いで場を誤魔化す九條さん。
「あぁ……そうだ! 昼! 昼なら話し相手になってやっから! だからせめてまともな時間に来てくれ! な!? 高峰!」
「昼! 昼か! 任せておけっ! 今からが楽しみだっ! フーハッハッハッハッ!!!!」
こんなに執着が半端ない割にはすぐ引くな!?
もうお前わからん!
高笑いが廊下に響きわたりながら遠ざかっていく。あーあ。きっと周りの学生たちからは奇異の目を向けられているんだろうな……。
「はぁー…………。疲れた……」
なんでこの十分間の休憩でこんなに疲れにゃあいかんのだ。これもしかしてこれから毎日こんなことにはならないよな? それだけはマジで勘弁なんだけど。
「と、とりあえず…………お疲れ様?」
隣にいる九條さんも、きっと俺に用事があってわざわざ声をかけてきたんだろう。アイツのせいで無駄に体力を使ったけれど、一応聞いておかなければ。
「あぁ……待たせて悪い。それで何か用?」
「あ、えっとね! 今日の放課────」
キーンコーン────
九條さんが何かを言いかけている途中で、タイミング悪く次の授業の予鈴が鳴る。
あのバカとのやり取りで時間を使いすぎたな……、ごめん九條さん。
「チャ、チャイムが鳴っちゃった……」
「タイミング悪かったな、悪い! 次の休憩の時でいいか?」
「うん、私の方こそごめんね?」
「いや、謝るべきは俺の方だ…………はぁ……ほんとに疲れた……」
結局ろくに休むことも出来ずに、次の授業に突入してしまう。
流石に立て続けにこんなことをしていたせいで眠気が半端なかった俺は、ダメだと思いつつもこの授業ではウトウトとしていて全然内容を聞くことが出来なかった。
色んな意味でこんなことをしている場合じゃないのに…………
とりあえずは次の休み時間は九條さんの所へいかないと…………な。