9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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デート…………?

 

「はーい、授業終わりー、お疲れさまー」

 

 なるせんせーのやる気のない気の抜けた声で、午前中の最後の授業が終わりを告げる。

 

 どうやらなんとかやり切ったようだ。ま、ほとんど頭の中に入ってないけど。

 

 一日ぐらいいいだろう、どうせ明日の授業の時に復習から入るし。とりあえずはまず九條さんだ。さっきは迷惑かけちまったし(俺のせいじゃないけど)今度は俺から声をかけるか。

 

 机の上を片付けて、パンを手にして既に視界内に入っている九條さんに向かって歩いていく。

 

「ちゃろーっす」

 

「ちゃ、ちゃろー?」

 

 少し困惑した表情で戸惑いを見せる九條さん。あ、あれ? 「ちゃろー」って最近の流行なんじゃないの? 「チャオ」と「ハロー」を合わせた今どきの挨拶だと思ってた……

 

「あ、いや……忘れてくれ。そ……それで! さっき言いかけてた用事って何なんだ?」

 

「さっき…………あっ! さっきはね、えーと……竹内くんって今日の放課後空いてる……かな?」

 

「ん? 別に空いてるけど」

 

 珍しいな、九條さんの方から俺に………………って俺たちが話す時って基本的に向こうから声をかけてくれてたよな。

 

 それは……しゃあない………………か? 

 

「本当? よかったっ」

 

 ぱぁっと明るい笑顔で両手の指先を合わせて喜びを見せられる。こんなに無邪気に喜ぶような人だったんだな、この人。

 

 まだまだ知らねぇことばっかりだ。

 

「それじゃあ一緒に帰らない? ちょっとだけお話したいこともあるから」

 

「あぁ、別にいいよ」

 

 しかも用事はまさかまさかの下校の約束だった。さっきからこの話を聞かれているクラスの男どもからの痛い視線を感じる。

 

 まぁ別に気になりはしないが。

 

「あ、でも、俺ちょっと晩飯の材料を買わな────」

 

「竹内蓮太っ! 遂にやってきたぞ! 我らが結託するこの日がっ!!」

 

「きゃいけないから、それも一緒でいいか…………?」

 

 ああそうだった。この昼食の時間はアイツが来るんだった。秒速で忘れてたわ。

 

「あはは…………、だ、大丈夫だよ。私もお手伝いするから」

 

「サンキュ……じゃ、行ってくるわ」

 

「い、いってらっしゃい? で……いいのかな?」

 

 苦笑いを浮かべる九條さんに軽く手を振り、ハツラツとしたテンションの高い高峰と合流して、一応約束通りに一緒に昼食を摂った。

 

 色々と話をしていたが、結局のところ分かったのは重度の厨二病と言うことと、友達が誰一人いないとのこと。「友人と共に昼食を摂る事」が彼の夢の一つだったらしい。

 

 ……俺も人のことは言えないけどさ、こいつどんだけ可哀想なんだよ。

 

 同情の気持ちもあり、これからも仲良くはなり続けた方がいいかな? と思う蓮太であった────────ちゃんちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、時は変わり放課後、予定通りに九條さんと校門前で待ち合わせをして、自転車を取ってきた彼女と並んで帰路に着く。

 

「それで、何を買うの?」

 

「そうだな……何も考えてはなかったんだよなぁ」

 

 食いたいものとか直ぐに思いつくだろ、なーんて考えていたから何も計画を立てていない。しかも案の定何も思いついてもいない。

 

「ま、駅前のスーパーに行けば何かあるだろ、そこで考えようかな」

 

「あ〜、あのお店は安くて新鮮だもんね」

 

「九條さんって料理とかするのか?」

 

「うん、お料理は大好きだよ」

 

 こりゃまた意外だな。コロナのお嬢様なんだからそういう系は全部任せてるのかと思ってた。

 

「へぇ〜、俺も結構好きなんだ。毎日毎日してるって訳じゃないけど……できるだけ自分で作りたいくらいにはさ」

 

「竹内くんの方が意外だよ、それじゃあいつもコンビニとかじゃないんだ?」

 

「どうしても都合で偏ることはあるけどね、コンビニで済ませるくらいならナインボールに行ってる」

 

「あ、そういえば……毎日じゃないけど、沢山来てくれてたね」

 

「お気に入りの店だからさ」

 

 事実嘘じゃない。あんなに安くて美味しいパフェが食べれるなんてそうそうないぞ? 家からは歩いて行くとなればちょっと遠いけど、それを差し引いても通いつめたくなる美味さだ。

 

「ふふっ、ありがとうございますっ」

 

 

 

 そんな会話をしながら歩いていると、目的のスーパーへとたどり着く。そのまま入店して二人で様々な所へ歩き回るが…………なかなかいいのが決まらない。

 

「う〜ん、魚……の気分じゃないな」

 

「それに、ちょっとだけ値段も…………ね?」

 

 確かに、この辺の魚たちは少々値段がお高い。

 

 それに魚って割と面倒だからな……

 

 うーんと頭を悩ませていると、いつの間にか少し離れた場所へ移動していた九條さんが、何かのパックを持ってトコトコとこちらにやってきた。

 

 なんか……小動物みたいだな。

 

「竹内くーんっ。このひき肉安かったよ」

 

 そんな九條さんが持っていたのは牛ひき肉のパックだった。値段を確認してみると、確かに通常の価格の三分の二程度の金額になっている。

 

「へぇ……なんでこんなに安いんだろ」

 

「今日は『お肉の日』なんだって! 理由はわからないけど……」

 

 ……まぁどんな理由であれ、セールで安くなってるのなら使わない手はない……か。

 

「そっか、ありがとう。じゃこれにするわ」

 

「ふふっ、ちなみに私のオススメはハンバーグです」

 

「わーったわーった。それじゃ、ハンバーグの材料集めてくか」

 

 

 と、なんだかんだで晩飯はハンバーグに決定しましたとさ。

 

 いやそれはいいんだけど……なんかあれだな、これデートを通り越してカップルか夫婦みたいだな。

 

 俺はやっぱり男だしこういうのは嬉しいけど……こんなのがクラスメイトにバレたら後ろから刺されそうだ。

 

 て言うか…………結局九條さんの話ってなんなんだろ?

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