9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

68 / 185
癒しの時間

 

 夕食を済ませ、風呂も入り掃除も終わらせる。軽く部屋も掃除もついでにやってしまって、後はもう寝てしまうだけ。

 

 今日という一日の中で一番気を抜けるこの瞬間になると、疲れが溜まっていることもあり、眠くもなるし、休みたくなる。

 

 といいますか……思う存分休んでいるんですけど。

 

「ったく…………なんでオレがこんな事を……」

 

 耳の中をゴソゴソと掻き回すように竹の耳かきが優しく暴れ回る。最高に気持ちがいい……

 

 耳かきってこんなに気持ちよかったのか……

 

「別に強制はしてないだろー……嫌なら止めてもいいってぇー……」

 

「んだよ、その気の抜けた声は」

 

「そりゃ気も抜けるわぁ……」

 

 はい、そうです。

 

 俺は今ゴーストに耳掃除をしてもらっています。いつもは綿棒をぶち込んでクルクルしてるだけなんですけど、ネットでASMRと言うものを見つけまして。

 

 俺ならこれを買わなくても何時でもしてもらえるじゃんと思った次第です。

 

 流石に……耳舐めは頼めませんでした。自分からお願いするのはなんか、こう……気持ち悪く感じて。

 

「それで、希亜には全部伝えてよかったのか?」

 

「う〜ん〜……太もも柔らかくて頭安定〜……」

 

「話聞けよ」

 

 スパァンっ! と頭を叩かれる。

 

 …………そこそこ痛かった。

 

「痛って……」

 

「ある程度の事情を知っているとはいえ、希亜もオレを警戒していたんだ、実際にオレたちが契約する場面を見てない以上はまずいんじゃねぇの?」

 

「仮に俺を疑っていたとしても、わざわざゴーストの力を貰った事実を言った時点で俺とお前への疑心は無くなるだろ。バカ正直に全部伝えてるんだから」

 

 騙すことが目的ならそもそも片鱗すらも見せない方が絶対に得だ。情報の共有って言うのが一番の信頼の証になってるだろうし、俺がそのつもりだ。

 

「随分と信用してるんだな、希亜と九條を」

 

 あ、結局「さん」は付けないんだね。

 

「あぁ」

 

「アンタにしちゃ、随分と珍しいな……っと」

 

 耳の中を何度もゴソゴソとしていた手をゴーストは止める。

 

「自分から信じないとな、仲間は俺にもちゃんといるって気がつけええぇぇぇぇ〜〜〜〜ッ!?」

 

 耳元に感じる優しい風。妙な温かさが若干残っている温風。

 

 それが耳に直にぶち当たると、気持ちが良くて身体が少し震えてしまう。

 

「ふ──ー…………」

 

「はぁぁぁ〜〜ん…………」

 

「うっせぇな、気持ちわりぃ声出すなよ」

 

「お前がいきなり息を吹きかけてきたんだろうがっ!? なんなんだよいきなり!?」

 

 なんかクレパスしんちゃんの友達みたいな感じになっちまったわ! 

 

 気持ちよすぎだろっ!! 

 

 …………

 

 ゴーストのブーレス気持っちよすぎだっろっ! ブーレス気持ーちよすぎだろ! (例のリズム)

 

「最後の仕上げだ、ほら、動くな」

 

「いやお前動くなつったって────」

 

「ふぅ────…………」

 

「はぁん……」

 

 だ、ダメだ! 俺は耳が弱いらしい! こんなの耐えれな……

 

「気持ちよかったか? 大将」

 

「お前天才……マジ好きやわ……」

 

 こんなの逆に癖になる……。さすが俺の分身だ、俺の知らない弱点まで知ってるとは。

 

「おーい、大将。逆向け逆。反対側もすっから」

 

「ん〜…………」

 

 クルっとその場で身体ごと回転させて、ゴーストの方へと顔を向ける。

 

 太もも気持ちいぃ〜…………

 

「テメっ……!? はぁ……もういいや」

 

 ダメだな、こんなに真面目(?)な従者がいると完全にだらけてしまう。

 

「誰が従者だバカ」

 

 しかもこいつ、別に不器用って訳じゃないし、察しもいいし、意外と気も利くし…………最高ッスわ。

 

「無視かよ」

 

 なんだかんだ文句を言いながら、ゴーストもゴリゴリと耳の中に耳かきをぶち込む。

 

 毎日して欲しいなぁ…………

 

「つかよ、大将。九條には何も説明しないのか? 《魔眼》の能力者のヒントについて」

 

「んー。向こうのチームは何よりも最優先で《魔眼》を探してる。下手にヒントを掴むと無茶しかねないだろ? 《魔眼》所持者はかなり危険なんだ、あくまで俺たちが相手をしなくちゃいけない」

 

「……負けるつもりはねぇけどよ、正直な話、向こうの奴らとも協力した方がいいんじゃねぇの?」

 

 そうは言ってもねぇ。新海は能力不明……というかユーザーでありながら無能力者だし、九條さんは戦闘向きじゃない。

 

「でも結局、その……なんだっけ? 《アンブロシア》? がなけりゃオレたちもどうしようもねぇじゃん」

 

「あの人形もアイツらに協力してるみてぇだし、結局はどこかのタイミングで頼んなきゃいけねぇんじゃねぇの?」

 

「まぁ…………そうだけど」

 

 言われてみりゃそうだな。《魔眼》のユーザーを見つけたとしても、《アンブロシア》がなけりゃ手の打ちようがない。

 

 ゴーストの時は特別だっただけで……

 

「大将があの、《イーリス》って奴に狙われてるからこその危険性はオレにも分かるよ。でも、そうも言ってられねぇんじゃね?」

 

「うーん…………希亜の意見も聞いてみないとな、あんまり俺が勝手な行動ばっかしてたらまた怒らせちまう」

 

 ついさっき怒らせたばっかりだからな……

 

「……大将もすっかり希亜の仲間なんだな。最初はあんなに否定してたのに、さっきは()()()って言ってたぜ?」

 

「悪くないって思ったんだよ。確かに、裏切られるのは怖いけど…………ビビってたらいつまで経っても変われない。俺も九條さんを見習わなきゃって思ったんだ」

 

 俺も真っ直ぐに生きるために。過去は変わらない。塗り替えられない。けれど未来は変えられる。

 

 次、あんなことを経験してしまったら、俺は立ち直れないかもだけど…………

 

 なんて思っていたらデコをペチンっと叩かれた。痛いけど…………暖かい。

 

「余計な事を考えるなよ、オレたちはずっと一緒なんだろ?」

 

 

 

 

 

「あぁ」

 

新海 翔の恋人は?

  • 九條 都
  • 新海 天
  • 香坂 春風
  • 結城 希亜
  • ぼっち
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。