9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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思いついた短編を書いてみました。本編には何も関係ありません。

まだ読んでくれてる人いるのかな……?



日常編 都√
料理は愛情?純情?根性?


 

 ある日の午前中、まぁ大体10時頃の事。

 

 俺の家の中に少しゲンナリした様子の翔が、死にそうな目で俺の差し出したお茶を眺めながら心苦しそうに愚痴をこぼしに来ていた。

 

「なぁ蓮太……卵かけご飯って美味しいよな」

 

「いや朝から行きなり何言ってんの?」

 

「頼むから答えてくれ、卵かけご飯って美味しいよな?」

 

「え、あ、うん。美味しいと思うよ。たまに食べたくなるよな」

 

 少しかすれた翔の声を聞きながら、自分の分の茶を飲みとりあえず話を聞くことにした俺。

 

 ……本当に何やってんだよ。

 

「そう、たまになら美味しいんだよアレは。普段は色んなものを食べて、口寂しくなってきた頃に食べるのが最高なんだよ、卵かけご飯は」

 

「最近な、天のやつがずっと俺ん家にいるからさ、ジャンケンの結果でメシ当番を決めることになったんだけどさ。もう何日も卵かけご飯なの。来る日も来る日も、ず────っと卵かけご飯」

 

 ……そういえば天ちゃんは料理の経験がないって言ってたっけ。

 

 なるほど……俺達には縁遠い話だ。

 

「もうさ、3日目くらいから“卵かけご飯”じゃなくて“卵かけられご飯”って気分になってさ、今は“卵かけないでご飯”って感じなんだよ」

 

「卵かけないでご飯ってなんだよ……」

 

「たまには他の飯もって言ってるんだけどアイツの頭ファミコンだからさ、もう1回セーブしても、ふとした拍子にセーブデータが消えてんの。スーパーデラックスのセーブデータになってんの」

 

「それファミコンじゃねぇじゃん」

 

「文句は言うけどさ、出された飯は食わないとダメだろ? だから律儀に食べてるんだけどさ、もうそろそろ我慢の限界なんだよ。俺ヤバいよ、卵の食べすぎて肌が黄色くなるよ」

 

「そら……ご愁傷さまだな」

 

 いつも兄妹で仲良く喧嘩してるあの翔がここまでナイーブになるとは……よっぽど心にきてるらしいな。

 

 兄妹付き合ってるとはいえ、喧嘩のスタイルは普段と余り変わらないだろうし、普段の翔なら棘のある言葉でバンバン言い返すところなんだろうが……それをする余裕すら無くなってるのか……

 

「そこでさ、マジでお願いがあるんだけどさ。蓮太と九條は料理できるだろ? 頼むからアイツに少しでいいから教えてやってくれ!」

 

 勢いでその場に土下座まで披露する翔、その姿は本当に真剣そのもので、なんならAFユーザー探しよりも本気なのではないだろうかと思うほどの迫力だった。

 

 よっぽど嫌なんだな、卵かけご飯。

 

「俺はいいけど……それって天ちゃん本人のやる気次第だと思うんだけど……」

 

「それは俺から言って何とかするから、頼む!」

 

 ……まぁ確かに翔が一言お願いすれば頑張りそうな気もするけども。

 

 というか代わりに作ってくれとは言わないんだな。あくまで、天ちゃんが作った物……か。

 

「まぁ……わかったよ。とりあえず都に相談してみる。なんかこのまま放置してても死にそうだし……」

 

「ありがとう! 恩に着る!」

 

 ここまで泣き出しそうになっている翔の煌びやかな笑顔を見たのは初めてだ。

 

 キャラ崩壊してるよな……これも卵かけご飯の呪い……か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは……確かに卵かけご飯ばっかりだと辛くなっちゃうかもね。体にも悪そうだし……」

 

 次の日、例の新海兄妹の相談を都に話してみた。

 

 都は快く天ちゃんに料理を教えることを了承してはくれたが、事の経緯を聞いて2人の体の心配をしている様子でもあった。

 

「栄養バランス的にもキツイ……か。俺は単純にやる気がなくて簡単に作れる卵かけご飯にしているだけだと思うけど」

 

「さすがにそれは無い……と思うけど、それでも偏ったご飯ばっかりだとダメじゃないかな。お肉もお野菜も沢山食べないと」

 

「確かにそれもそうか。卵かけご飯だけとか経験したことないからなぁ……他のも必須にはなるか、卵焼きとかだし巻き卵とか」

 

「結局卵だけになっちゃってるよ!?」

 

 なんて雑談をしながら天ちゃんにオススメできる作りやすくて簡単な料理を考えてみるけど……簡単すぎても面白くないと思うからなぁ

 

 煮物なんて比較的簡単だけど、あれって料理した感は全然ないから、どうなんだろ。

 

「唐揚げなんてどうかな?」

 

 何の料理をするかの話をしていたら、都がそんな提案をしてくれた。

 

「唐揚げか、うん。いいかも。翔が嫌いなタイプじゃないし、しっかりと料理した感じも出るし……なにより天ちゃん本人も好きそうだし」

 

「あの二人って料理の好みがそっくりだもんね」

 

「2人揃ってナポリタン食ってたりしてたもんな。でも揚げ物だけって大丈夫かな、教えた途端に唐揚げばっかり作り出したりしないのかな」

 

「天ちゃんはそんな事しな…………しな……し…………うーん……」

 

 そこは悩んであげるなよ都さん。ちょっとやりそうだなって思った心が全然隠せてないよ。純粋だよ。

 

「その時は第2回を開くことにしなきゃね」

 

「今度は翔が油アレルギーになるかもだしな」

 

「ふふっ、それは大変っ」

 

 すっかりデートみたいな気分になりながらも、唐揚げに必要な材料をスーパーで買い漁り、2人揃って翔の部屋へ行くことにした。

 

 予定通り天ちゃんも既にいる様子だったし、都も割とノリノリだったからきっと楽しくお料理教室が開かれることになるだろう。

 

 ……というか俺よりも都の方が上手いし美味いんだよな。

 

 俺いるのかな。

 

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