9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

74 / 185
自由奔放にも困ったもんだ

 

「猫……様…………」

 

 自由気ままなこの子猫は、どうやら隣の女の子のことなんかどうでもいいらしい。なんとも酷いやつだ。

 

 ほら見ろよ、この今にも泣き出しそうな希亜の顔を。いくらなんでも可哀想だぜ。

 

「俺みたいな男の膝よりも希亜の膝の方がきっと気持ちいいぞー……」

 

 なんて誤魔化しながら、もう一度子猫を抱き上げて再度、隣の女の子の膝の上にちょこんと乗せるが…………

 

 有無を言わさずにすぐさま俺の膝上に戻ってくる。

 

「うぅ…………」

 

 寂しそうな声が聞こえてきた。やめてくれ、そんな声を漏らさないでくれ。なんか泣きそうになる。

 

 もう俺は顔を覗き見ることすら出来ない。

 

「…………」

 

 今度は無言でスっと子猫を移動させる。するとまた俺の膝上に戻ってくる。

 

 そしたら負けじと俺もムキになり、何度も何度も移動させ、子猫は何度も何度も反復横跳び。

 

 絶対にあの子の膝上にはいかんぞ! という子猫の強い意志を感じた。

 

「蓮太……それ以上の追撃は止めてほしい……」

 

「あ、そんなつもりじゃなかったんだが……」

 

 どうやら精神の限界が来てしまったようだ。

 

 まぁ……ここまであからさまに避けられたら誰でも心にくるものがあるだろう。

 

「つかなんで俺ばっかり……」

 

 なんてボヤいていると、何かを見つけたのか、子猫は俺の膝上からもぴょんっと飛び降りて、全速力で茂みの方へと走っていった。

 

 アイツへんな爆弾だけ残して去りやがった。

 

「ねこ…………」

 

「き、今日はたまたま虫の居所が悪かっただけさ……また日をあらためりゃ触れるって」

 

 なんでこんなフォローしなきゃいけないんだよ。いや、ちょっと可哀想って思ったのは事実だけどさ。てかあの猫のせいだろ、もう二度と来んなよ。

 

 煽るだけならマジで来ないでほしいッス。

 

「蓮太と私の違いは…………一体何……?」

 

「え……? あー…………」

 

 それはつまりなんであんなに俺に偏る形で猫が寄ってきたのか、って事だよな? 

 

 別に変なことはしてないし、変わったこともない。今はお互いに似たような制服を着ているし、持っているものも別に…………

 

「匂いじゃね?」

 

 それくらいしか思いつかなかった。つか本心じゃあ匂いでもないような気がする。

 

「貴方、デリカシーに欠けているわね。友人がいない理由も納得がいく」

 

「……いや、悪かったよ。確かに女の子に向かって言う台詞じゃなかったな、謝る」

 

 ……一つだけツッコミを入れたい気持ちを物凄く抑えて、頑張って言葉を飲み込む。

 

 ていうか心の中ではもう言ってしまっていた。希亜は友達いるのかよっと。

 

「でも……全くの無関係では、ないかも……?」

 

「いや関係無いと思うぞ? あんなの猫の気分だろ」

 

「………………」

 

 と俺との会話をそっちのけで何か考え事をする希亜。

 

 ちょ、待って。全然本題に入れないんだけど。アーティファクトの能力について色々と話をしたいのに全く触れられないんですけど。

 

 それに不気味なユーザーを見かけたりもしたからその報告もしたいんだけど。

 

 やっぱあの猫のせいだ! アイツが残ってたから俺たちの目的が一向に済ませられないんだ! 

 

 クソっ! 絶対撫でてやんねぇ! 次顔出したら舌出して馬鹿にしてやる! 

 

 

「明日は……………………」

 

 

 なんか横でブツブツ言ってるけど、もう知らんからな! 絶対あの猫たちは撫でてやんねぇ! 

 

 大方、また俺に誘き寄せてもらおうって魂胆だろうけどな! そんなもん知るか! 

 

「なぁ、希亜。それで例の件なんだが────」

 

 一応聞かれたらまずいようなワードは避けておかないとな。前のようにどこでもここでも《能力》とか《ユーザー》とか言ってたらダメな気がするから。

 

「えぇ、わかっている。今私が何をすべきかも、その手段も」

 

「え?」

 

 え? ん? ……あ、いや確かに事前の連絡でこういう話をしようって伝えてはいるが……どういうこと? 手段? 

 

 ま、まぁ、なんか話を上手く持っていけそうだし、それはそれでいいか。

 

「ならよかった、それで────」

 

「蓮太の家に行きましょう」

 

「そうそう、蓮太の家に──────はぁっ!?」

 

 んでだよ!? 全然意味わかんねぇ!? なんで俺の家にわざわざ移動しなくちゃ…………

 

 あ、いや、そうか。外だと能力の話をしづらいからか。わざわざ言葉を伏せて話すのも余計な誤解を生む可能性があるし、何よりも面倒だ。

 

 それに希亜とは初めて会った時は駅前だった。もしかしたら電車通学でここからだと時間がかかるのかもしれないし…………男を部屋に上げるのには抵抗があるだろう。

 

 となると……最適解は俺の家になるのか。

 

 よかった、ちゃんと今回俺たちが待ち合わせした目的をしっかりと覚えててくれた。

 

「じゃあとりあえず移動するか、こっからならそこそこ近いし」

 

 とそんなこんなで重い腰を上げて、歩いて移動することにした。

 

 二人で道を歩きながら、ふと今のこの状況を思う。なんかアーティファクトがばらまかれてからは俺の生活って大きく変わったなぁ……と。

 

 連日で俺の家には客人が来るようになったし、友達も仲間もできた。

 

 そしてなにより。

 

 俺が人を信じるようになった。

 

 もちろんそれは自覚できるような事じゃないのは分かってる。でも、全く他人を気にもしてなかったのに、ここまで変わるとは思わなかった。

 

 地震が起きてから今日で6日。たった6日で人生は大きく変わる。

 

 世界は見方一つでどこまでも明るくなる。

 

 もっともっと明るくする為に、戦わなくちゃいけない。《魔眼》と、《イーリス》と。

 

 もう二度と、失わない為に。

新海 翔の恋人は?

  • 九條 都
  • 新海 天
  • 香坂 春風
  • 結城 希亜
  • ぼっち
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。