9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
むちゅまじい
それは突然だった。
いきなり、知らない人からRINGでメッセージが送られてきたのだ。
いや、厳密には知ってはいるんだが、連絡先は初めて知った。
「つかどうやってIDを手に入れたんだ?」
そんなことを思いながらも、改めて送られてきた文章を読む。
『どもども〜! 竹内先輩の連絡先で合ってますよね? 都合が良ければ、本日お会いしたいんですけど〜? どっすか?』
……意外とこういうタイプなのね、天ちゃん。
そう、このメッセージを送ってきた相手とは、新海の妹さん。
『別に今日は予定もないし、俺は構わないけど、どしたの』
『じゃあ駅で待ち合わせでお願いしまーす!』
と俺の質問はガン無視された形で、結構一方的に待ち合わせの約束をされた。
別にいいけどさ…………新海も大変そうだな…………
蓮太移動中……
「それで何の用なんだ?」
今日は休日、だからか駅付近のこの辺りにはかなりの人だかりがあった。
ちょっと目を離せば直ぐに見失ってしまいそうだ。
「んー、ここでは人が多くてちょっと話しづらい事なんですけど…………あっ、そうだ! ナインボール行きましょ! ナインボール」
「いやあそこも人が多いと思うぞ? 今昼前だし」
「じゃ、みゃーこ先輩を観察しに行きましょ!」
「どういうことだよ……」
と突然謎に距離が縮まった元気な天ちゃんに振り回され、結局ナインボールへと行くことになった。
趣味……というか好きなジャンルの物が似ていたからだろうか? 色々と話していくにつれて歯車ががっちしと合い、知り合って間もないとは思えないほどの変化だ。
そして店にたどり着き、元気いっぱいに天ちゃんがドアを開ける。
「こんちわーッ!」
「友達ん家か」
まるで我がもの顔で堂々と店に入り込むその姿は、天真爛漫としか例えようがない。
しかしそれよりも驚いたのは…………
「あ、おかえりなさい」
と普通に答えている九條さんがいた。ちなみにその前には新海もいる。
つまりは『店員』としてではなく、『客』として来ているのだ。その証拠に普通に私服を身にまとっており、より大きい胸が強調されている。
いやそうじゃなくて!
「はぁ…………」
思わずため息が出る。何か用があるのなら素直に言えばいいのに……
天ちゃんの演技の下手くそさにガックリとくる。
だってここに連れてこようとした時の言葉を考えると辻褄が合わない。明らかに俺に何かを隠しているのは明白だ。
「あたしにぃにの横〜」
そんな俺の心情とは反対に、元気いっぱいな女の子はそそくさと予め座っていたのであろう席に戻って行った。
となると俺が座るべきは…………
「おはよーさん」
挨拶をしながら残りの席に座る。4人用のテーブル席だから、俺の隣はもちろん九條さん。
お互いにとりあえず挨拶を済ませて、飲み物とかを注文。それから本題に入ろうとすると────
「ほら! どっすか!」
と新海と九條さんに向かって、天ちゃんが何かを確認させるように言葉を発した。
「あのな……天、お前が竹内と鉢合わせた時を確認しないとなんとも言えないだろ」
と意味深なセリフ。あぁ……なるほどね。
「存在感は普通にあったぞ」
「……バレてる?」
「そりゃバレるだろ」
明らかに《能力》での効果を確認してる。俺の予想通りの自身の存在感操作という能力を使った効果の幅をな。
「ごめんなさい竹内くん。こんな試すような事をしちゃって……」
「や、いいんだ。それなりの理由があったんだろ? だから別に気にしてねぇよ」
思え返せば、あの時の言葉もちょっと引っかかるしな。
「遊び人と俺には効果が薄い……とか言ってなかったっけ?」
「あー! あー! その話は無しにしましょうよ!!!」
俺が何食わぬ顔で、あの時の名称で新海のことを呼ぶと、天ちゃんは聞かれたらまずいことのように大慌てで両手をバタバタと前に差し出した。
その慌てようから何かを察したのだろう。新海が面倒くさそうに天ちゃんのことを見ている。
「おい天、お前どういうことだよ。なんだよ遊び人って」
「気のせいだよ、気・の・せ・い♪ あたしがにぃにのことバカにするわけないじゃん!」
「誰もバカにされたなんて言ってねぇぞ」
「んが…………。あぁー! もういいじゃん! 能力が扱えないにぃになんて下級職で上等でしょ!」
「んだとコラ! 微妙に影が薄くなるなんて地味〜な能力の方が下級職だろうが!」
いやツッコむとこそこじゃねぇだろ。てか声でけぇよ。
「あ〜ん? やんのかこらぁ〜!」
「上等だこらぁ〜!」
となんとも今にも乱闘が起きるかのごとく、兄妹間でバチバチに火花が散る。
どうやら仲がかなりいいみたいだ。
「あの喧嘩放置してていいのか?」
「ふふっ、大丈夫だよ。二人ともすっごく仲良しなの」
「でもまぁ…………凄いな、こんだけ騒いでいるのに店員が誰も注意しに来ない」
「本当はダメなんだけど…………能力を使っているから気がついていないだけじゃないかな?」
「結構効果高いんだな」
まだ色々と模索中なんだろうけど…………現段階でも十分強力だな、こりゃ。
まぁ…………問題があるとすれば天ちゃん自身か。
なんか色々と心配になる。
わちゃわちゃと喧嘩する二人を見ていると、何だか昔を思い出すな。ほんの少しだけ懐かしいし、羨ましい。
隣にいる九條さんもニコニコとその二人を見ながら微笑んでいた。
「なんか楽しそうだな」
「そうだよね。私は一人っ子だから、ああいうのいいな〜って思うの」
ちょっとわかる。
「ふふっ、仲むちゅまじいね〜」
聞き逃さなかったぞ…………今の言葉!
それを聞いた瞬間に、考えるよりも身体が反応してしまっていた。それは俺だけじゃなかったようで…………
「「え? 今噛みました?」」
と天ちゃんと俺の声が見事にダダかぶりして九條さんに降りかかる。
「…………」
「噛みましたよね?」
「噛んだよね?」
「仲…………睦まじい……」
「「むちゅまじい?」」
「ごめんなさい許して…………」
俺たちに責められた九條さんは、顔を真っ赤にして俯いたのだった。
……ちゃんちゃん。