9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「蓮太…………そう、
希亜の声が聞こえてくる。
「はぁ……! はぁ…………!」
躊躇いはあった。後悔もあった。だけどそれじゃあダメだと知った。それじゃあ何も解決しないんだ。誰も守れないんだ。
「貴様……」
「まぁ、立つよな」
殴られたあの電気男は頭を強くぶつけたのか、顔に血が垂れている。
「あまり調子に乗るなよ、貴様如き私の能力を使えば簡単にぶち殺せるんだからな」
「やってみろよ」
「なに?」
「俺を殺したいんだろ……?」
クソ…………思った以上に負担がデカイな……このペースだとあと2分も持てばいい方か。
「雑魚のお前じゃ無理だろうけどな、空にでも昇ってリンゴでも食ってろ」
「ヤハハ…………不届き」
立ち上がった男の腕から、能力を発動された雷が俺に襲いかかる。
が、その辺に散らばっている鏡の欠片を少し集めて、その雷を空の彼方へ反射させる。
そして電気男との一進一退の攻防。殴り、蹴り、殴られ蹴られの繰り返し。お互いにその攻撃はまともに当たってはおらずに、必要最低限の動きで衝撃を外へと逃がし続ける。
「ヤハ! アイツが貴様を恐れる理由がわかる。その驚異的な運動能力、アーティファクトをものともしない選ばれた力! なるほど、そりゃあ消したいわけだ!」
「……イーリスか」
「確かに貴様は強い! 怒りを糧にして更に力量を高める奴は初めてだ! だが……それだけでは私には勝てんぞ! 私は《雷》ッ! その恐ろしさをとくと味わうといい!!」
「……うぐっ!?」
お互いの肉弾戦の中、俺の攻撃を軽く弾かれた隙間に勢いの乗った蹴りをいれられる。
まずい…………綺麗にミゾに入ったッ!
「少々《雷》を甘く見たな……反射の能力者ッ!」
軽く後ろへ吹き飛ばされる俺の頭を鷲掴みにし、強く地面に叩きつけられる。
なんだコイツの異常なスピードは!? なんだコイツの異常なパワーは!?
頭が…………潰れる……ッ!
「雷を使った攻撃が効かんとなれば、それなりの戦い方がある」
「あがっ…………!」
「このまま…………死────ぶごぁッ!?!?」
何が起こったのか分からなかった。
あまりにも突然なことで理解するのに遅れたのだ。
「何をしている! 竹内蓮太ッ!」
「高…………峰……!」
あの男を殴り飛ばして助けてくれたのは、高峰だった。けれどアイツもあの雷攻撃をまともに食らっているからだろう、足元がフラフラで今にも倒れてしまいそうだ。
それにしても……よくあんな重い一撃をくりだせたものだ。
「まだ動けたのか……ゴミめ…………うごっ!?」
そして立ち上がろうとしていた電気男に、さらなる蹴りの追加攻撃を入れたのは新海だった。
「ハァ…………ハァ…………! なんとか…………動いたッ!」
「新海……!? お前まで────」
「九條に能力を使ってもらった……、人の記憶や視界を奪えるのなら、俺の痛覚も奪えるんじゃないかってな」
チラッと後ろを見ると、少し苦しそうに方目を瞑った九條さんが下手な作り笑いを浮かべていた。
「竹内蓮太っ! 君はあとどれ程戦える?」
「あァ…………!」
正直限界が近い。
この異常なまでの強大な力を操るには、まだまだ俺の実力じゃデカすぎる。
だけど…………ッ! もってくれよ、俺の身体ッ!
「1分でケリをつけるッ!」
その瞬間に雷に打たれたかのように、あの男の身体がビクンっと剃り浮かび、軽々とその場に立ち上がる。
「“
その身体には電気がバチバチと走り回っていた。
「脳からの信号ではなく、雷の能力で直接身体を動かすドーピングだ。気をつけろよ……今からの私はもう甘くはないぞ」
雷……? いや……、そういう事か。
「要するに電気マッサージってことかよ」
中々めんどくせぇ技持ってんじゃねぇか……この野郎。
意外と技が多彩だな。まさか身体強化までできるなんてよ。
…………認める。マジで強い。俺一人じゃ勝てなかったと思う。
「…………ごはっ!」
さっきの蹴りが今になって効いてきたのか、急に喉から鉄の味がする何かの液体がこみあがってきて、吐き出してしまう。
「竹内……やっぱりお前、体が……」
「うるせぇ……! 今倒れる訳にはいかねぇだろ! 新海もそれが理由で立ち上がったんじゃねぇのかよ!」
「…………わかった。今は聞かないでおく」
「しかし竹内蓮太よ。あの者をどうやって止めるのだ、君もそうだが……私も長くは持たないぞ」
「俺たちは一瞬でもいいから隙を作ればいい! アイツが反応できないタイミングで希亜の一撃を決める」
「希亜…………ふむ、あの黒服の彼女か」
あ、そうか……名前を言ってもコイツらには伝わらないんだったな。
「あぁ、アイツは初撃を弾かれてからはずっと力を溜めてもらってる。もう十分な威力を期待できる頃だ。それを当てれりゃあ勝機はある」
「なるほど、それは話が早い」
「だったら……やることは一つだな」
各々が攻撃の為の構えを取り、あの電気男に矛先を向ける。
俺たち男三人衆は正直どんな連携ができるかはわからない。それにみんなが体力の限界が近い。
けどそれは相手も同じはず。いくら強大な力を持った人間でも、数で攻めりゃあチャンスはくるはず!
「希亜ッ! 〆は頼んだッ!!」
「任せてッ!」
「ヤーハッハッハッ! 痺れる覚悟はできたかな?」
「行くぞお前らッ!」
「うむッ!」
「おうッ!」