9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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未知の敵、守れたものは

 

「真神流────」

 

 まず先陣切って飛び出した高峰が、何やら独特な構えを取り始める。

 

 正拳突きのように腰を下ろし、逆手に下ろした右腕を回転させ、突き上げるようにその掌底を振り上げる。

 

螺旋掌(らせんしょう)ッ!」

 

「ヤハハッ! 遅いッ!」

 

 その掌底が当たる刹那で、電気男は急ブレーキをするように後ろへバックステップ。…………が。

 

 それは読めている。

 

「そんな技に当たるとでも思ったかッ!? 私は身体だけでなく、ありとあらゆる速度も強化しているのだぞッ!」

 

「……ッ! 見誤ったか!?」

 

 そして電気男の雷が纏われた片手が高峰を襲おうとした時────

 

「そうでもないぜ?」

 

 俺は鏡の破片を経由して、後ろへ飛んでいる電気男の更に後ろへと回り込む。

 

「──ッ!?」

 

「身体強化はお前だけと思うなよ…………ッ!」

 

 俺たち3人とも本来なら動けないほどの疲労とダメージを受けているんだ。なのに今は考えられないほどの爆発的な力を使っている。

 

 新海が蹴り飛ばせたのも、高峰が技を使えたのも、俺が今も動けているのも、全てはあの人のおかげだッ! 

 

 俺の視線の奥、電気男の更に先にいる女の人。

 

 あの目は…………多分《エデン》の方だな。

 

 胸の辺りから紋章が光っている。

 

 能力の詳細は分からないが……まず間違いないだろう。

 

「貴様…………ッ!?」

 

「ほらよッ!」

 

 背中を向けて迫ってくる電気男に、全力で蹴りを入れる。すると飛ばされたその身体は再び高峰の方へと飛んでいき、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた高峰がもう一度あの不思議なポーズを構える。

 

「流石だ…………我が親友よッ!」

 

「ぐ……っ!? 貴様如き……ッ! ぐおっ!?」

 

 俺に飛ばされながらも能力を使おうとした電気男に向かって、新海が高峰の背後から飛び出してきて、その顔面にぎこちない蹴りを入れる。

 

「「いけっ! 高峰ッ!」」

 

「私の最大技…………ッ!」

 

 仰け反った電気男に向かって、並々ならない速度であの掌底を叩き込むッ! 

 

「真神流────“攻めの型”螺旋掌(らせんしょう)ッ!」

 

「うごっ……!?」

 

 今度は電気男の背中にクリティカルヒット。しかし高峰は構えを解かない。

 

「真神流の真髄を見せてやる……! はぁぁぁぁぁっっっ!!」

 

龍震脚(りゅうしんきゃく)ッ!」

 

 今度は身体をぐるりと一回転させ、遠心力を使った舞い上がる龍のような蹴り。

 

 名前はちょっと痛々しいけど威力は確かだ。その証拠に人の身体が地面に着くことなく蹴り上げられている。

 

裏流転(うらるてん)ッ!」

 

 流れるように続く連撃の嵐。一切の油断も慢心もしない隙のない打撃。

 

 俺も少し格闘技をかじってたから分かる…………コイツ、腕はマジだ。

 

「これで終わりだッ! 果てろッ! 鬼獄掌(きごくしょう)ッ!!」

 

 怒涛のラッシュの最後の〆、両腕を強く前方へと差し出し、かめはめ波でもするんじゃないかと疑うレベルで気合いの入った掌底を電気男にぶつける。

 

「…………ッ!?」

 

 もう相手は悲鳴すらあげていない。声も出せないのだろう。

 

 口や至るところの傷口から血を漏らし、流れのままに体を動かされている。

 

 そして当然、高峰に吹き飛ばされた電気男は、後ろにいる俺の方へと向かってくるので…………

 

「出過ぎたマネはしませんように……」

 

 片足で男の頭を引っ掛け、その勢いを殺さずに地面に強く叩きつける。

 

「き……! きさ……! ま…………ら…………ッ!」

 

 そしてそのまま……

 

「パニッシュメントッ!」

 

 黄金色に輝く無数の鎖が、倒れた電気男に向かって襲いかかる。

 

 これは……確か拘束用? 

 

 希亜にも何か考えがあってのことだろう。今攻撃をしてしまうと黙らせるだけではなく、下手をすると殺してしまうかもしれないという本能から、能力をセーブしたのかもしれない。

 

「よし……」

 

「私たちの勝ちだな」

 

「後は天を────」

 

 と三人とも完全に気を抜いていた瞬間、襲いかかった無数の鎖が弾かれるように砕け散ってしまう。

 

 バキンッ!! 

 

 パキッ! 

 

 ジャラジャラと力なく地面に落ちていく鎖の奥には見たことの無いもう一人の男が現れていた。

 

「……ッ!?」

 

「なーにやられてんの(あづま)、お前ってそんなに弱かったっけ?」

 

「貴様……何しに来た」

 

「何しにって……そろそろ終わったかなって思って来てみりゃお前、ボコボコにやられてんじゃん。そりゃ近寄るでしょ、一応仲間だし」

 

 仲間……? どういう事だ? まさかこいつにも他にまだ敵がいるってことか!? 

 

「薬は? あの子には投与してんの?」

 

「抜かりはない、後はあのゴミたちを殺すだけだッ!」

 

「だーから勝てないって。あのお人形さんにも言われてたろ? 下手に喧嘩を売るなって」

 

 薬? 

 

 どういう事だ!? 何が起きてるんだ!? 

 

「おい……てめぇ誰だよ」

 

「あ? まーそんな威嚇しなさんな。(あづま)を倒すなんてお前ら大したもんさ」

 

「君は、随分と余裕だな」

 

 高峰が一歩俺たちの前に出てあの乱入してきた男に牙を向ける。

 

「余裕なんてねぇよ、こっちはまさかこんな結果になるなんて思いもしなかったっての。でもまぁ……目的は達成してるんだ、これ以上無駄に争う気はねぇんで安心しな」

 

「待てよ、薬って…………まさか最初の──」

 

「じゃあな兄ちゃんたち、またいつか会おうぜ」

 

 新海が何かを問いただそうとしていたが、あの不思議な男は何も答える暇を作らずに、(あづま)と呼ぶあの電気男を担いで一瞬にして消えてしまった。

 

 そして消えた後には石ころが一つだけポロッと落ちる。

 

 天ちゃんは、ちゃんとこの場にいた。

 

 あいつらの目的はなんだったんだ? 薬って一体どういうことなんだ? 仲間ってまだいるのか? 

 

 そんな色んなことを考えてはいたが…………本当に体力の限界がきてしまったようで、俺たち三人はバタバタとその場に倒れてしまった。

 

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