9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
男の子なんてみんなえっちだ。女の子だってきっとえっちだ。人間なんてみんなえっちだ。
痛い。
身体が悲鳴をあげている。真っ暗闇の中、ただそれだけが唯一理解出来たことだった。
そしてなんか暖かい。
そんな暖かさから引っ張られるように、俺は意識が移動していった。
「ん…………」
ぱちくりと目が覚める。知らない天井だ。
そしてなんかお腹の辺りがやけに重たい。若干呼吸がしずらいほどに。
その原因を探ろうと視線を横に向けると…………
「すぅ……………………すぅ……………………」
ベッドに寝ている俺を枕にして、制服姿のままで寝てしまっている九條さんがそこにはいた。
「九條…………さん?」
意識が朧気だからだろうか? それとも俺は変な夢でも見ているのだろうか?
そんな疑問を抱いていると……
「お? 起きたか? 竹内」
更に奥で床に座っている新海に声をかけられた。
「新海……? なんで俺ん家に……?」
「おいおい、お前の家じゃなくて、ここは俺の家だ」
そう言われて改めて当たりを見渡すと、確かに見覚えがない場所だ。インテリアも匂いも何もかもが違う。
そして…………
「目が覚めたのね、蓮太。身体に異常は?」
この部屋には希亜がいる。しかもそれだけではなく、香坂さんも天ちゃんも、高峰もいた。
「異常っつーか、まずはこの人をどうにかしないとな」
「……そうね。九條さん、蓮太が目を覚ましたわよ」
トントンと肩を叩かれ、身体を揺さぶられる九條さん。すぅすぅ言ってた割には意外と早く目が覚めたようだ。
「…………ほぇ?」
アホみたいな声をだしたけど。
「たっ! たたたたっ! 竹内くん大丈夫ッ!? どこか痛いところはない!? ま、ままままだ安静にしててね!? あ、そうだ! すぐに身体が温まる飲み物を────」
さっきまで寝ていた九條さんは、俺を顔を見るや否や、非常に焦った雰囲気で必要以上に俺を看護しようとする。
「九條さん落ち着いて」
「いいっすなぁ先輩。みゃーこ先輩にめっちゃ好かれてますやん」
「こら天、ちゃちゃをいれない」
「どしたんにぃやん、心配すんなよぉ〜にぃやんにはあたしがいるじゃん」
「…………」
「そぉのぉ目ぇはぁやめろぉい!」
なんなんだ? この状況は。なんで俺は…………
と、そこで思い出す。あの時の出来事、あの時の戦闘を。
「…………ッ!」
色々と悩むところはあるが、まず第一に確認しなきゃいけないのはあの事だ!
そう思ってある能力を扱うと…………病み上がりで上手くバランスが取れなかったのか、今までにない感覚になって能力を使用してしまった。
「…………はぐっ!?」
本当は適当な距離に離れた空きスペースに呼び出すつもりだったが、何故か寝転がっている俺の真上にある人物を呼び出してしまった。
もちろんアイツは空中になんか浮かぶことはできないから、そのまま俺に向かって落下してくるのだが……………………なんか妙に生暖かい。
「…………痛ってぇ。大将、テメェ能力使うならしっかりと使い──────ひゃっ!?」
……? なんか、口に当たってる暖かい何かが動いた?
つか完全にゴーストに押しつぶされて前が全く見えない。早くどけよコイツ。
「テメェ……ッ! オレのソコでなにしてんだ………………よ………………!」
「もごもごもごもごもごもごもごもごもごもご!!」
ダメだ! 口を押えられて何も喋れねぇ! つかなんなんだよこの俺の顔面を抑えているやつはよ!
「あっ……ん……んんっ………………!」
しかもさっきから俺の頭を挟んでるのは一体何!? ちょっと柔らかいんですけど!?
「新海くん、ちょっとそこの雑誌貸してもらえるかしら?」
「あ、結城……そりゃ別に構わないけど…………どうするの?」
つかさっきからゴーストの声なんかエロくね? 妙に色っぽいというか妖艶な感じというか。
「テメッ……! いい加減に…………ッ!」
といってゴーストが俺の顔面から離れた瞬間に見えたもの、それは足。と────
「…………ふんっ!」
「へぶっ!?!?」
勢いよく何か硬い物が俺の顔に強く叩きつけられた。
「セクハラの罰」
「ちょ! ちょっと待て希亜! 俺は別にセクハラなんてしてないっつーの!」
言いがかりにも程があるだろ! 俺は真剣にゴーストの心配をだな……!
「オレの股に顔を埋めて何言ってんだッ! バカッ! アホッ! 死ねッ!」
「はぁ!? 俺はそんなことしてな────」
と反論する間もなく、ゴーストに何度も何度も顔面に蹴りを当てられる。
「ほぶっ!? ……ちょ……まっ…………ぶほっ!?!?」
「うっわー…………フードの人、ケガ人相手に容赦ねぇ……」
天ちゃんっ!? 引いてる場合じゃなくて助けて欲しいんですけどっ!?
「あっ、あの…………竹内くんはそんなことする人じゃ………………な、な、……ない……と思うから……ね?」
九條さんっ!? 今の微妙な間は何!? もしかして心の中ではもう俺は変態認定されてますっ!?
「蹴るのは構わないけど物は壊すなよー? あと壁に当てて大きな音もたてないでくれ」
新海っ!? 近所への配慮よりももっと気にして欲しいことがありまするんっ!?
「しかし……あのゴーストがここまで心を開いているとはな。ややキャラがズレてしまってはいるが……それも運命、神の選んだこと……か」
高峰っ!? 何感慨に浸ってんだよ! 言葉に内容がないことを言ってないでゴーストのこと知ってんならまず止めろよ! 頼む! お願い!
「あらあら、素晴らしいじゃありませんか。見ていて微笑ましいですわ。
香坂さん違うっ! 俺はドMじゃないし、そんなこと求めてません! つか《エデン》モードじゃねぇか! 微笑んでねぇで救出を求めます!
「ああなったのは蓮太が悪い。罪はちゃんと償うべき………………………………ふん」
ちょっと待って希亜ッ! そんな簡単に俺を見捨てないで!? てかなんで若干怒ってるの!? あれかい!? 意図してないとはいえセクハラをしてしまったことについて怒ってるのかい!?
「ちったぁ反省したかよ大将」
「……あ、パンツ白いね────」
「死ねっ!」
「ひでぶっ!?」
と何故かとことん蹴られている俺の隣で、最後に聞こえたのは九條さんの乾いたような戸惑いの笑みだった。
なんか……俺ツイてねぇな……
「あ、あの……ゴーストさん? 一応……竹内くん怪我してるから…………」
でも唯一俺を助けようとはしてくれた。だから心の中で一言。
えっちでごめんなさい。