9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
ブルンッブルンッと何事もないことを確認するようにバイクのエンジンを鳴かせる。
なんだかんだですっかりと忘れていた俺の単車だったが、俺たちが気絶してしまった後になんとか押して持ってきてくれていたようだった。しかもそれを新海が住んでいるマンションに停めてもらっていたのだ。
なかなかに優しい管理人である。
「にしても、竹内がバイクかぁ…………教室のイメージとはまた違っててちょっとびっくりした」
「割と楽しいぞ? 新海もなんかの機会があれば免許取ってみたらいいさ」
「問題は金なんだよな……」
あれから俺たちは話が纏まったこともあり、夜も遅くなる前に一旦解散をすることになった。
ちなみに連絡先は全員が交換しあっている。
「それで…………なんで結城は震えてんの?」
「ふ、震えていない……! これは、武者震い」
もう3度目になる希亜との二人乗り。2度目の時は非常時だったこともあり、あまり気にならない様子だったが、不慣れな乗り物に乗ることにやや恐怖心があるようで、こういった時にはその臆病さがにじみ出る。
「まぁ……気にしてやんな、最初はキャラがぶっ壊れるくらいにビビってたから」
「……だから、そんなことない!」
「はいはい……」
なんで希亜を後ろに乗せているかと言うと、他の女子たちは各々帰る手段を持っていたから。
九條さんは自転車。天ちゃんは新海の家にお泊まり。香坂さんは電車。ちなみに高峰は知らん。
だから消去法で希亜を送り届けることにした。
「……天ちゃんは?」
「今は部屋にいる。何も問題はないと思うが…………しばらくは側にいてやるつもりだ」
「それがいいわね。兄としてしっかり守ってあげなさい」
あの一連の流れの後、俺と希亜が神社へとやってくる直前の事を新海から説明された。
もちろんそれはこの三人のメンバーになった時だ。だからこそ俺たちがまだ残っている訳だが……
俺と新海と高峰が、あの
何やら注射のような物を天ちゃんは首筋から打ち込まれていたらしく、間違いなく
その事を話す新海は悔しそうに拳を握りしめ、歯を食いしばって怒りを鎮めていた。
でも、あんな目に遭ってしまったからこそ、今までと同じように無愛想に、けれども優しく接してあげているんだと思う。
少しでも不安を取り除けるように。
「何かあったら直ぐに連絡をくれよ? どこにいても駆けつける」
「ああ、ありがとう」
軽くニコッと笑って返し、雑に手を上げただけの返事をして希亜を乗せたバイクを走らせる。
その道中────
「天に投与された薬の件…………貴方はどう思う?」
軽くまだ身体を震わせている希亜にそう質問をされた。
「さぁな。ただ、明らかに目的を持ってそういう行動をしたってことぐらいしか思いつかない」
「エルフヘイムの住人に聞いたという彼の言葉、もしその中にある三つの内の一つを使われていたら…………事態は最悪と言っていいでしょうね」
そう、以前ソフィとまだ交流できていた時に、新海が《霊薬》の種類について色々と聞いていたらしい。
九條さんがいない時の、対ユーザーを意識しての質問だったらしいが……ここに来てそれが役に立つとはな。
判明したことは複数ある。まず一つ、霊薬は一つだけじゃなかったこと。俺が知っている《アンブロシア》だけじゃなく、名前はまだ不明だが更に二種類の霊薬があるらしい。
しかしその二種類の内一つは効果が判明している。《アンブロシア》は魂を仮死状態へと陥り、アーティファクトそのものを騙す効果の薬。
そしてもう一つの判明している効果は、名前は不明、効果は《意思》のあるアーティファクトとの波長を狂わせる薬。どうやらソフィはこれだけ言って、続きをひた隠して去っていったらしい。
この波長を狂わせる薬。もしこれがあの炎の男のように《暴走》を意味しているのなら、かなりマズイ。
何がマズイって、もちろん天ちゃん自身の事が大ピンチだが…………俺たちが戦っている敵軍団は《意図して能力を暴走させる力》を持っていることになる。
「でも、正直手の打ちようがない。ここはいち早くソフィを見つけるか、アイツらに直接聞くしかない……よな」
炎の能力の暴走は、辺り一面を火の海に変えてしまうほどの火炎を放出してしまうものだった。
しかも俺たちが問題を解決できたのはかなり早い段階だったことを考えると…………下手をすれば学園だけとは言わず、町中に火の手が襲いかかっていたかもしれない。
それほどアーティファクトの能力は強力なんだ。元々の力以上のモノを宿してしまう。それが《暴走》。
存在感を薄くする能力、これが暴走なんてしたらどうなってしまうんだろう。
これ以上の能力となると…………
存在が無くなってしまうかもしれない。
…………させないさ。そんなことは絶対させない。
考えなくない。天ちゃんが消えてしまうなんて、でも…………出来ることは全てやらなきゃいけない。
「あまり……いい気分ではないわね」
「あぁ……」
ギュッと俺に腕を回す力が強くなる。たったそれだけで理解できた。きっと希亜も同じ考えにいきついたのだと。
力を合わせることの出来る仲間を失うのが怖いんだ。
それは俺もわかる。俺たちはその怖さを、辛さを、無力さを、絶望を既に知っているから。
「私たちに出来ることは…………何……!」
「…………忘れないことだ」
「忘れ……ない?」
もし、俺の仮定が全て正しいとすれば、これがせめてもの俺たちに出来ることだろう。
監視されているという新海に縋ることしか出来ないのだから。
「天ちゃんの能力は存在感操作。つまりはアーティファクトの暴走の結果行き着く先も、その力の先のはずなんだ。もちろん本人はその能力を抑えようとするだろう、だから少しずつ能力が暴走していく可能性が高い」
「…………えぇ」
「だったら段階的になるはずなんだ。少しずつ、少しずつ……存在が消えていく。みんなの記憶から消えていくと思う」
胸が苦しくなる。
天ちゃん本人がこの推測にたどり着いていないわけが無い。みんなとの記憶から自分一人が消えてしまうかもしれない恐怖。俺なんかの想像を絶するだろう。
もしかしたら新海も気がついているのかもしれない。
「だから
きっとタイムリミットは存在してる。それは間違いない。でも、みんなが知っている心の気迫で能力はいくらでも変化するという点。
つまり、天ちゃんがそんなことも忘れてしまう程に心の底から楽しいと思えれば薬の効果が切れてしまうかもしれない。
…………これは無理があるな。とてもじゃないけど不可能だ。
やっぱり時間との勝負だ。少しでも早く扱える能力を上昇させて、少しでも早くアイツらを見つけて、解決法を聞き出す。
最悪の場合…………九條さんに能力を使ってもらうしかないのかも。
でもそうしてしまうと、そのアーティファクトは
となると……………………
あの時の俺の能力を……
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