9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「────で、なんでオレを呼ぶんだよ」
希亜を送り届けたあと、自分の家に戻って適当に家事を済ませる。
あらかたの作業を終わらせたあと、色々と考えているうちにあることを思い出し、ゴーストを出現させたのだ。
「怪我人だろ? 一応面倒見てやった方がいいかな? って思って」
「テメェがオレの股に顔面押し付けてきたこと、まだ忘れてねぇからな……!」
……股?
「だ、だから悪かったって言ったじゃんか! それにわざとなんかじゃねぇよ!」
「どーだかな、オレの創造主サマはド変態だからあてにならねぇ」
自分自身からの信頼が無さすぎるな。いくらなんでもゴースト自身の意思がそこにあるとはいえここまでとは……
「いいから、こっち来い」
ボフボフッとベッドに敷いてある布団を叩いて、一応準備しておいた治療箱を取り出す。
「んだよ…………ったく……」
どこか不機嫌なゴーストは、渋々と言った感じで俺の隣に座る。
つか幻体にコレって効果あるんかな……?
「それで……どんな感じだ? 無理してんだろ? お前」
「別に無理なんてしてねぇよ、そもそもオレは実体の無い幻体だ。怪我なんて概念は────」
と、なかなかな頑固な性格をしているもんで、素直に心配してやってもちゃんとした返事は返ってこないと判断した俺は、とりあえず適当に腕を握ってみる。
「痛っ────」
全然強くなんて握っていないのに、ゴーストの腕に触れると、彼女は顔を顰めた。
「ほらみろ、新海の家にいる時から怪しかったんだよ、お前。あん時は素直だったじゃねぇか」
「うるせぇ! 勝手に触んなっつーの!」
なんだよこいつ……なんか今日はやけにトゲトゲしいな、反応が。
「なぁ、なんでお前そんなに怒ってんの?」
「はぁ? 勝手に身体を触られたら誰だって怒るだろうが」
「いやそうじゃなくてさ、なんか…………新海の家にいた時から随分変わったような気が……?」
あの家でコイツを出した時は別に普通だったよな? 引っ込めてから今までの間でなんか癪に障ることがあったのか?
「そりゃあんなにモテてりゃイラつくっつーの」
「ん? なんか言ったか?」
「なんも言ってねぇよバカ」
うーむ……。これはまた俺が気が付かないうちに怒らせたりしたか? それともガチであの事故の事をブチギレてるのか?
女心はわかんね……
「とにかく、怪我の具合は? って聞くだけ無駄か…………じゃあとりあえず俺のイメージを崩して本来のゴーストの姿を見りゃいいか」
「ちょっ……! マジで止めろ! オレは本当に大した怪我じゃねぇから!」
大慌てで自分の傷を隠そうとするゴーストを無視して、俺の頭の中のイメージをかき消す。
ゴーストは確かに幻体だ。普通なら《本来の姿》なんてものは無い。だが、コイツは特別。ちゃんとしたコイツ自身の意思、つまり魂がある。
となると姿形はそのままに、魂が背負ったダメージを表面に露出させれば…………あの戦いでの負ってしまった傷を確認できる。と思う。
そして能力を使って、いざそのイメージを実践してみると…………
「…………ッ!!」
ビクビクッと痙攣するかのように身体を震わせたゴーストが、歯を食いしばってそのままベッドに倒れるように横になる。
そしてその姿は────
「な……、なんだよ…………それ……!!」
身につけている衣服とはあまりにもかけ離れすぎている身体の汚れ具合だ。まるで焼肉で網の上に乗せられているのを忘れられて焦げてしまった肉のように、肌はほぼ真っ黒に変化してしまっている。
爪も剥げており、髪もボロボロ、足に至っては…………ピクリとも動いていない。
「どこが無事なんだよッ!!」
いや…………そもそも俺がダメだったんだ! あのレベルの雷をまともに食らって軽傷で済むはずがないんだ!
クソッ!
「結構頑張ってたんだけどな、バレちまった……」
「バレちまったじゃねぇだろ!!!! なんで我慢なんてしてたんだよッ!!」
やっぱりあの時の元気な姿は痩せ我慢だったんだ。消えるその刹那に見せた辛そうな表情は必死に我慢してたモノだったんだ。
俺は馬鹿か……!
「オレが耐えりゃ、勝手に傷は治る。時間こそかかるのが玉に瑕だけど…………アンタに迷惑かけたくなかった」
「んな事言ってる場合かよッ!! 『もしも』があったらどうすんだ!?」
どんだけ馬鹿なんだよ、俺も! ゴーストも! 人の心配なんてしてる場合かよ! テメェが死にかけてる時に迷惑なんて考えてる暇ねぇだろうが!
それに「迷惑かけたくない」ってことは、俺に
「察しがいいな、大将」
「気づいたんなら早く言え! 俺はどうしたらいい!? どうしたらこの傷を癒せるんだ!?」
そりゃ俺が無傷の身体を用意してやれば誤魔化すことは出来るだろう。だけどそれは根本的な解決にはならない。根源をどうにかしないとコイツはずっと痛みと戦い続けることになる。
「…………なぁ、大将」
「なんだよ!?」
「アンタ今、好きな人とかいんの?」
この状況でコイツ何言ってんだよ!? そんなくだらねぇこと話してる場合じゃねぇだろ!!
「んなことどうでもいいだろ! それより早く傷を癒す方法を────」
「いいから。それだけ聞いておきてぇんだよ。流石にアンタの特別を奪いたくはないし」
言葉の意味はわからなかった。これから何をするのかも全く想像できなかった。それでもこの時、何故かわかったんだ。
ゴーストの為に、これは真剣に答えなきゃいけないってことを。
「…………いない。恋なんてしたことない」
そう答えると、ほんの少しだけゴーストはニヤけて────
「そっか」
静かにそれだけ答えた。
ゆっくりと俺の方に顔を動かして、真っ黒な瞳を俺に向ける。
「詳しいことは後で話すからよ、そんなにどうにかしたいんなら…………一つだけして欲しいことがある」
「なんだ!? 早く言えよ!」
「キス…………してくれよ」
驚いた。そりゃあ……目が点になってしまう程に。
でも、それが冗談でも嘘でもなんでもない事は彼女をみたらすぐに分かった。
「大将がそれさえしてくれりゃ──────」
「んっ──────」
だからこそ深くは考えない。
俺とコイツは奇妙な関係だ。人間と幻体、もし……仮に恋をしたとしても結ばれることは無いだろう。
だからこそかもしれない。
いや…………それすらも言い訳かもな。
とにかく、俺はあの言葉を聞いた瞬間に、後先なんて考えずに身体を動かした。
すると────
なんだろう……身体の芯から《何か》が奪われていくような感覚。
そして徐々に感じる《痛み》。
しかしそれも我慢して、唇を合わせ続ける。
何秒……いや、何十秒だろう? 息が出来なくて苦しくなるまでひたすらに《何か》を吸われ続けた俺は、とうとう限界が来て、できるだけゆっくりとその口を離した。
そして改めてゴーストの身体を見ると…………
やや部分的に火傷のような後が残っているが、ほとんどの傷が治っていた。
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