9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
「ゴー…………スト……?」
やや朧気な意識の中、改めて彼女を確認する。
今は特別、何かの能力を扱ったりはしていない。つまり今は彼女の魂は露出している状態だ。
その彼女の身体は疎らに火傷の後が残っているような状態にまで回復していた。
「アンタ、躊躇なくしやがったな」
フッとどこか嬉しそうに笑うゴーストを見て安心する。よかった、理由は全然意味わかんないけど、とにかくコイツは助かったんだ。
怪我が軽くなってよかった…………
そんな安堵の気持ちと共に緊張の糸が切れてしまい、ベッドに覆い被さるように俺は身体を倒してしまう。
「なんだ……これ…………」
あんまり深く考えることが出来ない。なんだろう……視界がボヤけてよく見えなくなってきた。
あと全身が焼かれるように痛い。
こんなに部屋の中って暑かったっけ……?
「大将、キツいと思うけどこっち来い。せめてベッドで寝ろよ」
あんまり声が聞こえなかったけど…………多分コイツは手招きしてる。
あぁそうか、倒れるならソコで倒れろって事か。
残る力を振り絞るように立ち上がり、転がり込むように俺もベッドの上に身体を預ける。ゴーストはそんな俺にスペースを空けてくれるように少し奥へと移動してくれていた。
「…………あっちぃ」
声が漏れる。
とにかく暑い。真夏の太陽に直接焼かれ続けてるみたいだ。絶対にそんな事ないのに、有り得るはずがないのに。
「オレは少し涼しいぜ……さっきよりはな」
そして痛い。あの不思議な儀式が終わってからも、全身に走る針に刺され続けているような痛みが消えない。
このせいでせっかく何度か意識を失いかけているのにまた現実に戻される。
「本当は、こんなことしたくなかったんだぜ? だけどさ、こうしたら…………」
耳鳴りがすごい。そのせいでせっかくゴーストが何かを話しているのに何も聞こえてこない。
頭もガンガンする。
足が…………思うように動かない。
「側にいられるだろ…………?」
けどそれらを悟られないように必死に声を殺して我慢する。きっとゴーストがこれをしたがらなかったのはこの痛みが原因だろう。
俺を守るために怪我をしたのに、その痛みを俺に与えちゃあ意味がねぇ……的な?
…………割と色々考えられてるな。いや、これはアレか。色々と考えないと痛みで精神がどうにかなりそうなんだ。
「アンタはいつもそうだ。誰にでも心の底では優しくて、見捨てない。とうとうオレすらも変えやがった」
スっと誰かに抱かれるように腕が回ってくる。
きっと彼女も痛いのだろう。この痛みを和らげる為に、心の弱さを出してるんだろう。だからこそ俺がしっかりしないとダメなんだ。
コイツが安心して眠れるように。
「大将が九條や香坂、希亜とイチャイチャしてた時、オレ結構《痛かった》んだぜ? 痛くて痛くて…………消えたかった」
てか本当にとにかく痛い。特に酷いのが頭だ。頭痛が酷いし今までに体験したことがないレベルの耳鳴りが響く。
マジで何も聞こえない。
「だけどさ……オレは人間じゃない、そんなことは分かってるつもりだ。だからオレはアンタが誰かを好きになればきっと力になると思う」
ゴーストはこんな痛みを経験してたのかな。ほんの少しだけ共有してしまってるんなら…………これくらいで俺が音を上げる訳にはいかないよな。
「それでもアンタがオレを見てくれるから……! 心のどっかで期待しちまってるオレがいるんだよ……ッ!」
もう少しだけ長く続けとけば良かったかな。今でも十分に痛いし辛いけど…………俺ならもう少しコイツの痛みを貰えたかも。
「なんで割り切らねぇんだよ……! なんでそんなに心配してくれんだよ……ッ! なんで……! なんで…………!」
「オレを人として見てくれてるんだよ…………ッ!」
大丈夫だからな、すぐにこんな痛みかき消して……もう一度でも何度でも傷を癒してやるから。
お前一人に辛い思いはさせないから。
「ふざけんなよ…………本当に……クソ創造主が!」
チラッと横目で彼女を確認してみる。もしなにか辛そうなことがあれば、もう一度アレをしてやれるかもしれない。
すると…………彼女は泣いていた。俺に縋るように頭を擦り付けて震えていた。
そんなに痛かったのか?
そんなにキツかったのか?
そんなに辛かったのか?
彼女の涙を何とかしようと、身体を捻らせて寝返りを打つように向きを変える。そして向かい合う形になった彼女の頭をポンポンと撫で、気晴らしにでもなるように声をかける。
もう既に耳鳴りは止んでいた。
「もうちょっとだけ、さっきのやつしてやろうか?」
「バカかよ大将……死んじまうぜ……」
「誰が死ぬかよ」
……段々感覚がなくなってきた。あまりにも大きいダメージを蓄積しすぎて身体ぶっ壊れたかな。元々俺は軽く疲労と怪我をしてたし…………あんまり無茶はするもんじゃないか。
お互い無事なら…………それでいいや。
《視点切り替え》
「寝たか……? 大将」
おそらく感じていた刺激が落ち着き始めたのだろう。オレの隣で横になっている男は気絶するように眠っていた。
なんだよ……人の気も知らねぇで。
希亜の言ってた通り罪人だな、コイツは。周りの人を振り回す天才だ。
あ、オレ人じゃねぇや。
…………人じゃない……か。
「オレも人間だったらな……。アンタの隣で堂々と歩けたのかな」
「頑張れよ、大将。アンタが選んだ相手なら…………オレは応援するぜ」
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