9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。 作:紅葉555
なんだろう……なんかほのかにいい匂いがする。
いや……でも、気のせいか。多分俺は寝てしまってたんだろう。だったらこれは多分夢だ。まだ布団は暖かいし、寝ておきたい。
って……そう言えば九條さんが家に来るって言ってたな。でもまぁ、まだ設定しておいたアラームは鳴ってないし、多分三十分程しか経過してないんだろう。
あと三十分。三十分だけ…………
と、再び睡眠を取ろうとする。だってそうだろ? 寝起きってのはみんなもう一度寝たくなるもんさ。それに、まだ三十分しか経ってないんなら放課後まで三時間以上ある。十分色々と準備出来るさ。
「え、あ、お、おい! 焼き加減ってこんくらいでいいのか!?」
なんかゴーストが慌てているような声が聞こえる。アイツなんかしてんのか? まぁ別に怪我さえしなけりゃなんでもいいが……
よく体を動かせるな。
「大丈夫だよ、でも……もうちょっとだけ待った方がいいかな?」
……それと女の子の声が聞こえてくる。やけに大人しげな声の友達を連れてきてるんだなアイツ。
扉一枚挟んでいるせいか、声が聞き取りづらい。ま、変なことさえしなけりゃ別になんでもいいけど。
「知識はあるんだけどな…………オレじゃ全然生かしきれねぇ……」
「まだまだこれからだよ、竹内くんに喜んでもらうんでしょ?」
「ち、違ぇよ! 馬鹿! アイツの負担をちょっとでも減らそうと思っただけだ!」
ん…………、少し寝たからかな、大分身体もマシになってきたかも? これならもうちょい寝れば…………
「つーかアンタの方が大将のこと考えてそうだけどな」
「えっ、わ、私?」
「普通心配だからって理由だけでわざわざ家まで来るもんかね」
「え……? 変だった……かな?」
つかさ、さっきから思ってたんだけどさ。
ぶっちゃけ違和感バリバリだったけどさ。
「ま、アンタ自身が気がついてないだけだろうけどさ」
これ九條さん既に来ちゃってね?
会話の内容までは聞こえちゃいないけど、それっぽい声が聞こえるし…………何よりゴーストに友達いる訳ねぇじゃん。知り合いは俺たちしか知らないわけだし。
「気がついてない……だけなのかな……?」
スマホを手にして時間を確認してみると、既に六時を超えている。
これは……うん! 寝すぎた!
「大将が女遊びしてた時にムカついてただろ?」
「あっ……! あれは……、怒ってはいないけど、勘違いを正したあとに…………竹内くん色んな人に優しくしてるんだなぁ、って」
「…………うーん」
とりあえず客人が来てるのにグースカグースカ寝てたのはもう仕方ないんだ、一度顔を合わせて謝っとくか。
声はキッチンの方から聞こえる。きっと何かを作ってるんだろう、なんかいい匂いもするし……
「あんなちゃらんぽらんのどこがいいんだかな、オレにゃあわかんねぇけどさ」
「そんな、竹内くんはしっかりしてるよ。確かに……教室でお話してる所はあんまり見ないけど、とっても明るくて素敵な人だよ。沢山のことを知ってるし、お料理は美味しいし。とっても優しい」
テクテクとキッチンに向かって歩いていると、ドアを開ける直前のタイミングで、九條さんの声が聞こえてきた。
「でも、竹内くんちょっとだけサボり癖があるかもね。火事の日だって────」
ガララっとわざとに扉を開けて、俺も会話に参戦する。
「どうもー、サボりの竹内ですけど」
と、俺の声を聞いた瞬間に、ビクッと背筋を縦に伸ばしてあからさまに動揺を見せる九條さん。
ちなみにゴーストは俺が近くにいることに気がついていたようで、あえて伝えていなかったようだ。コイツも結構意地悪な性格してるな。
…………俺に似たのか。
「たっ、たたたたたたた竹内くん!? おおお起きてたんだね! おはっおはようっ」
「うん、おはよ。つか悪いな、俺完全に寝ちまってて」
「だだっ、大丈夫だよ! 全然っ、うんっ、全然大丈夫だから」
そして二人とも会話に夢中でフライパンの上で火に焼かれている豚肉に全然意識がいっていない。
まだ大丈夫なラインだろうが……これ以上火を通したらまずいだろう。
「ゴースト、お前の後ろの豚肉そろそろ死ぬぞ?」
「ん? …………やっべっ!」
その事態に気がつくと、不慣れな手つきでバタバタと火を止めて、何かのレシピを見ながら次の手順の準備を始めるゴースト。
なんだ? コイツ、とうとう料理の趣味まで似てきたのか?
「そんでサボりの俺は何をしたらいい?」
「ちっ、違うよ!? 竹内くんの悪口を言ってたわけじゃないからね!? そんなつもりは全然ないからね!?」
「わかってるって、んで、サボりな俺はどうしたらいい?」
「も、もうっ! いじわるだよっ!」
「ちょっ! 九條! 大将の事はどうでもいいから、次どうするんだよ!?」
「どうでもいいってひでぇなお前」
…………
……
……
「「いただきます」」
キッチンでなんやかんやの会話をした後、二人が作ってくれた料理を食べる。
ゴーストは俺自身よりも先に食欲があることに気がついていたらしく、変な病食じゃなくて普通に満腹になるようなメニューを選んでくれていた。
ちなみにせっかくだからと、九條さんも一緒に食べている。
「……もぐ…………もぐ」
「どうだ? 大将、イケるか?」
「あぁ、なんぼか体調も良くなったみたいだし、普通に食えるわ。それに……美味いぞ? このポパイ丼」
二人が作ってくれたのは火を通した豚肉に、ほうれん草と卵を乗せた丼だった。割と簡単に作れる物をあえて選んだみたいだが…………どうやら実質料理初心者のゴーストにはそれでも手間がかかったものらしく、予定よりも準備に時間をかけてしまったようだ。
「そ、そっか……ならいいんだ」
「ふふっ、ゴーストさん頑張ってたんだよ」
「変なこと言うな! んなもん適当だ適当……!」
照れてこっちを全く見ないゴーストに笑顔で返し、とにかく料理を食べ続ける。
にしても…………なんか異様な光景だよな。この三人が揃って飯食うなんて滅多にないだろうし。
なんか……慣れねぇ。
「ま、とにかくもう大丈夫だ。明日からまた日々の楽しい楽しい授業に励むことにするわ。ありがとな二人共」
「……?」
「そうかよ、大将。だったらしゃんとしろよ」
「もしかして…………」
俺とゴーストの会話に何か違和感を感じているような反応をする九條さん。目を点にして首を傾げており、箸が止まっている。
「ん? どうした? 九條さん」
「竹内くん、明後日って……何の日?」
「え?」
唐突な九條さんからの質問。
え? 明後日ってなにか特別な日だったっけ?
「…………ごめん、全然わかんない」
「明後日って、実力テストの日だよ?」
「…………は?」
実……え、何?
ジツリョクテスト? ナニソレコワイ。
「ほら、私たちの学園って毎学期の初めの方にテストがあるでしょ? 明後日がそうだよ?」
「なん…………だと…………!?」
そうだった……!! ウチは定期テスト以外に学力測るためのテストが別途であるんだった……!
ぶっちゃけ自信はないな……勉強に抜かりはないけどさ。
「でも大将の学力なら問題ねぇんじゃねぇの? そりゃいつもの順位に落ち着けはしないだろうけどさ」
「まぁ…………うん。多分?」
「それじゃあ……みんなでお勉強会する? 全学年の生徒がテストをするから、前日にみんなでお勉強したら丁度いいんじゃないかな?」
アーティファクト関連で事実としてまともな勉強は出来ていなかったのは事実だし、点数を落としたくはない。確か順位が半分以下の生徒は補習に参加しなきゃいけなかったよな?
色んな意味で貴重な休みを潰したくはないし…………みんなで集まって何かをすることで心の余裕が生まれるかもしれない。
それに天ちゃんのことも気になるし……できるだけ顔を合わせておいた方がいいだろう。
「みんなの都合が合うのなら、やってみようか」
「うん! 楽しそうだね」
作ってもらった料理を完食して、スマホを取り出す。
「じゃあ…………俺は高峰と香坂さんの上級生コンビに連絡してみる」
「それなら、私は新海くんと結城さんに伝えてみるね」
うーん……二人ともRINGで反応してくれるかな?
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