9-nine- ここのつはるそらゆきのみち。   作:紅葉555

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ソラノキオク

 

「ほい、コーラ」

 

 2人で並んで登校している途中で、奢ってあげた飲み物を天ちゃんに渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 軽くお礼を言った天ちゃんはスリスリと額を擦りながら、まださっきの出来事を引きずっているようだった。

 

「痛いか?」

 

「んや、そんなことはないけど…………朝からこれはキツいなぁもぅ」

 

「運が悪かったって諦めるしかないな、でも……あれだ、嫌なことがあった時は、その分いいことも起きるもんさ」

 

「だといいんですけどねぇ」

 

 テクテクと歩いていると、やっとこさ学園の校門が見えてくる。その横には生徒指導の教員が今日も学園に集まる生徒たち一人一人に挨拶をしていた。

 

「おはようっ」

 

「おはようございます」

 

 たくさんの生徒たちが歩いている中、あのハゲの教員は1人も漏らさずに『全員』にちゃんと挨拶していた。

 

 つっても俺は普段は全然反応しないんだが…………

 

 みんなは偉いな、ちゃんと挨拶を返している。ほら、現に目の前を歩いている女子生徒2人も────

 

「「おはようございまーす!」」

 

「はい、おはよう。おはよう」

 

 と2人分しっかりと返事していた。

 

 そしてその流れでスタスタと歩いていこうとすると…………

 

「おはよう」

 

 と俺たちに一声だけかけられる。

 

 ま、周りの人たちはちゃんと返事しているようだけど…………俺は面倒だからいい。いつも返してないし。

 

 しかしそんな俺よりもちゃんと人間ができている天ちゃんはしっかりとあの教員に挨拶を返していた。

 

「おざ〜っす」

 

 すれ違い様というのもあるが、そこから会話は発生しなく、天ちゃんの挨拶の言葉を最後に、俺たちは校門を通り過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして廊下で2人別れたあと、自分の教室へ向かっている途中で、成瀬センセと偶然鉢合わせした。

 

「おっ、きたな〜さぼりやんきー」

 

「なんっすかそのあだ名……俺はいたってマジメな生徒っすよ」

 

 いつものようにやる気のないオーラを漂わせて、だるそうにしている。

 

「うっそだ、九條さんがヘッタクソな嘘ついてたもん。適当に言いくるめてサボったんでしょー」

 

「サボってないですって、ちょっと体調が悪かったんすよ」

 

 つーかそんなにハッキリとバレる嘘を言ったのかよ……逆にどんなこと言ったんだよあの人。

 

 てか普通に体調不良って言っとけばいいだけなんじゃね? もしかしてその理由を聞かれたりしたのか? 

 

 ……まぁいいや。

 

「それでさ〜、さっき隣にいた子誰なの〜? もしかして…………彼女っすかぁ?」

 

 明らかに俺をいじるような口調でにじりよってくるセンセ。んだよこの人めんどくせぇな! 

 

「さっきのって……えぇーっと………………………………天ちゃんのこと? 見てたんすか?」

 

「へぇー天ちゃんって言うんだ、誰だか知らないけど年下の子でしょ? なんだぁ? 後輩をたぶらかしたのぁー?」

 

 軽く肘をトントンと俺に当ててくるセンセ。かんっぜんにさっきのことをネタにして遊んでやがるな。

 

「たぶらかしてねぇよ!? たまたま通学路で会ったから一緒にきただけ」

 

「学校でやらしーことするなよ〜?」

 

「しねーよっ!!」

 

 あんまりにも子供っぽい弄りに、思わず言葉を崩してしまう。いや……悪い事だと分かってはいるんだが、どうにも友達と話してるみたいで気が抜ける。

 

 さすがに気をつけないとな……担任だし。

 

 つーか自分の学園の生徒の名前くらい覚えとけよな、そりゃ1学年で役300人くらいいるけどさ…………いや、逆の立場なら覚えられないな、いちいち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて日の授業中、退屈な教員の言葉を聞き流しながらボケーッと窓の外を見る。

 

 温かい日差しが教室に差し込み、春を感じさせるいい天気なのはいいんだが、差し込みすぎて灼熱のように身体が熱い。

 

 カーテンが無いし、俺は窓際の席というのもあって炎天下の中にいるみたいだ。これじゃまるで天然のサウナ。

 

 かなりの苦痛だが……もう少しで一限が終わる。もうすぐ休み時間だ。10分しかないけど。

 

 なんて思いながら窓の外を見ていると……銀髪の、ウチの制服を着た女の子がこんな時間に堂々と校門に向かって走っていっている。

 

 鞄も持たずに、振り返らずに。顔を下に向けて全力疾走だった。

 

 どこのアホなんだよ……まだ今日の授業は始まったばかりだぞ? 最近の子供はやーねぇ……自由すぎる。

 

 てかさ、あんなに堂々と学園から逃げ出してるのに教員は誰も止めねぇのかよ。あれが許されるなら俺だって逃げ出したいわ。

 

 なんてついでに愚痴を零しながらも、その女の子を視線で追い続ける。

 

「俺…………どっかであの子を………………?」

 

 人に聞こえていないレベルの音量で、呟きながら考える。なぜなら俺はその子を知っている気がしたから。

 

 目を離そうと思っても中々離すことができない。何故かずっと追い続けてる。

 

 とうとうその子は校門にたどり着いたが…………そこに立っている遅刻者を捕まえる為の生徒指導の教員は、明らかに真横を走り去っていったのに気にもとめない様子で未だに外を見続けている。

 

 …………? 

 

 そこで疑問に思った。誰でもそんな場面を目にしたら驚くだろうが…………その違和感を考える。

 

 そう言えば…………朝一緒に登校してきた人も銀髪だった……よな? 

 

 あ、あれ……? 俺って誰と登校したんだっけ? 

 

 モヤモヤとした記憶の中、完全にシルエットになってしまった人物を必死になって探し出す。

 

 

 

 

 

「おざーっす! エロパイッ!」

 

 

 

 

 

 …………? …………!? 誰だ? ()()()()()ような()()()()声が頭の中を駆け巡る。

 

 そしてそれに続くように次々と声だけが脳内に響く。

 

 

 

 

 

 

 

「だから、あたしたち正義の味方集団は4人パーティなんすよ! 勇者(あたし) でしょ? 賢者(みゃーこ先輩)でしょ? パラディン(竹内先輩)でしょ? そんで遊び人(にぃに)

 

 

 

 

 

 

 これは誰なんだ!? 誰のいつ聞いた声なんだ!? 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃん………………ごめん……っ』

 

 

 

 

 

 なんなんだよッ! この声…………ッ! 

 

 かき氷を一気に口に入れた時のように、頭にキーンッと痛みが走る。その音は実際に聞こえているかのようにひたすら俺の頭をグルグルと駆け巡り…………何かを必死に訴えていた。

 

 お前は誰なんだよ……! 

 

 真剣に未知の『何か』と戦っていると、みんなが集った日に作っておいたRINGグループのトークルームが通知を反応する。

 

 授業中は音がならないように設定しているから、それが教員にバレることは無いが…………問題なのはそこじゃない。

 

 その通知はグループ内の誰かがメッセージを送ったことを知らせるもので、その送り主は希亜。

 

 内容は『今日の参加メンバーは5人でいいか?』という質問だった。

 

 俺の記憶では、俺たちの仲間は全員で6人のはず。そして昨日は高峰が集まれないと言っていたから、そのメンバーで合っているんだ。

 

 けれどこれまた強烈な違和感が。

 

 

 

 

 

 

 

 …………RINGのグループ参加人数が、7()()なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 なんの怪奇現象なんだよ……これ。俺の勘違いか? だが、希亜も6人で記憶していそうだし、他のメンバーも特に指摘する様子もない。

 

 これって……俺だけが感じている違和感なのか? 

 

 改めてグループの詳細を見て、俺の記憶の仲間たちと数を照らし合わせてみる。

 

 まず1人目は俺、『蓮太』。そしてそれに続けて『新海』、『高峰』。その3人が仲間メンバーの中での男たち。

 

 そして女性は、『九條さん』と『香坂さん』、最後に『希亜』。こっちも3人だ。合計で6人。うんやっぱり間違っていない。

 

 けれどRINGのグループには、もう1人入っている。

 

 そのアカウントの名前は…………『新海 天』。

 

 新海…………天……? 

 

 にい…………み……………………そら────────ッ! 

 

「天ちゃんッッッッ!!!!」

 

 衝撃的すぎる事実に、思わず声を荒らげてしまった。

 

 静かに教員の言葉だけが響く教室内に、俺の雑音が響き渡り、一気に注目の的になる。だが…………そんなことはどうでもいい。

 

 なんか色々と教員がなんか言ってるが、そんなものは全然頭に入ってこなかった。

 

 それ程までに怖かった。震えていたんだ。

 

 俺は…………忘れていた。仲間の1人を、守るべき1人を。

 

 忘れちゃいけない1人を。

 

 なんで忘れていたんだろう。なんで記憶から抜けていたんだろう。

 

 わからない。わからないけど…………()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 馬鹿か俺は……! 

 

 そして一番最初に思いついたのは、RINGのやり取り。希亜も忘れていたこと。明らかに今日集まるべきメンバーの中に、1人足りない。

 

 思い返せば今日1日おかしかった。

 

 いつもは待ち合わせ出来ていた新海と天ちゃんが、今日に限って出会えなかったこと。

 

 毎日弁当を作ってくれていた天ちゃんのお母さんが、偶然朝寝坊してしまったこと。

 

 コンビニで誤作動が多くて天ちゃんが不満げだったこと。

 

 それらは全て、あの出来事に結びつく。

 

 もしかしたら、新海と一緒に登校出来なかったのは、新海は()()()()()()んじゃないか? 新海は()()()()()()()()()()()()()を知らなかったんじゃないか!? 

 

 天ちゃんのお母さんは、寝坊なんかじゃなくて、娘の為に頑張って弁当を作っていたのを、()()()()()()せいでその必要がなくなって寝ていたんじゃないか!? 

 

 コンビニの誤作動の全ては、別に機械が壊れていた訳じゃなくて…………天ちゃんが()()()()()()()()んじゃないか!? 

 

 振り返らずに学園から逃げ出していた天ちゃんは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()んじゃないか……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クソッ!」

 

 八つ当たりをするかのように自分の机を蹴り飛ばし、そのまま新海の席まで走る。

 

 そしてそのまま俺の行動に目を驚かしている新海に、ある質問をする。

 

「おい新海ッ!! お前の妹は誰だっ!!」

 

 必死に、必死に声をかける。

 

「竹内……!? いきなりお前何言って────」

 

「いいから言えッ!! お前の妹の名前は何なんだッッッッ!!!!」

 

 熱くなる気持ちを抑えきれずに、半ば殴り掛かるような勢いで新海の言葉を待つ。

 

 だが…………聞こえてきたのは、納得のいかない答えだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹なんていねぇよ…………」





こんにちは、主です。

前回告知させて頂いた通り、今回の投稿をもってアンケートを終了させて頂きたいと思います。数々の投票、ありがとうございました!

尚、実装は現段階の問題が解消後となります。つまり天の件ですね。

次回選択肢は……彼らにとって、彼女にとって非常に大きな分岐点です。誤った方へ行ってしまうと…………
どうか、後悔のなさらぬよう慎重にお願いします。

とは言っても、《オーバーロード》を所持している以上は枝を切り替えられますけどね。今は。

でも彼女らを不幸な目に遭わせたくないという気持ちは、皆同じだと信じています。

彼女を失わない為に、守る為に、生きる為に。

では。
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