つゔぁいごっどねす!ふぉっくすふぁいあ!!!〜現代に生きる神様達は信仰が欲しいようです〜   作:囚人番号虚数番

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「鳴葉大社」お狐様の出発

鳴葉駅前の崩落から一年、あれから色々あった。

 

あの後人々を救助して数日後救助隊がやってきて一旦の私は役目を終えた。帰宅してからは巫女に全てを聞き出し事の顛末を理解した。その時の私はかつてなく真剣だったらしく飄々とした巫女も冗談抜きで答えていた。

 

数ヶ月もしないうちに穴は埋まる。再開発も兼ねた街の再建は成功し以前の街より数段大きな街に鳴葉は成長した。また一つ懐かしい顔は減ったけれど鳴葉はまだまだ成長するのだ。

 

勿論その影には私の効果もあり、街の中心に分社まで建った。まだ実質神のいない抜け殻だけれどそのうち新たに産まれた神が住み着くだろう。

 

社の付近についてもだいぶ賑わうようになっているの。街は鳴葉稲荷神社で追悼の為に大々的なイベントを開催した。町全体が一団となって開催した催しは全国に鳴葉の凄惨さと地域の力を知らしめ、いつもより遥かに多く人が訪れた。世間からは賛否両論だが概ね良かったという評価だ。

 

何にせよ多くの人がこの社に関心を持ち私を信じたことにより以前の数倍の力量は手に入った。鳴葉一つを完全に守るのにはまだまだ修練が必要だけれどそれでも充分なほどに強くなれた。

 

能力に比例し肉体的にも成長した。今の私は一年で幼年から青年程度に肉体が変化した。まあ、これには他にも要因はあるけれど概ねは信仰が多くなった賜物である。

 

その要因というのはこうである。

 

黒姫家が秘匿していた古代鳴葉について資料が一般公開された。つまり今までの鳴葉の神の悪行が一般に知れ渡ってしまった……が、そこで巫女は機転を利かせなんと同時にコッテコテの萌え絵で彼女と私の絵を公開した。

 

「あの子は……神様自体はただの法則で底に萌え絵みたいな体を引っ付けたのが君と鳴葉ちゃんだからね。これに懲りてあの世で反省してくれればいいね」

 

との事。つまり彼女は人としてあるのではなく受肉そのものにも否定的だったらしい。成程、だから彼女は幾度も殺戮を繰り返していたのか。一応理論は納得した。傲慢さ故、古く残虐なままであったのだ。因みに似たような嫌がらせは昔もあったそうだ。その結果江戸時代で私が誕生したのは何とも皮肉な事だろう。

 

だが、彼女の言い分もよく分かる。生まれた意味が否定されては誰だって傷つく。相反する神が出会ったのならこうなっても当然なのだろう。私だってあなたに街を壊されたからこそ殺してしまったのもある。

 

正直、感情のままに動きすぎたのではないかと後悔もしている。けれど分かったところでもう遅いのだ。

 

 

 

……で、何故こんな回想をしているのか。今はお買い物の帰り道である。今日はたまたま普段来ない方のお店を使ってみた。その時ふと彼女を思い出して色々と振り返ってみたのだ。

 

この通りを通ったのも一年前、たしかあの時もこうやって歩いている最中に全裸の鳴葉さんを見つけたのだ。そう、丁度今みたいに路地で白髪のなびく後姿が心配で声をかけたのが出会いだった。

 

「えっ?」

 

……残念だが、今のは気のせいだった。しかし不思議と彼女の名残を感じた。気が付けば私は買い物袋を持ったまま無い残り香を追いかけて路地の中に入っていた。

 

 

 

ー鳴葉大社 入口

 

一年ぶりに入った古ぼけた神社。相変わらず荒れ果てたこの場所に僅かにだが人の入った気配がある。古い人の足跡があり手水舎の中には捨てられた新しいパッケージのコーラボトルもある。

 

巫女の公開した情報にここの場所が記されていたから来たのだろう。今ちょうどネットで調べた所また巫女が動いたからだそう。長らく禁足地として放棄された社を鎮魂兼文化財として再建しようとしているらしい。SNSでは再建前の現地に訪れた、という書き込みもある。

 

「ははは、皆さん危ないのによく訪れますね。私が言えたことじゃありませんが」

 

ー鳴葉大社 中腹

 

鳥居を潜り石段を上る。心地のいい風を感じながら枯れ枝と割れた石段の上を歩き少しずつ森の奥へと向かう。苔むし割れた石灯籠と朽ち木と化しキノコの苗床となった案内板が哀愁を感じさせる。

 

盛者必衰とはよく言ったものだ。かつては栄えていたであろう広大な社も時間は残酷に万物を壊す。きっと、いつか私も忘れられるのかな。

 

「……鳴葉さんはずっとここで一人だったんだ」

 

彼女は栄華と衰退をここで過ごし、何もしなければ死を待っていた。飲み食いもせず、服も朽ち、なお僅かな信仰により孤独に生きながらえるのは考えられないほどにつらいだろう。

 

けれど彼女の事だ、きっとたまたま飽きて気まぐれでここを出て行ったに違いない。そして信仰を求め人里に降りたのだろう。そう思い耽っていると石段に不思議な足跡を見つけた。だいぶ前の乾燥した泥のようだが直径5㎝の綺麗な円状の人工的な足跡である。

 

「……っ!」

 

いや、まさか……でももし……ううん、そんなのは絶対にあり得ない。だけどこれって……

 

 

 

 

 

カツ カツ

 

 

 

木が石段に当たる音が響く。懐かしい下駄に似た歩行音だがどこか違う。本殿から来るその人物を恐る恐る見上げる。

 

 

 

「久しいな、燐火。お主、随分と信仰されたな。見違えるほどに変わった」

 

「!? な、何であなた、その姿は!」

 

「これか。知ってる癖に何を今更」

 

どこか高慢で余裕のある口調はしばらく聞いていなかった彼女の物だ。狐耳と尻尾の生えた全裸の少女。疑うまでもなく彼女は鳴葉さんだった。ただ唯一違うのは彼女は膝の下から足が無く棒を括りつけ義足にしていた。その足の切り方には見覚えがある。

 

「その足……あの子の」

 

「ああ、確かにこの体はかの者のだ」

 

「そんな……一年前に殺したのに!」

 

私は弓を出し矢をつがえ……

 

「まてまてまて! もう死ぬのは散々だ! ……そうそう、抑えて抑えて」

 

「……本当です?」

 

「うむ。お主見ないうちになんか喧嘩っ早くなってないか」

 

一体誰のせいで……とりあえず彼女の言う通りどうやら敵意は無いらしい。もう一度彼女をよく調べると信仰は寧ろ出会った頃より増えている。それについても話がしたいと鳴葉さんは本殿に上った。私も彼女の後を追いかける。

 

ー鳴葉大社 本殿

 

「まず座れ」

 

「はい、失礼します」

 

彼女は崩れた社の中適当な場所に座る。私は何時でも立てるようにしながら入口の段差に腰掛ける。

 

「……なんか遠くないか? 我、そんな信用できぬか?」

 

「……」

 

「はぁ……そうか。ならまずどこから語ろうか」

 

鳴葉はしばらくの長考の後、ゆっくりと自身の身について語った。

 

あの日、やはり彼女は死んだらしい。だがしかし彼女はやはり同じ鳴葉の神なのだ。鳴葉に信仰がある限りいつかは蘇る。災害で生じた多量の信仰は彼女に元の体を与えたのだ。

 

しかし新たに神が生まれても彼女には不審な点がある。同じ信仰でも彼女は最早忘れられた神に違いない。そうでなくとも歪んだ信仰は神の姿を汚す。なのに今の彼女は一部を除いて1年前の姿と全く同じだ。

 

それこそ、再生には莫大で純粋で病的なまでに妄信的な信仰が必要なのだ。

 

ー--

 

「左様、本来ならもう一つあの規模の街を潰す程度には信仰が必要だった。だがもう知っておるだろう、我は贄あって蘇ったのだ」

 

「…………」

 

何も言えない。だってあれは生きるのに必要な犠牲で、多くを助けるのには仕方のない死で、だから仕方がなかったのだ。何度も何度も頭の中で自分に言い聞かせ正気を保つ。ああもう、あの日からいつもそうだ。

 

しかしどうも抑えられずに口に出てしまい、鳴葉さんは憐れんだ目を私に向けため息をする。

 

「………言っておくがあ奴は死んどらんぞ。憎まれてはいるが心配せんで良い」

 

「え!?」

 

待ってそれは「その前にお主にも問おう。お主、この一年に何があった。最近、鏡を見たか。今のお主は酷い顔だ。酷い隈にこけた頬、頬体は年頃とて心はやはり未熟であったか」

 

鳴葉の崩壊を救った裏で私はあの後酷く荒れた。鳴葉さんはもうどうしようもないと割り切っていたから割とすぐに慣れた。それでも数日は何もする気が起きなかったけれど別の要因よりははるかに軽い。

 

問題は少女だ。足りない信仰を補うために足を切り落としたあの時の絶叫と肉と骨を断ち切る生々しい感覚がふとした瞬間にフラッシュバックする。そのせいで生物を扱う際時に嘔吐したり、矢をつがえる瞬間に不意にあの時のような切腹紛いの自傷をする。大体は耐えてはいるものの突発的な衝動は時に抑えられず何度も繰り返している。不幸中の幸いなのは少なくともナツメさん以外には発狂を悟られてはいない事だ。

 

おまけに最近は衝動を抑えるのに気を使い過ぎでストレスが溜まりよく眠れなくなった。不眠によって更に精神は不安定となり衝動は加速する。これが一年続いてもうこれ以上はまともでいられない。

 

一年間、ずっと矛盾を抱えていた。生かすために殺すのに何故生きる為殺しが罪なのか。答えはよく知っている、だが私の生まれた意味と相いれず、当然受け容れられる筈なんてなかった。

 

鳴葉さんに事情を話す最中ずっと手が震えていた。耐えきれずに出した吐瀉物には血が混じり話すことすらも体が忌避しているのは明白だった。手に入る力を逃がすために無意識に掴んでいた石段の角は指の形に沿って抉れていた。

 

「これが、私の、すべ……ゲホッゲホッ、うっ……お"ぅえええ」

 

涙ながらに全てを伝えた瞬間遂に耐えきれず吐き出す。食欲が衰えていたから吐瀉物は赤い透明な体液のみが口からこぼれ落ちる。

 

「……貯めてきたんだろう、だから今は好きなだけ吐き出せ」

 

彼女は一言だけ言って私の背中を優しく擦る。不器用で高慢な彼女の精一杯の慈悲に更に吐瀉の勢いは強まる。

 

「彼はな、お主に殺される間際に我に救いを求めたのだ。お主に恐れてくれたからこそ死んだ我を強く想起させ、体の大半は形成できて残りのお主の分の信仰も借りて寸分の狂い無く蘇れた。

 

そっからは適当に彼の体に残存するお主の奇跡で我の足切り貼りしてくれてやった。生やそうと思えば我の足は治るだろうがこれも戒めだ。暫くは治さん」

 

吐いてる最中で多くの内容は忌を即時に理解できなかった。しかしそれに続く言葉はこれ以上なく鮮明に聞き取れた。

 

「お前は一人で色々抱えすぎだ。我にはお主みたいに誰かを幸せに出来はしない、だけど使い方次第で神の立ち振舞は変わるのだ……ええい!硬いことはもういい、この前互いが友と知ったであろう!だからこれからは我を頼れこの愚か者が!」

 

「ゔっ……うぅ……っふ、やっぱりあなたって人は……最高です」

 

ああ、やっぱり。私と鳴葉さんは会うべきだったのだ。

 

「ああ、我は神としても「鳴葉さん!」

 

耐えきれずに鳴葉さんに思いっきり抱きつく。

 

「鳴葉さん、殺してごめんなさい!」

 

「ちょ、お主今日どうした!? 」

 

「鳴葉も大切だけど、あなたも、私はあなたがいないと……うわああああん!」

 

「……我も済まなかった。悪いのは神である前に人として何が欠けていた我の方だ。だからお主は嘆くな」

 

彼女は静かに腕を回し私を抱く。そして彼の胸の内でかつての過ちをお互いに謝りあった。

 

「なあ、我はまた巫女の家に帰ってもいいか」

 

「はい……帰りましょう!」

 

 

「あれ、鳴葉さん?」

 

帰りの石段の途中、彼女はふと立ち止まる。彼女は無言でこちらを見て

 

「お主の弓の光り方、ちょっと黒くなってなかったか?」

 

神の一時の感情により足を切られ、壊された鳴葉には信仰よりも恨みや不信感を募らせていた。都合が悪ければ絶対的な存在すらも業は人を疑わせる。つまり、最早神などとっくの昔からただの人の道具に過ぎぬのだ。こうして鳴葉は永遠に誰も救われぬ、鳴葉の禍は絶えぬのだ。いつかの黒姫はこれについて後世にこう伝えた。

 

「幸福より死の記憶って残るんだ。それは僕の記録を見ての通り鳴葉にはいいことなんて何もないんだよ。でも今の時代カルトでもなんでもあるしヤバくなったらまた適当に人柱に神様を作ればいい。2回目だしこれからが僕の仕事だね。あーあ、女の子二人との日常大好きなのに終わっちゃったよ。都合よくまた好みの子作れるかなー」

 

 

 

 

 

LOOPEND「厄災は終わらない」




END?

やっぱり鳴葉ってろくでもない土地じゃないか!

小説の適切な話数

  • 5話以下
  • 10話
  • 12話
  • 20話
  • 24話
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  • 36話
  • 40話
  • 40話以上
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