つゔぁいごっどねす!ふぉっくすふぁいあ!!!〜現代に生きる神様達は信仰が欲しいようです〜   作:囚人番号虚数番

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「観光都市鳴葉」 散歩ついでの探索

「…………ゔぅ……首が痛む」

 

久々に柔らかい布団の上で寝たせいで逆に寝違えた。布団から出て伸びをしてから……何をしようか。日はまだ登っていないし腹も減ってない。

 

「すぅ…………すぅ…………」

 

隣には燐火とかいう狐神が寝息を立て寝ている。昨日我が床に就いた時には別室の椅子で寝るとかでこの場にいなかったがいつの間にか入ってきたらしい。現に閉めた戸が空いている。出会って一晩の癖馴れ馴れしい奴め。

 

そういえば生活は巫女が支えると此奴は言っていたな。となると彼はこの家にいるのだろうか。部屋を出て家中探しても家には燐火と我以外は居ない。ただ衣服の中に巫女服と隣に幼子の丈では合わぬ女物の衣服を見つけた。おそらく巫女の物だろう。

 

「(燐火の服も見つけたが我も着れそうだ。今着る服は彼のであるか)」

 

昨日はこの服で家まで来た。上は全体的に丈の短い服で動き次第ではへそや脇が見えてしまいそうで少し恥ずかしい。下は逆にまあまあ丈が長く足の所に尻尾も隠せる。総合的にまとめると和服よりも動きやすい良い服だ。

 

ならば時間をつぶすにはいい案が頭に浮かんだ。

 

「歩くか」

 

 

 

 

 

 

ー鳴葉市街 神社前通り

 

帽子をかぶり外へと出る。日も登らぬ時刻とあり人通りは少ない。しかし目に付くもの全てが新しい我には寧ろ怪しまれずに観察できるから好都合だ。肌寒く薄暗い街道を一人静かに歩く。

 

軽く歩くに建物の数は多く、空き地のないほどに密集して建設されている。大通りの店は知らぬ土産屋と飯屋が隙間なく並び江戸にも見た名の店が残るのもあるにはあるが外見はまるっきり変わっていた。面白いのはいつの時代もここは古臭いが何処か綺羅びやかでどの店も見てて面白い店ばかりである所だ。

 

大通りを1本外れると更に街は姿を変える。綺麗な外面から薄暗く人の気が残る古い建物が並ぶ。生活感というのか、大通りよりかは歩きやすい。現にここには昔何度も人に紛れて訪れていて今日も楽しみにやってきた。案の定店が変わりすぎていて地理がまるで役で立たぬ。まさに新天地、だが妙に居心地はいい。暗い裏通りの間をもう少し探索を続ける。

 

そのためにも視界が通らぬ細い路地では不便だ。どこかに登れる所は……あるな。人気のない建物の道に面していない外壁に二階への入りへ続く階段を見つけた。階段を登り適当な柱を経由し建物の屋根の上にたどり着く。

 

「意外と体は動くな。小さい分小回りも効く。力不足と疲れやすいのが難点か」

 

屋根から屋根に飛び移り面白いものがないか探す。細い通路には名の知れぬ商店と廃墟がひしめき合い昼頃にはまあまあな賑わいを見せそうな予感を感じる。そして上から見ても道は複雑であった。

 

「ははは、上に来て正解だな」

 

しかし妙に落ち着く訳も同時に理解した。顔ぶれは変われど裏通りの複雑な道の形は長い時を経ても原型を保っているのだ。道理で妙に懐かしいわけだ。それでどこかに面白そうな店は何か無いものか。

 

「…………ん? あの店こんな時間からやってるのか」

 

遠くに明るく光る小さな店を見つけた。こんな朝早くからやっているとは珍しい。屋根伝いに近づいて外観を観察すると「24時間営業」と書かれていた看板が掲げてある派手な色の店だ。朝早くから空いているから飯屋かもと考えたがどうも違うようで見たことない風な店だ。屋根から降り、金がないから中には入らず外から見るか。

 

 

 

 

 

 

ー鳴葉市街 コンビニ

 

 

 

「(うーむ、この時間からやっているというのは見たことが無いな。誰か来る客がいるのか)」

 

 

 

「(営業時間が取り柄と看板にあるしもしや四六時中店を開けているのか?いや、まさかな)」

 

 

 

「(だが……書籍から怪しげな薬、奥には飯と燐火の飲んでいた例の緋色瓶。品に一貫性もないし物の数にしては店の者は女一人と。何をしたいのか今一分からぬ店だ)」

 

 

 

「(…………? 何やら女が忙しくなりおった。護符か何かを耳に当てて……あ、何か持って奥に行った)」

 

 

 

 

 

 

暫くすると女の代わりに男が出てきた。どうやらただの休憩に入っただけか、つまらん。まあ面白い所が見つけたし見飽きたから帰るか。

 

 

 

「ねえ君、電柱に隠れてどうしたの?」

 

適当に近くの柱に隠れて店の中を見ていたのだが後ろから声をかけられる。若い女で今さっきまで店の中にいた店員だ。神とバレては困るから彼の問には答えず適当にごまかす。

 

「言えぬ」

 

「家出したのかな?お家はどこか分かる?」

 

優しく宥めるようなこの物言い、完全に我をそこらのガキと一緒くたにしているな。大変屈辱だ。ここは一つ神らしく堂々と答えてやろう。

 

「問題ない、家は分かる。決して怪しい者ではない。我は最近この辺りに越した者でな、地理に疎く人のいぬ間に何処に何があるかを知っておきたくて朝の散歩ついでに歩きまわっていたのだ。心配させてすまない」

 

「ふーん……そっか。名前は?」

 

「素性の知れぬ者に教える名など無い」

 

多少教語りに嘘を混えた。これでどうか誤魔化せただろう。我は勝手に話を切り上げてその場から逃げ出そうとする。だが彼は先回りして逃げ道を防いだ。

 

「ええ、そんなあ。冷たい反応されるとおねえさん泣いちゃうよ」

 

「貴様、何が目的だ。不埒な行為が目的なら容赦はせんぞ」

 

「そんな凄まないで。僕はただ君の身が心配でね。あ、そうだ。ならお近づきの印にさっき買ってきたこれでどう?」

 

そう言って彼は手持ちの白い袋から小さな瓶を出した。そこには米酒と書かれている。成程、これで手を打とうという話だな。有り難く頂戴……

 

「なーんて、冗談冗談!子供にお酒なんてまだ早いからね。これは僕の、君には代わりにこっちをあげよう」

 

我が酒を手に取る直前に届かぬように酒を高所に上げ、代わりに緋色瓶を渡してきた。嘲笑しているあたり初めから酒を渡すつもりはなかったらしい。此奴、神の我を愚弄しおって。ひったくるようにそれを奪い彼に背を向けてその場を立ち去る。

 

「ちょちょちょ!待って待って!」

 

「(何なんだあの人間。我が子供の姿だからと調子に乗りおって。今すぐにでも殺してやりたい)」

 

「君、黒姫の子供でしょ!?今電話で聞いたんだよ!」

 

「さあな、勝手にしろ。それと早う消え失せろ」

 

「黒姫って巫女の友達から知り合いの子が起きたら脱走してた、今すぐ探してって!」

 

巫女が我を探してる?その言葉に我は歩みを止める。巫女といえば先日燐火の言っていた人物だ。あの家にも黒姫とあったような気もする。怪しい者だが彼が燐火の知人となれば話は別だ。彼についていくのもいいだろう。

 

「そうか。ならば早く帰らねば。先程は済まぬ」

 

「ふー、良かった許してくれて。僕も責任持ってついていっていい?」

 

「何許された気になっておる。騙しは許さぬ、酒も我に寄越せ。でなければ着いては来させぬ」

 

「ははは……小さいのに悪い子だね。お酒はせめて帰ってから飲んでね」

 

「悪知恵は貴様ほどでない」

 

そういえば彼も巫女の知り合いなのか。この人間の名も聞いておいて損はない。

 

「僕?ナツメだよ、よろしくね。君は?」

 

「巫女が知っておるかもな。はよ行くぞ」

 

こうして我とナツメは二人で歩き出す。彼の歩幅では幼子だと少々早く気を抜くと置いていかれそうになる。別に我は彼とはぐれてもう暫く探索を続けてもいいのだがより怪しまれるだけだろう。だが見かねた彼が我の手を取る、断る理由もないので大人しく手を引かれる。

 

複雑な道順をたどり大通りに出る。空が少し赤くなっている、きっと夜明けは近い。そしてふとナツメが止まった。

 

「君、神社の方には行ったの?」

 

「いいや。家周りの地理で精一杯でまだ」

 

「じゃあこの際行ってみる?人が出歩くまでもう少しあるし」

 

そう言い彼は大通りの先を指す。そちらの方は店が新しく、また看板の類もそちらの方を皆指している。成程、あの先が神社か。

 

「構わぬが友の頼みはどうする」

 

「あっそうだった」

 

此奴は本当に悪い奴だ。友の子を預かっているというのに笑顔で提案しやがる。自然過ぎて我も思わず聞き返してしまった。しかしせっかくの地理に詳しそうな者からの提案だ、しかも悪知恵が回る彼のことだから面白い話があるに違いない。神社には行かぬがその前に街について話を引き出そう。

 

「この辺りは昔から大きな神社を目当てに来る人を狙って観光……意味は分かる?「ああ」そっか。見てのこの通り店とか宿とかが多い地域なんだよ」

 

そんなこと遥か古くからこの地にいたから今更といった感じだ。この街の中心地はいつも社が中心である。違うのはそれが我の社か別の社かだ。

 

「神社の名は?」

 

「鳴葉稲荷神社。田舎にしてはまあまあ大きい綺麗な所だよ。君も帰ったら連れてってもらうといいね」

 

「いつ建てられた」

 

「無視かい。で、いつか?珍しいことを聞くね。ちょっと待って今調べる。スマホは……充電あるね」

 

ナツメはどこからか薄い板を取り何やらしている。すまほとかいう道具らしい。あんな手のひらの道具に歴史書が入っているか疑わしく念の為見せてもらう。

 

「!? ……これは凄まじいな(軽く見ただけで平安とか出てきただと!?)」

 

「ヒッキーペディア、信じてるぞ……お、あったあった。編集されてない。建てられたのは江戸後期、当時の災害で元々あった多くの神社が壊滅しその跡地に現鳴葉神社が建設された、そう書いあてる。もういい?」

 

「成程、全て分かった」

 

「(となると燐火の正体は我と稲荷のパチモンか。こりゃ元に戻ってもどうなることやら)」

 

 

ーーー

 

 

 

 

ー鳴葉市街 黒姫家

 

 

 

ピンポーン ピンポーン ピンポンピンポ−ン

 

「はーい、どなたで……鳴葉さん!?」

 

「今帰った。中々に活気ありそうな良い土地だな。巫女がいるのなら飯を頼む」

 

朝日が登ると同時に我らは帰宅した。戸を開けて我がいたのに驚き硬直する燐火をどけて強引に家に入り居間に向かう。その後ろから燐火は口うるさく文句を言ってくるが無視だ無視。

 

「ちょっと! 朝起きたらいなくなってて心配したんですよ!散歩へ行くなら朝食の後に巫女を連れていくつもりだったのに」

 

「落ち着け。ならまた飯を食ってから出るぞ」

 

居間には既に三人分の朝食ができていた。この際食の違いには言及せん、どうせ丸っきり違うのだから。適当に席に座り燐火にも座るように促す。

 

「むー……次からはせめて書き置きを残したりして伝えてから散歩に行ってくださいよ。それと洗面所があっちにあるから食べる前に手を洗って来てください」

 

まだ食えぬのか。だがそれ位なら彼をこれ以上怒らせるよりいい。素直に従って手を洗いに行く。洗面所は昨晩似たようなのを使ったから問題なく普通に手を洗えた。問題や疑問を強いて言うのなら先客がいたことぐらいだ。

 

「連絡受けてバイト早めに切り上げちゃったけど先輩ラーメンで許してくれるかな。あーでも四郎とかだと僕のお腹に入り切らなそうだしどこ行くか」

 

「おい女。貴様何故家にいる」

 

「待たせちゃった?すぐに終わらせるから手だけ拭かせて」

 

「そうではない! 送り迎えたら貴様の仕事は終わりであろう」

 

「さーあねー♪」

 

彼は曖昧に答えて洗面所から去った。あやつはやはりもっと早く殺しておくべきであったか。何かと癪に障るやつだ。後で塩の場所を聞かねばと下らぬことを考えて手を洗う。

 

「(まあ飯の前には帰るであろうし怒っていては飯が不味いだけだ。早く忘れよう)」

 

そうして居間に戻ると燐火は席に着いていた。だがそれでもあと一席は空いたままだ。

 

「巫女はまだ帰らぬのだな。」

 

「? さっき洗面所にいましたけれど」

 

「はぁ?」

 

疑問の声を漏らし座らずにいると牛乳と酒を持ったナツメが残りの席を埋めた。そして何事もなく我の席に酒を置いて彼の前の硝子杯に牛乳を淹れて1杯飲む。

 

「今日は焼き魚か。いつも僕に代わって美味しいご飯ありがとね」

 

「えへへ、ありがとうございます。昨日のスーパーで上手に安く買えたんです。お味噌汁のお豆腐も半額だったんですよ」

 

「へーあの割引スーパー惣菜だけじゃなかったのか。冷めない内に食べちゃおう。頂きます」

 

「いただきます。……鳴葉さん、食べないのですか?ご飯冷めちゃいますよ?」

 

「…………いやいやいやいや!? 何貴様ら呑気に飯食っておる! ナツメ!貴様巫女とは親友だと言っていたではないか!」

 

「嘘に決まってるじゃん」

 

嘘ぉ!? つまり此奴我と合ったときから騙していたというのか? この野郎切れ者の気がすると思っとったら既に彼に手球に取られてたのか。一発頭をひっ叩き首根っこを掴む。クソッ身長差が無くて持ち上げられぬ。おいこのアマ温かい目で我を見るな。

 

「燐火、この女についてどう説明してくれる」

 

彼を引っ張りながら燐火に詰め寄る。彼はあの女について何かを察したようで呆れてながら何をしたのか問い詰めていた。

 

「ん〜普通に燐火ちゃんから電話受けてバイト先前にいたから言いくるめて拾ってきた」

 

「あー……なるほどー。鳴葉さん、うちの巫女が申し訳ございません」

 

その言葉に燐火は何かを察したようで我に謝る。ということはやはり彼がここの巫女なのだな。お主の言う通り確かに癖の強い人間だ。我を神と分かっておいてここまで強気に出れる野郎は初めてだ。我は手を離してこのクソを睨む。

 

「貴様、神である我を愚弄したのだ。今度こそ真実を話せ。さもなくば……」

 

「はいはい、さっきは悪かった悪かった。僕は鳴葉稲荷神社の神主の正統な一番娘でありその後継者にしてニ柱の生活を支えるカワイイ巫女さんの黒姫ナツメでーす」

 

「随分ふざけた言い方だが……燐火?」

 

「もう!ナツメさんはいい加減に嘘をつかず本当の事を話してください」

 

「えーもう少し試させてほしいんだけど駄目?」

 

「駄目です。重ね重ねごめんなさい」

 

 

 

謝罪はいい、口喧嘩の勝利は巫女に譲る。聖職の者がここまで落ちぶれた野郎だと見抜けなかった我の負けだ。もう彼には何も期待せぬ。だから燐火にさっさとナツメに代わって説明してもらおう。

 

「で、さっきの話どこまでが真か?」

 

「ナツメさんは男性です。それ以外は真実です」

 

 

 

………は?

 

「あっ言っちゃった」

 

「……あれ、もしかしてまだ気づいていなかったんですか?」

 

気づかないも何も体格も細身で声も高く、ちと胸の無い所以外は女性の物である。顔も近くにいて当然一切の疑問を持たないような程に可愛らしく整っている。余りにも信じられずにいたから男の証であるブツがあるか机の下からナツメの下を見る……嘘はついていないらしい。

 

「な……な……な!?」

 

「お、顔真っ赤じゃん。大胆に調べたのに見た目通りに初心とは。生意気だけどかわいいね♪」

 

「う、うるさいぞ人間! 覚める前に早く飯食え!」

 




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