つゔぁいごっどねす!ふぉっくすふぁいあ!!!〜現代に生きる神様達は信仰が欲しいようです〜 作:囚人番号虚数番
ー鳴葉市街 公園
住宅街近くの大きな公園。大通りに面し高い木が生える。
様々な世代の人々が集まる一般的な施設で上位的な存在とは特に関係はない。
鳴葉の巫女の家に住み込み数日経ち我の体は人の生活に慣れた。そこで今は尾と耳を隠し燐火と共に最寄りの開けた場所に来てみた。ここでは我と同じかそれ以下の餓鬼共が集まり騒がしく遊具や玉蹴りで遊んでいる。無論我らはその為に来たわけではない。
「…………」ギリギリギリギリ
「よく狙え。あの家の者の頭を狙うんだ」
バッ! バシュッ!
「…………ふぅ……何とか当てました」
「4町分までは射抜けるとは並の武士より上手だな。今まで技量を知らぬにいたのが不思議なくらいだ」
生活に慣れ時期的にそろそろかと思い神の力を使う練習に公園に来た。二人で木に登りここから見える人共に光の大弓を当てる燐火の修練に付き合っている。神の力を使っているから人からは見えぬ、人目を気にしなくていい。だから彼は幼く凛々しい顔で堂々と弓で人を射る。
我もなけなしの信仰で神の力を使い神器だけ出さずに認識阻害をし彼の隣に立つ。まあ、我が出しても効果があるかと言われたらまだほぼ何も起きず、つまり我は無力に等しい。彼の弓も似ていて別に技量だけなら神の力を使っているのなら技量に補正が加わり熟練でなくとも当たる。つまり問題はここからで……
「うーん、でも効果は薄いみたいですね」
「そうであるな。大弓はよく飛ぶがそれ以上に効果の距離減衰が激し過ぎる。折り合いを付けるのならせいぜい50間が限界と見た」
いくら技量はあれど信仰が足りなければ奇跡が起こせず不十分である。練習内容はそのギリギリを把握する訓練である。
「信仰さえあればと考えましたが先行きが不安ですね」
「ちなみに稲荷の能力だと効力は如何程まで」
「豊饒と繁栄をもたらす、範囲はこの街一つ丸々入っていました」
街一つとは恐ろしい。そんな物の役割を燐火一人で担わねばならぬとは中々に手間がかかる。それでも接近で効果が出てるのなら己の足で地道にやるしかない。これも我の力があればすべて解決しそうである所がむず痒い。
「はぁ……集中して力を使ったら疲れました」
「じゃあ降りるか。よっと」ストッ
かれこれ1時間近く木の上にいたから足腰も辛い。二人で木を降りる。それから休息所の日陰の長椅子に座り水を飲む。事前に冷やして持ってきただけあって余計にうまい。横に燐火を見ると彼はいつものコーラを飲んでいた。
「燐火、お前またコーラか?」
「んく……はい。もしかしてソーダがお好きでしたか?」
飲み物は別にこれでいい。我の思い違いかもしれないが彼はい見てもそれを飲むものだからどうしてか気になるのだ。聞いてみたら彼は少し考え単に好きだからと答える。深く聞こうにも本当に特に思い入れがあるわけでもなく、口に合う以上に意味はないらしい。ただ語る言葉には妙に力が入っていた。
「ですが自作だけは二度としたくはありません。手間の割にあまり良く再現できた試しがないので」
「(店売りの品を自分で作るのは十分に狂人でないか?)」
そうしてしばらく日陰で座りながら二人静かに体を休める。それにしても今日は風が気持ちいい。子供が目の前で遊ぶ声の中に木が揺れ葉のこすれる音が僅かに鳴る。空も青く日もポカポカと温かい。ついこの間までいた古い社もこんな風だった。
ワーワー
キャッキャ
ウワーイ
「(ああ……気持ちいい。気を抜くと眠ってしまいそうだ)」
うつらうつらとし始めた時、ふと視界の隅の公園の端に小さな少女を捉えた。一人でうずくまり、微かに震えている。それに一人で来るにしても余りにも幼いから心配だ。燐火を連れ声をかける。
「どうした」
「うう……ママ………グス……」
「泣いてばかりでは分からぬぞ」
「ううぅ……グス……ヒッグ……」
駄目だ。泣きじゃくって話にならぬ。話の通じぬ野郎はいつだって嫌いだ。そういう輩は酔っ払いに限れば一発ぶん殴れば解決する。だが如何せん相手は子供だ。手荒な真似は出来ない。だが子供の相手などしたことないしな。
すると燐火が子供の前でしゃがみ優しく声をかけた。
「ねえ君、お名前は言える?」
「…………〇〇」
「〇〇ちゃんか。どうして〇〇ちゃんは泣いてるの?お姉さん達に教えてくれる?」
「公園にきて……先にあそんでくるねって走ってきたの。そうしたらママがいつまでもこなくて」
相手が燐火に変わった途端有意義な情報が口から出てきた。元から人当たりはいいとは思っていたがこうも目に見えて違いがわかるのは凄まじい。
で、こいつは親とはぐれたのか。あたりには子供だらけで大人は見当たらない。しかも木が生える分視界も悪く探すには骨が折れそうだ。
「母について特徴……ママはどういう見た目だ?」
「ママはね、おなかが大きいの。こんど弟がうまれるから」
母は妊婦と。ならきっと彼を探す母も辛いであろう。こうなれば我らの出番だ。燐火に視線を送る。
「そうですね。この子のお母さんを見つけてあげましょう。〇〇ちゃん、お姉さん達と〇〇ちゃんのお母さんを探そう?」
「うん……さがす。きつねのぼうしのお姉ちゃんたち、おねがい!」
「はい!」「うむ(狐の『帽子』か。バレてないな)」
そうして我々は少女を中心に手を繋ぐ。それと燐火に取り敢えず見つからなければこの公園の管理事務所に預けるつもりだとも歩き出す前に小声で耳打ちされた。それまである程度は歩き周り、たどり着くまでは本気で探すつもりらしい。
「しっかし何処もかしこも子供と家族ばかりでどれがどれだか……あ、広場に老人共が集まっておるな」
「この公園のゲートボール場があります。休日なので人も多いですね」
「お姉ちゃん「燐火、「げーとぼーる」ってなに?」とは?」
「うーん、高年のおじいちゃんおばあちゃん達に人気の競技の一つ、ですかね……? すみません、私も最近の細かい事情はそこまででして」
「高年の遊戯か。我らにうってつけだな」
そう言い我は冗談めかしく笑う。少女と燐火は顔に不明の字が浮かんでいた。だが燐火はすぐに意図に気が付きクスリと笑う。一応少女にあの人混みに母がいるのかと問う。そしたら彼が遠くて見えぬとぬかすので近づいてから当たり前だが彼はいないと答えた。
「ママはどこなの?」
「そう急かすな。焦れば見えるものも見えぬ……あっやべ。燐火早く行くぞ」
「うぇ!? ちょ、痛っ!?」
燐火の頬をつねって無理やり気づかせる。別の方を探すのに集中していた中で突然でされたのに驚き隠した下で彼の耳と尾がピンと張る。
「いっ……もしかして?」
「いたぞ」
今ちょうどあの老人らのいる広場の向こうにある入口近くの道路に不自然に辺りを気にしている女性を見つけた。彼の言うとおり腹も大きく彼がそうかと少女に問うと食い気味に母だという。そして彼の母はこちらに気づかずどこかに行ってしまいそうだ。今すぐに追いかけねば見失ってしまうだろう。
「急ぐぞ。先回りして呼び止めてくる」
そう言い残し我はその場から走り出す。子供の世話は我より燐火の方が上手い。それに彼には飛び具があるしあの距離であるなら援護もできる。
「援護はいいですけど間に合いますかー!」
「なに、足止めくらいなら手段さえ問わなきゃ楽なもんだ!」
「(足止め……神の力ですか? そういえばまだ鳴葉さんの奇跡は見てない)〇〇ちゃん、追いかけよう!」
我は老人らの邪魔にならないように広場の真ん中を避けて突っ切る。後ろをチラ見すると置いてきた彼らも同様について来ている。
「はぁ……はぁ……!(彼の母は道の向こう。しかも別の方に行ってるし人混みもか。これは厄介になりそうだ)」
だがどうにか彼の母を捉えたまま公園出口近くまで来れた。左右確認もせずに幅広の交差点の青信号を走りきる。そして人混みを押しのけて彼の母の背中を前に見た。
「そこの女、〇〇の母であるか!」
「えっ!? あ、ええ、はい。そうですが何か御用ですか」
「娘がお主を探しておる。今すぐ公園に迎えに来てやれ」
その言葉に事情を察し困惑から顔色を変えてありがたそうに案内を頼まれる。だから我も彼の願いに応える為自身を持って返した。だが彼には我を変に捉えたのか温かい目と笑みでこちらに着いてくる。十中八九子供だと思われているだろう。だから仕返しにこちらは神であるぞ、もっと敬えと文句を言ってやった。それも笑われたがな。
だがこうしてマトモに信者稼ぎをするのも楽しいものだ。横断歩道に差し掛かって丁度変わった青信号を彼の母を連れて渡りながらそう思う。
「ママ!」
「鳴葉さーん、ここですよ」
燐火と子は既に向こう側で待っている。彼の子は特に嬉しそうで飛び跳ねながら手を降っている。
「ほれ、お主の子はあそこで待っておるぞ。次は見失わずはぐれぬようにな。近々面倒を見る相手が増えるのなら尚更だ」
「ええ、ありがとうね。小さな神様さん。お腹の子が生まれたら神社にお礼に行かないと」
「ならば鳴葉の大社に来い。古き神の我がお主と子の身だけは守ってやる」
「ありがと……うっ……」
ドサッ……
「おまっ……どうした!?」
横断歩道を渡る中程で彼の母が突然倒れた。それに顔色も悪い。クソっ、妊婦の体調は変わるときにはとことん変わる、だがそれでも今は時期が悪すぎた。
「おねえさん、ママが「行っちゃだめ、信号が変わった!」
「(何だと、不味い!)」
青信号が点滅し赤信号へと変わる。そして交差点の方から何も知らない車がどんどん押し寄せる。しかも先頭の車に至っては巨体のトラックである。我がいくら止まれと願えども止まる様子はない。
「おいおいおいおい! (このままじゃ轢かれて死ぬ、引きずってでも……お、重くて運べぬ!)」
女児の体の筋力では妊婦一人運ぶことすら難しい。腕を引っ張ってもびくともしない。かと言って雑に運べば此奴の腹がどうなるか分からぬ。
「ふぬぬぬぬぬ! ぬおおおおうごけええええええ!!」
「きゃああああ!ママあああ!!」「鳴葉さん、援護しますから頑張って!」
燐火はまた神の力で大弓を出し母の体を射る。すると母は目を開けて僅かに動いた。だが起き上がるには足りず安全圏まで動くのは相変わらず難しい。彼一人の力では力不足だった。
そうだ、一人ならだ。二人の力なら何か変わるかもしれない。
「(こうなったら……使えるかは分からぬが我の力を使うしかない、いや使う!)」
「一か八か、やってやる! 燐火ぁ、一発強いの頼んだ!」
「っはい!」
我は彼を引くのを止め迫りくる車の前に立つ。そして車の運転席を睨みながら一杯に祈った。運転手は居眠りをしているようで俯き前を見ていないのが見えた。全く、居眠り癖のあるようなだらしない奴はいつか大事を起こすと教えられなかったのか。
「だから今から起こる全てをお主は受け入れろ。神の願いからは人は避けられぬのだ。特に鳴葉の土地神は特に我儘だからな」
「すぅ……………」
燐火は目を閉じて一度深呼吸をする。弓矢を持ち、また力の為に祈るのだ。
「(お母さんの方に奇跡を使っても効果はない。トラックに撃ち込んだらもしかしたら止まってくれるかも知らないけれど普通倒れている人がいたら減速する。つまり……運転手は寝てる?)」
その時、燐火は閃いた。
「っ鳴葉さんの力だ!」
燐火は叫びの言い終わらない内に無意識に矢を取り鳴葉の体を射る。そして少しでも一発逆転できる奇跡が起こるように2本3本と続けて当て続ける。誰にも見えないが、燐火の放つ矢はまさに光の柱のようであった。
「はあああああああ!」
キキーッ ドッ! ドゴォ!
「ママぁ! しんじゃやぁだあああ!」「鳴葉さん無事ですか!」
車はガードパイプにぶつかり後続の車もトラックの後ろにぶつかる。それを避けようとした車は周囲の店を破壊しながら停止。辺りは正に惨状といった様子で血と石片で戦の後を思わせる。燐火と子からは車の残骸に阻まれて見えない。ガラス片に注意して回り込んで彼らの無事を確かめに渦中に行く。
「はっ……はっ……た、助かった?」
「鳴葉の守り神の力は絶えてなお健在か。怪我はないか?無くても後で医者に診てもらえ。子ならあそこだ」
交差点の先を指さして教えた。そして母は我の助けを借りながらふらふらと立ち上がり事故現場の真ん中で子と再開した。
「ママー!」
「〇〇! どこ行ってたの。勝手に遊びに行っちゃ駄目でしょ! ……とっても心配したんだからね」
「ごめんなさい、ごめんなさい……うわああああん!」
そして親子二人で惨状の真ん中で強く抱き合う。お互いの命が助かった奇跡に感動し涙を流して喜んだ。
「〇〇、泣いてないでここまで案内してくれたお姉ちゃん達にお礼を……ってあの子達はどこ?おーい」
ー鳴葉市街 黒姫家
「……えー次のニュースをお送りします。
今日の昼間〇〇県鳴葉市にて大規模な玉突き事故が発生しました。多数の死者を出し、また周辺の店などを巻き込んだ事故の為被害の詳細な情報は現在調査中です。
事故当時事故現場の近くにいた人物からの声は……
『本当に酷い事故だよ。お腹の大きな妊婦さんと子供が倒れてたと思ったらこれだよ。昼間から嫌なもん見たわ』
『交差点に車が来て、それを避けた車がビルの中に。それが原因で近くの建物を巻き込んで崩れて……』
………次のニュースです。鳴葉市街の公園にてゲートボール中に乱闘が起き死者、重症者を多数出す事件が……」
「僕の予想通りだったか。けれど文献に書いてあるのがホントに事実だなんて」
ガチャ
「只今帰ったぞ。なあ、やっぱ一声かけてから帰ったほうがいいんじゃないか?」
「ただいま帰りました。神様的にはあれでいいんですよ。奇跡ってそんなものですし」
<おかえりー コーラ冷えてるよー
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