つゔぁいごっどねす!ふぉっくすふぁいあ!!!〜現代に生きる神様達は信仰が欲しいようです〜   作:囚人番号虚数番

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今回から視点変更が起こります。見ずらい等の指摘をもらい次第修正の検討をします。


「鳴葉」古き神の鳴葉

「燐火、我がここに住んでから1ヶ月経ったな」

 

朝食を終え巫女がお勤めに行って二人きりになったリビングにて鳴葉さんはソファーに寝ながら突然にそう呟いた。確かにカレンダーを確認すると家に招いて1か月が経っている。ただなぜ今それを話したのかが気になり朝食後の皿洗いをしながら聞き返した。

 

「そろそろ社に入る儀式を始めたい。お主が信仰の扱いに慣れたから本格的に信者集めに入りたいのだ」

 

しばらく無言が続く。信仰についての話であるならばもう少し真剣に話さないとならない。皿を洗う手を遅くし考えながら答えた。

 

「申し訳ありません。鳴葉さんからご指導を受けているのですが私は未だ街一つを救う技量までは自身がありません。だからもう少しだけ待ってもらえませんか?」

 

鳴葉さんに教えを請い今まで少しずつ成長してきた。最初はアイスの当たりを引いたりゲームで良いものが手に入ったりと日常で起こる小さな幸せを叶えるだけだった。それがいまでは4桁まで南京錠を一発で突破できるまでになった……あ、悪用するつもりはないのであしからず。

 

それと私の神器についても性質を調べてみたら純粋な弓としての機能もあるらしい。だが武器として維持できる範囲はまだまだ狭く奇跡が起こせる範囲の半分にも未だならない。使う時は来ないだろうが己の技量を示す1つの指標にもなる。

 

鳴葉さんは体を起こしノートパソコンを持ってきて起動する。画面は向き的に見えない。5分ほどしてパソコンを閉じて洗い物を終えた私の隣に来る。

 

「心配するな。お主の成長速度から考えるに信仰は十分にある。もっと自信を持て。それに我の力が十分に戻れば信仰を集めるのに必要な『場作り』ができるからな」

 

「そうですか。なら早くするのも一理ありますね」

 

そこからは鳴葉さんが皿を拭きながら相談を続けた。何が必要かだったり何時に神社に出向こうか、その後の流れはどう動くのかとかを話し合う。概ね問題はなさそうだ。

 

「でも……やっぱり心配です。未熟な力で人々を救えるのでしょうかね」

 

気がかりなのはこの1点だ。だが彼女はこれに答えをくれた。

 

「簡単だ。逃げるなら追い込め。我はそうやって力を使って生きてきたんだ。ああそうだ。今日の夜、夕飯時までには覚悟はしておけ。今夜には出るのだからそこから仕事をする」

 

仕事?

 

「だから、本格的に信仰を集める。場は我が整えるからきっと協力はできないだろう。とかく今夜は激務になる。覚悟しておけよ」

 

 

 

ーーー

 

 

ー鳴葉稲荷神社

 

夕方の鳴葉稲荷の長い石段を二人で登る。7時を過ぎ空もすっかり暗くなると観光地とはいえ参拝客も少数だ。オフシーズンの平日でもありすれ違う人もいない。ただ2人の足音が暗い木々の間に響く。それが酷く不気味で何か悪いものが出そうと感じ慣れた景色なのに妙に寒気がする。

 

「お主緊張しているのか? 歩みが遅いぞ」

 

「緊張もそうですがその、周りが暗くいので。情けない話ですがお化けがでそうで……」

 

「神の癖して物の怪に怖気つくとはつくづく面白い神だな。腰を抜かぬように夜目効かせて周りをよく見てろ」

 

会った時からそうだが鳴葉さんはかなり頼もしい。永い時を生きた余裕があり大胆に動ける度胸もある。見た目は私と変わらない小さな背丈の狐耳としっぽの生えた少女。違いは綺麗な銀髪で顔も私と比べ大人らしいところだ。そして一か月一緒に生活して口調に反して愛嬌のある人物だとも知れた。それ以上に謎も多い人物だとも知っている。

 

私達は石段を登りきり本殿前の広場にたどり着いた。提灯と現代的な街灯の明かりに照らされそこに人はいない。しかし普段なら営業の終わっているはずの授与所が今日は光が灯っていた。神社の者が残るとは信じがたい、だが誰がいるのかは見当がついている。売り場の曇りガラスの小窓を軽く叩き中の者を気付かせる。

 

コンコン

 

「んーお客さんですか?残念だけどお守りならもう売ってないですよー」

 

「またお主か。どこにでもいるなお前」

 

「黒姫さん、お仕事お疲れ様です。コンビニのお勤めが終わったのなら一度帰ってほしかったですね。それと職場でないのに侵入は止めてください」

 

「そうだぞ。飯くらい食ってから……って燐火!?こいつ神社に勤めて無かったのか!?」

 

「ああ、君たちね。今窓開ける」

 

開けられた窓の先には巫女服の黒姫さんがいた。彼は何というか不思議で掴み所のない方だ。彼は男性であるのに女性の服を好み、宮司の息子であるのに巫女と名乗る。一応神社を継ぐために宮司になるための勉強はしてはいるらしい。しかし「あんな親の目のあるところは嫌だ」との理由でここで働かずわざわざコンビニでバイトをしている。

 

「つまり今の巫女はほぼ不法侵入なんですよ」

 

「なぜ止めぬかなどは最早聞くまい。どうせ此奴が聞かないのだろう?」

 

「いつか捕まるからやめてと注意しています。ですがいつもいつも見てない隙にしれっといるので止めようがないんです」

 

「お主も苦労してるんだな」

 

「ふふふ♪ いつも神が人を制御できると思わないことだね。で、ここに君たちがやっと来たということは神様組はいまからお仕事?」

 

「はい。黒姫さんはどうしてここに?」

 

「君たちが何かするつもりそうだったから見届けたくてね。それにここなら何があっても平気そうだし。そうでしょ、鳴葉の神様さん?」

 

彼が何を言ってるのか分からないのはよくある。ただどうやら応援に来てくれたみたいだ。彼は一度奥に行き、戻った後に古い鍵と白手袋を渡された。

 

「これは本殿のカギか?」

 

「へー鳴葉ちゃんって意外と覚えてるんだ。そうだよ。で、今監視カメラを細工してきた。もう人は居ないけど念のため本殿に用があるなら裏から侵入して。指紋とかも付かないようにご神体を触るならそれ着けてからね」

 

作戦を話していないのに大分周到に準備してくれた。元は隠れて鍵を借りる予定だったし警備まで解除してくれるとはありがたい。

 

「ありがとうございます。それでは行ってきます」

 

「早く済ませて仕事に取り掛からねばな。黒姫、お主も身の安全に気を付けとけよ」

 

「はーい、ご忠告どーもー」

 

三人のやり取りの声が響く明るい授与所から暗い本殿を見る。そこは人一人おらず、そして暗く、しんと静まり返っていた。そんな中を鳴葉さんとふたりで巫女に貰った鍵を片手に持って本殿に向かう。観光客の立ち入れない木々の隙間にひっそりとある古く小さな扉を開けて冷え切った本殿に入った。

 

 

ー稲荷稲荷神社 本殿

 

鳴葉稲荷神社の御神体を祭る本殿。古き社から移設された豪華絢爛な社のその奥には爛れ朽ち果てた見せかけの信仰、その成れの果て転がっている。

 

幾年もの歴史の刻まれた本殿は鳴葉の歴史の一部で欠落ばかりの偽史でしかない。本来土地そのものを神体とした信仰に偶像の類は必要ないのだから。

 

 

 

本殿は表から見れば荘厳華麗な内装も裏から見ると地味だ。表からは神籬や鏡が見えあたかも神社であると一目でわかる。しかしそれとは対照的にご神体の置かれる奥の真に神のいる場は簡素で装飾もない、見るものが見れば空の倉庫のような部屋だ。

 

日の本の神社としては異質だ。しかしこれはこれで好きな雰囲気でもある。神域は飾り気のない純粋な信仰だけでいいのだから。

 

 

「……緊張するな」

 

「ええ、ようこそ。私の神域、その最深部へ」

 

彼女は見るからに緊張し顔は固く、声も小さいから硬い口調に拍車がかかる。実は私もここに来るのは久しぶりで緊張している。お互い人の感覚に慣れすぎた気がする、そう彼女に伝えると一度は否定するもやはりそうかもな、と認めた。

 

部屋の端に一つの古い木の箱がぽつんと置かれている。傷ついた箱には雑な荒縄で封がされ上面に消えかけの毛筆で「鳴葉 神体」と書かれている。手袋を着けた手で慎重に封を解き、布に包まれた中身のご神体を手に取る。

 

 

 

異形の頭蓋

 

鳴葉稲荷に祭られる頭蓋。形は大まかに狐の頭蓋に似るが細部の特徴から歪んだ人の頭蓋である。強く締め付けられ、ひびが入り酷く損壊している。持つ者に災いによる加護を与える。

 

これはとある罪人の祖先の頭蓋である。そして少しでも真実を残す為に宮司が唯一持ち込んだ大社の宝物であった。

 

 

 

「うう……あんまり見たくない。それに狐の骨とはいえいつ見ても怖い……」

 

「頭蓋が御神体とはおぞましい」

 

ひびの入った頭蓋、これが私のご神体とされる物だ。ちょっと怖いし変わったご神体であまり見せたくなかったのだ。恥ずかしいのももちろんある。そんなご神体を鳴葉さんは懐かしそうに眺めている。まるで旧友の写真を見るような視線だ。そういえばこの辺りで狐を見なくなって暫く経つ。もしかしたら彼女もそれを感じて感傷に浸っているのかな。だけどそれは儀式の後で良い。

 

「鳴葉さん、手順は覚えていますね」

 

「あ、ああ。すまん。始めるか」

 

彼女は床に御神体を置いた。そしてその前に跪き、目を閉じて手を合わせる。

 

「すぅー…………」

 

パンッ パンッ

 

二拍手の音が小さな部屋によく響く。残響が続き、そして終わり再び静寂に包まれた。

 

「行くぞ」「ええ」

 

彼女は効果が出ないように神の力を使いながら片手で御神体に触れもう片手で祈る。神の儀式には派手さも言葉も不要だ。ただ無言で自分と頭蓋に集まる信仰とを一つにする事だけを祈るのだ。

 

 

「………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま静寂の中を二人は5分ほど過ごした。鳴葉さんが静かに立ち上がり儀式の終わりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

「……もう終わってたのか」

 

「終わったようですね。これで神の力がたくさん使えるようになる筈ですが、どうです? 何か変わりましたか?」

 

彼女は体を見回し、頼まれて私も彼女を一周見るも特に変化はない。だがその内に秘める信仰が大きくなっているのを感じる。あとは力が使えるかどうかを試すだけだ。

 

「実戦で試した方が早い。巫女に一声かけたら次はお前の仕事だぞ」

 

彼女は儀式を終えたと思ったらすぐに御神体を元あったように閉まってそそくさと立ち去る。私の質問に答える間もなく社を走って出た。念の為証拠が残ってないか確かめて鍵を閉めてからゆっくり巫女のもとへ向かう。どうやら授与所で何か話しているようだ。距離が微妙に遠くて内容はあまり捉えられない。だが終わり際だけは聞こえた。

 

 

 

「お主、もしやまだ持ってるな?」

 

「さあね♪ あ、ほら燐火ちゃんきたよ。まだお話しする?」

 

「……くっ!」

 

 

 

「もー鳴葉さん、せめて慎重に出て行ってくださいよ」

 

「儀式お疲れ様。無事終わったなら次はお仕事だよね」

 

理由は分からないが鳴葉さんは巫女を恨めしそうに睨んでいる。かつてないほどに険しい顔をするものだからどうしてか理由を聞きたい。が、私がいるのに気が付いた途端に会話を止めた。そして強引に私の手を引きながら本殿を去った。去り際の巫女の

 

「おーい、お仕事頑張ってねー燐火ちゃーん」

 

とやる気のない応援が妙に耳に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのー鳴葉さん? 一体どこまでくんですか?」

 

「すぐそこの見晴らしの良い所まで」

 

鳴葉さんに手を引かれて石段を下る。明かりも少なく足も速いから何回か転びそうになるが彼女はそれもお構いなしだ。石段は長くそこそこの角度がある、そうでなくとも階段で急いで欲しくはない。とはいえ彼女の言った通り見晴らしの良い街の景色の見える場所で止まってくれた。

 

鳴葉市街は昔より明るいとはいえ暗く、逆に駅周辺の高層の建物群は夜でもしっかりと栄える様がここから見える。きっとあそこはいつまでも日が沈むことはないのだろう。初めて見た光景ではない、それで私の感覚が古いのかこの地の栄華を映すここの景色はいつ見ても感動する。

 

「綺麗な夜景ですね。ちょっと前まではあの街も真っ暗だったのに」

 

「今何時だ?」

 

「あのーもうちょっと感動しませんか?」

 

「それより時間は?我は時を聞いとるのだ」

 

「えーと、とりあえず手を放して貰わないとスマホが取り出せないのですが」

 

手を放してもらいスマホの時計を見る。画面に表示された時刻は7時半を指していた。そういえば彼女は朝の段階で夕食時をしきりに気にしていた。何か意味はあるのだろうか。

 

「単純に活動している人が多いから派手に力を使うにはいい。神の力を使うなら目撃者は多い方がいい。だろ?」

 

「ほー。でもあれ? なら昼間に出直してみるのはどうですか? 今日はもう暗いですから足元も危ないですよ」

 

「馬鹿いえ、そうならはじめからそうしておる。多くの者は家に帰っている。街にいる者もきっと酒を飲んでいる時間帯だ。季節が真冬なら深夜も望ましいな。ただまあ、綺羅びやかな景色だとは認めよう」

 

彼女も私と同じように遠くのビル群を眺める。

 

 

 

 

「だからこそだ」

 

彼女はおもむろに神の力を作動させた。

 

 

 

 

 

 

 

「あの光がいっぺんに消え去ったのなら、そりゃすごい大事になりそうでないか?」

 

「……え?」

 

 

 

ゴゴゴ……

 

「! 地鳴りがっ!?」

 

突然地面が音を立てて揺れ砂埃が巻き上がり石段が割れる音があちこちから響く。私はまともに立っていられずに膝を着く。そんな場なのに鳴葉さんは依然として遠くを眺めている。それも何か恍惚しているような、だが子供らしい。寒気のする横顔だ。

 

「おお……おおっ! 全盛期までとはいかぬとも軽くしただけでこれだけか! お主、信仰不足とは何だったのだ」

 

「!? この地震……あなたの力なんですか?」

 

「如何にも。人々からは『鳴葉の禍』、そう呼ばれていた。今、神器を見せてやろう」

 

彼女が神の力を強めると体から炎が湧き出る。至近距離に位置するが熱くはない。だが炎に触れた部分が腐臭を出しながら黒ずんで朽ちていく。危険を察知して石段を下り彼女から離れた。段々と紫炎が体を包み、ついに炎が体を覆いつくし、そして凄まじい爆音と共に爆発した。私はどうにか踏ん張って吹き飛ばされずにいれた。

 

 

 

ドゴォォンッ

 

「(とんでも無い威力……こんな力をどこから……)」

 

「見るがいい新たな鳴葉の神よ。これが古き鳴葉の土地神、その厄の根源の神器ぞ」

 

炎の中から姿を表した彼女は紫炎、恐らく彼女の神器を纏っていた。そして現れた彼女は幼い少女の姿とは大きく離れた姿だった。

 

元の手には不揃いな炎の爪が生え、加えて全身から枝分かれした歪で不完全な腕が生える。尾は元の狐の物の造形を形作るも毛の代わりに燃える剣が包んでいる。

 

体自体も大きく変化し幼年から若年へ成長した。顔は大人びて美しく、狐耳と白髪の先端が黒く染まる。元あった服は腐り果てて無くなり、代わりに炎が服代わりに恥部を隠している。だが多くの部位をさらけ出し、爛れた腹からは絶えず赤黒い液体の中身が垂れ落ち地面を腐食する。

 

見た目は醜い獣で最早神ではない。物の怪と現した方がいい。思わず身がすくむ。その様子に満足した彼女はまた街の方を向き手の平を向け力を貯める。手から漏れ出す紫光に本能的な恐怖を感じるが私は何もせずただ見ることしかできない。

 

そして彼女の「我が鳴葉の為に燼滅せよ」の声の後、厄災は一筋の光として放たれ駅前の繁華街を貫いた。そこまでになりやっと私は動きだし街の様子を見る。幸い街は遠目から見ても何事もない。だが、逆にそれが私を不安にさる。

 

彼女を睨んで震え声で聞いた。

 

 

 

「一体何をしたんです、何が起こるんですか!?」

 

「さあ、我にもそれは分からぬ。今宵の禍は何を起こすか見ものだな」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ……!

 

「また地震が……!」

 

「……そういっとる内に崩壊が始まったな」

 

今度の地震はさっきのより遥かに大きい。本能的な恐怖を覚え頭を抱えて目を瞑って丸くなる。暗闇に響く木々の軋む音が私の恐怖をさらに煽り思わず涙すら出てきそうだ。だがそうなろうとも鳴葉さんだけはすぐ傍で立って街を見下ろしている。

 

揺れは5分ほど続いた。力の抜けた足腰で恐る恐る立ち上がる。鳴葉さんは既に身醜い化け物から元の私の見知った幼い少女に戻っていた。ただその顔は月明りだけでは見えず何を考えているのかは分からない。

 

……いや、おかしい。何故だ、何故さっきまで平気だったものが見えなくなっているのだ?ゆっくりとあたりを見回して違和感の正体を探ると答えは簡単に見つかった。

 

「(明かりが全て消えてる。さっきの地震で停電が起きたんだ)」

 

本殿の方も暗く、そしてあれほど明るかった鳴葉の市街もまるで初めから無かったかのように息を潜めている。どうしてこうなったと困惑する私に鳴葉さんは答えた。

 

「今の地震は地下空洞をいくつか潰した余波だ。駅前の水道管、地下道、地下鉄、地下施設、それとはるか地下にある名も知れぬ洞窟や地底湖を同時に潰した。きっとあの辺りの人間は今頃深い穴の中だろうな。我ながら酷いことをしたもんだ」

 

「駅前を、壊した? 今、この時間帯の駅周辺を、ですか?」

 

「しかも明かりまで消えたのだから奴らにはひとたまりもなかろう。だが安心せい。この社一帯はおそらくだがあそこまでは酷くはないであろう。一応狙いは付けておいたから物が落ちての怪我位しか……おい、へたり込んで呆然としとるが平気か?」

 

彼女の話を聞いている最中段々とこの状況も飲み込めてきた。陥没した町、鳴葉の禍の名、廃墟の大社……全ての情報は出揃わずとも概ね何を起こしてきたのか嫌な予感がしてきた。

 

「あなたは…………」

 

「何だ?」

 

「あなたはひょっとして、人を殺したんですか?」

 

「あの惨状だ。きっと多くは死んでいる。だがまあこれでお主は……」

 

 

 

ビュンッ!

 

「この人殺し!」

 

立ち上がり弓を手に取り弓を射る。放たれた光の矢は鳴葉さんの心臓を的確に狙い一直線に飛んでいく。だが奇跡は載せない、純粋な殺意のみを込めた武器としての神器を彼女に向けた。しかしゼロ距離であるにも関わらず紫炎の手を体から生やして光の矢を掴み腐らせる。

 

まだ足りない。紫炎を矢切りで牽制し近づき掴みかかった。そして激情に狂う心の内をぶちまけた。

 

「神は人の信仰無くしては生きられないんです! なのに……なのに……なのに! 神様が私情に振り回されて人を殺してどうするの!」

 

私は涙ぐみながら怒りをぶつける。正直自分では彼女に何を言っているのか頭で考えていない。ただ本当に心の内にある言葉を彼女に訴えかける。一方彼女は意味の分からぬ風に逆に呆れ返っていた。

 

「神なんて人の信仰を食らうだけの寄生虫じゃぞ。むしろ神が忘れられた時代にゃ今更食い物にしたって誰も気づかんし都合がいい。お主だってそういうつもりだったのだろう?」

 

「っだけど誰が町一つを壊滅させたいだなんて望みました!?」

 

確かに私は自らが生き延びる為に社に二柱を住まわせた。それは人を裏切る行為に等しい。それでも相応の力とそれを扱う技量を手に入れ真っ当な方法で信仰も集められるとも考えていた。だから奇跡的に巡り合えた鳴葉の神とこれからの鳴葉の歴史を紡いでいく。そう夢見ていた。しかし彼女はどうでもよさそうにため息をついて愚痴を零した。

 

「いつもいつもいつもいつも……人間ばかりが食い物にしてきたつもりだろうが、まー馬鹿な奴らだ。あいつらだって蝕まれておるのにな。何度も何度も壊して、あんなに悲しんだはずなのにな。都合よく忘れゆく。人とは便利な生き物だこと」

 

至近距離でなら小さな愚痴も聞こえる。聞こえてしまった愚痴は私に嫌な予感を思い起こさせた。

 

「っ鳴葉之命!まさかあなた、これが初めてじゃないのですか!」

 

「あたりまえだろう。それが民の願いだからな。生まれた意味に従って叶えてやった」

 

「数多の人を殺して何が願いを叶えたのですか!ただ闇雲に人を悲しませて……あなたは神じゃない、ただの邪神だ! 獣だ!」

 

初めて会った時の私に伝えたい。彼女はこんな人だとは思わなかった。同じ狐の姿の神として親しい気になっていた分裏切られたようで心のままに罵る。そして悪霊という単語が彼女の逆鱗に触れ怒りを顕わにした。冷徹な目で睨みつけているもその瞳の奥に激しい殺意を含んでいる。

 

「あ? 我が邪神だと? あんなもんと同じにされるだなんて心外だな。はぁ……死にたいと申すか、小娘」

 

「……っ!」

 

紫炎を宿した目をもろに視線を合わせてしまった。あの目は本気で殺すつもりだ。誕生して初めての同族による殺意に思わずひるみ手の力が抜ける。そこを彼女が見逃す筈なく腕を払われる。もちろん止める事は出来なかったし出来るわけもなかった。

 

「怖気づいたな。当たり前か。たった2、3百年程度の子供が強がるからだ」

 

「たった……?」

 

? 彼女も江戸の生まれではないのだろうか。

 

「詳しいのは黒姫が知ってるだろう。調べたいなら勝手にしろ。だが果たしてお主にそんな余裕があるかは知らぬがな。きっとお主だ、街は放っておけないのだろう?」

 

「! そうだ、早く街を救いにいかないと……」

 

こんなことをしている内にもあの街では被害が拡大しているに違いない。社で話してないで神として人を救いに行かなければならない。一度彼女を強く睨んでから私は石段を駆け下りていく。

 

「やはり行くようだな。なら古き神として一つ助言をやろう。迷えば死ぬ。感性に従え」

 

 

 

 

「(お願いです。鳴葉の皆さん、まだ死なないで下さい。今私が向かいます!)」

 




私事ですが投稿初日は誤字脱字ばっかなのに二、三日後にやっと修正されるのは校閲方法が読み上げ機能を使用しないといけないのと単に気が乗らないからです。読者の皆様には本当に申し訳ありません。

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