つゔぁいごっどねす!ふぉっくすふぁいあ!!!〜現代に生きる神様達は信仰が欲しいようです〜   作:囚人番号虚数番

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「鳴葉の虚穴」 廃墟の街

ー鳴葉の虚穴

 

神による厄災により生まれた地面に空いた大穴。底は見えず、つかの間の平和と栄華を享受していた都市の跡地が眠っている。それでも陥没してから日は浅く僅かに生き残った者がいるかもしれない。

 

何度も焦土と化してきた鳴葉はきっと数年もしないうちにまた蘇るはずだ。古い神はだから壊した。新たなる時代を担う者への継承に傷ついたこの地を与えたのだ。

 

 

 

 

 

 

突然の大規模なシンクホールにより鳴葉駅の周辺はまさに地獄の様相を呈していた。後のある報道によれば穴は深さ100m、直径は市街丸々飲み込んだ日本でも類を見ない災害であった。

 

夜の夕飯時で人の活動も多い時間帯の大規模な大害は地震や火災、停電等のいくつもの災害を併発し、さらに「不運なことに」救助に向かう筈だった機関も何故か併発した災害によって機能停止。その他の救助団体も様々な要因が重なり、始めての救援には数日以上の時間がかかったという。

 

 

 

だからこそ、神とは訪れるのだ。一柱の狐耳が大穴の上から見下ろしている。

 

 

 

「(随分深い穴。これを鳴葉さんは私の信仰を借りて成し遂げたんですね)」

 

一度家に帰り巫女の自転車を借りて夜道を走り抜け鳴葉駅前の大穴へとやってきた。穴の底は暗く念の為持ってきた懐中電灯も折れたビルばかりが見える。僅かに光は漏れているがそれは赤い煌めく光、おそらくどこかで発生した火災だろう。周囲も下ほどでないが静まり返り水道管から漏れる水音と物の燃える音が響く。人の気配も殆どない。きっとそれは今が10時過ぎなのと偶然が重なってのことだろう。それか、それだけ多くの人が……

 

「……考えても仕方ありません」

 

 

 

 

タッタッタッタ……  ダッ!

 

 

 

 

助走をつけて穴に飛び降りた。常識では感じないような内臓の浮遊感に本能が訴えかけるが私の頭は冷静だった。急速に迫りくる不安定な地面になんの感情も抱かない。

 

「(着地と同時に着弾点に光の矢を撃ち込む)」

 

私は幸運をもたらせる。なら力を最大限に生かすのみだ。冷静に光の大弓を持ち空中で弓を引く。そして射程距離に入った瞬間に矢を割れた床に放ち着弾点に着地。

 

 

 

ドゴッ

 

「おわっ!?」

 

 

 

着地と同時に床が崩れ落下する。これは予想外で流石に焦って取り乱す。

 

「あああああ!? 痛ゔっ!」 ぼふん

 

受け身ができずに建物の中に着地した。奇跡が不発だったのかと思うも体は痛むが怪我はない。よかった、発動はしていたらしい。ここはどうやらショッピングモール内の布団販売のコーナーで、たまたま私が落ちた所が布団の山の上だから助かったようだ。

 

「うう、お尻痛い。下が柔らかくて助かった……よいしょ。うーん、人の気配は無いですね」

 

人の姿はあるにはあるが赤い染みや引きずった跡のあること切れた人らだった。横転した棚や瓦礫で死んだらしい。加えてよく見たら今立っているのも天井であった。

 

上を見ると吹き抜けの少し先に今にも崩れそうな一階の生鮮食品コーナが見えている。そして吹き抜けの真下にもかつて売っていたらしい品物が山を作っていた。その下の赤い染みは……うん、確かに死んでいる。とにかく上からぽたぽたと鉄臭い液が垂れていて何となく嫌な予感がする。長居はしたくない。

 

「(一度ここから離れて探索しよう。今の場所がショッピングモールなら駅が近くに落ちていそう。あそこは街の中心地だから他の大規模な施設へのアクセスもしやすい。きっと人も多くいそうです)」 

 

洞窟に似た閉塞的な環境で微かに吹く風を頼りに不安定な足場を歩み、適当な窓の割れた箇所から外に出る。出た先は月明りで照らされた大穴がよく見える高台だった。夜目に慣れた目には何とも幻想的にも見える。だが余韻に浸っている場合ではない。暗いながらにもかつての街の地理を思い出しながら駅を探す。

 

高台の下は浸水し湖となってた。そしてどうやら建物は壊れているものの垂直に落下してくれて概ねの位置関係は変わっていないようであっさりと駅は見つかる。距離的にも道のり的にも倒れたビルの上を進んでいけば辿り着けるだろう。いざとなれば奇跡もある。私は足元に注意して瓦礫の進んでいく。

 

 

 

ー鳴葉の地下駅

 

陥没により地下に落ちた駅。線路は断たれ車両は動くことはない。それでもなお人が目指すのにはきっと人の残り香が残るからなのだろう。

 

匂いの元を辿りたいならアリーナに向かいなさい。

 

 

 

駅に到着するとやっと人の痕跡を見つけた。といっても泥の付いた足跡でどれもが一様に同じ方向に向かっている。そして駅の中ではアリーナへの案内がスピーカーからループ再生されていた。私も案内に従いそこへと向かうと多くと被災者が広いアリーナに訪れていた。入口の前に人混みが出来、ゆっくり進みながら中に入っていく。だが異様なほどに静かで時折すすり泣く声が聞こえて皆一様に顔い絶望を浮かべている。

 

「…………入りましょう」

 

神の力を使い姿を消して列に割り込んで中へ入る。中は外よりも遥かに暗く割れた窓硝子の破片が散らばる。時たま物資の入った段ボール箱を奥に運ぶ男性や瓦礫を片ずける女性とすれ違った。メインアリーナの中も暗く陰気だ。広い空間に様々な人らが床に座りひしめき合っている。

 

「…………」

 

あまりの惨状に何も言えない。ねじれた木の床の上で暗く寒い中に街一つから命からがら逃げてきた者らがここにいる。

 

ここはまさに地獄だ。浸水した場所から逃げてきた者の服のせいで溝沼の腐った匂いがし強烈な匂いの中に鉄臭い匂いもする。怪我人も多く医療の心得のある者らが破いた布を用いてスマホの光頼りに応急手当をしている。

 

 

「うっぷ……」

 

 

思わずえづく。一刻も早くこの場を改善しなければ。私のするべきことを探そう。少なくとも衣食住を揃える、その準備のためのインフラを揃える事が今の目標だ。そういえば物資を持った男はここに来てはいない。思えばあの男らが持っていたのは衣食でなく道具類な気がした。一度メインアリーナから出て男らの向かった場所へ向かう。

 

 

 

そうして辿り着いた先は整備室だ。既に人が去った痕跡があり工具箱と空き缶が散らばり開けっ放になった配電盤が放置されている。一見すると壊れているようには見えない。だがここに来るまでに見てきた中で多くは停電し、ここもその例らしく明かりはつかない。夜目を効かせて詳しく見るに開けられていた配電盤には非常の字が多く、非常用電源を起動しようとした跡なのだろう。結果は言うまでもない。

 

「アリーナが暗いのはこの電源が壊れてしまって起動しないからですか。なら」

 

光の大弓を構え配電盤に矢先を向ける。私がここに辿り着いたというのならそれは私が救える物なのだろう。根拠はないが、祈らなければ奇跡は起きないのだ。

 

「直れ!」 バシュッ

 

祈りを込めて射ると配電盤に矢が吸い込まれる。しばらくすると機器のランプが光り整備室の照明も起動した。電気がつけば出来ることは多くなる。部屋にある他の機器を観察すると排水や換気も概ねここから調節出来そうだ。

 

機器を確認して異常な箇所がないか探す。技術の無い私にわかる筈もないけれど深く悩む前に外から数人の技師と思わしき人が訪れた。突然に起動した電源について話し合い、それを盗み聞いて次の方針を決めよう。

 

「(私がこの街を守らないと!)」

 

 

 

鳴葉さんは何を考えてこの街を壊したのだろう。彼女の神の力によって行われた所業の結果だというのは分かる。私が福をもたらす奇跡であるならば彼女は厄災をもたらす災、その化身なのだろう。

 

 

 

しかし今は疑問を解決する時ではない。

 

今は神として福をもたらすのみである。

 

 

 

ーーー

 

 

 

ー鳴葉市街 神社前通り

 

「お疲れ様。久々の大破壊について感想はどうかな?」

 

「まあまあ。本調子ならいつも通りに社ギリギリまでやってしまいたかった」

 

「だよねー。僕もてっきりそこまでするかなーって準備してきたのに無駄になっちゃったよ」

 

灯りのない社を去り懐中電灯片手に我は巫女と夜道を歩く。明かり一つない夜の街はいつ程以来だろうか。少なくともあの頃は油すらもあるか怪しかったな。

 

それにしても巫女は用意周到だ。懐中電灯を持ち歩くだけでなく念の為に貴重品、それと食料と水分、衣服までも持ち込んでいた。おかげて彼は大きな鞄を背負っている。まるでこの夜を見越していたかのように。

 

「さて巫女、お主には聞きたいことがいくつかある。死にたくなければ素直に全て答えろ」

 

「いいよ。我が家の神様はいないし何でも聞いて。と言っても僕はキミのやってきた日本成立以降の悪行の殆どは知っているんだけどね」

 

「ったく。つまり大社の文献はお主がまだ持っているんだな」

 

「正解♪ ご先祖様がちょっと諸々に寄贈したらしいけれど重要なのは僕の家に隠してあるんだ。流石『鳴葉大社の祭神様』は頭の回転が違うね」

 

鳴葉大社……ああ、懐かしい。それは我の社の名だ。あの地は我が産まれ、繁栄からまた忌み捨てられてなお共にした古き社だ。

 

「黒姫よ。何故大社は長い時を経てなお捨てられたままなのだ」

 

「あそこは街と稲荷神社の共同管理で『禁足地』として原則立禁にしてる。でもご先祖様も馬鹿だよねぇ、だって信仰がなくなれば君も消えちゃうのに態々災害の元を保護しているんだからね」

 

本人の前でそれを言うのか。しかしどうりで人が寄り付かない訳だ。予想道理過ぎて落胆のため息をつく。だが同時に我の生き延びた理由も分かる。禁足地として信仰対象となり、それが我の信仰として生き延びる力になっていたのか。

 

「(人が寄り付かなくなったからこそ生き残った訳か。皮肉だが下手に放棄されて忘れ去られるよりは遥かにましか)全くだ。じゃあ何故それを燐火に伝えなかった」

 

「だって僕が教える前に燐火ちゃんが勝手に仲良くなってたから。燐火は優しそうに見えて実は責任感強いから君の素性が知れたら殺し合いになっちゃうかもしれなかったから伝えられなかったんだ。あと僕も宮司の家系の産まれだから神様が殺されちゃうのはね」

 

「馬鹿言え。我があやつに殺されるはずなかろう」

 

しかし腑抜けた神と舐めてた彼があそこまで怒るとは責任感が強いというのは本当らしい。出会った頃は人を騙すとか言ってたのに。まあ彼も不本意ではなさそうだったし見極められなかった我の負手際だ。

 

「君こそ随分長い間招待を明かさないし燐火ちゃんは燐火ちゃんで何も気が付かないからびっくりしたよ」

 

あ奴と関わって思っていたがおそらく彼は人に触れすぎて神としての感性を忘れてしまったのだろう。優しく、思いやりのある性格はあまりにも人間的で美点にして神としての欠点になりうる……のが定説だがあ奴は我の心の臓を的確に射貫くあたり寧ろ逆で有り余る人間性により力をつけたのだ。

 

「(見え張って死ぬはずないと大口叩いたのは間違いだった)」ジー

 

「? ……どうしたの?」

 

「いや、何も(きっと此奴に悟られたら笑われそうだ)」

 

 

話しているうちに家まであと少しの所までやってきた。ここも停電でかなり暗い。彼は明日も仕事らしく、最もこの荒れ様では恐らく休みになりそうだと苦笑していたが、今日はもう帰るそうだ。

 

「他に何か聞きたいことはある? 過去の資料でも見ながらお茶でもしないかい。お酒が好みなら缶のがあるけれど」

 

彼と別れる前で巫女が誘ってきた。

 

「ははは、分かって言っておるな貴様。寧ろ今から仕事だろうが」

 

「分かっているさ。まだ話足りないけれど頑張って来てね」

 

返答はしない。彼を無視して我は徒歩であの壊した鳴葉の駅前まで向かう。だが巫女は去り際に意味ありげな笑い共に我の背中に問いかけた。

 

「…………ねえ、その先は気にならないの? 例えば燐火ちゃんまで狐な事とか「社建ててまで我の信仰を外面だけ真似たからだろうが。そのせいで汚れた体だった」

 

「……正解だよ。もしかして僕って分かりやすい?」

 

「悪人同士、気が合うのだろう。じゃあな」

 

そうして我はやっと一人で暗い街を歩き自ら開けた大穴へと向かう。もう何度繰り返したであろう自作自演をまた繰り返すに行く。これが我の「仕事」、そして我に与えられた力の今の使い方である。

 

時刻は知らぬ、体感子の刻あたりに大穴の前に辿り着く。我がやったこととはいえ少々やりすぎた感が否めない。しかしひしひしと信仰が集まっている感覚がする。人が神にすがる、その絶望が生きる糧になるのだからこれでいい。

 

 

 

 

 

 

そのはずだったのに。

 

 

 

神は人の信仰無くしては生きられないんです! なのに……なのに……なのに! 神様が私情に振り回されて人を殺してどうするの!

 

 

 

「……いかんな。仕事の前に余計な情が沸くだなんて。人に触れすぎたな」

 

 

 

いつもより胸が締め付けられる。

 

 

 

タッ

 

 

 

 

 

 

 

そしてまた一柱が大穴へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、鳴葉ちゃんの帽子がバックの中に」

 

「…………ま、いっか」

小説の適切な話数

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