仮面ライダーロア   作:瀝青

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第14話 新参

 拳を突き出すプロトロア。

 幻月(ゲンゲツ)の胸部に直撃する灰色。

 地面に転がる彼女は、自身の姿を海蛇と熱帯魚の特徴を持つ怪人——バクナワ・ゼネラドに変え、夜空に昇る。

 高層、市役所の窓に突き進む彼女。

 しかし、突如として視界に飛び込む灰色が彼女を阻む。

「きゃっ——」

 小さく悲鳴を漏らす。

 市役所からは遠ざけられたが、バクナワ・ゼネラドは空中に留まり続けた。

 浮遊する彼女の先にはプロトロア。背には竜の如く、力強くはためく灰色の翼が一対。先程まで存在していなかった翼が。

「ぁ——」

 蹴りがバクナワ・ゼネラドに突き刺さる。

 対抗、咄嗟に暗闇を発現させる彼女。

 月蝕、そして真の闇。

 必死で(もが)き、プロトロアに背を向け撤退——。

《Xenoglossia!》

《RIDER KICK!》

 硝子を砕き、破片を散らす。

 市役所に押し込まれる彼女。

 闇を物ともせず正確に叩き込まれた一蹴。

 翼を畳み、プロトロアは床に倒れ伏すバクナワ・ゼネラドに歩み寄る。性別を特定できない声で、彼女に惑いを与えながら。

「混沌——未分化の事象、それらの魁偉たる群体。茫洋の如き混沌から"個"を掬い上げ、繋ぎ合わせ一つの図柄を描く。それが創作の本質だ。ならば混沌もそう忌むべきものではない。そうは思わないか?」

「えっ、な……なに、を……?」

「その図柄に倣うのであれば、貴方が求める真実は白日の下に曝される——(いず)れ、必ず。時が来るまで好きに演じていろ」

 諭すように、突き放すようにプロトロアは言うと、バクナワ・ゼネラドの腕を掴んだ。

「あ」

 怯える彼女の行き(飛ばされた)先は——。

 

「ひ、ひゃあああああああっ!?」

 

 曙光の見え隠れする夜空であった。

 

 

 

 

 

 

 深冬は緩やかな光の中で目を覚ます。

 普段の天井、普段の室内。

 本棚に収められた本は、教科書を除けば絵本や童話ばかり。

 寝相の悪さでボタンが外れ、はだけたパジャマから彼女の滑らかな肩が覗く。

「ん……ふぁーあ……」

 欠伸に伴い流れた涙を拭いながら上半身を起こし、枕元のテーブルに置かれていたスマートフォンを手に取る。

 それを用いて時刻を確認。午前十時。

 今日は土曜。講義は皆無。

 所在無く自室を出て階段を下り、一階へ。

「おはよー……」

 そこはがらんとした空間だった。どうやら彼女の父も母も妹も外出中らしい。しかし、特に異常な事態、という訳でも無かった。

 深冬の両親は彼女に似て天然な(たち)。突如行き先も告げずに出掛ける、というのは恒例。

 対して、妹の(しほ)は親と姉とは違い生真面目で、性格の点ではこちらの方が余程年長らしい。そのためか、姉には呆れを込めた視線を向け——それどころか愛想を尽かしている。

 

 現状を鑑みて、深冬は真っ先に——。

 

 

 

 

 

 

 幻月は飲食店が並ぶ通りを進む。

 浮かぬ顔で歩いていると、とある喫茶店、窓の向こう側に見覚えのある男女を見つけた。

 

 お二人とも、楽しそうですね。

 ルイーザさまも、セイズさまも、もっと穏やかな物語を創ればいいのに……。

 

 幻月がぼんやりとそんな事を考えいると、男女の片方——深冬が彼女に気付き、ぱあっと笑顔を見せて手を振る。そして手を振りながら席を離れた。

 男性——遼也はただ、その様を見るのみ。

「ね、幻月もいっしょに何か食べよ!」

 おずおずと手を振り返した幻月。次の瞬間には店から飛び出した深冬に捕えられ、そのまま店内へと。

「えっ、あの、拙は……」

 結果的に着席。円形のテーブルを囲む三人。

 遼也はアラビアータを淡々と口に運び、深冬はハンバーグを笑顔で頬張り、幻月は二人を両側に縮こまりながらオムライスを喫する。

「そういえば、ゼネラドの子もごはん食べるんだね」

 深冬が意外そうに言う。

「あ……それは、拙が変わっているだけ、です……ルイーザさまたちも、拙も、本来は食事を必要としない、ので……切り捨てたんです、その……余計な、本能は……犠牲者の代替品が取る行動も、食事の模倣に、過ぎません、から……」

 遼也は先日聞いたスルクの台詞を想起。

「"本能"……」

 重要語句を反芻。

 好奇と懐疑の眼光を幻月へ。

「スルクの発言を合わせて考慮すれば、君達四人は根本から人間と異なる存在である事は明白か……」

 

 ルイーザさまと、同じ、目——。

 

 空恐ろしい感覚に駆られた幻月は反射的に顔を下に向け、そして上品な仕草を保ったままオムライスを貪るという器用な芸当を披露。

 二人が口を挟む隙も無く完食。

「……?おなか空いてたの?」

 深冬の呼び掛けに応えぬ、というより応える余裕を持ち合わせていない様子の幻月。

「待て——」

「ご、ごめんなさいっ」

 蛇の威嚇にも似た調子で放たれる遼也の声に押されるように、テーブルに千円札をさっと置き、そそくさと退散。

 店の扉を抜けた時には、彼は幻月の姿を見失っていた。

 バクナワ・ゼネラドが所持する、地面に"潜る"能力の活用か。

 深冬との食事を阻害された軽度の恨みと、ゼネラドの追究を半端に打ち切られた悔い。

 

「君さえ良ければ、次も」

 

 席に戻った彼が深冬に向けた台詞だった。

 

 

 

 

 

 

 闇が降りた市街地。

 ルイーザは何者かが自らを呼び止めた気がして、歩みを中断。

 振り返った彼女の視界には、二つの人間大の塊。霧、靄、霞、或いは霊。

「おや、これはこれは……珍しい来客ですね」

 訝しむこと無く、快くそれらに話し掛けたルイーザ。

「お初にお目にかかります。拝見した限りでは、一つの物語を終え、新たな舞台へと——」

 相手の事情は既に理解している口振り。

 しかし、彼女は自らの言葉を遮る。二つの塊が話の腰を折ったように。

「……ふふ、やはりそうでしたか」

 それらが声を発さずに声を発した、とでも言うのだろうか。ルイーザは会話を行なっているのだ。

「であれば、」

 

 

 

 

 

 

「追加キャストの発表、ですね」




バクナワ・ゼネラド
対応するテイルディスク:バクナワディスク
身長:224cm
体重:89kg
特色/力:水中・地中・空中での遊泳、片手剣タイダルカンピランを用いた斬撃、太陽光や月光を含む光の抹消
初登場回:10話(人間態は9話から登場)

ゼネラドの幹部。
フィリピン神話に登場する、六個(若しくは七個)の月を捕食した巨大な海蛇バクナワに由来するゼネラド。
人間態の服装や髪の色を反映したような外見が特徴的。



最後に登場したモノは一体……?

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