今回は「追加キャスト」の登場です……!
二人の眼前には広大な緑が広がっていた。
遼也と深冬が訪れたのは
深冬は溌剌と緑の中に敷かれた白い石造りの道を辿り、駆け出す。宛ら幼子。
遼也は彼女を追って走り、並走。上機嫌で。
「そのうち海かプール行きたいね」
道の両側に走る水路に等間隔で配置された小規模な噴水を見て、深冬は思い出したように言った。
六月も末に近く、大気は夏の息吹の接近を感じさせた。
「やっぱり妙な感覚ね。わたしたちの最初の容れ物にもちょっと近いけれど、"冷たいもの"を混ぜ過ぎじゃないかしら」
片方は手を開いたり閉じたりして呟く。白魚のような指であった。
「善いではありませんかァ?
もう片方は半ば恍惚とした様子で言う。
噴水が音を立てる中で、このような会話を繰り広げる者達が在った。
前者の女性は後者の女性へ曖昧な反応を送り、どこか不満気な表情で遼也と深冬を見やる。
「もし行くとしたら水着どんなのが良いかな?」
「な——」
深冬から予想外の問いを投げ掛けられた遼也。
だが、予想外が連鎖。
水路から水飛沫が花開き、魚と蛙を思わせる怪人、それも複数が道に。
以前も会敵したディープ・ワン・ゼネラドが十数体程。
乱雑にディープ・ワン・ゼネラドの群れを掻き分け二人組の女性が登場。中には蹴り飛ばされた個体も。
片方は幻影のような女。怪人達を散々に扱った張本人。
精悍さをも備えた怜悧な美貌の持ち主。
低い位置で長いポニーテールに束ねられた
顔面の左側は
百八十センチに届く程の長身。
素材がほぼレザーで統一された黒一色の服装。頭にキャスケット。上半身のボディラインを際立たせる、前面の中央にファスナーが付いたノースリーヴのトップス。コルセットと一体化したようなハイウエストのショートパンツと、膝上まで伸びたロングブーツの間にはタイツに包まれた太腿。手にはフィンガーレスグローブ。
もう片方は幽鬼のような女。
鷹揚な印象を与えるが、一方でセイズとは異なる種類の兇暴さを秘めた容色。
瞳は青系統の蒼白色。虹彩が薄気味悪く輝く。
黒に近い濃紺が所々に混じり、オリーヴ色のインナーカラーが入った柔らかな銀髪が肩まで伸びている。
前者の女に比べ身長は低く、その差は十センチ以上。
胸の膨らみを強調する黒い縦セーター。黒いロングスカートの右側に入ったスリットから、黒いナイロンの繊維に覆われた脚が露に。黒のローファーが地に着く。
魚の鱗と鰭の意匠が施され、蒼い宝石が埋め込まれた指輪、腕輪、首飾り、耳飾りといった銀色のアクセサリーが目を引く。
「えっと……はじめ、まして?」
「新手の"ゼネラド幹部"か」
二人の言葉を受け、幻影のような女は考えの読めない表情を維持し、幽鬼のような女は鮫のように顔を歪ませ笑い、宣言にも似た勢いで言葉を発した。実に大仰な仕草で、開口する度に尖った犬歯がちらつく。
「ええ、ええ!我等はフェンリル・ゼネラド、アラクネ・ゼネラド、ジャバウォック・ゼネラド、バクナワ・ゼネラドに続く"追加キャスト"——即ちメルヴィレアなる
銀の髪を備えた女——フォーマラウタは言い終わると、藍白の髪を備えた女——メルヴィレアをちらり。
「これ、わたしも自己紹介する流れかしら。隣のがたった今言ったところだけど……メルヴィレアよ。それだけ」
「それだけですかァ。あ、お二方はどうかいつも通りでッ!」
「例に漏れず妙な連中だ」
「う、うん……」
《Lore Driver!》
《Fuath Driver!》
遼也がロアドライバーを、深冬がフーアドライバーを装着した瞬間、メルヴィレアはあからさまに不機嫌な表情に。
「はぁ、気に入らないわ……」
眉を
「何だ?俺としては心が躍って仕方が無いが」
「わたし以外が主人公を演じる物語が在るということ自体が、よ」
最早メルヴィレアが、彼女が抱える感情は憤怒ないし憎悪であった。激情に比例するかのように、彼女の姿はゼネラドとしてのものに変容してゆく。
セドナ・ゼネラド。
所々が海月の如く透き通り、甲殻類や多毛類のような藍白と紺青の体表を持つ
体表の上には氷山或いは骨のような造形で白色の装甲と、泥のような涅色のケーブル。
目の無い頭部の右側には鯨の頭蓋骨を模した装甲。頭部の左側から多毛類の体を彷彿とさせる暗赤色の触手が生じ、空中でうねる。
両端に蟹の顎を彷彿とさせる奇妙な構造を有する口部は他のゼネラド同様、銀色で彩られた人間の歯。
ケーブル、魚の鰭、海月の傘と触手と口腕が腰の周辺から伸び形成され、白色に加え群青色、藤色、
右手は骨となった鯨の鰭。左手は甲殻に覆われた人間の手。
足にはハイヒールを模した装甲。
西洋の絵画に於ける優美な人魚を人型に再編、鯨の残骸と深海の雑多な生命で再現した妖異。
フォーマラウタはセドナ・ゼネラドを一瞥して舌なめずり。
「あらァ……では、小生も光輝ある演技を始めましょうかァ!」
変異。
ダゴン・ゼネラド。
白、銀、濃紺の堅牢な鱗に覆われた魚類の怪人。
鱗の上に纏うのは冷たい蒼白の装甲と青紫のケーブル。
どこか
剥き出しの銀色に光る人間の歯に、
右肩には
腕の羅鱶の鰭はまるで広がった服の袖口。
脚にはシーラカンスの如き肉質の鰭。
手足の指の間に備わる水掻き。尖った踵はヒールを彷彿とさせる。
背から突き出す、絶滅した太古の
腰からも長い鰭が垂れ下がっている。さながら両側にスリットの入ったスカート。
鰭と水掻きは全てが黒。またオリーヴ色で頭足類の触手のような模様が。
魚類が西洋の聖職者に擬態した、という表現が似合う冒涜的な醜怪。
《Crom Cruach》《Kernunnos》
《Beira》
「変身!」
「変身っ!」
《Now Loading……Transform!》
《Now Loading……Transform!》
《KAMEN RIDER LORE》
《KAMEN RIDER BEIRA》
《Cromnunnos Form》
《To the opening.》
《Tales from phantasmagoric water create destiny.》
セドナ・ゼネラドとダゴン・ゼネラドの威容に臆さずロアとベイラは並んで突き進む。
しかし、ダゴン・ゼネラドの掌から発せられた高圧の水流が二人を分断。
「ッ!」
「うわぁ!?」
ロアに相対するはセドナ・ゼネラド。
ベイラに相対するはダゴン・ゼネラドとディープ・ワン・ゼネラドの集合。
同時刻。
「先日、新たにお二人の演者が『仮面ライダーロア』の制作に加わってくださったのですが——」
と、食事中ルイーザに扇動され、淵ヶ丘公園に向かう
「ルイーザちゃんからのお達しでさ。キミの性格だったら飛んでくるだろうし、ってことで」
「全くいい機会だぜ……ハラワタが煮えくり返りそうだったんだよオレは、『ロア』の邪魔にしかならねえお前によォ!」
《XenociDriver!》
《XenociDriver!》
《Base: Ophois》《Addition: Fenrir》
《Base: Anansi》《Addition: Arachne》
「変、身ッ!」
「変身」
《Now Invading……Deform!》
《Now Invading……Deform!》
《Fenrir in OPHOIS the MASKED RIDER》
《Arachne in ANANSI the MASKED RIDER》
《Fade out.》
《Fade out.》
「あ、あ……」
震える声。
オフォイスとアナンシの姿に青褪める幻月、後退りを開始する心に抗って彼女は彼女の形質を変化させる。
「あなたの物語、悲劇に変えてあげるわ……!」
淡然として怨嗟の滾る口調。
「嫉妬か?人気者は辛い、とはこの事か」
「二度も言わせないでくれるかしら……あなたを蹴落として、わたしがわたしのための演目を拓く。それさえ果たせればいいわ」
セドナ・ゼネラドは白骨化した鯨の鰭の右手を翳す。手から青い煌めきを内包した黒い大量の水を放ち、それは空中で巨大な
骨の海豹の突撃を間一髪で回避、ディスクを切り替えつつ敵対者を分析。
《Golem》《Galatea》
《Now Loading……Transform!》
《Golem Galatea Form》
《To the next chapter.》
セドナ——イヌイット神話に於いて海の動物を管理する女神であり、姿は人魚そのもの。
海底に在る凍てつく荒野——冥界アドリヴンの主でもある。が、元は地上に住む巨人であり、親に逆らった、若しくは親を喰らおうとした報いに片目を潰され、指を切り落とされ海に棄てられる。彼女の指は海豹、
彼女は最終的に石と鯨の骨で作られた家で夫である犬と共に暮らし、海の女王となったという。
「ハッ!」
ゴーレムガラテアフォームとなったロアの後方で迂回し、再び突進する海豹は彼の剛腕に捕らわれセドナ・ゼネラドの方へ。
しかし彼女は氷と骨を生成し、それらを鎧として纏い防御。次の瞬間、鎧は
拳で氷と骨から成る刃と棘を薙ぎ払い、もう一度ディスクを切り替え。
《Now Loading……Transform!》
《Maintenance of Expressive Control:Vritra Dahaka Form》
《All the world's a stage, and so you play your part.》
フレアスカート状の器官を翻して回し蹴りをロア、ヴリトラダハーカフォームに撃ち込むセドナ・ゼネラド。彼は敢えて回避せず片手で受け止め、空いた手をロアドライバーに伸ばし——。
一方、ベイラは次々と飛び掛かるディープ・ワン・ゼネラドの処理に追われていた。
「ま、前より強くなってる……!?」
今回のディープ・ワン・ゼネラド達は以前の個体群に比べ明らかに動作の敏捷性が向上し、攻撃の精度も格段に高い。
「深きものどもはダゴンの裔!そして小生の賜わりし力はァ、水より来たる者達に恩恵を与えるのですよォ……!」
力説するダゴン・ゼネラド。
えっと、確かダゴンって——。
ダゴン——本来はメソポタミア神話及びカナン神話の穀物や繁栄を司る神であり、鋤の発明者。
後に魚の神、そして海の悪魔として歪曲される事となる。悪魔としてはフランスのルーヴィエ修道院で修道女に害をなした悪魔憑き事件でも知られる。
また、アメリカの作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの『ダゴン』『インスマウスの影』等「クトゥルフ神話」では海棲の種族、
「とっ、とにかくこっちを——」
カグンディスクをソルスティスセプターに装填。
《End Roll!》
《PREYING RAID!》
ソルスティスセプターを横に振るうと黄緑の光が巨大な鎌が生成され、ディープ・ワン・ゼネラドの半数を排除。
「もういっかい!」
今度はクラーケンディスク。
《End Roll!》
《TENTACLE RAID!》
白い触手がディープ・ワン・ゼネラドを貫き、完全に殲滅。
ダゴン・ゼネラドは唐突に哄笑、虚空に手を。
「ウフフッ、アハハハハハッ……!小生、光栄です。あなた様のような名優との共演が叶って……!」
「へ……?どういたしまし、て……?」
ダゴン・ゼネラド付近の空中に泡が立ち、棒状に広がり、武器となった。ダゴン・ゼネラドはそれを手に取る。
アビサルアロトリオス——珊瑚を思わせる精巧な装飾が巻き付いた灰褐色の長い柄と、青緑色の刃で構成された鋤。しかし、刃に重なるように伸びた
「神聖なる物語に活き、偉大なる創作に帰依するゥ!その為に!」
アビサルアロトリオスを掲げ宣告するダゴン・ゼネラドだったが、迫る影が彼女を巻き込む。
それは至近距離でロアの反撃を諸に受けたセドナ・ゼネラドであり、ゼネラド側の不利は明白であった。
「ロアを、いえ、
ベイラの隣に揃うロアを見てセドナ・ゼネラドは言う。
「主人公と偽の主人公が衝突する構図を……?」
「この際それでもいいわ、フーアドライバーを……!」
不穏な会話。
セドナ・ゼネラドにより強引に立ち上がらせられたダゴン・ゼネラドは、アビサルアロトリオスを地面に突き立てる。
鋤の刃が触れた地面が昏い水面のように変質し、水面は拡がり、その下に何かが
「何を——!?」
ロアは先んじて飛び立つ。
アビサルアロトリオスで前方を指すダゴン・ゼネラド。
水面から出づるはオリーヴ色の、先端に麦の穂先か鮫の牙を彷彿とさせる突起を備えた頭足類の著大な触手。
意外にもそれらはロアが放った炎によって容易く焼き尽くされるが、直後に水面下から再生。彼の接近を許さない。
「私も!」
「行かせないわ」
ベイラも飛翔を開始するが、セドナ・ゼネラドの目標は彼女だった。
青に光る、巨大な黒い骨の海豹、骨の海象、骨の鯨を生み出すセドナ・ゼネラド。
「うわぁっ!?」
三体の巨獣により、ベイラは墜落。骨の海豹は倒れる彼女が装着しているフーアドライバーを咥え、そのまま剥ぎ取る。
「ちょっ!?私のフーアドライバー返してよ!!」
骨の海豹からフーアドライバーを受け取ったセドナ・ゼネラド。変身が解除された深冬を無視。骨の海獣達は自動的に分解され消滅。
触手の妨害が収まる。周囲の状況からダゴン・ゼネラドの策略に気付き、空中のロアは仮面の下で歯軋り。
セドナ・ゼネラドに向かって急降下するロアだが、彼女とダゴン・ゼネラドがアビサルアロトリオスで発生させた水面から極太の水柱を立ち昇らせ、彼を押し返す。
水柱が消えた頃には、二人のゼネラドは既に退去していた。
「わたしが、ロアを潰す……」
セドナ・ゼネラド——メルヴィレアは低い呟きを残して。
メルヴィレア/セドナ・ゼネラド
種族:ゼネラド
対応するテイルディスク:セドナディスク
性別:女性
容姿(人間態):髪は藍白、髪型は長いポニーテール。右目は涅色で、臙脂色のメッシュが入った前髪の間から僅かにアイヴォリーの左目が覗く。怜悧かつ精悍な雰囲気を漂わせる顔立ち。
身長(人間態):179cm
体重(人間態):63kg
スリーサイズ(人間態):B81/W58/H96
好きなこと:主人公になること
嫌いなこと:主人公になれないこと
イヌイット神話に登場する、海の動物を管理する女神セドナに由来するゼネラド。
一人称は「わたし」。フォーマラウタと共に靄か霊のような姿でルイーザに接触、ゼネラドの幹部として物語に加入。自らが「主人公」である事に執着している。
フォーマラウタ/ダゴン・ゼネラド
種族:ゼネラド
対応するテイルディスク:ダゴンディスク
性別:女性
容姿(人間態):黒に近い濃紺が所々に混じり、オリーヴ色のインナーカラーが入った柔らかな銀髪が肩まで伸びている。瞳は青系統の蒼白色。鷹揚そうだが、セイズとはまた異なる兇暴さを秘めた容貌。
身長(人間態):167cm
体重(人間態):52kg
スリーサイズ(人間態):B83/W55/H88
好きなもの:物語、創作
嫌いなもの:粗悪な物語、創作
メソポタミア神話及びカナン神話の穀物や繁栄を司る神であり、魚の神であり、海の悪魔であり、"クトゥルフ神話"の邪神でもあるダゴンに由来するゼネラド。
一人称は「小生」で、基本的に言動が熱狂的。物語、及び物語を生み出すことを神聖視している。
ダゴン・ゼネラドは穀物の神、魚の神、海の悪魔、クトゥルフの眷属という全てのダゴンの特徴を盛り込んでみました。
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