仮面ライダーロア   作:瀝青

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第16話 枯れ潮

 バクナワ・ゼネラドはオフォイス、アナンシを相手に奮闘していた。

 しかし、敵対者に傷を負わせる事に躊躇いの無い二人に対してはやはり劣勢。

 浮遊して回避を試みるバクナワ・ゼネラドに向かい紫炎の矢と黄金の糸が飛び、彼女を撃墜。

「きゃあっ!?」

「ハッ、いいザマだぜ。お前の望む物語が間違ってるからそんな目に遭うんだよ」

《Biblioclasm!》

《INCISING DELETION!》

 オフォイスはゼノサイドライバーを操作。

 地平の強弓のグリップを引き、辛うじて再起したバクナワ・ゼネラドに紫炎の矢を連続で命中させる。

「ああああっ!」

 苦しみながらも地面に潜る素振りを見せるバクナワ・ゼネラドに、アナンシは傲慢の織り手から糸を射出し妨害。装甲を切り裂く。

「ああ……せ、拙の、拙の、何が、間違っているの、です、か……」

「まあ、目指すエンディングが違うのは仕方ないよ」

 宥めるような台詞だったが、彼女の手は傲慢の織り手をベルトの右側面に固定、ゼノサイドライバーを操作していた。

《Biblioclasm!》

《SPINNING DELETION!》

 四方から出現した金の蜘蛛の巣がバクナワ・ゼネラドを包み込み、強制的に動きを止める。

 アナンシは姿勢を低くして跳び、緑の光を纏って回転しながら高速で目標に接近。回転に巻き込む形でバクナワ・ゼネラドに蹴りを喰らわせる。

 衝撃で地面に減り込んだバクナワ・ゼネラド。アナンシはその傍に立っている。

「しぶとい奴だ。お前の《プネウマデータ》はルイーザが預かるから安心しろよ」

 オフォイスは軽く毒づいて近寄り、睥睨の戦棍を振り上げる——。

 その瞬間、闇に覆われる一帯。

 更にオフォイスとアナンシに鋭い斬撃が見舞われる。直後に闇は去り、二人のライダーの装甲に傷痕を残しバクナワ・ゼネラドもまた去っていた。

 

 セイズの怒号が響いた。

 

 

 

 

 

 

「あのメルヴィレアについてだが」

 遼也と深冬は草原に並んで寝そべり会話。

「うん?」

 深冬は既に焦った様子でもない。遼也も落ち着いた素振りだった。

「彼女が、いや、君以外がベイラを扱う事は可能なのか。甚だ疑問だ」

「あ、遼也も一回ベイラに変身したことあるんだっけ」

「ああ。変身している間、常に拒絶されているような感覚だった。ゼネラドには無関係なのかも知れないが」

「ん……ゼネラドのみんなも色々ありそうだよね。あっそうだ、ロアドライバーとプロトロアドライバーみたいに、遼也以外でフーアドライバーを渡された人っていないのかな?」

 遼也は考察を図る。

 出処が不明のフーアドライバー。

 明らかに一枚岩ではないゼネラド幹部という集団。

 

 そんな二人の様子を遠くから観る者、フォーマラウタは嬉しそうな表情で何度も頷き、満足したのか立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 別の地、山沿いの海岸にて。

 仮面ライダーベイラがソルスティスセプターを振り回し、相手のゼネラドに苛烈な一撃を決める。

 しかし、深冬が変身したベイラ以上に荒々しく暴力的な所作から、中身がメルヴィレアである事は一目瞭然。

 牛と山羊の角、紺青の装甲、藍緑色の鱗、シアンのケーブル、赤い単眼を備えた魚類を想起させる怪人——バロール・ゼネラドは爆散。

《You got a new episode.》

 ベイラは赤い眼球の紋章と《Balor》の文字が刻まれた紺青のバロールディスクを確認すると、フーアドライバーを外す。果たして現れたのは、メルヴィレアの姿。

「馴染まないわね、この力。まさかあの妖精女の——凍霧深冬のためだけに用意したの?」

 フーアドライバーとベイラディスクを見て舌打ち。

 苛立ちながらも収集したテイルディスクを取り出す。深冬が所持していたテイルディスクを奪う余裕は無く、先程までベイラディスクのみの状態だったが、現在は合計六枚。

 

 ベイラディスク。

 バロールディスク。

 カリブディスディスク。

 スキラディスク。

 パトリンパスディスク。

 フォルネウスディスク。

 

 それらを仕舞い、更なるテイルディスクを求め海岸を発とうとするメルヴィレア。顔を上げた彼女は、眼前に黒いローブに身を包む者を見た。

「……誰よ」

 軽く顔を顰める。

(ワタクシ)ですよ」

 聞こえたのは性別の不明瞭な声ではなく、幼く弾むような調子でありながら、艶めかしく気品すら感じさせる女性の声。

 彼或いは彼女の衣服と起伏の少ない体型が溶解し、声と一致する姿に変異。

 金と黒の髪、青と赤の瞳、可憐かつ妖艶な貌、異様に白い肌、均衡が極まった肢体。

「アナタ方五人とは違って、(ワタクシ)は自由に人間の姿を設定する事が可能なので」

 ローブの人物改め、ルイーザは少し誇るように言った。

「……ああ、そうだったわ。その能力を使って暗躍してきたと聞いたけれど、周りくどいわね」

「まあ、そろそろ明かす時だとは思いますが。深冬さん——あの()はきっと気付いてくれないでしょうから、遼也さんに期待することといたしましょう……ふふ、幻月(ゲンゲツ)さんにはどうお知らせするべきでしょうか」

「芥遼也の何がそんなに良いのかしら?」

 露骨に不機嫌な態度で尋ねるメルヴィレア。

(ワタクシ)()()()()、『仮面ライダーロア』に不可欠な主演——どれだけ言葉を並べても足りない、そんなお方ですよ」

 ルイーザは目を細める。メルヴィレアに対して表出する憤怒か、自身の感慨への耽溺か、判別は難しい。

「つまりあなたも主人公に与する者ね。舞台から()けなさい、わたしの為に」

《Fuath Driver!》

 メルヴィレアはフーアドライバーを装置。

「おや……ならばこちらも。フーアドライバーは返していただきますよ?」

《ProtoLore Driver!》

 ルイーザは対抗してプロトロアドライバーを装着。

「あなたがどう言おうと、主役交代は確定よ」

《Beira》

「一度《プネウマデータ》の回収が必要ですね」

《Moloch》《Baphomet》

 両者は各々の機器にテイルディスクを装填、機器を操作。

 そして、()の戦士を象徴する二文字を口にする。

 

「変・身」

 メルヴィレアは斜め向きに立ち、左手を開き、掌を自分の側に向けた状態で左腕を掲げる。ルイーザを睨み付け、力強く拳を握りしめる。

《Now Loading……Transform!》

 金属光沢を有する水色の液体がメルヴィレアに纏わり付く。

 

「変身……!」

 ルイーザは両腕を広げ、スカートを(ひるがえ)して踊るようにその場で一度回る。そして止まり、優雅に両腕を胸の前で交差させる。

《Now Loading……Henshin!》

 金属光沢を有する鉛色の液体がルイーザに纏わり付く。

 

《KAMEN RIDER BEIRA》

《Tales from phantasmagoric water create destiny.》

《MASKED RIDER PROTOLORE》

《Chapter ZERO.》

 完成する仮面ライダーの姿。

 ベイラは早々にバロールディスクをソルスティスセプターに。

《End Roll!》

《GLARING RAID!》

「消えなさい」

 眩い光がソルスティスセプターから放たれ、一帯を焼き尽くす。それはケルト神話の太陽神、バロールの魔眼が如き力。

「無駄ですよ、メルヴィレアさん」

 プロトロアは炎の中に在っても一切動じず、前方に手を伸ばす。すると武器が握られる。ジャバウォック・ゼネラドが執る灰色の大剣、ヴォーパルであった。

 更に翼を展開、ベイラに刃を向け飛翔。

「ッ!」

 辛うじて、ソルスティスセプターの槌でヴォーパルを受け止める。

 プロトロアは後退。ヴォーパルは変形、片手で扱う事が可能な両刃の剣となる。そして変則的な挙動で飛び回り、彼女を撹乱。

 対するベイラ。自らは地上に留まり、青に煌めく黒の水から骨の海獣を作り出し、プロトロアを襲わせる。

 

 わたしを受け入れないベイラの力より、ここはセドナ・ゼネラドの力を使うべきね。

 

 迫り来る五体の海獣、その間を機敏に掻い潜りながら空中で斬撃を行うプロトロア。海獣達は一瞬にしてバラバラ。

《Xenoglossia!》

《RIDER KICK!》

 続いてプロトロアは蹴りを放つ姿勢に移行。

「チッ……」

 苛立つベイラはソルスティスセプターを地面に突き立て、濁った氷の壁を生成。

 やはり壁は破壊されるが、その向こうでベイラは透き通る無色の氷と黒と青の骨を更なる装甲として予め装備していた。セドナ・ゼネラドがベイラを取り込んだようにも見える異様な姿。

「おや、創意工夫の賜物ですね」

 ベイラの方へと優雅に歩み寄るプロトロアは感心した様子で言う。同時にヴォーパルを構えて。

「侮ってもらっては困るわ」

《End Roll!》

《VORTEX BANE!》

 怒りが滲む口調。

 重々しい動きでソルスティスセプターを振るい、余裕を示すプロトロアに一度目の打撃を。続けて武器を投げ出し、狂う渦潮と追加の厚い装甲を帯びた拳で二度目の打撃を。

「……ふっ、報いを受けたわね」

 先程と同じ位置に立った状態だが、大部分の装甲を砕かれた灰色の仮面ライダー。

 勝利を噛み締め、変身を解除。それ以上相手に関心を持たず、背を向けて歩き出した。

 

「中々良いものを見せていただけましたよ」

 背後から届いた声と拍手の音。思わず足が止まる。

 振り返ると、損傷が完全に修復されたプロトロア。

「プネウマデータの回収は保留とします。アナタの演目も見応えがありそうですから」

 翼をはためかせ始める。

「待ちなさい……!」

 殴りかかる拳は空を切る。

「それではまた」

 空へ消える彼女に憤慨の視線を突き刺す。

 

 次は終わらせるわ、必ず。

 

 気を取り直してフーアドライバーとベイラディスクを手に。

 

 思い返してみれば、ルイーザはこのドライバーとテイルディスクにだけは大した説明も加えていなかったわ。

 

 スコットランドのケルピー、ギリシャ神話のカリュブディス、スラヴ神話のルサルカ、四大精霊のアンディーン等、予め「水」に関するテイルディスクのデータがある程度組み込まれている。

 そして「水」に関するテイルディスクを用いた変身にのみ対応している。

 

 わたしが知っているのはこの二点。適合する条件すら分からない。

 まさか本当に凍霧深冬()()に合わせて……。

 

 衝動的にフーアドライバーを握り潰しそうになるメルヴィレアだが、ふと思い止まる。

 海獣を生み出した人間の祖でもあるセドナを反映した能力を保有するセドナ・ゼネラド。骨の海獣の生成がそれに相当する。

 彼女の姿はセドナ・ゼネラドとなる。フレアスカート状の器官を構成する触手が、青く光る黒い水と共にフーアドライバーと六枚のテイルディスクを包み込んだ。

 

 メルヴィレアは一つの発想に辿り着いたのだ。

 既存を通した創造、という活路に。




セドナ・ゼネラド
対応するテイルディスク:セドナディスク
身長:250cm
体重:98kg
特色/力:遊泳、水中の環境への適応、黒い高圧水流、黒い骨の巨大海獣の生成と使役、氷と黒い骨の生成とそれらを利用した攻撃及び防御、水に関するライダー及び怪人の強化、[編集済]
初登場回:15話

イヌイット神話に登場する、海の動物を管理する女神セドナに由来するゼネラド。
鯨骨生物群集を彷彿とさせる禍々しい外見が非常に特徴的。


ダゴン・ゼネラド
対応するテイルディスク:ダゴンディスク
身長:222cm
体重:138kg
特色/力:遊泳、水中の環境への適応、高圧水流、水面と触手を発生させる鋤アビサルアロトリオス、水に関するライダー及び怪人の強化、ディープ・ワン・ゼネラドの生成
初登場回:15話

メソポタミア神話及びカナン神話の穀物や繁栄を司る神であり、魚の神であり、海の悪魔であり、"クトゥルフ神話"の邪神でもあるダゴンに由来するゼネラド。
鮫をはじめとした様々な魚類と聖職者を思わせる奇怪な姿の持ち主。


バロール・ゼネラド
対応するテイルディスク:バロールディスク
身長:219cm
体重:135kg
特色/力:遊泳、水中の環境への適応、高圧水流、辺りを焼く魔眼、放電
初登場回:16話

魔眼を有するケルト神話の太陽神、バロールに由来するゼネラド。



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