仮面ライダーロア   作:瀝青

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第21話 荒波

「手始めに……これはどうかしら」

 P(プリテンディング)バロール──その背に備わる触手が蠢き、その手中から空中に放たれた七枚のテイルディスクに触れ、不気味な程に澄んだ青い光を撒く。

 果たして光より形成された者たちは七体のゼネラド。テイルディスクは再びPバロールに回収される。

 スコロペンドラ・ゼネラド、オーク・ゼネラド、クラーケン・ゼネラド──以前にもロアやベイラが交戦した怪人。百足と鯨の怪人、鯱の怪人、烏賊の怪人。

 カリブディス・ゼネラド──貝紫色のケーブル、ネイヴィーの装甲、深縹(ふかきはなだ)の鱗に覆われた体表、鮫の如き頭部と鰭を備えた怪人。

 スキラ・ゼネラド──貝紫色のケーブル、ネイヴィーの装甲、次縹(つぎのはなだ)の硬質の体表、節足動物のような十二本の脚、六つの犬の頭部がスカートのように生えた腰、魚に似た頭部を備えた怪人。

 パトリンパス・ゼネラド──琥珀色のケーブルと装甲、水色の鱗が生えた体表、穀物を模した王冠を戴く蛇の如き頭部を備えた怪人。

 バロール・ゼネラド──以前、メルヴィレアが討伐した怪人。牛・山羊・魚類の怪人。

 

 その怪人ら、Pバロールの(しもべ)は散開。新たな戦闘の開始。

 即ち骨の怪獣を全滅させたロア、ベイラ、バクナワ・ゼネラド、ダゴン・ゼネラド、オフォイス、アナンシの六者との免れ得ぬ衝突。

 

 

 

 

 

 

 パトリンパス・ゼネラドとバロール・ゼネラドは、ゼネラド幹部のライダー二体と対峙。

「へェ……中々の能力じゃねェか」

 オフォイスの声に表れる喜色。

 パトリンパス・ゼネラドが放つ高圧水流に、猛然と拳を構える。そしてオフォイスの拳が水流を受けると、流れは逆方向に進んでパトリンパス・ゼネラドへ。

 水流が直撃するかと思いきや、それはパトリンパス・ゼネラドの前で琥珀色の龍涎香に似た岩に変化してバロール・ゼネラドをも防護。

 更に岩の防壁を利用し跳躍するバロール・ゼネラド。

「……鬱陶しい戦い方だね」

 躍り出たアナンシが背に備わる蜘蛛の脚を模した武装を用いて床を打ち反動で跳び、その怪人を空中で蹴り飛ばす。

「ハハ、天晴れだぜスルク!」

 アナンシはオフォイスと共にパトリンパス・ゼネラドが投擲する岩を粉砕しながら返事。

「なんてことないよ。ところでこのゼネラド、たぶん《サイキデータ》が入ってない。レプリカントタイプじゃなく、ボクたちみたいなオーサータイプでもなく、ヴェイカントタイプだ」

 

 サイキデータ──ロアドライバー及びプロトロアドライバーを使用した者の記憶と人格のデータである。それは犠牲となった人間に擬態する“レプリカントタイプ”のゼネラドに必須なのだ。

 逆にジャバウォック・ゼネラドやダゴン・ゼネラドの能力により生成されるゼネラドはプネウマデータもサイキデータも持たず、人間の姿に変化できない“ヴェイカントタイプ”。

 そして“著者”を本性とする幹部のゼネラドが“オーサータイプ”である。

 

「ま、メルヴィレアからすりゃそんな人間に擬態する機能なんざ余計だろうがよ……あァ、ルイーザからのディスクも試さねェとな」

 オフォイスがバロール・ゼネラドの電撃と眼から発射される光線を回避。

 攻撃を捌いたオフォイス、アナンシの両者がゼノサイドライバー右側のテイルディスクを取り替え、ドライバーを操作。

《Addition: Chiyou》

《Addition: Khepri》

《Now Invading……Deform!》

《Now Invading……Deform!》

《Chiyou in OPHOIS the MASKED RIDER》

《Khepri in ANANSI the MASKED RIDER》

《Fade out.》

《Fade out.》

 オフォイスとアナンシの一部の装甲や武器が外れ、形状が変化して再び合着。色なども変化。

 

 仮面ライダーオフォイス、チーヨウフォーム。

 鮮血の如く赤い複眼と第三の目(シグナル)。左の複眼のみ銀色で(かなえ)に似た紋様の装甲で覆われている。

 フェンリルフォームでは銀色だった一部の装甲は、赤色の刃が集積したような物々しい形状に。

 右腕に盾のような銀色の装甲。

 右肩の装甲に立つように装着された小型の(クロスボウ)の形状で銀色の武器──兵主(ひょうず)(いしゆみ)

 また長柄にハルバードのように戦斧の刃と槍の刃が付き、戦斧の刃の反対側に()の刃があり、もう一方の末端に刀の刃を備えた銀色の武器──兵主(ひょうず)長柄(ながえ)を携える。

 

 仮面ライダーアナンシ、ケプリフォーム。

 太陽の如く赤い複眼。

 アラクネフォームでは暗緑と橙だった一部の装甲は、丸みを帯びているが頑健な、タマオシコガネを思わせる黒と赤の装甲に。

 右肩の装甲は六本の蟲の脚が赤く煌めく球体──虫害(ちゅうがい)の日輪を掴んでいる形状。

 

 蚩尤──数々の武器を発明した中国の神──の要素を取り込んだ形態となったオフォイスは獰猛に敵の方へと突進。

 当然ながら岩と電気による攻撃が飛来するが、オフォイスが備える腕の盾によって一見すると乱雑だが的確な動作で防御される。同時に、兵主の弩から赤い光で構成された矢が連続で発射。

 またケプリ──太陽を運ぶエジプトの神──の力を得たアナンシの虫害の日輪から放たれる光線が加わってパトリンパス・ゼネラドの防壁を破壊し、相手の体勢を崩す。

 パトリンパス・ゼネラドに接近したオフォイスは荒々しく兵主の長柄を振り回し、打撃にも似た斬撃をもたらす。

「この力……あの(舞台)、あの戦争(物語)を思い出すぜ!」

「楽しそうだね」

 アナンシは空中に出現させた黄金の糸を利用してバロール・ゼネラドの電撃を受け流しつつ、糸による斬撃と虫害の日輪による光線を織り交ぜ敵に対抗。

 

 そして。

《Biblioclasm!》

《INCISING DELETION!》

 睥睨の戦棍で一度殴打され、空中に吹き飛ばされたパトリンパス・ゼネラドを上から圧するように蹴るオフォイス。

 パトリンパス・ゼネラドを踏み付けたまま、紫の炎を帯びた兵主の長柄と地平の強弓の両方の刃で激しく、幾度となく斬る。

 

《Biblioclasm!》

《SPINNING DELETION!》

 蜘蛛の巣に捕えるように、アナンシはバロール・ゼネラドを糸で拘束。

 虫害の日輪が肩の装甲から分離、バロール・ゼネラドの周囲を不規則に浮遊しながら光線を浴びせた。そして虫害の日輪がアナンシの方へ戻ると、彼女はそれを蹴り飛ばしてバロール・ゼネラドに命中させた。

 

 オフォイス、アナンシによって二体のゼネラドは討伐された。

 

 

 

 

 

 

 バクナワ・ゼネラドとダゴン・ゼネラドに対するのはスコロペンドラ・ゼネラド、オーク・ゼネラド、クラーケン・ゼネラド。

 

 ダゴン・ゼネラドは主にバクナワ・ゼネラドに行動を促すような挙動を取っていた。

「ほらほら幻月、小生の力であなた様が強化されている今は折角の好機なのですからァ」

 オーク・ゼネラドの強烈な突進を高圧水流で逸らし、アビサルアロトリオスで攻撃すべき対象を指し示すダゴン・ゼネラド。

 ダゴン・ゼネラドは“水”に関するライダー及び怪人の強化が可能なのだ。

「は、はい……」

 今回は明確に戦う意思を持っている幻月──バクナワ・ゼネラド。

 伸展して迫るスコロペンドラ・ゼネラドの棘、クラーケン・ゼネラドの触手と触腕。不器用に奮起した彼女は空中を舞ってそれらを掻い潜り、地面と床の中や水中を潜行して転脱。時折タイダルカンピランを用いて斬り付けた。

 その間にダゴン・ゼネラドが高圧水流、アビサルアロトリオス、ディープ・ワン・ゼネラドの生成という能力を活用してオーク・ゼネラドを撃破。

 そうしてダゴン・ゼネラドがスコロペンドラ・ゼネラドの鰭の刃を撥ね除け、バクナワ・ゼネラドがクラーケン・ゼネラドの鋏の手を弾き、二者は合流。

「こ、これで……倒し、ます」

「ウフフフフッ……では、一気呵成にィ……!」

 アビサルアロトリオスによって出現した水面から上がる触手が縦横無尽に蠢き、二体の敵を打ち据える。

 バクナワ・ゼネラドも触手に合わせて先程以上の速度で空中と地面・床の中を駆け、舞うが如き斬撃を。

 

 スコロペンドラ・ゼネラドとクラーケン・ゼネラドは抵抗できず爆散。

 

 

 

 

 

 

 ロア、ベイラはカリブディス・ゼネラドとスキラ・ゼネラドが連携して繰り出す水上竜巻のような渦、そして渦の間隙を縫って噛み付こうと飛び掛かるゼネラド二体と槌を振り下ろすPバロールに苦戦を強いられていた。

「すごい勢いだよ! なんのディスク使えば……」

「モーガンディスクだ。逆に渦を利用する」

「あ! あの槍を使えば良いんだね!」

 

《Addition: Morgan》

《Now Invading……Deform!》

《Morgan in BEIRA the MASKED RIDER》

《Fade out.》

《Basilisk》《Manticore》

《Now Loading……Transform!》

《Basiticore Form》

《To the next chapter.》

 ベイラはモーガンフォームに、ロアはバジティコアフォームに変身。

 

 ベイラが持つ戦禍の槍から発せられた波動──それはPバロールには効果を発揮しなかったが、影響を受けたカリブディス・ゼネラドとスキラ・ゼネラドが味方に向かって渦を放つと、直後に二体のゼネラドは暴風と激流に攫われた。

「今だ、合わせるぞ」

「うん! 翔ぼう!」

《End Roll!》

《Biblioclasm!》

《MORTAL RIDER STING!》

《VORTEX DELETION!》

 渦に乗って飛翔しながらロアは赤の光と緑の霧を纏ったモータルスティンガーで、ベイラは青黒い激流を纏った至点の槌と戦禍の槍で打掛る。

 

 それに伴い渦が消滅し、ベイラとテイルディスクを獲得したロアが、巻き上げられず床の上に深沈と立っていたPバロールの目前に降り立つ。

《You got a new episode.》

「では、君の創った更なる力を見せてもらおうか」

《Crom Cruach》《Kernunnos》

《Now Loading......Transform!》

《Cromnunnos Form》

《To the opening.》

 再びクロムヌンノスに変身するロア。

「オレもそれには賛成だぜ……力があるなら振るってみろよ!」

 賛同して挑発するオフォイスの声。

 Pバロールが生成したゼネラドを打ち破ったオフォイス、アナンシ、バクナワ・ゼネラド、ダゴン・ゼネラドが集合してきたのだ。

「チッ、ヴェイカントタイプのゼネラドじゃ相手にならないかしら……他も望むなら使ってあげるけれど」

 セドノイドライバーを操作しながら冷淡に告げる。

《Show Takeover!》

《ANTAGONIZING DEVASTATION!》

「壊れなさい」

 Pバロールの触手が展開し、神秘的だが得体の知れない青い光を帯びる。

 

 対して六者は回避という行動を選択した。

 確かに、選択したのだ。

 

 しかし実際の行動は異なっていた。()()()()()()()()()()()()()()()──結果としては全員が触手の光線に直撃し、一度床に倒れた。

 幸いにも「打ちのめされた」という程の被害ではない。

 

「何だ……? 一瞬だが意識が……」

「えっ、避けようとしたのにっ!?」

「え……拙、は、何を……?」

「驚いたかしら? 『プネウマデータの“停滞”』を応用したこの力は……相手がプネウマデータによって機能している存在かを問わず、攻撃する瞬間に相手の意識を“凍結”させるのよ」

 プネウマデータの“停滞”──以前ルイーザがメルヴィレアとフォーマラウタの動作を停止させる際に行った所為(しょい)だ。

「ウフフ、メルヴィレアが斯様な力をォ……」

「ハッ、よく考えたモンだな」

「……厄介だね」

 

 またPバロールは相手たちの晒した隙を突き、手始めにロアに接近。

「フッ、まだこれからよ──?」

 ロアが体勢を立て直す前に、彼女は敏捷にディスチャージフォージャーを頭上に振り上げて。

「避けて、遼也!」

「あ──遼也、さま──」

 

「──ッ!」

 

 回避は不可能だ。ならばせめて。

 

 ロアは辛うじて腕を上げ、打撃を防御する姿勢を取る。

 

 次の瞬間には、装甲が破砕──否、氷の壁が砕けた。

 ロアとPバロールの間には氷の壁が出現していたのだ。しかし、ベイラやヴリトラダハーカファームのロアとは異なり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 例えばベイラなど、この場に居るロアとPバロール以外の者が氷を作り出した訳でもない。

 

「は……? あなた、どうしてそのフォームで……」

 Pバロールの動揺。

「さあな。しかしルイーザから授かった祝福だ、この奇異は態々驚倒するに値しない」

 ロアドライバーに触れながら彼がそのように応答すると、各々の聴覚が寒々しい拍手の音を認識した。

 

 音の方向を見遣ると、ジャバウォック・ゼネラドと見慣れない怪人が。

 

 機械の要素と生物の要素を併せ持つゼネラドと比較すると、未知の怪人はケーブル、装甲といった無機的な要素を持たず、非常に生物らしい外見。ゼネラドとは異なる怪人であると皆は一目で理解した。

 

 その巨躯は(クラゲ)の如く透明。

 体表は鱗や甲殻の如き様相であり、堅牢。

 透けて見える臓器は大部分が鮮紅色、暗赤色だったが、ごく一部には生物らしからぬ金属のような銀色の部分が。

 頭部の形状は、強いて言えば眼のない海老の全身のよう。頭部の前方に竜、悪魔、節足動物を連想させる突起、角、触角を備えている。

 頭部の内部には末端が黒く染まった無数の赤い筋・管。

 口部はゼネラドに似て、人間の歯に見える。

 

「喜ばしいことですよ、遼也さん……それこそ“全き主人公”の道です」

 謎めいたジャバウォック・ゼネラドの言葉。

「“全き主人公”……」

 ロアはその言葉を反復。

「ああもう何よ、次から次へと……!」

 苛立ちを募らせるPバロールはディスチャージフォージャーから放電するが、ジャバウォック・ゼネラドが左手を翳すと電流は掻き消えた。

 次いで未知の怪人が自身と同じような色の、脈動する肉塊を自らの掌から生成。最低限の動作で肉塊を投擲すると、Pバロールでそれは炸裂。小規模ながら鯨の骸が爆発する様を想起させた。

 白鯨(モービー・ディック)の如き耐久性は爆撃を防ぐ。だが、唯でさえ全容の知れないジャバウォック・ゼネラドに、“著者”であると思われるがゼネラドではない未知の怪人が伴っているという状況から、Pバロールは撤退を決めた。

「チッ……」

 憎々しげに舌打ちしたPバロールは自分のすぐ近くにあるプールの水面に触れる。するとその身体は青く光り、一瞬のうちに跡形もなく消えた。

 

 

 

 

 

 

 Pバロールは去り、ジャバウォック・ゼネラドと未知の怪人──ネブロエラは水着を着用した人間の姿に変化。

「お疲れ様です、皆さん。優れた戦い()りでしたよ……ああ、皆さんこちらの新たな役者に注目されていることでしょう」

 最後にルイーザはネブロエラに視線を送り、彼女に発言を促した。

 

 戦闘は終了。ライダーたちは変身を解除し、バクナワ・ゼネラドとダゴン・ゼネラドは人間の姿に。

 真っ先にネブロエラに言及したのは遼也。

「その面貌に生物らしい怪人の姿……君は恐らく“著者”だろうが、何者だ?」

 次に深冬。

「ねぇねぇ、ゼネラド幹部のみんなとは知り合いなの?」

 

 ネブロエラは口を開いて穏やかに奇妙な声を出した。

 

「私は“著者”の一個体であり、私の役名はネブロエラです。私が最も希求する物語とは生命体の生存と進化であり、私に関連する技術はゼネラドの身体であるマクガフィンにも応用されています。

 以後、私は貴方方の物語に参加するため、期待しています。

 なお、私の身体はゼネラドとは異なりマクガフィンではなく生体であり、先程の姿は“ネブロエル・パントコス”と称するべきものです。また、私はゼネラド幹部の全員との面識があるという訳ではありませんが、全員が私の存在を把握しています。以上です」

 

 口を挟ませず一気に言い終わると彼女はプールに飛び込んで、姿を“赤い流れ”に変えて水中の排水溝を通り、この場から退出。

 見送る他なかった。

 

「あらァ……変わっていませんねェ」

「アイツ、あの“生物学者”か。刺激になりそうだぜ」

「物語に役立ってくれるならどうでもいいよ」

「と、溶けちゃった!? なんかああいうのが出てくる映画なかったっけ……?」

「あれは名作だった……あの“著者”、ネブロエラにも見所がありそうだな」

 ルイーザと幻月を除いた者たちが口々に言っていると、ふとルイーザが楽しげに提案。

「ところで皆さん、このような場なのですから……深冬さんがおっしゃっていたように、本筋以外の嬉戯(きぎ)もまた一興でしょう?」

 ジャバウォック・ゼネラドとしての能力による成果か、いつの間にか戦闘の痕跡を残さず完全に修復されていたプールの施設。

 

 遼也と深冬は一瞬目を合わせた後、ルイーザの顔を見て頷く。深冬の眩しい笑顔。

「しかし、君がそのような提案を行うとはな」

「団欒の時というものですよ」

 

 “全き主人公”については今後を待つ事にすると遼也は判断した。

 

 セイズ、フォーマラウタも水遊びには乗り気。案の定、スルクはセイズとフォーマラウタに引き摺られるという有様だったが。

 他方、これまで黙り込んでいた幻月が漸く開口。

「あ、あの……拙は、もう、おいとまします」

 良好な関係であるとは言い難い者たちから離れるために。

 更衣室の出入口へ急行する素振りを見せるが──二人の人間と三者の“著者”が彼女を包囲して阻止した。

 遼也、ルイーザ、セイズは半ば彼女を揶揄ったり弄んだりする目的から、深冬、フォーマラウタは親しみから。スルクは単にセイズとフォーマラウタに捕まっている。

 

 深遠な微笑、勝気な笑顔、透き通った笑顔。

 結局のところ、幻月は逃れられなかった。

 

 

 

 

 

 

 その後。

 

 皆が皆の水着姿に対して抱いた印象を賑やかに語り合った。

 ルイーザの異様な程の白皙(はくせき)には黒いビキニがよく調和して少女らしさと大人らしさの両方を強調している、幻月の水着姿は儚さの中に込められた一筋の鋭さを主張している、といった具合に。

 

 幻月が深冬とフォーマラウタにパレオを剥ぎ取られ、慌てふためき赤面した。

 

 幻月を巻き込むセイズとフォーマラウタの活発さを傍観しながら、無気力なスルクは水面に浮遊していた。

 

 遼也、深冬、ルイーザが共に流水のあるプールを巡っていた時、深冬の柔らかな身体が遼也に触れた。ルイーザの身体も二人に触れた。深冬は意図せずに、ルイーザは故意に。

 深冬は変わらず快然としていたが、遼也は魔眼に睨まれたかのように硬直した。ルイーザは嫣然でありつつ包容力のある笑みを湛えていた。

 

 プールから上がった後には、遼也と深冬が一緒にシャワー室──個室のもの──に入って湯を浴びた。

 

 ある意味では奇妙だが、喜びに満ちた一時(ひととき)であった。

 

 

 

 

 

 

 空が橙色に染まる頃、深冬は静かな無人の自宅に帰ってきた。寒冷地の住宅に特有の玄関フードの扉と家自体の扉、二つの扉を通って家の中へ。

 

 窓が照明の光を透過。

 黄金の髪と漆黒の髪、青色の瞳と赤色の瞳を備えた女性が深冬の自宅に入ったのは、それから数時間後の事だった。










プネウマデータ
“著者”のうち肉体を破棄した者の本体であり、神経や精神が肉体を伴う事なく機能している状態である。人間の作り出した概念に例えるならアストラル体、エーテル体、エクトプラズムなどに近い。
14話ではメルヴィレアとフォーマラウタの可視化したプネウマデータが登場した。
抹殺は不可能だが、“停滞”は可能。

サイキデータ
プロトロアドライバー及びロアドライバーによって収集された“犠牲者”たちの記憶と人格のデータ。プネウマデータとは別物であり、プネウマデータは本質だが、サイキデータは空虚な模造に過ぎない。

マクガフィン(情報更新版)
プネウマデータの“著者”、或いはサイキデータ(プロトロアドライバー及びロアドライバーの犠牲者の記憶と人格のデータ)が宿るゼネラドの躰。有機物と無機物の両方が用いられた、“著者”の技術の産物。



カリブディス・ゼネラド
対応するテイルディスク:カリブディスディスク
身長:236cm
体重:143kg
特色/力:渦、噛み付き、遊泳、水中の環境への適応

スキラと同様にメッシーナ海峡に住む、渦潮の如きギリシャ神話の怪物である、カリブディスに由来するゼネラド。

スキラ・ゼネラド
対応するテイルディスク:スキラディスク
身長:258cm
体重:188kg
特色/力:渦、噛み付き、遊泳、水中の環境への適応

カリブディスと同様にメッシーナ海峡に住む、犬の体を生やした女性の姿をしたギリシャ神話の怪物である、スキラ(スキュラ)に由来するゼネラド。

パトリンパス・ゼネラド
対応するテイルディスク:パトリンパスディスク
身長:224cm
体重:108kg
特色/力:相互に変化する高圧水流と岩、遊泳、水中の環境への適応

リトアニア神話の豊穣、海、水などを象徴する神である、パトリンパス(パトリムパス)に由来するゼネラド。



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