仮面ライダーロア   作:瀝青

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第23話 類感呪術

 昼過ぎ、斗津古似市の過山(かさん)高校。

 設備が充実したその高校は現在昼休み。一人の女子生徒が廊下を歩み、外から教室へ戻っていた。

 

 その黒髪は長めのミディアムヘア。

 黒曜石の如き色の瞳。

 切れ長の目が、目の下に浮いた隈によって強調されていた。

 落ち着きのある面持ち、端正な顔立ち。美男にも見える。しかし、人情や仁心の類が薄いような印象を持たせる。

 身長は百七十センチ。

 彼女が身に付けている制服は黒いブレザーとスラックス、灰色のニットベスト、白いワイシャツ、濃い赤色のネクタイ。その服装によって臀部の大きさが却って分かりやすくなり、整った体型が示されている。

 向かって右腕には黒い無骨な腕時計。

 

 彼女こそ(あくた)柚榴(ゆずる)

 

 現在、彼女の思考はある一つの問題に専念していた。

 それは彼女の兄について。

 

 ──些末な私の存在など、お忘れだろう。

 

 

 

 

 

 

 柚榴はおよそ三年間、つまり遼也が高校に入学して以来、彼に会っていない。

 

 そもそも遼也と柚榴の両親は、息子に学費をはじめとした金銭を供物の如く捧げている。そして彼一人のための住居を彼に差し上げた。

 兄妹の両親と柚榴は畏れ、崇めているのだ。

 

 物語への憧憬を一度喪失し、さらにルイーザに影響された彼が、三人には人間ではない、人間以上の存在に見えるのだ。

 

 彼も家族に無関心であり、物語やルイーザに関する事情を語らなかった。

 それゆえに別居は有益だった。

 

 そのように兄を捉えている柚榴が、今──今だけでなく、日常的に崇敬する兄のことばかり考えているのだが、最近は特に──彼に思いを馳せている所以は、遼也の誕生日が今年も迫ってきているためである。

 単に、年月と心理の遠い隔たりができたからこそ、彼に会うことを望むという心理も理由に含まれる。

 

 両親が彼に送る金銭があるため、彼の誕生日に祝いの品を贈ることは兄妹の両親と柚榴、そして遼也にとって不要である。

 

 何よりも、彼は“つまらないもの”を嫌悪している。それを両親と柚榴も明確に理解している。

 

 

 

 

 

 

 柚榴が廊下の窓に薄く反射した自らの顔に遼也の姿を重ねながら思慮していると、反射した光景を通して自分の背後に制服を着た一人の女性が立っていることを認識した。

 

 直ちに振り返る。

 

 まず視界に入ったのは、微笑みだった。

 その鮮麗な貌。

 暗闇のような黒い瞳。

 腰の辺りまで真っ直ぐに伸びた黒髪。

 制服は柚榴と異なり、スラックスではなくチェック柄で深紅のスカート。黒いタイツが整った脚の輪郭を強調していた。

 

 目が合い、妖しい視線を送る彼女に釘付けにされた。柚榴はその女子生徒が目を細めたのを見て、鼓動が甘美に高鳴った。

 二者ともに黙している。

 柚榴は自身が兄についての思考に熱中する際と同様に、自らが微かに赤面するのを感じた。

 

 柚榴にとって、彼女は見知らぬ生徒だった。しかし、どこか好感を抱かせるような人物。

 彼女は柚榴の兄に似ているのだから。

 龍蛇(りょうじゃ)の如き瞳を備え、泰然として酷薄そうな面相が。ある種の人間離れした佇まいが。

 柚榴がその女子生徒に抱いた“像”の認識・把握に成功した途端、柚榴の内に畏怖が喚起された。

 

 静かに、女子生徒が柚榴の顔を覗き込む。

 

「ああ……やはり遼也さんと同じ目です」

 

 彼女は柚榴の兄に似ている──つまり柚榴自身にも似ている。

 彼女と柚榴を取り巻く周囲が学校という場から切除され、独立しているという錯覚に陥った。事実、周囲に人の気配はない。

 

 ──何故、その名前を……。

 

 柚榴は「あなたが何者か、私に教えてもらうことはできないでしょうか」と声を紡いで懇願しようと試みるが、畏れから取り下げてしまった。

 

 対する女子生徒は悪戯っぽく笑い、柚榴に囁く。

「ふふっ……ご心配には及びません。アナタのお兄さんへの道と……アナタの物語は開かれますから。それではまたお会いしましょう、柚榴さん」

 女子生徒が告げると、その姿が忽然と消滅した。

 

 ──私は兄であるあの方以外の、第二の畏れるべき人を見た。

 

 柚榴の鋭い美貌には、微笑みがあった。目の下の隈は、その表情に一種の鬼気を加えていた。

 心地よい高揚。

 

 ──ああ、あの方に会いたい。

 

 再び窓を向き、兄のこと、そして先程の女子生徒のことを強く想起──したが、今度は二人の男女が柚榴の背後に寄ってきた。

 あの女子生徒とは違い、見知った顔。

 柚榴は二人の友人の方を向く。

 

「よ、柚榴」

 濃い紫色の瞳と同色の乱れ髪を備えた男子生徒が、やや軽薄で壁を感じさせない調子で柚榴に話しかけた。

「また自分の顔見てたの、柚榴? 心配になってくるよ」

 赤朽葉(あかくちば)の瞳と赤が混ざった黒いショートボブの髪を備えた女子生徒は馬鹿にしている様子ではなく、言葉通りの口調だった。

 

 女子生徒──鉛口(かなぐち)(さや)の発言を受け、柚榴は締まりのある凛とした響きが込められた声で応答する。

「私が水仙の花になるなど下らない冗談だ。加えて言うなら、私は……恐れ多くもあの方の妹だからな。当然だろう?」

 

 莢は無言で頭を抱え、一層心配を深めざるを得なかった。

 男子生徒── 茸木(なばき)(しん)は、ただこう言うのだった。

「ま、自分に自信があるのは良いことさ」

 

 

 

 

 

 深冬の自宅にて。

「君の妹は……確か君とは真逆だったな」

 遼也が深冬に問い返す。

「うん! (しほ)はね、すごく真面目で頼りになるんだよ。そうだ、写真あったかな……」

 彼は嬉々として話す深冬の様子に好感を抱いた。家族の写真を探して収納家具を漁り回る姿にも。

「あれ……どこ行っちゃったんだろう?」

「……写真は次の機会でも問題ない。それより今日は俺が料理を披露する約束だっただろう?」

「そうだった、私もお腹空いてきたかも!」

「ふっ……望みの献立を言ってくれ」

「材料は色々あるし、遼也のお任せで!」

 

 彼は深冬という一人の存在を僅かに訝しんだ。しかし、現在重要なのは彼女との時を楽しむことである。

 

 

 

 

 

 

 一方、過山高校には下校の時間が訪れる。

 

 勝色(かちいろ)の髪をポニーテールにした黄土色の瞳をもつ担任の女性教師が、低音だが柔らかな声で生徒へ別れの挨拶を。

「また明日、ね」

 

 担任に用事のない柚榴は、早々に下校する準備を済ませていた。

「おい、莢、進……」

 彼女は最前列の自席から少し離れた席の友人二人に呼びかけたところで、自らに向けられる視線を察知する。

 それは莢と進のような友を見つける視線ではない。クラスの生徒の幾人か──莢、進ではない──が不可思議な視線を柚榴へ。凝視ではなく何度も瞥見(べっけん)している。敵意ではなく監視だ。あるいは──。

 

 ──私の美しさが気になるのか?

 

 異常な状況であるとは思ったが、彼女は誰に向けるわけでもなく、艶やかに微笑んでみせた。

 柚榴が視線を察知し、微笑むまでの時間は一瞬だった。

 

 その一瞬の後、呼ばれた男子生徒の声。

「おっと、美貌を見せつけるのはそこまでだぜ、柚榴」

 声を掛けられた本人は平常の、少々冷淡な表情に戻って教室の外に足を向ける。二人に付いて来ることを求めているのだ。

 言う予定の台詞を進に先取りされた莢は、苦笑して柚榴、進と共に行く。

 

 

 

 

 

 

 帰り道で二人と別れ、柚榴はその者の住む場所に向かう。彼女の兄が高校三年生への進級に際して越すという時、柚榴が盗み見たその住所へ。

 面会を請願する手紙を投函するために。

 

 柚榴の心情は打ち震え、波濤に満ちていた。それは当然である。遼也という偉大な存在への接触を図るのだから。

 

 一度、立ち止まって自らが物した書翰を見直す。文体は丁寧か、文字は美麗か──完璧な手紙ではないかも知れないが、仕舞って再び歩み出す。

 

 すると、前方から歩いてくる一人の女性の姿を認めた。柚榴より少し身長が高く、俯き加減で陰のある美女で、豊かな色彩の非常に長い髪をポニーテールに結い上げている。

 

 今日遭遇した神秘的な“姉”と教室で向けられた視線、そして今すれ違おうとしている女性の有り様そのものが影響し、その存在が何か意味ありげに思えた。

 

 柚榴がすれ違う段になると、その俯いた女性の顔が見えやすくなった。憂いを帯びた表情だが凛々しさも持ち合わせており、瞳の奥には密かな熱のようなものを感じ、完全に背を向ける直前に足を止めてしまう。

 

 同時にその女性──幻月は顔を上げる。直前まで注目していなかったが、すれ違う黒髪の女子高校生の容貌に、自分が知る者の面影を確かに見出す。

 

 ──まるで遼也さまと、ルイーザさま……。

 

 恐ろしくも優しい橙の瞳が柚榴を見た。

 冷たい好奇に満ちた黒の瞳が幻月を見た。

 

 視線が交差。両者が立ち止まった。

 

 両者が言葉を発しようと喉を震わせる瞬間、幻月は自分たちに迫るものを感知した。

 今、それは速やかに柚榴の方から這ってきている。それはゼネラドだと幻月には分かった。幻月の為すべきことは決まっていた。

 怪人が到達する前に幻月は自らの姿を蟒蛇の怪人のものに変え、柚榴を守るようにゼネラドの方へと躍り出る。

 

 赤黒い光の中より顕現したバクナワ・ゼネラド・“逆鱗”に相対するのは、金色のケーブルと白い装甲を備えた白い蛇の怪人。

 

 柚榴の内には混乱と微量の恐怖。しかし、好奇心と探究心がそれらの感情を塗り潰しながら湧き出す。

 

 ──面白い。

 

 白蛇の怪人は蛇そのもののように地面を這い、立ち上がると狐憑きのような激しい挙動で両腕と胴体を振り翳して突撃。

 タイダルカンピランで弾き飛ばし、振り返って柚榴に叫ぶ。

「逃げて、ください!」

 状況に反してバクナワ・ゼネラド・“逆鱗”が見た柚榴の面持ちには好奇心、そして期待が表れていた。

「……私を守ってくれるんですよね、蛇のお姉さん?」

 その口調は試しているようでもあった。

 

 ──もしあなたがこの場に居合わせていなかったのなら、迷わず逃げていたが。

 

「えっ……は、はい……」

 つまり逃走の必要はないと言っているのだ。幻月は情けなく返事。

 

 ルイーザにも似た妖艶で悪戯な微笑み。幻月には柚榴が遼也やルイーザに連なる人物に思えてならなかった。

 だが、その女子高校生の保護が幻月にとって最優先であることに変わりはない。

 

 カガチタバクを順手に、タイダルカンピランを逆手に持ってその白蛇の怪人──トウビョウ・ゼネラドに挑む。

 風圧をかけて動きを封じ、浮遊して相手に接近、斬り掛かる。カガチタバクで水平に斬り、タイダルカンピランで殴り付けるように斬る。突き飛ばされる相手。

「拙が……守ってみせます」

 柚榴を救うためにも早々に決着を付けようと全身と武器に暗赤色の光を纏わせ、二刀を構えて空中を駆けて敵へ向かう。

 トウビョウ・ゼネラドの装甲が重厚な形状に変化し、更には回避のために不規則な動作で飛び回るが、無駄な行動であった。

 バクナワ・ゼネラド・“逆鱗”はトウビョウ・ゼネラドに到達する直前に周囲を“暗転”させ、頭上から斬撃を浴びせる。暗闇が晴れると、暗赤色の光が開花するが如く広がる光景が柚榴には見えた。

 

 柚榴はバクナワ・ゼネラド・“逆鱗”が戦う様に見入っていたが、闇の中で戦闘が終結していたことを理解して言う。

「強いんですね、お姉さん……ありがとうございます」

 先程の笑みとは異なる眩しさ。

「い、いえ……拙は…………っ!?」

 率直な感謝を受け、バクナワ・ゼネラド・“逆鱗”は動揺と気恥ずかしさに包まれたが、危機は去った訳ではなかった。

 

 バクナワ・ゼネラド・“逆鱗”が知覚した白い影()()、それはトウビョウ・ゼネラド。数十体──百体に近い数の群である。

 蛇または狐の姿を持つ憑き物、トウビョウは七十五匹あるいは百匹の群れをなすとされる場合があるのだ。

 

 “逆鱗”が抱いたのは恐れ。だが。

 

 ──新たに手にした、この力なら……。

 

 二振りの刃を構え、再び戦いに臨む彼女。

 幸いにも、次の瞬間より今回の戦闘における彼女は孤独ではなくなった。

 

《Biblioclasm!》

《COMBAT XENOCIDE RAID!》

 即ち、白蛇の怪人の群れに降る、槍の形をなす暗い赤の光が一条。

《End Roll!》

《DEPRAVED RIDER CLOSING!》

 続いて、注がれる火炎の柱。

 撃破されるトウビョウ・ゼネラドの数割。

 

 果たして降り立ったのは、ヴリトラダハーカフォームのロアとフェルニジェスフォームのベイラ。黒き竜を模った威容。

 氷壁を生成、怪人たちの進行を阻む二者。

 

「遼也さま、深冬さま……!」

「大丈夫だった、幻月? そもそも幻月……で合ってるよね?」

 深冬(ベイラ)は初めて目にした新たな姿のバクナワ・ゼネラドを観察しながら問う。

「はい、拙は幻月で、大丈夫です……この姿は、事情があって……」

「その姿も興味深いが……人を守護しながら戦う“典型的な英雄”、とでも表現すべき行動を態々取るゼネラドは君くらいだろう」

「確かにそうかも!」

「……そ、そう、ですね」

 

 戦闘を鑑賞していた柚榴は“仮面ライダー”らしき者が参入したことに愕然としたが、“蛇のお姉さん”が呼んだ「遼也」という名と、男性の仮面ライダーが発した声も聞き逃さなかった。

 彼女が聞くことを望んだ声、懐かしい声。

 もう一人の「深冬」と呼ばれた仮面ライダーが何者か気になったが、それ以上に眼前に出現した者があの偉大な“兄”である可能性に、柚榴の心が振動した。

 

 ──私の、兄……?

 

 遼也(ロア)が仮面越しに柚榴を一瞥。バクナワ・ゼネラド・“逆鱗”が守る人物を一目見ようとして。

 

 ──その貌は……。

 

 だが、直ぐに敵へと向き直る。会話も程々に。

「群れをなす白蛇……トウビョウ・ゼネラドか」

「久しぶりにゼネラドが沢山だね」

「ああ。だがこちらも三人だ」

 氷を突き破り、機微に地面を這って殺到する群れ。

「君は引き続きあの高校生を守ってやれ」

「はい……!」

 ロアはバクナワ・ゼネラド・“逆鱗”に告げると、彼はベイラと共に怪人たちの方へ進行。

 トウビョウ・ゼネラドの猛攻には、単純な打撃に限らず装甲を大型化させた上での突進も含まれている。ロアとベイラは時に強靭な装甲で受け止め、時に炎と氷で一帯を彩る。

 

 ライダー二名の潜り抜けた個体をバクナワ・ゼネラド・“逆鱗”がカガチタバクを手に持ち、尻尾にタイダルカンピランを持たせるように巻き付けて迎撃。

 毒液、気圧、重力、水流──それらの多彩な手段を使い分けながら二つの刃に乗せ、次々と撃破。

 

 守られる柚榴は戦いの鮮やかさに魅了されつつも、遼也が今眼前の出来事の当事者であるのはほぼ確実だと思うと、(たかぶ)りつつも神聖な場面を見ているようでやはり畏れ多い気分だった。

 

 一方、ロアとベイラは。

「何かディスクちょうだい!」

「これはどうだ?」

「ありがと!」

 ロアからベイラへ渡されたのはプールで入手したスキラディスク。ベイラはそのディスクを直ちに至点の槌に装填。

《Biblioclasm!》

《BITING-SWIRL XENOCIDE RAID!》

 杖の装飾から水流で構成された犬の頭が六つ放たれ、複数のトウビョウ・ゼネラドを水圧の牙が砕く。

 

 ベイラが技を発動していた間、ロアも以前手に入れたテイルディスクを使用していた。

「……試すか」

 ロアドライバーのディスクを入れ替える。

《Arthur》《Batraz》

 アーサーディスクとバトラズディスクを装填すると、炎が猛る音と金属が擦れる音を合わせたような(いかめ)しい音楽が流れ出す。

 そして、ドライバーを操作。

《Now Loading......Transform!》

《The Prelude to Comprehensive Protagonist: Arthur Batraz Form》

《Full of sound and fury.》

 

 仮面ライダーロア、アーサーバトラズフォーム。

 火炎や血液のように赤いアンダースーツ。

 竜の体表と騎士の鎧を思わせる銀の装甲。

 仮面の複眼はゼノサイドライバーのベイラと同じように銀色の“第二の仮面”に覆われ、そこに刻まれた一筋の横長のスリットから赤い複眼の光が覗く。

 また、三本の鋭い角が“第二の仮面”の額に一本、左側に二本配置されている。

 装甲の尖った部分と“第二の仮面”の角の先端は透き通った赤に染まっている。

 背に備わる竜の翼を模した一対の装飾には、アーサー・ゼネラドのものに似たジェットエンジン・ロケットエンジンの噴射口が。

 

 新たな姿となったロアは、背負っていた二振りの竜蛇が彫刻された諸刃の剣──金色のエスカリブルヌスと銀色のズスカルヌス──を手に取り、構える。

 そして背の噴射口から赫赫(かくかく)たる奔流が噴き出し、高速で怪人の群の中を駆けながら剣を振るう。その様は鮮烈な赤の彗星の如く。

 駆け抜けた後に、トウビョウ・ゼネラドたちが撃破されたことによって爆炎が生じた。

「すごい速さだね!」

 爆発までの一連を視界に関わる機能によって辛うじて認識できたベイラが、仮面の下の表情が容易く想像できる声色(こわいろ)で驚きを(ひょう)した。

 そんなベイラの様子を見て、声を聞き、自分まで嬉しくなっていることに気付くロア。

 

「ああ、これで可能な戦略が増えた……」

 戦況を確認すると、トウビョウ・ゼネラドの数は半分以下に減少している。

「よし、三人で一気に決めよう!」

 澄んだ声で提案しながら、ベイラはゼノサイドライバーを操作してモーガンフォームとなる。

《Addition: Morgan》

《Now Invading……Deform!》

《Morgan in BEIRA the MASKED RIDER》

《Fade out.》

 柚榴に寄ってきた怪人を排除したバクナワ・ゼネラド・“逆鱗”も合流。

「拙が糸口を作ります……!」

 バクナワ・ゼネラド・“逆鱗”が舞い踊るように上半身を動かし、その場で回転すると狂飆(きょうひょう)が発生して怪人の群れを空へ巻き上げる。

 地面に墜落する際の衝撃で破壊するのではない。そもそもゼネラドと仮面ライダーは落下の衝撃での撃破が可能な構造ではない。

 

 即ち、バクナワ・ゼネラド・“逆鱗”を含めた三者の行動は──。

 

 ロアとベイラは各々のドライバーを操作。

《End Roll!》

《LUSTER RIDER CLOSING!》

 ロアの背の噴射口を備えた翼──ロイェシュキーハンが肩に移動し、噴射口が前方を向いた状態に。

 噴射口の奥に光が生じる。

《Biblioclasm!》

《VORTEX DELETION!》

 ベイラが翼を広げると、それが暗赤色の光を纏った。さらに彼女を取り巻くように暗碧の水流が現れる。

 

 バクナワ・ゼネラド・“逆鱗”は両手に剣を持ち、先程より複雑で激しい舞を。剣から暗い赤光(しゃっこう)が立ち上り、空中で光が巨大な蛇のような形を形成。

 

 そして“逆鱗”が一層激しく剣を振り翳すのを合図に、三者が一斉に(とどめ)の一撃を放つ。

 暗い赤光の蛇が空中を這い、投げ出されたトウビョウ・ゼネラドに何度も喰らい付く。

 ロアのロイェシュキーハンから膨大な熱量が数多、砲弾状に圧縮されて射出。

 ベイラが羽撃くと、暗赤色の光が刃に変化して水流の勢いが加わり飛翔。

 

 牙、弾、刃による殲滅。

 ()くして戦闘は完了。

 

 

 

 

 

 

 遼也と深冬は入手したテイルディスクを確認し変身を解除し、幻月は人間の姿に戻りながら柚榴の方へ歩む。

「幻月、少し大きくなったね!」

 ライダーに変身していた女性が、無邪気に“蛇のお姉さん”にそう言う場面が柚榴には見えた。

 ただ、柚榴に気を引かせる者は深冬と呼ばれた女性と“蛇のお姉さん”よりも、やはり()だった。

 しかも彼は柚榴を直視。柚榴の知る冷徹な瞳。

 自らの顔の紅潮を感じた。

「誰かと思えば……やはり俺の妹か」

 大した関心を有していない口調の彼。

 

 ──わ、私のことを覚えて……!?

 

 身体の強張り。

「遼也さまの、妹、さま……」

 納得がいった様子で呟く幻月。

「君が遼也の妹……!」

 光が差すように一層表情が明るくなる深冬。

「私、凍霧深冬っていうんだ、よろしくね! あ、ちなみに遼也の恋人だよ!」

 

 先程から発するべき適切な言葉を見つけられない状態だった柚榴だが、今度こそ完全に言葉を失ったのだった。










(あくた)柚榴(ゆずる)
種族:人間
性別:女性
年齢:16歳
容姿:兄に似て、整っているが薄情そうな顔立ち。瞳と髪は黒く、髪型は長めのミディアムヘア。目の下には隈が浮いている。
職業・身分など:過山(かさん)高校の二年生
家族など:父、母、兄(遼也)
身長:170cm
体重:61kg
スリーサイズ: B88/W58/H95
誕生日:12月12日
好きな物事・趣味・特技など:遼也、スポーツ全般、勉強、読書、料理、映画鑑賞、年上
苦手な物事など:つまらないモノ

遼也の妹。兄を慕い、崇拝しており、彼に対して一種の畏れを抱いている。
特定の相手(遼也など)や教師などに対してはやや砕けた敬体で、それ以外の相手に対しては遼也の口調と似たような常体で話す。
目の下に隈が浮いているがスポーツが得意で、腹筋が割れる程ではないが程よく筋肉が付いている。
兄に似た性質も持ち合わせており、ライダーや“著者”に関する異常な状況に遭遇した場合は好奇心を発揮する。






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