仮面ライダーロア   作:瀝青

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合計UA300!本当にありがとうございます!

今回は少し短めです。

2023/2/1
一部描写を追加、登場人物の身長を変更

2023/6/28
一部台詞を変更


第3話 予兆と疑念

「相手は、オレだ!」

 その言葉と同じ勢いのままに、狼のゼネラド——セイズは左手の長く鋭い爪でロアに斬りかかる。

 その動きはバーゲスト・ゼネラドよりも直線的で力任せな、凶暴性を色濃く発現させたものだった。

 ロアはモータルスティンガーを両手で持ち、柄の部分で爪を受け止める。

「なんだ、そんなモンか!?」

「ぐッ……」

 しかしその抵抗も意味を為さず、両者は拮抗することなくセイズが優勢のまま戦いが進行する。

 よろめいたロアには体勢を立て直す猶予すら与えられない。腹部に叩き込まれた蹴りによって派手に吹き飛ばされ、水飛沫を散らす。

 そしてセイズの口から紫の炎が駆け出す、その瞬間——。

「ッ……何、しやがる!?」

 セイズの首に銀色の糸が何重にもなって巻きつき、攻撃を止めさせた。糸の先にはアラクネ・ゼネラドの掌。

「アラクネ・ゼネラド……復活したのか……?」

 立ち上がった遼也は仮面の下で目を見張る。

「まあね。あとスルクって名前の方が呼ばれ慣れてるし、今度からはそっちで呼んでほしいかな」

「で、オレの名前はセイズ……じゃなくてさっさと離せよ!」

「だめ。ルイーザちゃんもまだ今のロアには死んでほしくないみたいだし。ほら、帰ろ」 

 ルイーザ?"今の"ロア?二つの言葉がロアの思考の流れに引っかかり、彼の興味の矛先を対照的な二人のゼネラドの会話に向けさせる。

 もう暫く傍観を続けるか。彼はそう決めた。

「何言ってんだ、ふざけるな!おい!何とか言えよ!」

 暴れるセイズ。スルクは無言のままセイズを拘束し続ける。

「もう無理矢理連れてくしかないか……まあせいぜい頑張ってね、ロア。じゃあねー」

 騒ぐセイズに構わず、スルクはセイズの首に糸を巻き付けたまま跳躍し、去ってゆく。セイズの咆哮が急激に遠ざかり、そして消えた。

「……今のロア、か」

 変身を解除した遼也の心は、まだ見ぬ真実への好奇で満たされていた。

 

 

 

 

 

 

 廃工場にて。スルクの拘束から無造作に解き放たれたセイズが床を転がる。

「この無表情女がよ……!」

「だってこれで三回目だよ」

 片方は激昂、片方は冷静どころか全くの無感情。台詞から捉えるなら口論というべきものだが、実際の様子はそれとは明らかに異なるものだった。

 不意に扉が開き、口論に満たない口論を遮る。

「あ、ルイーザちゃん」

「ルイーザ……」

 スルクとセイズが同時にその方を向く。一人の女性が現れた。

「お久しぶりですね、スルクさん、セイズさん」

 丁重な口調。

 ランウェイを歩くような優雅な足取り。

 長くさらりとした髪は二色に分かれており、右側は黒く、左側は金色。

 瞳は静かに爛々と燃え、右は赤、左は青。

 可憐かつ妖艶な笑み。

 相反する二種類の美が見事に共存し、幼い少女にも大人の女性にも見える容貌。

 病的な程に肌は白く、華奢であるべきところは華奢、豊満であるべきところは豊満な体型は服の上からでも見て取れる。

 身に付けたブラウスと長いプリーツスカート、ショートブーツの全てが黒一色で、長身に映えていた。

「またロアを誤って処分しかけたそうですね、セイズさん?」

 心底困った、というような顔のルイーザ。

「仕方ねえだろ。お前が『今回のロアは期待できる』とか言うからだぞ」

「確かに今回のロア——遼也さんは優秀なお方です。しかし今はまだ、アナタに挑むには力不足と断定せざるを得ないでしょう」

「アイツが強くなるまで待てってのか?」

「ええ。ですが彼の素質を考慮すればそう長くはならないはずです。"2号ライダー"——ベイラの適任者も見つかったことですし……順調に力をつけていけば"あのドライバー"の出番も近いでしょうね……」

 微笑みがスルクとセイズに向けられる。

「マジか!じゃあちょっとは我慢してやるよ!」

「ボクはあんまり興味ないけど……それで次はどうするの」

「そうですね……ひとまず(ワタクシ)がご挨拶に行って参りましょう……」

 ルイーザの手に、二枚のテイルディスクが光を反射する。

 彼女の顔は、初めてロアドライバーを手にしたときの遼也と同種の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 遼也は公園に戻る途中で、彼を捜そうとした結果迷子になった深冬を見つけ、彼女と歩みながら思考する。

 鎖で拘束された炎を吐く狼のゼネラド、セイズ。おそらく北欧神話に登場する、主神オーディンを喰い殺した巨大な狼、フェンリルの特性を持つゼネラドであろう。

 「セイズ」という呼び名も、元は古代スカンディナビアにおける魔術を指す言葉だ。

 しかし今まで遭遇したゼネラドと異なり、声はノイズに包まれていた。

 ゼネラドは人間に擬態する能力を有する。彼等、彼女等に人間の男女の概念を当て嵌められるのかは分からないが、怪人としての姿をしていても人間の姿の性別に応じた声で発話する。

 そのため彼あるいは彼女は自分の正体を積極的に隠そうとしているのではないか、という仮説に自然と辿り着く。

 そう考えると隣の深冬が不自然な存在に思えてくるのだ。

 そもそも芥遼也が深冬に仮面ライダーについて話すことを決めたのも、二度彼女と同じような状況で巡り合い、それを「面白い」と感じたために他ならない。

 先程のセイズの事と合わせてこの事実を捉え直すと、「予め仕組まれたモノとしての凍霧深冬」という人物が朧げに浮かび上がってくる。

 だが、年齢に不相応な程に無邪気な彼女の姿と凶暴なセイズの姿はどうしても重なり合わない。

 懸念、或いは伏線は他にも残っている。

 一度倒したアラクネ・ゼネラドことスルクの復活。

 そしてスルクやセイズを管理する立場であると思われる「ルイーザ」なる人物。

 芥遼也以外にロアとして戦っていた者が過去に存在した可能性についてだ。

 ルイーザはあのローブの人物に連なる者なのか?そしてロア、ゼネラドとの関わりは。

 果たしてどんな面白い展開が芥遼也を待ち受けているのだろうか。

 

 深冬と言葉を交わす彼の笑顔に、僅かな狂気が染み出した。




今回、初めて登場した人物
ルイーザ/⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎・ゼネラド
種族:ゼネラド
対応するテイルディスク:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ディスク
性別:女性
容姿(人間態):腰まで伸びた長髪の右側は黒く、左側は金色。右目は赤、左目は青。可憐にして妖艶な、年端も行かない少女とも成熟した女性ともつかない容貌。
身長(人間態):173cm
体重(人間態):55kg
スリーサイズ(人間態):B93/W57/H86
好きなもの:面白いモノ
嫌いなもの:つまらないモノ

⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の小説『⬛︎の⬛︎の⬛︎⬛︎⬛︎』に登場する怪物・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎に由来するゼネラド。

遼也とは似た者同士で、静かに狂気を表出させる笑い方などもそっくり。

一人称は「(ワタクシ)」で、常に他者をさん付けで呼び、誰に対しても丁重な口調で話す。



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