900UAありがとうございます!
「あーやっと変身した……」
引き続き観戦中の
新たな仮面ライダーの登場に喜ぶ気持ちもあったが、
「仮面ライダーベイラ……カッコいい、っていうよりは美しい、って感じか」
「私、ほんとに変身しちゃった……!?」
『君が使ってみるか?』現実となった遼也の放った言葉。
「驚いている場合か?行くぞ、仮面ライダーベイラの開幕だ!」
「うん!……はぁあああっ!」
二人で並んで駆け出す。
ベイラは杖——ソルスティスセプターを乱暴に振り回し、ロアはブラッディコルヌコピアを抜刀。
次々と放たれるカマソッツ・ゼネラドの赤い球体は槌によって潰え、剣によって切り裂かれ、消滅。
二人はカマソッツ・ゼネラドに迫り、それぞれの武器を振り下ろすが命中する直前にカマソッツ・ゼネラドは上空へ飛翔。ベイラはそれを追って、鮮やかな青い翼を広げて飛び上がる。
一方、鋭い灰色の一閃がロアの目前の地面を抉る。禍々しい容姿に見合わないゆったりとした動作で再びヴォーパルを構えるジャバウォック・ゼネラド。
空中ではベイラが振るうソルスティスセプターがカマソッツ・ゼネラドに打撃を与え、カマソッツ・ゼネラドは地面に墜落。その隣ではロアがジャバウォック・ゼネラドの実力に警戒して、ヴォーパルの斬撃を掻い潜る。
「当たったぁ!えーっとなにか必殺技とかは……」
ベイラが滞空しながらソルスティスセプターを弄くり回す。先端の装飾に触れると、それは鳥が翼を広げるように展開した。
「これってもしかして……!」
テイルディスク一枚が収まる空間。ベイラは即座にフーアドライバーからベイラディスクを取り出しソルスティスセプターに装填。自動的に装飾が閉じ、音声が追随。
《End Roll!》
《VORTEX RAID!》
装飾から冷気の奔流が放たれ、周囲の地面ごとカマソッツ・ゼネラドを氷に閉ざす。槌は水流を纏い、彼女は急降下。荒々しくも優雅に飛行の勢いを伴い、槌の軌道が渦を描いて打撃を繰り出す。
「おりゃああああ!」
砕け散るカマソッツ・ゼネラドと氷。地面に降り立つベイラ。
「よしっ!」
ベイラのベルトのシソーラスロットに出現する、赤色で蝙蝠と《Camazotz》の名が刻まれた藍色のカマソッツディスク。
彼女はロアと同じようにそれをディスクホルダーに収めた後、ロアの加勢に入ろうとジャバウォック・ゼネラドを回避し続ける彼の方へ向かった。
「猛烈かつ流麗な素晴らしい戦いぶりでしたね、深冬さん。そして遼也さんの軽やかな身のこなし……ですがこちらは如何でしょうか」
攻撃を中断したジャバウォック・ゼネラドが試すようにそう言うと彼女のヴォーパルが溶解。剣からソルスティスセプターのものより大型で無骨な灰色の槌へと変貌。
身構える仮面ライダーたちに回避の隙を与えず、彼女は槌と化したヴォーパルを軽々と持ち上げベイラ以上に俊敏な一撃を披露した。
「うっ!?」
「うわぁ!?」
纏めて薙ぎ払われ一瞬宙を舞い、地面に叩きつけられる二人。
彼女がその身体から取り出した、今は槌の形をしている剣であったもの。あれは恐らく『鏡の国のアリス』の劇中、『ジャバウォックの詩』にて怪物ジャバウォックの首を刎ねた"
『ジャバウォックの詩』に"ヴォーパルの剣"の具体的な描写は無い。
そして"剣が何であるか説明できない"とは、『鏡の国のアリス』の作者の言葉だ。
そもそもジャバウォックは言語の混沌の体現者と解釈され、更には詩自体が無意味なものである、という説が存在する。
"ヴォーパルの剣"は、必ずしも剣とは限らない。
故に彼女の武器も変化する。
剣に戻った"ヴォーパル"を手にして徐々に迫り来る彼女を脇目に、彼はそう結論付けた。
ここは賭けに出るべきか。
「同時に仕掛けるぞ」
「わかった!ダブルライダーキックだね!」
「その通りだ!」
二人で立ち上がる。
《Beira》
元気よく応えたベイラはベイラディスクをフーアドライバーに戻し、フーアドライバーのボタンを二度押した。ロアもまたロアドライバーのボタンを二度押す。
《End Roll!》
《VORTEX BANE!》
青い渦潮を帯びて羽撃く。
《End Roll!》
《HUNTING RIDER KICK!》
赤い濃霧と共に跳躍する。
「はぁあああああ!!!」
「ハァッ!!」
同時に飛来する赤と青を防ぐ素振りも避ける素振りも見せないジャバウォック・ゼネラドは、当然衝撃を受けて後退した。
着地した二人の目に映るのは、無傷で灰色を携えた白黒。
「効いてない……!?」
「予想はしていたが……」
しかし彼女はそれ以上攻撃の意思を示さず、翼を広げて上機嫌に言った。
「ふふっ、これからの"展開"が楽しみですね……それではまた」
一礼して飛び去るジャバウォック・ゼネラドの言葉にとりあえず返事をするベイラ。
「えっ……じゃ、じゃあねー!」
一瞬で空に消え失せた白黒。
疑問を抱きながらも一先ずロアはロアドライバーを外し、変身を解除する。ベイラもそれを見て同じように変身を解除した。
「やっぱりすごいね、仮面ライダーって!」
「それは良かった……しかし結局君のお友達は何処へ行ったのだろうな」
「あ……」
深夜の街、歪な路地裏。
遼也より少し年上の若い男がしきりに周囲を見ながら逃走する。
彼は苦悶の表情を浮かべ、頻繁に咳をして見るからに衰弱していた。
彼の目の前に追跡者たる彼女が降り立つ。
白黒の彼女——ジャバウォック・ゼネラドの灰色の刃が、路地裏へ僅かに差し込む街の光を反射した。
刹那、男は硬直するが苦悩ののちに彼女を真っ直ぐに見据える。そして灰色に塗装されたロアドライバーのような機器を取り出し、装着。
《ProtoLore Driver!》
次に二枚の灰色のテイルディスク——赤黒い牛の頭部が描かれたモロクディスクと、赤黒い山羊の頭部が描かれたバフォメットディスクを灰色のロアドライバー——プロトロアドライバーに装填。
《Moloch》《Baphomet》
穏やかでオーケストラの調律を思わせるが、微かな不協和音が混じった音楽が溢れ出す。
「変ッ、身……!」
プロトロアドライバーのボタンを押して、その言葉を絞り出す。鉛色の液体が戦士の形成を開始。
《Now Loading……Henshin!》
《MASKED RIDER PROTOLORE》
マスクドライダー。十年程前に用いられていた、『仮面ライダー』を題名に冠す作品の英語表記である。
しかしプロトロアドライバーは彼にその称号が相応しくないと示唆するように、ノイズに覆われた声で『マスクドライダー』という名を告げた。
《Chapter ZERO.》
落ち着いた音楽から一転した、勇壮なロアドライバーとは対照的な重く低い電子音と不気味な程に澄んだ鈴や鐘のような音と共に変身が完了。
仮面ライダープロトロア。
仮面ライダーロア、クロムヌンノスフォームに相似した姿だが、それとは異なる意味で"無色"だった。
灰色が複眼、
またシソーラスロット、ディスクホルダー、テイルレンダーは装備されておらず、鹿の角は山羊の一種、アイベックスの角に、羊の角は後方に向かって伸びる牛の角となっている。
プロトロアはジャバウォック・ゼネラドへと驀進、拳と蹴りを叩き込む。
「ぐ、ぁ……」
呻き声を上げて猛攻を続けるが、彼女の方は少しの痛みも受けていない。
「……その程度ですか」
失望の言葉。
プロトロアは彼女に応答するようにプロトロアドライバーのボタンを二度押し、灰色の炎を纏う。
《Xenoglossia!》
《RIDER KICK!》
「ゔ……あああああぁ……!」
飛躍からの蹴りが彼女に衝突した。
しかし、その一撃も昼間に二人の仮面ライダーが放った技と同じ結果に終わった。
異形の体躯は未だ健在だ。
着地したプロトロアは更なる苦痛に襲われ地面に膝を突く。
「やはり適合は不可能でしたか……」
ヴォーパルの一閃。プロトロアドライバーが外れ、深く憔悴した男の姿が現れる。肌は所々が洋墨を垂らしたような黒い染みで侵蝕されていた。
「こちらとしても誠に遺憾ですが、アナタの物語は……此処で終幕です」
憐れみながらも、単なる他人事として捉えるように彼女は言った。
男は倒れ伏す。
何故自分にこの力を与えた?
男の思考はそこで途切れ、再開されることはなかった。
今回、本格的に戦闘に参加した2号ライダーのベイラは根本的な部分はファムから着想を得て、武器の方はゴルトバイザーとレンゲルラウザーを参考にしました。
前回に引き続き戦いの舞台もレンゲル初登場回の撮影地、夢の大橋を元にしていたり。
最後に登場したプロトロアについてですが、初期の段階ではロアのモチーフはバフォメットだったので二重の意味でプロトタイプだったりします。あとは悪魔モロクから名付けられた実在の生物であるモロクトカゲとスティギモロクの要素も入っています。
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それでは次回もよろしくお願いします!