このお話はモンスターハンター・トータスのメインストーリー後の時系列から始まる物語です。まだ本編で書かれていないキャラクター達の関係性が進んでいるので、そういうのを見たくないという方はブラウザバックを推奨します。「私は一向に構わんっっ!!」という方だけ、リハビリ投稿がてら書いたIFのストーリーをどうぞご堪能下さい。
ありふれた与太話《プロローグ》
南雲ハジメがハンターとして戦う物語は、大元の世界から数多のIFが積み重なり、分岐して生まれたパラレルワールドである。死ぬ筈だった人物が生き残りその逆もあって、また本来はその世界に存在し得ない生物が自然の中に息づいて生態系を構築している。
言ってみれば大元の世界を知る者からすれば理解し難い
彼らの進む未来に待つものが
故に、これから始まる物語は刹那の夢物語。
片や始まりの零からIFを積み重ねて終わりを迎えるであろう世界、片や大元の世界に最も近いようで流れの異なる世界。両者を繋ぐ鍵となるのは海人族の幼子と超越の存在だった。
*
「…297…298…299…300ッ!」
マイハウスの外に併設されたトレーニングルームで、ハジメは久しぶりの狩りを終えた後の反省を兼ねて自己鍛錬に没頭していた。汗をかいて、呼吸を整えながら心の中で独り言を呟く。
(…怪鳥相手に一乙しかけるとは…)
彼の狩りの相手は怪鳥の異名で知られる火の玉を吐くモンスター・鳥竜種イャンクック。
彼がハンターとして活動する為に入った訓練所の卒業試験で最初に狩猟したモンスターでもあり、単調な攻撃や倒しやすさから、モンスターでありながらハンターに狩りの基本を叩き込んでくれる先生として親しまれている。
しかしハジメはその先生を相手に油断して危うくベースキャンプ送りにされるところだった。
幾ら鳥竜種の中でも弱い部類に入ると言っても、生身の人間なら歯が立たないモンスターだ。
鋼鉄の剣を弾き、矢では鱗の表面に罅すら入れられず、最上級魔法で多少傷をつけられるかという常識外れの相手に、挑む力を持つ者こそがハンターである。
(…弛んでる。幸福続きの人生で…甘えが出て来てるな)
美人の彼女達に囲まれて、救世の英雄だ最強のハンターだと煽てられて、心の何処かで天狗になっている自分がいるのではないか?
そう思った彼は自分に腹を立てて、素手で地面を殴りつける。
「思い上がるな…俺はまだ未熟だ…!」
世界を救うほどの活躍をした人物が他にも大勢いる事をハジメは知っている。守りたいものの為に自らの運命を躊躇いなく捧げた男を、そんな彼の隣に立って彼を支えようとした意志の強い少女を、生を呪って苦しみ藻掻きながら前を向いた女を、多くの犠牲と献身があって今に至った。
「……フーッ……(忘れるな、心に刻め)」
何十匹、何百頭、何千体、那由他の彼方まで獲物を狩ろうと自分は未熟。
狩人の進化に終わりはなく、鍛錬と成長は一生続く。
汗を拭う時間すら惜しんで、一心不乱にハジメが次の鍛錬に移ろうとした時だ…
コンッコンッコンッ
トレーニングルームの扉が外からノックされて、動きを止めた彼は扉の方を向く。
「ハジメさん。ご飯の準備が出来ました」
「ん、分かった。呼び来てくれてありがとな”シア”」
扉の外に居るのはシア・ハウリア。亜人族で最初にハンターとなった少女であり、ハジメの後輩兼彼女の一人でもある。自己鍛錬を中断して、彼は桶に張った水を頭から被る。
濡れた銀色の髪の水気を手で絞り、壁に掛けてあるタオルで髪と体を拭く。
防具と武器をアイテムボックスへと収納し、普段着へと着替えてから外に出る。
シアはトレーニングルームの壁に寄り掛かり、出てくる彼に気づいて駆け寄った。
「悪いな、着替えまで待ってもらって…」
「大丈夫ですよ。行きましょう」
「あぁ」
マイハウスまで続く木の廊下を二人は肩を並べて歩く。
以前であれば、こんな風に並んで歩くだけでもお互いに変なことを意識してどぎまぎしていたのだが、今となってはこれが彼女達の当たり前の光景である。
シアに倣って空の様子を見て明日の天気を想像していたハジメ。
そんな彼を横目に見ていたシアは心配そうに話しかける。
「…今日の狩り、上手くいかなかったみたいですね」
「…分かるか」
「クエストから帰ってきた時、ハジメさんの防具がちょっと焦げ臭かったですし、それに…さっきの音が聞こえてしまったので、何となく察しちゃって…」
さっきの音というのはハジメが地面を殴りつけた時の音だ。
亜人族の中で最も鋭敏な聴覚を持つ兎人族だからこそ、音の聞き分けがし易い。
見られていないからと油断して醜態を晒したことに彼は恥じらう。
「俺もまだまだ未熟だな」
「…ハジメさん自身がそう思うなら、きっとそうなのかもしれません。でも―――」
本当は心の中で「そんな事はない」と否定して欲しい反面、甘やかさないで欲しいという彼の複雑な心境を察したシアは肯定したうえで言葉を続ける。
「自分が未熟だって思うなら、私を頼って下さい。私は…ハジメさんの彼女である前にハンターであるハジメさんの、最初の後輩なんですから。私が前で戦って…」
「…ガンナーの俺が援護する」
かつて二人きりで高難易度クエストに挑んだ際、ハジメがシアに言った事だ。
ボウガンを使う遠距離攻撃主体のハンターをガンナーと呼ぶ。ハジメの戦い方はライトボウガンによる機動力を生かした早撃ちだが、欠点としてそれ単体の攻撃力が足りない。
一方で攻撃力に全振りしているハンマー使いのシアは、兎人族の能力を存分に発揮して機動力も補ってはいるが物理攻撃と打撃一点に集中している為、相手によっては苦戦を強いられる。
お互いの戦い方を把握して足りないものを補う関係を最強と呼ばれた二人のハンターから学んで、ハジメとシアは初見の高難易度クエストを見事に達成した。
「次クエストに行くときは、誘ってくださいね?ハジメ先輩♪」
「…あぁ…そうだな、付き合ってくれ」
「はいっ!喜んで!」
「…ま、それはそれとして…」
ハジメは意地悪い笑みを浮かべてシアの頭を軽くポンポンと叩いた。
「あうっ…」
「後輩の癖にちょっと生意気だ。…そんなに自信満々なら、次のクエストはライセンの荒野探索で発見した”ディアブロス亜種”の歴戦個体狩猟・制限時間15分で決まりだな」
ディアブロス亜種、大型の飛竜種でも上位5本指に入る別名・黒角竜を聞いてシアのウサ耳ピンと直立し、見る見るうちに顔色が真っ青になる。
「ふひぇっ!?そ、それはちょっと厳しいですよぅ…」
「何言ってる、アンカジで戦った鏖魔に比べればマシだ。…油断したら死ぬけどな」
「アレはもう角竜の皮を被った古龍級生物ですぅ~!」
鏖魔ディアブロスと呼ばれる亜種とはまた別の特殊な個体。
それの初討伐をやり遂げた時はハジメ、シア、ハジメと同期のハンター二人で辛勝だった。
また同じ個体を狩れと言われても
懐かしい話に花を咲かせながらマイハウス脇の農場を通って中に入ろうとした二人。
そこへ農場の中から顔を出した竜人族の女が声をかける。
「何やら楽しそうに話しておるではないか」
「あっ、”ティオ”さん!お野菜の収穫ですか?」
「うむ!今朝がた目をつけておいた野菜が良い具合だったのでな。夕餉の副菜じゃ」
「いつも農場の世話を任せきりで悪いなティオ」
「気にすることはない。こういう事も、花嫁修業の一環になるからの」
ティオ・クラルスは元々竜人族の姫であったが、ある少女との因縁で竜人族の掟を破って竜人族の暮らす仙境から追放される事になってしまい、現在は仮登録のハンターとしてシアに続くハジメの後輩兼彼女として同棲している。
ティオの言葉に反応したシアが小声で「花嫁修業…」と呟いたのをハジメは聞き逃さなかった。
ハジメと交際関係にある少女達は誰が正妻かという争いを一切せず「唯一無二の特別な相手と寄り添う」というルールに当事者であるハジメ協力の下、将来を見据えた生活を送っている。
彼自身も今付き合っている彼女達で「誰が一番特別か?」と聞かれたら「全員」と答える。
単に優柔不断という訳ではなく、付き合う相手に一番も二番もないという考え方だ。彼女達の前では言わないようにしているが、ハジメの自己評価はかなり低い。そのうえで「俺みたいな男に付き合ってくれる娘に失望されないよう全力を尽くす」というスタイルで付き合っていた。
恋人の関係において、常々問題視される浮気やら二股やら。ハジメと彼女達の関係にそれが当てはまらないのは、共通して「日常の不平等を包み隠さない」という主義に基づいて生活しているからだった。完全な相互理解は難しいが、それに近いものなら当人たちの努力次第でどうとでもなる。それに付いてこられないのなら、とてもじゃないが特別な関係としてはいられない。
ハジメと付き合っている9人の彼女全員が物理的キャットファイトを起こさないのがその答えである。彼が頭の中でそう思っていると、ふとティオのひとさし指がぷにっと彼の頬肉を突いた。
「んぅ…なんだ?」
「フフ……妾達との関係について何やら思案しているようだったのでな。あまり小うるさい事は言わぬが、全員集まって食事を摂る夕餉の前にそのような事を考えるのは無粋だと思わぬか?」
彼女の言うとおりだなと思い、ハジメは謝って思考を切り替えた。
シアが不思議そうに首を傾げていたが彼は「なんでもない。行こう」言って歩みを再開する。右隣にシア、左隣にティオと両手に花状態だが、普段は両手に花どころか両手いっぱいの花束である。
「そういえば、ティオのギルドカードはまだ正式に交付されてないのか?」
「うむ、毎日集会所へ聞きに言っているのだが、仙境の方からまだ許可が降りていないのじゃ。…恐らく爺か従者あたりが首を縦に振っておらんのじゃろう…」
仙境にいったことのあるハジメとシアは彼女の祖父である長や従者のことを思い出す。
二人がどんな顔をしてティオのハンター登録を聞かされて、今もなお許可を出していないのか。彼らの顔が目に浮かぶようで二人揃って「あぁ~…」と納得の声を漏らした。
ハジメがマイハウスの扉を開けて中に入ると暖かい空気が三人を迎え入れる。
天井に吊るされたシャンデリアの煌々とした明かりに照らされて、床にはひし形模様の大理石の上から赤い絨毯が道のように敷かれている。
二階の寝室に続く螺旋階段の壁には、ハジメ達がこれまでやり遂げてきた功績を称える皇帝・ギルドマスター直筆の感謝状やら、特別なモンスターを倒した際にギルドやクエスト依頼主から贈られる掛け軸やら絵画やらが飾られていた。
一階の大広間は中央にテーブルが置かれ、上にはそこに所せましと料理が並べられていた。
正面玄関の右手前はアイテムボックスの他に狩りに欠かせない道具が所せましと並ぶ。
右奥はオトモ専用のエリアで、ハジメのオトモアイルー”ドンナー”とオトモガルク”シュラーク”が先にご飯を食べている。
左手前にはトイレや風呂に通じる通路の扉があり、左奥には天井まで伸びる煙突と繋がる暖炉と暖炉の前に置かれた横長の椅子に座って談笑する海人族、森人族、狐人族の姿があった。
「あっ!ハジメお兄ちゃんお帰りなのー!」
「お疲れ様ですわハジメ様」
「お帰りなさいませハジメ様」
「”ミュウ”、”アルテナ”、”エタノ”皆ただいま」
ミュウ・メロウは見た目こそハジメと同い年に見えるが中身は五歳の立派な幼女であり、現在は母”レミア・メロウ”と共にハジメの彼女として一緒に生活している。
彼の名誉のために言っておくが決して彼がロリコンという訳ではなく、また未亡人好きという訳でもない。
ミュウとは初めて会った日のある事がきっかけで、レミアとは彼女の心の支えになると約束したことでお互いに歪な関係である事を理解したうえで付き合っているのだ。
「ミュウ、レミアは?」
「ママは優花お姉ちゃん達のお手伝い中なの~」
「そうか。…今日は何してたんだ?」
「ミュウ今日はアルテナお姉ちゃんに読み書き教えて貰ったの!ハジメお兄ちゃんの住んでるところの”にほんご”の”ひらがな”は全部書けるようになったの!」
「うん、ちゃんと勉強してて偉いぞミュウ」
「えへへ~」
ハジメはミュウに、まだ異性として完全に接しきれていない。…というか接してはいけないと心の中で誓いを立てている。幾ら見た目は同世代でも中身が幼児で手を出そうとは思わない。
だからこうして一緒に暮らしている間は他の彼女達に協力して貰いながら一般教養を教えて精神が肉体に追いつくまでの期間…最低でも十三年以上は恋人らしい行為を絶つつもりでいる。
それまでの間に彼女が心変わりするなら、それも構わないとハジメは思ってはいるが、母レミア曰く「あの子は私達が思っている以上に意志の強い娘よ。容姿や性格、家柄くらいじゃ他の雄に見向きもしません」とのこと。
雄という言い方が少々引っ掛かるものの、確かにミュウの意志は強いと彼も思う。好きな人が自分の母親とただならぬ関係にあると察しながら、嫉妬せず受け入れたうえで自分の好きを諦めないというのは中々に豪胆である。
「…??お兄ちゃん、どうしたの?」
「ん、いや…ちょっと考え事をしてたんだよ」
そう言ってハジメは誤魔化すようにミュウの頭を優しく撫でた。
彼女が満足気に「えへへ~」と笑ったのを見て、すぐに彼はアルテナにも話しかけた。
「アルテナも今日はミュウの勉強に付き合ってくれて助かった。ありがとう」
「お礼の言葉など不要ですわ。何せ日本語の勉強は私もミュウちゃんと一緒になって首を傾げながら切磋琢磨する間柄ですので!まだちょっと”漢字”のマスターに時間が掛かりますわ!」
「そうか。何か分からない事があったら聞いてくれ、答えられる範囲でなら答えるよ」
「あっ…ハジメさん、アルテナさん。その時は私も一緒に教えて貰っていいですか?」
「えぇ勿論ですわシア様。その時は是非三人でご一緒に!」
アルテナ・ハイピストは森人族の族長”アイリス・ハイピスト”の一人娘、訳あって亜人族の国フェアベルゲンから追放されることになってしまい、親友となったシアと一目惚れしたハジメの彼女として一緒に暮らしている。
現在は何も仕事をしていない為、主に隣に座るエタノからニート呼ばわりされているが、ハジメの傍に一秒でも長く居られるようにと”編纂者”になる為の勉強をしているという。
以前はお淑やかなお嬢様のイメージの強かったアルテナだが、フェアベルゲンを出てから初体験の暮らしや文化に触れた結果、かなりテンション高めのお嬢様になっていた。ハジメは内心「これはこれで容姿とのギャップ萌えがいい…」と思っている。
あまり公言しないが、異世界トータスにおいてハジメが一番出会って喜んだのは森人族だった。
絵に描いたようなエルフ耳と優れた弓の使い手というのが彼のオタク心を刺激したのである。
「ハジメ様。本日のクエストの報酬金と契約金の差額を家計簿に記入しておきましたヨ」
「ん…いつも助かってるよエタノ。どうにも俺はその手のものに疎くてな…」
「クココッ♪これくらいは狐人商会の長、未来の妻として当然のことです」
エタノ・ママモは魔人族と密通していたことでフェアベルゲンを追われた狐人族の中で、人間族の生活圏で商売をする狐人商会を束ねる若き商人でありハジメの彼女でもある。
ハジメはしっかりしているように見えて金銭管理が意外と杜撰な面があった。特にトータスでは簡単にお金が手に入る環境下だった事もあって付き合い始めた当初、彼女達から金遣いの荒さを咎められたことがある。
「いつかは経理の勉強とかもしないといけないのかもしれないな、俺も…」
「その時は私が手取り足取り、懇切丁寧に教えて差し上げますわ♪」
「お手柔らかに頼むよ」
そう言ってハジメは四人に「そろそろ席につくか」と促す。さっきまで一緒にいたティオは会話の最中に抱えた野菜を持って奥の台所へと去っていたが、席につこうとしたタイミングで他の少女達と一緒に料理をのせた皿を抱えて戻ってくる。
「ハジメ、今日は何を飲みますか?」
「ん…そうだな…”狩人ビール”ジョッキで頼む」
その内の一人”ノイント”は台所脇の冷蔵庫(家電ではなく地下に穴を掘って氷で覆われた食料の保管庫)から瓶の狩人ビールを取り出して、慣れた手つきでジョッキへと丸々一本分注いだ。
彼女はかつて神”エヒト”によって作られた真・神の使徒(神の使徒という呼称はハジメ達、異世界トータスに召喚された者達に使われていたが真・神の使徒とは全くの別物)だった。ある男の力で今までなかった人格を与えられ、色々あってハジメの彼女として一緒に暮らしている。
体の造りが人間とは違う為、それを活かして現在は色々な仕事の手伝いをする傍らハンターとしての訓練を受けているらしい。
彼女はかつて竜人族を滅ぼそうとしたことでティオに憎まれて殺されそうになっていたが、現在は和解してお互いに同じ少年を好きになった同志として見ている。
余談だがこのマイハウスにいるメンバー中、ダントツの年長者でもある。
「…ハジメ、今なにかとても失礼なことを考えませんでしたか?」
「気のせいだノイント。気のせいって事にしてくれ」
「…分かりました。今回は気のせい…という事にしておきます」
ハジメは零れそうな泡に気を付けながら手渡されたジョッキを机の端っこに置いた。
そんな彼の前に山盛りの肉と野菜が載せられた皿を置く海人族の女性。
「レミア、足の調子は良いみたいだな」
「えぇ。ノイントちゃんがリハビリに付き合ってくれたお陰よ」
「…否定、あくまで足の調子はレミアの頑張りによるもので私は何も―――」
「転びそうになった時は支えてくれてたでしょう?助かったわ、ありがとう」
「…感謝…受けておきます。どういたしまして…今後もお困りでしたら…」
「ええ、お願いね」
レミア・メロウはミュウの母親で、ハジメと出会った時は色々あって生きる気力を失っていた。それがこうして笑顔を浮かべられるようになったのはハジメや此処にいる少女達の支えがあったからだろう。足が少々不自由だが今はリハビリを受けて多少歩けるくらいには回復していた。
何か座っても出来る仕事をしようと考えたが、ハジメから「もう暫くは専業主婦でいて欲しい」と言われて現在は花嫁修業に燃える他の娘達のアドバイス等を行っている。
今までの生活の何もかもを失って生きる屍も同然だった彼女に、人肌の熱と生きる気力を注いだのはハジメだった。ならば自分に出来ることは亡き夫に操を立てることではなく、死ぬまでハジメとミュウの為に一生懸命生き抜くことだと今は思っている。
男女の関係を持ったことに最初は娘に対して罪悪感を感じていたが、今は特に意識していない。
「レミアよ、今宵の酒はどうするかの?」
「ごめんなさいティオ。今日は疲れてるから遠慮しておくわ」
「む、そうか。…ノイントはどうじゃ?」
「飲酒に伴う体調管理に問題はありません。ご相伴に預からせて頂きます」
「うむ!では他に飲める者は――――――」
「ん、ティオ。今夜は私も飲む」
そう言ってハジメの左隣へと着席する金髪赤目の吸血鬼族の少女。
彼女は”アレーティア”、フルネームは”アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール”だが長すぎて大体みんな覚えられないのでアレーティアと呼んでいる。
ハジメとの出会いはハイリヒ王国の宿場町ホルアドにあるオルクス大迷宮の底、真のオルクス大迷宮で死にかけだったハジメを助けた事から始まる。それから暫く彼の傍にいる事を決意した訳だが、色々あってハジメの彼女になった。
このハーレム状態を作り上げた張本人でもある。
トータスで唯一の吸血鬼族であり、一部の研究者から子孫を残して欲しいと懇願されていた。当然だが彼女もいずれはハジメとの間に子を儲けるつもりで、今はまだ生活を安定させる為にそこまで乗り気ではない。そっちよりもハジメの血を吸う方が好き。
「アレーティア、編纂書類の整理はもう終わったのか?」
「ん、問題ない。早ければ明日朝一でギルドに提出する」
「凄いですアレーティアさん…あの量を終わらせるなんて…」
「流石ですわアレーティア様!」
「こればかりは私も敵いませんわねェ…」
「アレーティアお姉ちゃん偉いの!」
「流石は吸血鬼族の姫。同じ姫として鼻が高いぞ!」
「アレーティアの仕事っぷりにはいつも驚かされてばかりね」
普段はクール&ビューティーのアレーティアだが、こうして親しい者から褒められるのには慣れていない。小声で「ん…ありがと…」と言い、耳を赤くしながら照れ臭そうに笑っていた。
アレーティアお気に入りのブレスワインをゴブレットに注いでティオが彼女に手渡す。
「ごめんお待たせ」
「”優花”、夕食作りお疲れさん。いつもありがとな」
「ありがと。それじゃ、食べよ食べよ」
最後に台所からエプロンを脱いで現れた”園部優花”もハジメの彼女だ。
ハジメと同じ高校に通っていて、異世界召喚に巻き込まれたクラスメイトの女子…だったのだが色々あって優花の方からハジメに好意を抱き、アレーティアの提案に乗って今に至る。
マイハウスの家事全般を任されている他、アイルーキッチンの臨時コック長も務めていた。
本来は獣人族の”アイルー”が”キッチンアイルー”としてハンターに料理を作るからアイルーキッチンと呼ばれている筈なのだが、ハジメのアイルーキッチンだけは優花が食材の管理と調理を行っている。
よく言えば普通、悪く言えば平凡な優花だがハジメにとっては9人の彼女の中で一番平和的な日常の象徴みたいな少女であり、彼女が料理を作っているマイハウスに戻ってくる毎日が心の平穏を与えてくれるといっても過言ではない。
彼女に促されて全員手を合わせて食事の準備を始める。
全員から視線を向けられて、ハジメが合掌して最初に口を開いた。
「いただきます!」
「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」
これが錬成師のハンターとして歴史に名を刻んだ南雲ハジメの平和な日常である。
いわゆるアニメ「ありふれた職業で世界最強OVA」モンスターハンター・トータス版になります。舞台は変わりませんが登場人物にかなりの変更点がありますので話の流れとかも変わる予定。
今回のお話は常に一覧の下で更新していこうかなと思います。(間に本編のサイドストーリーを挟むので分かりにくくなるかもしれませんが、何かしら対策を考えておきます)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。