MHT/Apocrypha   作:綴れば名無し

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 約半年以上の失踪からなんとか戻ってきました…


ありふれた与太話《魔王と狩人、邂逅》

 

 ハジメの目の前にいる幼女がミュウである事は間違いない。だが彼の知っているミュウはあの魔王(アダム)によって体が約十年早い成長を遂げている。

シアやティオほどグラマラスではないが、優花やアルテナより立派なものを持っていた。故に彼女が再び幼女の姿をしている事が、彼には理解出来ない。

 

(夢の中だから…か?だけどミュウから聞いた話だとそんな体の変化があったようには―――)

 

 戦闘態勢を解いて、混乱する頭の中を整理しようと思考を回すハジメ。

懐かしい姿でミュウが現れたことで驚きつつも、安堵した筈の彼が混乱している理由は他にもある。

 

「―――――パパ?どうしたの?」

(…パパ…なんで俺がミュウのパパになってるんだ?今までそんな呼び方されなかったよな??)

 

 これまでハジメの恋人になりたいと言ってきたミュウが、幼い姿で恋人を父親と呼ぶ。

彼はそんな特殊プレイを要求した覚えはなく、またそういう欲求も皆無である。

彼女にそういった願望があるとは考えにくいが、親の愛に飢えている可能性を否定できない。

 

(これはどう反応するのが正解だ…?どうすればミュウの望む答えに辿り着ける…?)

 

 正直に「俺はパパじゃない」と答えてしまった場合、ミュウが悲しむかもしれない。それだけはたとえ夢の中であろうと絶対にあってはならないとハジメは否定を選択肢から排除する。

逆に父親であることを受け入れてしまった場合、彼女は喜ぶかもしれないが、ハジメは夢から覚めてもこの出来事を覚えている限り、この先ミュウを恋人として見れなくなってしまう。そうなった場合、結局ミュウは悲しむことになるだろう。ついでに他の彼女達に愛想を尽かされかねない。

 

(…肯定も否定も詰みか…。望む回答からは程遠いが、これなら――――――)

 

「なぁミュウ、どうして俺をパパと呼ぶんだ?」

「???パパはパパなの」

 

「…これまでは俺のことをお兄ちゃんって呼んでなかったか?」

「???パパがお兄ちゃん呼びは止めてって言ったからパパなの」

 

「………へぁえぇ?」

「みゅ???」

 

 思わず変な声が出てしまったハジメに、ミュウも小鳥のように小首を傾げる。

数秒の沈黙の後、彼はスーッと息を吸い濁った色の太陽も月もない空を仰ぎ見て冷静さを保つ。

 

(神に誓って…いや神には誓いたくないから神に等しい古龍にしよう。これまで狩ってきた&これから狩るであろうまだ見た事ない古龍に誓って、俺はお兄ちゃん呼びを止めろとミュウに言った覚えはないし、パパと呼ぶよういった覚えもない)

 

 自分があどけない姿の幼女に父親呼びさせている事案に夢の中でも頭が痛くなるハジメ。

いっそ夢の続きで現れるであろうモンスターがさっさと出てきてさえくれれば、背中で普段使われないことを不満そうに思っている赤龍ノ狙ウ弩・水で瞬殺するのだが…

 

 なんとかミュウとの認識の齟齬を解消しようと、ハジメは彼女に向き直ろうとして―――

 

「ッ!!?」

 

 ドパンッ!という聞き慣れない銃声が耳に届くより先に、ハジメは死角から感じた濃厚な殺気に気づいてその場を飛び退く。彼が下がった直後、彼の立っていた地面が毎秒3.2㎞の超速で飛来する弾丸によって抉れた。

 

「そこの不審者、ミュウに何してんだ?―――おっとそれ以上俺の許可なく勝手に動くなよ、今の一発は警告射撃だ。次は眉間と心臓を同時に撃ち抜いて殺す」

 

 振り向くことも出来ない為、姿は確認できないが低めの声からして男…自分と年齢の近い青年の声であるとハジメは分析した。

声の主から向けられる殺気が一段と濃さを増していき、彼は飛竜種と対峙した時の緊張感を抱く。

しかし、相手が人である以上は自衛以上の反撃をするという選択肢がほぼ無いに等しい。

言われるより前に両手を頭の後ろで組み、抵抗の意志がないことを示したうえで口を開いた。

 

「…俺が避けなきゃ一発目も当たってただろうが。そういうのは警告射撃って言わねえよ」

「心配するな当たった場合は右肩が暫く不自由になる程度だ。んな事より最初の質問に答えろ」

 

 また少し相手の殺気が強さを増して、ハジメは首筋に冷や汗を流して答えようとし―――

 

「あ、パパ!―――みゅ?あれ?パパが二人なの??」

 

「…は?」「…え?」

 

 時間にして一分にも満たないハジメと声の主のやり取りの間、ポカンと半口を開けて静観していたミュウの突如挙げた声によって両者の間の張り詰めた空気が緩んだ。

そして緩んだ隙を逃さず、声の主の正体を確かめようとハジメは反射的に後ろを向く。

 

 古風な建物の屋根に仁王立ちする男は両手に銃を持っていた。リボルバーの様な見た目をしているが、既存の拳銃のどれにも該当しない未知の銃であるとハジメのミリオタ知識が答える。それより特徴的なのが男の風貌だった。

 

 黒地に赤のラインが入った上着、中は灰色のベストに白シャツと黒のネッカチーフを金属のスカーフリングで留めている。黒の脚絆とロングブーツ、太腿の左右外側に装着されたホルスターが男の手にした銃用のであるとすぐに分かった。

 

 また右の銃を持つ手は人の肌色をしているが、左手はこれもまた銃と同じで明らかに既存の義手とは異なる見た目の黒い義手。その義手は彼がどこかで見たことのあるものと同じ形をしていた。

 

 だが更にハジメを驚愕させたのは男の顔だった。

何かのストレスが原因で白に染まった髪、眼帯に覆われた右目とは逆に切れ目の赤い左目。

眼下の彼に敵意を剥きだす男の表情はまるで、過去に理不尽な状況下で苦痛に苛まれ絶望し、この世の全てを憎悪しながらも何かに執着して歪んだかつての()()と同じ顔をした男は―――

 

(―――――――――俺?)

 

 纏う雰囲気だけが別人のような南雲ハジメがそこにいた。

 




 原作の滅茶苦茶お強い方(どの時点の彼なのか、次回で判明します)

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