ハジメ(魔王)とハジメ(ハンター)が接触する少し前のこと…
マイハウスの面々は珍しく、同じタイミングで眠りについていた。余談になるが、マイハウスのメンバーで一番早く寝るのはシア。遅く寝るか徹夜するのはアルテナとティオの二人となっている。
この日はシアが算術の勉強をエタノに手伝ってもらい寝る時間が遅れ、逆にアルテナは昼間の運動による疲労で、ティオも深酒のし過ぎという理由で普段より早く、各々が他の者達と同じ時間で就寝したのだ。
そして彼女達も、ハジメと同じように見知らぬ都市の中で目を覚ます。
これが只の夢ではないと気づいた彼女達は、ハジメと違ってお互いが見える範囲にいたお陰で早くに合流した。
彼女達はこれがミュウの見てた夢と酷似している事を知らない。
ハジメとミュウが見当たらない理由を考えるより先に、場所の特定に思考を回した。
「此処は一体…?」
「分からない。建物の造りはなんとなく
「…とりえあず、何が起こっても対処出来るように着替えますね」
「ん、了解。その間は私が周囲を警戒しておく」
アレーティアに警戒を任せて、シアは宝物庫の指輪を使って寝間着姿からハンマー使いとしての装備に着替える。
”砕光の滅鎚”…グリューエン火山に突如現れた特殊な個体のモンスターを討伐して作成されたハンマー。彼女が持っている同種の武器の中では頭一つ抜けた性能となっており、汎用性という面であれば古龍武器を軽く凌駕する。深緑色の甲殻を纏い、明滅する粘菌で出来た鎚は腰に佩くだけでも使用者が強い威圧感を周囲に向けて放つ。
彼女の装備は武器と同じモンスターの素材から作られている防具と、同じグリューエン火山で彼女が仲間と協力して討伐した古龍の素材を用いて作られた防具を足して近接武器のハンター御用達の達人芸テンプレ装備”カブカカブ”と呼ばれている。深緑色の上半身鎧とロングブーツ、真紅のティアラに篭手、スカート鎧の組み合わせはティアラの後ろからぴょこっと顔を覘かせるウサ耳も相まってかなり目立つ。
”挑戦者の護石Ⅴ”は工房作成の護石であり、自然に発掘されたお守りの高い性能と比べれば見劣りするが、それでも防具や装飾珠との組み合わせ次第で強力な効果を発揮する。
「ふむ…解せんな。此処が何処かという疑問もそうじゃが、なにゆえ妾達だけ…」
「あの家にいた全員が同じ状況なら何かしらの転移か召喚の可能性もあった。でも現状はハジメとミュウちゃんがいない。私達に限られて、あの二人が無事っていうのは考えにくいですよね」
「全員が同じ状況だと仮定すれば、二人は私達から離れたところにいるという可能性も考えられます。…ですがそれを為せるほどの能力を持つものは、私の知る限りこの世から消滅している…」
ティオは愛用する鉄扇を武器にしようかと考えたが、気を利かせたシアが宝物庫から操虫棍の”繚乱の輝竜戟”を猟虫”シナトオオモミジⅢ改”も併せて取り出し彼女に投げ渡す。
まだこの武器に合わせる防具を彼女は持っていない。だが彼女には竜人族のハンターとして、彼女しか使いこなせない力があった。それはかつて自我を失い暴走させるだけだった技能”竜化”を用いた特殊なやり方で、体の一部に鱗と甲殻を生やし防具の代わりとして使う。
総合的な性能では自然のモンスターと鉱石由来の防具に比べて竜化した彼女の力は貧弱かもしれないが、硬さに限定すれば飛竜種の代表とされる火竜リオレウスの上位個体に匹敵する。
彼女がシアから渡された繚乱の輝竜戟は、ある戦いの最中その武器の素材となるモンスターを操っていた魔人族の将軍と帝国軍の皇女が一騎打ちの末に討ち取り、後の功績に対する褒美として素材がティオに贈られて作成に至った。まだ仮登録で所持する事が出来ないという理由で、一時的にシアが預かっていたのだが―――
「異常事態…ってことでギルドに言い訳は出来ますよね」
「うむ―――という訳じゃノイント、優花、アルテナ、エタノ。対人戦は主らに頼るぞ」
「承知しました。その時はお任せ下さい」
彼女の言葉に頷いて、ノイントは護身術の構えを取った。真・神の使徒として活動していた頃の記憶を完全に失った彼女だが、その身に秘めた能力は健在であり対人戦に限定すれば彼女とまともに戦って勝てるのはトータス大陸に数人いるかいないかというレベルである。
「わっ、私は戦力になるか怪しいけどね~。……だから、全力でレミアさんを守るよ」
寝間着姿のままで自信なさげに振る舞う優花だが、服の内側から数本の短剣を取り出して逆手持ちに構える。この中でレミアに次ぐ戦いに向いていない要員だが、彼女は神の使徒として人並み以上のステータスを付与されており、危険な場面を何度も経験しているお陰か実戦でもかなり動けるタイプに成長していた。
短剣もただ相手を傷つけるのではなく、戦いを早く終わらせる為に麻痺や睡眠といった状態異常を引き起こす液体を刃に塗布しており、殺すしかないとなった場合にのみ一本だけ隠し持っている猛毒の短剣を使うことにしている。
今までこれを誰かに対し使ったことはなく、この先も出来れば使いたくないと優花自身は思っていた。周囲も彼女の意思を尊重してなるべく彼女を戦いの場に出さないよう心掛けてはいるが…
「頼もしいですわね優花様。…エタノさん、背中を預けますが宜しくて?」
「あらあらあら、森人族のニート風情がいっちょ前に。…其方もお願いしますヨ」
覚悟の決まっている優花を見て、アルテナは彼女の成長に喜んで笑みを浮かべながら、そのままの表情で横にいるエタノに話しかけた。彼女の手にはシアの宝物庫から取り出された弓が握られている。
その弓はモンスターの素材や特殊な鉱石を使っている訳ではない。ゲブルト村の傍にあるハルツィナ樹海の大木を素材にした短弓で、森人族の戦士が使う標準的な弓に比べて矢の飛距離も短く、貫通力も低い短弓だが、優花と同じで争いごとを好まないアルテナは鏃に状態異常の液体を塗布して援護に徹する戦い方を主としている。
エタノが懐から取り出したのは剣でも弓でもない、この場に於ける唯一の現代武器である拳銃だった。銀色の光沢を放つSIG SAUER P230は以前ハジメの故郷であった
「…それ使えるの?エタノ」
「問題ありませんわ優花様。ハジメ様のお義父様と私がハワイでみっちり仕込んでおりますから!どのような状況でも眉間に百発百中ですことよ!」
「すぐバレる嘘つくんじゃねーですヨ!愁様も貴女もハワイに旅行どころか射撃経験なんて無いでしょーがヨ!?…まぁ、それはそれとして優花様ご心配なく、相手に近づいてこれの引き金を引けば、どんなに貧弱な腕力の持ち主でも当てられますからネ。クココッ」
そもそも至近距離での射撃ということ自体が飛び道具の利点を殺していると思う優花だったが、亜人族の中でも特に俊敏な狐人族のエタノなら生身での一撃離脱戦法もお手の物だろう。
(ミュウは無事かしら…ハジメ君も…)
ただ一人、立っているのがやっとのレミアはこの場にいない二人の無事を願うばかりだった。
後ろで祈るようにしている彼女を優花は心配そうに見つめる。
「…とりあえず…さ。此処から移動した方がいいんじゃない?」
「そうですね。私が上空から周囲の安全を確認し、あそこに見える塔までの道を―――」
飛翔の体勢に入ったノイントを、シアが片手を上げて制止する。
彼女のウサ耳が左右へとピコピコ向けられた。それが意味するのは
「…ヒトの足音です。一人…二人…いえもっと…六人くらいがこっちに来ます」
彼女が音で対象の位置を特定すると、ノイントは飛翔を中断して技能”魔力感知” ”気配感知” ”熱源感知”を連続で発動させる。
「―――確認しました。…膨大な魔力持ち三名、優れた身体能力持ち二名、二名は脅威と思われるものを感じられませんが―――待ってください。……どうやら向こうからも探知されたようです」
彼女達の間に緊張が走る。覚悟を決めたとはいえ、戦い慣れしていない優花は咄嗟に足音の方へ刃物を構えようとし、エタノがそれをさっと片手で下ろさせた。
「相手が何者か分からない以上、此方から仕掛けるような動きを見せてはいけませんヨ」
「ご、ごめん。暫くこういう空気に触れてなかったから…つい…」
シアだけでなく、全員の耳に聞こえるほど足音は近づいている。
ノイントが正面に立ってシアは隣で周囲の音を拾うことに集中した。アルテナ、エタノが左右に立ってレミアを守れる位置に優花が移動する。彼女達の死角となった背後をアレーティアとティオが警戒していた。
不意に足音が彼女達の立っている通り道に並ぶ建物の交差点手前で止まる。
”気配遮断”をされていないか念のためにノイントが再び感知の技能を発動する直前―――
「そこにいるのは誰?こっちに戦闘の意思はない」
((………えっ?今の声は……アレーティアさん……?))
建物の陰から聞こえてきた声は馴染みのあるアレーティアの声そのものだった。メンバー中、声をはっきりと聞いていたシアとアルテナの二人は後ろに振り返って声の主だと思っていたアレーティアに確認するが彼女も驚いた様子で「私は喋っていない」と首を横に振る。
「―――此方にも其方を攻撃する意思はありません。先ほどの感知は警戒の為に発動したものです、どうかご容赦下さい」
「―――ん、こっちも感知し返したからお相子。それよりお前のその声―――」
声の主が言葉と同時に建物の陰から出てきた事で、遂に両者は邂逅する。
驚いたのは互いにほぼ同時、彼女達の目の前に現れたのは着ている衣服こそ違えどアレーティアと同じ姿をした吸血鬼族の少女だった。
「―――神の使徒。まだ生き残りが居たなんて驚いた」
その言葉と同時に彼女から放たれる膨大な魔力の圧に、優花とレミアは後退ってしまう。
だが、それと同等の魔力の圧を展開したアレーティアがノイントの隣に進み出て口を開く。
「私と同じ姿でその魔力…貴女、吸血鬼族の生き残り?…いいえ、そんな事よりも…戦闘の意思はないと言っておきながら、その魔力はどういうつもり?」
「それはこっちの台詞。何故アイツの使徒と一緒に行動を共にしている…それに―――」
一触即発の状況になってノイントも戦わざるを得ないかと思ったその時―――
魔力の圧を放っている彼女の背後から建物にいた数人が出てきた。
「ゆ、ユエさぁん…!戦う気はないって―――うえぇぇぇっ!?わ、私がいますぅぅ!!」
「なんじゃ奇妙な術の類と思うたが…成程、あ奴らの生き残り―――む?むむ?」
「ちょっとユエ!ハジメ君を探さなきゃいけないのに―――ってあれ?えええぇぇっ!?」
「香織少し落ち着いて、ユエも―――えっ?何この状況…」
「ユエさん、今は戦うよりハジメ君とミュウちゃんの捜索を―――えっ?そ、園部さん!?」
「これは…あらあら、どうしましょう…とても困った事になっているみたいね…」
カブカカブの姿で唖然としているシアを見つめるのは、パンツを隠しきれていない超極短のスカートに豊満な乳を半分隠すだけで後は背中も臍も丸出しという痴女のような恰好で機械仕掛けの鎚を片手に持っている。細かな点は違えどシアとほぼ同じ顔をした兎人族の少女。
ノイントを睨みつけながら肩から胸元を露出させた着物姿で現れた竜人族の女は、自分と全く同じ顔をして操虫棍を持ったまま硬直しているティオを見て難しい顔で首を傾げる。
アレーティア似の少女の肩を掴んで揺さぶるノイントと姿形はそっくりだが瞳の色と声音が違う少女は目の前で起こっている事象に声を上げて大袈裟に仰け反る。
そんなノイント似の彼女に声を掛けようとした黒髪ポニーテールの少女は目を真ん丸にして状況の異様さに困惑し、その背後からひょこっと出てきたひと際小柄な女性は自分の教え子とそっくりな顔の
最後に姿を現した海人族の女性は問題なく立って歩いていることを除けばレミアと瓜二つ。
というより、まんまレミアそのものである。暗い雰囲気と対照的なおっとりした空気感を除けば。
原作ヒロインズフルパ(愛人、苦労人リリアーナ抜き)と本作ヒロインズ
戦力的には圧倒的に原作側が有利なのは言うまでもなく(ユエ、ティオ辺りは互角かもしれんが香織と雫の有無が大きい。シアが対人×でアルテナ、エタノは対人(一般人~軍人)なので人外はちょっと…愛ちゃんとレミアさん人質取ればワンチャン?と思うけどこっちのレミアさんのが弱いし優花も非戦闘員寄りで…うーんダメだ勝てる未来が欠片も見えてこない。
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