人間が好きになった───と人類を好きになった観測者 作:眠りたい時だけ手が進む人
私は、どうしても認められなかった
無限に広がるマルチバースの中でたかが1つの星が消えたところで問題はないと、私の後任に選ばれた裁定者は言った
だがそれを看過することはしたくなかった
私が起こした衝撃の余波から子供を護るため、救うために命を投げ出した神永新二という人間
そしてそんな人間を群として括った存在、人類に惹かれ人間を知るために、人類を学ぶために命を無くした神永新二と融合した
そうして私は知ったのだ
外星人ザラブの言うとおり人類はその始祖であるホモ・サピエンスであった時から己の為に他者を犠牲にすることを厭わず、あまつさえ外的要因によって自らが滅亡せんとする時はそれを許容できずその原因を事情を問わず駆逐する自己的な存在でもある
だがそれでも、人類は……人間は尊いものだったのだ
死ぬことへの恐怖よりも、ただ目の前の自分より劣る存在を守ることを優先する勇気がある
未知なる物を畏れるだけでなく、それを率先して解明し乗り越える知恵がある
彼等にとって神に等しいモノが存在していたとしても、それでも彼等は最後には地球を自らの手で守り抜こうとする意思がある
人間は一人では生きてはいけない存在だからこそ、世界は自分だけでは成り立っていないと他者を重んじる優しさがある
私は人類が好きになったのだ
そして私の存在が原因で地球が滅びるとなれば、それを止めるためにこの命を犠牲にすることに躊躇いなどなかった
あの瞬間までは
必ず戻ってきて、と、バディは私に言った
故にこそ、私は人間と同化したことによって受け入れていた死を心の底で否定していた
それが引き金になったのだろう
私は、光に包まれた
遥か遠くに光るあの星にも似た、強く暖かな光に
「……目が覚めたかな。」
「………こ、こ……は……」
次に目を覚ましたとき、私は暗く寒く無限大な宇宙空間ではなく眩い光に包まれたまっさらな空間に横たわっていた
そして私の前に立っていたのは、私と同じ光の星の生命体……とも似たようで違う、不思議な存在だった
観察してみれば、頭部に恐らく投擲に扱うのだろう着脱式の武装を装着し、額には私のエネルギー源であるスペシウム133にも似たエネルギーを表しているらしい発光体を確認
胸部には複雑な模様のディティールが刻まれており、恐らくエネルギーを集約することが可能であると判断した
ともかく観察すれば観察するほど、私に……いや、光の星の存在と似て非なる存在だということが分かっていく
「……君の素性は分からないから、念の為拘束という形を取らせてもらったよ。もしかすると、他者に擬態、或いは他者に寄生して光の国を襲撃する存在なのかもしれない懸念があったからね。」
「……光の、国?」
「そう、ここはM78星雲……ウルトラの星、唯一の国家。光の国だ。」