恋愛は謎解きのあとで   作:滉大

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生徒会を続けたい

 さっさと終わって欲しいものほど長く感じる。授業中に時計を眺めても針は遅々として進まない。有象無象との会食はあまりの長さに苦痛すら感じる。

 であれば、この1年を長く感じなかったのは、早く終わってしまえと思っていなかったからなのだろう。──いや、もっと続いて欲しかったのだ。それこそずっと。

 

 

 

 

 秀知院学園高等部の一角。生い茂っている木々が陽光を遮るので、森に面した廊下はいつも薄暗い。廊下は校舎の角に向かって伸びており、途中に普段使われている教室が少ない為、訪れる生徒は少ない。活気のなさが視覚で捉えている以上に、一帯を暗くしていた。

 暗い場所には後ろ暗い輩が集まるもので、今も3人の生徒の姿があった。

 四宮かぐやは窓側の壁を背中を近づけて、姿勢良く直立していた。直ぐ隣の窓が少し開き、そこから2人の人影が見える。染めていない金髪を頭の横でまとめ、制服を着崩した少女は、かぐやの近侍である早坂愛。

 早坂の隣に立つ人物もかぐやの近侍で、180センチを超える細長いシルエットの少年。讃岐光谷は、早坂とは対照的でお手本のように正しく制服を着用していた。

 2人は中には全く興味がありません、といった様子で校舎に背を向けていた。

 

「伊井野ミコ。父親は高等裁判所裁判官。母親は国際人道支援団体の職員」

 

 早坂が資料を手にしながら、調査によって得たプロフィールを述べる。淡々と報告する様は、主人に仕える忍びを思わせた。

 

 伊井野ミコ。

 

 かぐやが一学年下の少女について探っているのには理由があった。

 2週間前第67期秀知院生徒会が活動終了した。新たに生徒会長を決めなくてはならない訳だが、色々あって前生徒会長白銀御行も生徒会選挙に立候補した。『色々』の主な要因であるかぐやは、白銀の当選を手助けすべく、あらゆる手を尽くす心づもりだった。

 選挙の対抗馬である、伊井野の情報を集めているのもその一環。

 もう1人の立候補者である2年C組の本郷(ほんごう)勇人(はやと)は、話し合いの結果快く出馬を取り下げてくれた。

 それにしても、伊井野の両親は清廉潔白と呼ぶに相応しい人物のようだ。早坂が報告を終えたタイミングを見計らって言葉を発する。

 

「こういうのは大抵、叩けば埃が出るものですが」

「偶に居るんですよね。清廉潔白な仕事に命を賭ける人種」

 

「飛び道具は使えないかもしれません」と早坂が忠告する。

 

 今まで沈黙を守っていた讃岐が口を開いて進言した。

 

「埃をでっち上げる、という方法もございますが。揺さぶり程度の効果はあるかと」

 

 慎ましやかな小さいため息が口から漏れる。相変わらずこの男の発言には苦労させられる。早坂も呆れたように首を振っていた。

 

「貴方、よくそこまで悪辣な考えが浮かぶわね」

「人の心はないんですか」

「…………失礼致しました」

 

 主従に矛先を向けられた讃岐は、目を瞬かせた後、無表情に納得できないという感情を張り付けて押し黙った。困った男だ。

 

「何にせよ、問題はありません。出会ってきた悪人の数が違います」

「おや、お嬢様。何故私を見るのでございますか?」

 

 悪人は無表情ですっとぼける。

 

「引き続き調査します」

「ええ、頼んだわ」

「私も1年生の知人をあたってみます」

「それって石上君の事でしょう? 伊井野さんを会長に紹介したのは彼よ」

 

 石上からこれ以上の情報は引き出せない、と暗に伝える。

 讃岐はかぶりを振った。

 

「いえ、知人は石上君だけではございません」

 

 そうなの? 確認するように早坂を横目で見る。早坂は何も言わずに首肯した。

 

「本人曰く、交友関係が浅く広いとか」

「寂しい男ね」

 

 かぐやの憐憫のこもった視線を気にする風もなく、讃岐はスマホを取り出して操作した。

 しばらく親指を動かした後、薄らと笑みを浮かべた。

 

「お嬢様。タイミングの良い事に、件の知り合いから連絡がありましたので行って参ります」

「本当にタイミングが良いわね。くれぐれも目的を忘れないように」

「承知致しました」

 

 

 ○

 

 

 小野寺(おのでら)(れい)は中庭のベンチに腰掛けて、手持ち無沙汰にスマホを弄っていた。何の気なしに開いたトークアプリの1番上には、先程連絡を入れたある先輩の名前。

 

『真実は正義ではないし、凶器にもなり得るけれど、物事を客観的に判断しようとするのなら明らかにしておくべきだろうね』

 

 その先輩は、いつだったか、そう訳知り顔でそう嘯いていた。どういう話の流れで言ったのかも、自分が何と返したかも憶えていない。ただその時は、あまりピンと来なかったように思う。

 秀知院学園がエスカレーター式というのもあり小野寺は上級生にも友人が多い。にも関わらず知り合って半年程度の先輩に相談を持ちかけたのは、あの言葉が頭の中に残っていたからだった。

 軽やかな足音に顔を上げる。視線の先で、ひょろりとした長身の男が軽く手を上げた。

 

「やあ、君から呼び出しとは珍しいね。面白い噂話でもあるのかな?」

「先輩が好きそうなのはないですね。突然すみません。予定とかありました?」

「ないから期待して来たんだけどね。やれやれ、君は何の為に井戸端会議を開いているんだい?」

「開いてませんし、仮にしてたとしても、先輩の為ではないです」

 

 讃岐光谷。

 何となく知り合って、何となく話すようになったよく分からない先輩。よっぽど暇なのか、放課後も校内をうろついていて、偶に変な噂話をせびりに来る。讃岐は勘違いしているようだが、小野寺に噂話を収集する趣味はない。友人が多い分その手の話が舞い込みやすいだけだ。

 校内で流行っている怪談話や都市伝説を面白そうに聞いていたが、オカルト趣味はなさそうだ。小野寺は先輩が好きそうなのはない、と答えたが、そもそも讃岐の好みが分からないのだ。

 小野寺の隣に腰を下ろして讃岐は切り出した。

 

「それで、相談って?」

「大した事じゃないんですけど……」

「助かるね。自慢じゃないけど、良いアドバイスができるとは思えないし」

 

 何とも不甲斐ないお言葉。この人の場合、謙遜ではなく本心に違いない。小野寺は今になって、相談相手の人選を後悔し始めた。

 聞かせるだけなら損にはならない。そう自分を納得させて話を続ける。

 

「先輩は石上と仲が良いですよね」

「どうかな。一般的な友人関係にあたるとは思うけど」

 

 友人か親友かはこの際どっちでもいい。重要なのは、讃岐が自分より石上優の人柄に精通しているという事だ。

 

「その様子からすると、彼は相変わらず評判悪いみたいだね」

 

 讃岐は視線を小野寺に向けて苦笑した。見透かすような瞳から視線を逸らす。そんなつもりはなかったが、顔に出ていたのだろうか。無意識に刺々しい言い方になっていたかもしれない。

 讃岐の言う通り、石上優は大半の1年生に嫌われていた。原因は石上が中学時代に起こした事件にある。

 聞いた限りでは、好意を寄せていた女子生徒にストーカーした挙句、彼女が付き合っている男子に暴力を振るったらしい。実際、噂が出回った頃、石上は停学になっていた。

 噂を聞いた小野寺も石上には良い印象を持っていなかった。そんな小野寺の心情が揺らぎ始めたのは、讃岐光谷という先輩に出会ってからだ。

 きっかけは何気ない噂話。

 

『石上優と讃岐光谷がよく一緒に居るのを見かける』

 

 よく耳にする嫌われ者にまつわる噂。

 小野寺にとって違ったのは、その片方が知っている人物だっただけ。

 親しいと言える間柄ではないとはいえ、悪い噂の的になっているのは気分がよろしくない。小野寺は忠告の意味も込めて、石上の所業を知っているか尋ねた。すると、意外にも答えはイエス。

 それなのに何故仲良くしているのか。讃岐は答えになっていない回答をした。

 

『噂、伝説、伝承。悪意のあるなしに関わらず、人から人に伝わる話とは、往々にして歪んでいくものだからね』

 

 この時から、小野寺は石上の噂を聞くたびに、喉に小骨が引っ掛かったような感覚を覚えるようになった。

 

「どうかしたのかい? 難しい顔して」

 

 能天気丸出しの顔で讃岐は首を傾げた。

 

「先輩は石上が物を盗むと思いますか?」

「さあ? 絶対にないとは言い切れないね」

 

 否定するだろうと質問した小野寺は、出鼻を挫かれた気分だった。

 

「友達じゃないんですか?」

「僕が石上君の友人である事と、彼が盗みを働いた事に因果関係はないと思うけど? ──君、先輩に対して向けるべきではない目になってるよ」

 

 讃岐が割と人間失格気味なのは知っていたが、友人を疑うのに何の疑問も罪悪感も持たないのには流石に引く。

 視線にたじろぎながらも、讃岐は弁明するように付け加える。

 

「誤解のないよう言っておくけど、可能性は低いと思っているよ。0でない限り視野に入れているだけで」

「分かってますよ」

「とてもそうは見えないけど……」

 

 気まずさを紛らわすように、空咳をして讃岐は相談の続きを促す。

 

「石上君が窃盗の容疑をかけられていると」

「そこまで大袈裟ではないですが」

「君の考えはどうなんだい?」

「……分かりません」

 

 嘘偽りない気持ちだった。石上の肩を持つつもりも、そんな義理もないが、讃岐が語った通り石上の噂が歪んているのだとすれば、自分には判断を下す材料が足りなすぎる。

 何が面白いのか讃岐は微笑して、

 

「僕に相談するくらいなんだから、そうだろうね。さて、とりあえず話を最初から聞こうかな。どうして石上君に窃盗容疑をが掛かったのか」

「盗まれたのはハンカチです。持ち主は他のクラスの女子」

「その子と石上君が一緒のクラスなのかな?」

 

 讃岐は頭が悪い方ではない。けれど偶に小野寺が思ってもみない発言をする。

 

「……先輩。石上のクラス知らないんですか?」

「下級生のクラスまでは把握してないね」

「私と同じッス」

「君のも知らないんだけどね。まあ、分かったよ。その女子と石上君の関係は薄い」

「多分話した事もないです」

 

「それなのに彼が盗んだと?」当然の疑問に小野寺は頷いてから答えた。

 

「石上がハンカチを持っているのを、彼女の友達が目撃したからです」

「見ただけでよくその子のハンカチだと分かったね」

「有名ブランドの限定品なんで」

 

 それだけでは伝わらなかったのか、讃岐は続きを待っているようだった。小野寺はハンカチについて、どれだけ希少か、どれだけカワイイか、どれだけ自分も欲しかったかを語った。

 語れば語る程讃岐は首を傾げていき、最終的には両手を挙げて降参した。

 

「ストップ、ストップ。僕がそっち方面不勉強だって事はよく理解できた。一目でハンカチの判断は可能。これで話を進めよう」

 

 強引に話を戻して質問する。

 

「目撃された場所は?」

 

 小野寺は視線を宙に這わせて、聞いた場所を脳内に想い描く。場所は分かるのだが、どう説明したものか。

 

「委員会が使う教室が集まってる校舎があるじゃないですか。その校舎の1階です。目撃した子は美化委員で、活動日だったんで教室に行く途中だったそうです」

 

 迷った挙句大雑把に伝えた。

 細かく聞かれた場合に備えて答えを考えていたが、幸いそれ以上追及されなかった。

 

「小野寺さんは、ハンカチが盗まれた時の状況を知っているのかな?」

 

 知っている。というのも、最初からハンカチが盗まれたと疑っていた訳ではないからだ。当初はハンカチが忽然と消えた話として小野寺は聞いていた。盗まれた話に変わったのは、数日後に目撃証言が出てきたからだ。

 そう伝えると讃岐は嬉しそうに声を弾ませた。

 

「素晴らしい! 事前にこちらの知りたい情報を用意してくれるなんて、依頼人としては100点だよ」

「依頼人って何すか」

 

 小野寺の冷たい視線を物ともせず讃岐は急かしたてる。

 ため息混じりに一息ついた後、話を再開する。

 

「少し前、白銀先輩が四宮先輩に告白するって話が出回ったじゃないですか」

「ああ、あったね」

 

 多くの生徒がビックカップル誕生の瞬間を目の当たりにしようと集まり、特等席である校舎裏に面する教室の窓には、人のカーテンができていた。

 

「その子も教室から見てたんですけど、その時に落としたみたいで」

「それまでハンカチを持っていたのは確かかい?」

「はい。ショートホームルームの前にトイレで使った後、ポケットに入れたのでそれまであったのは確かです。ホームルームが終わってからは窓に張り付いていました」

「ハンカチがなくなったのに気付いたのはいつ?」

「告白を見物してた最中『おい、お前達』って先生に注意されて、ギャラリー全員慌てて逃げたらしいです。気付いたのはその後ですね。急いで教室まで引き返したんですけど、ハンカチは見つからなかったそうです」

 

 なるほど、と相槌を打つ声には、今までの事務的な問いとは違って熱が入っていた。「出歯亀は感心しないよね」などと付け加えていたが、つい感情が昂ったのを誤魔化しているように小野寺は感じた。

 

「ハンカチを落としたのはホームルームが終わって、自分の席から窓際に行くまでの途中だと考えられる。盗むとしたら、人が窓際に集まり外に注目していた時である可能性が高いよね。その子は何か言ってなかった? 怪しい動きをしている人がいたとか、不自然な音が鳴ったとか」

 

 小野寺は最初に彼女が絶対怪奇現象だ、と興奮して話して来たのを思い出した。

 内容はとても不思議な話だった。小野寺が石上窃盗犯説に賛同できなかった理由の一つでもある。彼女が語った通りなら、少なくともあの教室に居なかった石上に犯行が可能だとは思えないからだ。

 

「教室の扉は閉じていて、中に居る生徒は全員窓に張り付いていました。放課後なんで他のクラスの人も集まって覗いてたんですけど、彼女はギャラリーの後方で全員が見渡せる場所に居ました。彼女が言うには、ハンカチが盗まれた時間──つまり窓際に移動してから担任に注意されるまでの間、怪しい動きも、教室の扉が開く音もなかったらしいです」

 

 顎に手を添えた讃岐は「ふむ」と一言呟いた。あっさりした態度に、本当に理解できているのか心配になる。

 

「確認だけど、ハンカチが盗まれたと思われる時間に、机の方に行く生徒は居なかった、と言っていたんだね?」

「はい」

「石上君がハンカチを持っていたらしいけど、どういう持ち方だった?」

「持ち方は…………持ち方?」

 

 今まで言われるがままに答えていた小野寺が初めて戸惑った。質問の意図が全く理解できなかったからだ。讃岐は涼しい表情で回答を待つ。

 

「それ、関係あるんですか?」

「あるかもしれないし、ないかもしれない。今は情報を集めてる段階だからね。結論を出すのは早計だ」

 

 釈然としなかったが、どちらにせよ小野寺が返せる答えはなかった。

 

「そこまでは分かりません。後で聞いときます」

「悪いね」

 

 悪びれずに、というより呆然とした様子で、讃岐はうわ言のように返事をした。

 焦点の合わない瞳を薄く開き、顎に手を添えた体勢からフリーズしたように身じろぎ一つしないので、小野寺は心配になって顔の前で手を振ったが反応はなかった。

 どうしたものか。讃岐の前に立ち見下ろしていると、黒目だけがスウッと上に動いた。

 

「大丈夫ですか?」

 

 主に頭が。

 

「うん? なに、問題はないさ。寧ろスッキリしているよ」

 

 まさか結論がでたのだろうか。小野寺は興奮と緊張がない混ぜになって唾を飲んだ。

 

「これは僕の手に負えないね」

「え?」

 

 あっさりと讃岐が言ってのける。さっきまでの思わせぶりな態度は何だったのか。あまりに拍子抜けして、問い詰める言葉も出て来なかった。

 落胆が顔に出ていたらしい。讃岐は宥めるように、

 

「まあまあ、この件を放り出したりしないから安心してよ。僕には無理だけど、解決できる人に心当たりがあるんだ。今の話、その人にしてもいいかな? 勿論、細かい事情は抜きにして、事件の概要を話すに留めるよ」

「はぁ、まあいいですけど……」

 

 小野寺から了承が得られるた讃岐は長い足を組んで、両手を膝の上に置いた。なまじスタイルが良いので、様になっているのが癪である。

 

「僕からも相談、というか取り引きを提案したいんだけど」

「何ですか?」

「今回の件、君が納得できる結論を出せたなら、是非白銀君に清き1票を投じて欲しいんだ」

 

 小野寺は讃岐が生徒会選挙に興味を持っているのを意外に思った。この手の学校行事には、関心がなさそうだったからだ。

 

「取り引きで得た1票って清いんですか?」

「さぁ? 政治には詳しくないからね。でも──」

 

 讃岐が椅子から立ち上がる。身長差の関係で小野寺は讃岐を見上げる格好になる。上から見下ろされているからか、口元に怪しげな微笑を浮かべているからか、こういう時に讃岐が歳上なのだと実感する。

 

「清かろうが汚かろうが、1票の重みに違いがない事は理解しているよ」

 

 もっとも、口から出る言葉は碌でもないものばかりなのだが。

 

 その夜、ハンカチについて聞いた小野寺は、讃岐にメッセージアプリで1枚の写真とメッセージを送った。

 写真には四つ折りになった、正方形のハンカチを掴んでいる手が写っている。

 

『こんな感じです』

『ありがとう。明日の放課後同じ場所で』

 

 

 ○

 

 

 室内はいずれも、高級なアンティーク調の家具で揃えられている。色もシックな色の物が多く、落ち着いた雰囲気が漂う。

 雰囲気に違和感なく溶け込んだ穏やかな声を、早坂は隣で、かぐやは天蓋付きベッドに座ったまま聞いていた。

 

「──といった次第でございます」

 

 要約すると、知人の悩みを解決する代わりに、投票をお願いしたという事だった。事件をかぐやが解決した扱いにして欲しいとも。

 

「話は分かったわ。でも、私の名前を出す必要があるの?」

「当然でございます。取り引きしたとはいえ、油断してはいけません。より確実に票を獲得するには、白銀陣営であらせられるお嬢様が、恩を売っておく必要があります──どうかしましたか、早坂さん」

 

 隣からの冷たい視線を敏感に察知した讃岐が白々しく問いかける。早坂は讃岐が人前で推理しないのは、自分の能力を隠しているからだと考えていた。その癖推理はやりたがる。毎度毎度主人を利用する姿勢には視線の温度低下が止まらない。

 

「いえ、別に。伊井野ミコについての情報は得られたんですか」

「残念ながら伊井野さんとはあまり交友がないようでした」

 

 嘘だ。声や表情に違和感はないが、経験から早坂はそう直感した。讃岐は人格面で偽らないかもしれないが、それは嘘を吐かないとイコールではない。損得勘定に基づいて虚偽や秘匿を使い分ける。そうでなければ早坂もここまで警戒していない。

 大方、相談が謎解きだった時点で、本来の目的は頭からすっぽ抜けていたのだろう。

 

「……まぁ、貴方の言う事にも一理あるけれど」

 

 かぐやも不審には思っただろうが、最優先は白銀の当選なので深く追及せず讃岐の話に乗った。かぐやと伊井野の交渉が決裂した以上、正攻法で勝負する方が勝率が高い。正直、白銀と伊井野の差は歴然としているので今のままでも勝てるだろうが、万全を期すなら1票でも多いに越した事はない。

 かぐやがすんなり讃岐の案に乗ったのは、後輩の石上にあらぬ疑いが掛かっているのもあるだろう。

 

「四宮の名を使うのなら、無様な失敗は許されないわ。讃岐、貴方の推理を聞かせなさい」

「承知致しました。お嬢様」

 

 讃岐は慇懃な態度で胸に手を添えて頭を下げた。

 

 

「今回の事件で重要なのは、全ての情報を人づてに聞いている点です」

「証言が嘘であると?」

 

 讃岐は首をゆっくり横に振ってやんわり否定した。

 

「嘘と言うと誤解が生じます。私が申し上げたいのは、証言が事実と異なっていたのではないか、という事です」

「確かに意図せず証言が間違っている可能性はあるけど、嘘でないとは言えないでしょう」

 

 ルビー色の瞳が鋭く輝く。なんだかんだでかぐやは面倒見が良い。石上が故意に濡れ衣を着せられたとあれば、内心穏やかではない筈だ。

 視線を受け止めた讃岐は無表情で淡々と語る。

 

「確証はありませんが、可能性は低いと思われます」

「どうして?」

「現在も石上君の評判は変わらず芳しくない様子。嘘を吐いてまで貶める必要性を感じません」

 

 納得したようで、かぐやはふうっと一息付き肩の力を抜いた。かぐやに代わって早坂が質問する。

 

「貶める意図がないのなら、証言が間違っていると考える根拠は何ですか?」

「その前に話は変わりますが、お二人はチェスタトンの『見えない人』という短編をご存知ですか?」

 

 早坂とかぐやは同時に首を振った。かぐやは元来漫画もテレビも見ない無趣味人間であり、早坂はかぐやよりは娯楽に精通しているが、讃岐とは方向性が違っていた。

 

「透明人間でも出てくるんですか?」

「無論違います。細かい説明は省きますが、人の意識は認識を歪めてしまいます。時には透明人間さえ産み出す程に。今回の事件はそれが連続してしまったが故に起きてしまったのです」

 

「では最初に」讃岐はベッドに座るかぐやを見下ろした。

 

「お嬢様が心配なされている、石上君が犯人でない根拠を述べさせていただきます」

「……別に心配なんかしてないわ。後輩の濡れ衣を晴らすくらい、先輩として当然でしょう」

 

 かぐやは恥ずかしそうに頬を染めて、そっぽを向いた。

 

「仰る通りでございます。証言によると、石上くんはハンカチを四つ折りにして手に持っていたそうですが、これは些か不自然です」

 

 かぐやはあらぬ方向を向いていた顔を戻して答えた。

 

「そうね。盗んだ品を隠しもせずに、堂々と所持しているのは不自然だわ」

「私も同意見です。堂々と持つにしても、手を拭いて自分の物であるアピールをするなど細工をするでしょう」

「ですが事実として会計君が持っていたのは、なくなったハンカチですよね? 何故彼が持っていたのですか」

「質問に答えるには、先に教室で消えたハンカチの問題を解決した方が良いでしょう」

 

 落としたハンカチが忽然と消えた事件だ。教室に入った者は居らず、窓からハンカチに近づいた者も居ない。犯人はどうやってハンカチを盗んだのか。

 疑問の答えを既に讃岐が持っているのは分かっている。早坂は黙って続きを待つ。

 

「教室の扉が開く音はしなかった。ギャラリーは窓から離れていない。これらは事実でしょう。しかしながら1点だけ、彼女の意識から外れた事柄がございます」

 

 讃岐はかぐやと早坂を順に見た。答えが返って来ないと分かると、再び推理を語り始めた。

 

「それは教師の存在です」

 

 かぐやが形や良い眉を歪めた。何故そんな簡単な事に気が付かなかったのだろうと言いたげに。早坂も無表情の裏で納得した。

 

「担任教師に注意されるまで扉の開く音はしなかった。という事は、教師はホームルームを終えた後も教室に残っていたのでしょう。ギャラリーに不可能であった以上、教室内でハンカチを手にする機会があったのは教師のみとなります」

 

 教師が犯人なら筋は通るが、事実とは信じ難い。早坂は讃岐に疑問を投げかけた。

 

「特別な動機もなく、教師が生徒のハンカチを盗むとは思えません」

「ここにもまた認識の歪みが存在します。教室でハンカチを拾った。この行為は窃盗になるでしょうか?」

 

 質問ではなく反語。当然拾っただけでは窃盗にならない。

 

「教師はハンカチを拾いましたが、誰の物か判断がつかなかった。なので生徒達に尋ねたのです。『おい、お前達』と」

 

 なるほど、と思う。教師は注意する為に声を掛けたのではなく、純粋に質問する為だったのだ。出歯亀をしている罪悪感と、教師に声を掛けられる時は碌な事がないという経験則から来る悲しき誤解だ。慌てて逃げ出した女子生徒は、教師が持っていたハンカチに気付かなかったのだろう。

 

「でも自分が担任しているクラスの落とし物でしょう? 次の日にでも聞けばいいじゃない」

「教室に居たのが自分のクラスの生徒だけであればそうしたでしょう。ですがあの日、白銀君の告白ショーを見物するべく、他のクラスからも生徒が集まっていた為、自分のクラスの落とし物だと確証が持てなかったのでございます」

 

 かぐやは頷いてから、人差し指を立てた。

 

「1つ訂正があるわ。あれは告白ではなく、応援演説を頼まれただけよ。貴方も知っている筈よね」

 

 ジロリと睨まれた讃岐は、バツの悪そうに言った。

 

「も、申し訳ありません。お嬢様の古傷を……」

「そこじゃありません! 大体古傷になんてなって──」

「まだ癒えていないのでございますね。重ね重ねご無礼を」

「本当に無礼よ、不調法者! 傷じゃないって言ってるの!! 会長の事だから、そんな事だろうと思ってたのよ! 全然微塵もガッカリしたりしてないの!」

「思ったより深い傷だったんですね。かぐや様」

 

 叫び終えたかぐやは、ぜぇ、ぜぇと深い深呼吸を繰り返した。讃岐は涼しい顔で「失礼致しました」と謝意の篭っていない謝罪をして頭を下げた。

 

「時にお嬢様。お嬢様は白銀君を会長とお呼びしていらっしゃいますね?」

「何ですか藪から棒に」

 

 息を整えたかぐやが怪訝そうに眉を顰める。

 

「ですが現在白銀君は生徒会長ではありません」

「言われなくても分かってるわ」

「お嬢様が理解なさっている事は私も承知しております。今回の事件においても、似たような現象が起こったのです」

 

 讃岐は不貞腐れた様子のかぐやから、早坂の方に顔を向けた。

 

「ハンカチを拾ったのは教師であると推論を述べましたが、早坂さんが言ったように、石上君がハンカチを持っていたのも事実です。ハンカチは教師から石上君の手に渡ったと考えるのが妥当でしょう」

「何故彼にハンカチを? 関係性が見えて来ませんが」

 

 早坂の知らない意外な事実を突き止めたのかと思いきや、讃岐はあっさり否定した。

 

「教師と生徒という以外、彼らの間に関係性などございません」

 

 呆気に取られる早坂とかぐやをよそに、讃岐はすらすら推理を語る。

 

「しかしそれは現在の話。1ヶ月前に同じ状況になったとしたらどうでしょう」

「1ヶ月前…………ああ、そういう事ですか」

「理解していただけたようですね。1ヶ月前はまだ生徒会が解散していませんでした。お嬢様が白銀君を会長と呼ぶように、教師も常からの癖で石上君を生徒会役員として見ていたのです。落とし物の保管は生徒会の仕事の内ですから」

「待って。石上君は現状生徒会役員ではないのだから、断ればいいだけでしょう。何でそうしなかったの?」

「簡単な事でございます──」

 

 

 ○

 

 

 地面に仰向けになって倒れているかぐやの上を、讃岐の長い足が通り過ぎた。

 

「光谷くん! 何平然と跨いでるんですか!」

 

 倒れたかぐやの側に居た藤原千花が、讃岐の無礼極まりない行為を注意する。

 

「いや、申し訳ない。で、どういう状況なの?」

 

 讃岐がぐるりと首を周囲に巡らせる。一瞬だけスマホを手にして柱にもたれかかっている早坂と目が合った。

 

「胃がやられて倒れちゃったんです!」

「胃が、ね。もしかして選挙で?」

「そうなんですよ。私も会長が前に出た時、どれだけ心配したか」

 

 生徒会が解散してから、藤原は白銀を『みゆき君』と呼んでいたが、今は『会長』になっている。切り替えの早さが藤原らしい。

 

「へぇ意外だね。君はストレスを感じる感性を持ち合わせていない人種なのかと思っていたよ」

「どういう意味ですか!? というか、光谷君だけには言われたくないです!」

 

 ぷんすこしながらかぐやを抱き起こす藤原に讃岐は手を貸した。起こす際に、さっと讃岐の手がかぐやの後頭部をさするのを早坂は見逃さなかった。こういう時だけは目敏い。早坂は小さく舌打ちした。

 

「1人で大丈夫かい?」

 

 かぐやをおんぶした藤原に、讃岐が声を掛ける。

 

「心配いりません。私こう見えても鍛えてますから!」

「へぇ」

 

 胸に手を当てて自信満々に主張する藤原の言葉を、讃岐は信じていないようだった。

 藤原を見送った後、讃岐は柱に佇む早坂の方へと近づいた。

 

「胃がやられたらしいね」

「みたいですね……何ですかその目は?」

「いや別に。ただこの位置から人を突き飛ばしたら、あの辺になるかなと。タンコブできてたし」

「そうですか。ところでハンカチはあったんですか?」

「逸らし方が露骨だね。予想通り風紀委員会の教室にあったよ。落とし物を管理するのは、生徒会か風紀委員だからね。生徒会が無い以上、選択肢は風紀委員しかない」

 

 石上は落とし物のハンカチを、落とし物を管理する場所に届けたに過ぎない。勘違いした教師と違って、自分が生徒会役員ではないと分かっている石上は、風紀委員にハンカチを渡したのだ。石上がハンカチを受け取った理由は、目撃された場所からも分かるように、偶々委員会の集まる校舎──言い換えれば、風紀委員の教室の近くに居たからだ。

 

「解決したようで何よりです。私はかぐや様の体調を見てきます」

「はいはい。じゃあそっちは任せたよ」

 

 そっちは? 

 

 詮索されると厄介なので、早坂は早々と保健室の方へ一歩踏み出したが、讃岐の発言が引っかかり足を止めて振り返った。

 

「念には念を入れるだけさ。僕は色恋沙汰に疎いけれど、誘われるなら格好よく誘われたいって事くらいは分かるつもりだよ」

 

 讃岐は仕方ないという風に肩をすくめた。

 

 

 ○

 

 

 一波乱あった生徒会選挙。無事に再度当選を果たした白銀生徒会長は、新生徒会の初仕事である体育館の椅子の片付けを終え、1人廊下を歩いていた。

 キュッ、キュッと音を立てながらリノリウムの廊下を進む白銀の胸中は、当選したというのに暗かった。目的地へと足早に動く足が普段より重く感じる。

 右手の曲がり角から、長身の影がふらりと姿を現す。知っている人物だったので声を掛けた。

 

「讃岐? 何をしているんだ、こんなところで」

 

 廊下を進んだ先には保健室しかなく、白銀は保健室に用があった。讃岐も保健室に用事があるのだろうか、具合が悪そうには見えないが。

 

「おや、奇遇だね白銀君。君も暇つぶしにぶらついているのかな? 新生徒会長としてはいただけない行為だけど」

 

 讃岐は普段と変わらず薄らと笑みを浮かべて、流暢に返事の言葉を紡いだ。

 校内をぶらつくのは暇つぶしになるのだろうか。疑問に思ったが、讃岐の奇行はいつもの事。一々首を捻っていてはキリがない。

 

「一緒にするな。俺は見舞いに来たんだ」

「ああ、そういえば藤原さんが騒いでたね。四宮さんが胃をやられたとかなんとか。まさか本当だとは思わなかったよ」

「お前は藤原書記の発言の何割を信じているんだ?」

 

 讃岐と藤原はお互いに、お互いの事を自分よりアホだと思っている節がある。側から見ている感想としては、どっちもどっち。どんぐりの背比べでしかない。

 四宮の名前が出て、白銀は顔を曇らせた。四宮かぐやが胃をやられた原因は、恐らく白銀の行動にあったからだ。

 生徒会選挙において、かぐやは白銀を当選させるべく、応援演説を始めとして様々な尽力をした。にも関わらず自分は選挙で、敵に塩を送るような真似をしてしまった。その事に後悔はないし、そうするべきだと思った。だが、自分の行動に腹を立てたかぐやが、副会長をしてくれなかったらと考えると、何とも陰鬱としたモヤモヤが心に入り込んで来るのだった。

 白銀が自分の表情の変化に気付き、しまったと顔を引き締めた時にはもう遅かった。

 目の前の男は、全てを理解したとでも言いたいのか、人の神経を逆撫でするような不適な笑みを口元に湛える。

 

「随分と顔色が優れないじゃないか」

「そ、そんな事はない! 当選したばかりだぞ」

「いや全くその通り。学年1位の天才にして、異例の2期連続当選を果たした白銀御行生徒会長ともあろうお方が、副会長の勧誘に二の足を踏んでいるなんて事は、あり得ないだろうね」

 

 ああ、クソ。バレている。

 

 内面をきれいさっぱり見透かされた白銀にできるのは、悪態をつくのが精々だった。

 

「うるせぇ。俺はお前ほど、無根拠に自信の持てる人間じゃないんだ」

「酷い言いようだなぁ」

 

 尚も微笑を口に張り付けたまま、讃岐は肩をすくめた。

 

「つまり根拠があれば、君は自信を取り戻せるのかな?」

「どういうことだ?」

「自信家の先立として、ささやかながら道を示してあげよう。ということさ」

 

 コホンと、讃岐はわざとらしい空咳を挟んだ。

 

「特別注目していた訳ではないけれど、同じクラスだからね。四宮さんが応援演説を頼まれた日から、白銀君の当選に尽力している様子は目に入った。応援演説の準備以外にも……」

 

 そこまで言って讃岐は口を閉じた。一度視線を宙に彷徨わせてから、白銀に戻す。

 

「……まあ、色々と手を回していたよ」

「何なんだ? 今の間は」

 

「とにかく!」讃岐は追及を避けるように語気を強めて、

 

「色々やってたんだよ。頼まれたのは演説だけだというのに、一体何故だろうね」

「それは……」

 

 言いかけて口を閉じる。白銀にはかぐやが尽力した理由が分かっていた。

 生徒会が解散した日の夜、選挙に出馬して欲しいと頼んだのはかぐやの方なのだ。責任感の強いかぐやは、自分から言い出しておいて何もしないのは、筋が通らないと考えたのだろう。それをそのまま讃岐に伝える訳にもいなかい。

 

「四宮は責任感が強く面倒見も良い。応援演説を引き受けたからには、俺の当選に力を尽くすべきだと考えたのだろう」

「それも可能性の1つだね。けれど、人はある程度の損得勘定を持って行動するものだ。彼女の行いは余りにもリターンが少ないように思える。だから僕はこう考えた。君の生徒会長就任が、即ち彼女のリターンなのではないか、と」

「言いたい事は分かるが、俺に心当たりはない」

「生徒会長になった君が、副会長に四宮さんを選ぶのは想像に難くない。君は四宮さんの隣に立つ為に生徒会長になったのだと言っていたけれど、生徒会長の隣に立てるのもまた副会長だけなんだよ」

「するとお前はこう言いたい訳か、四宮は俺の隣に立つ為に選挙活動に尽力したと」

 

 ふむ、四宮は俺に惚れているのだから、順当な成り行きだな。

 

 白銀の自信が少し回復した。

 あくまでも讃岐の推測。そもそも、一方的に演説を頼んだのではなく、かぐやが白銀に出馬を要請していたのだから、リターン云々は成立しない。だからといって、讃岐の言い分を否定できないのも確かだった。

 

「勿論それだけじゃないだろうけどね。君が生徒会長に相応しいとか、色々ある理由の内の1つに、そういうのもあるかもしれない」

 

 讃岐の言う根拠が正しいかどうかは分からないが、自信を取り戻すという目的は達成したと言っていい。

 

「心遣いには感謝するが」

 

 白銀は少し気になっていた。

 

「損得勘定といえばお前もだろう。基本的に自分の利になる事しかしない讃岐光谷が、意味も無く俺を励ますとは考え難い。かといって生徒会がどうなろうと益はない。もしかしてお前は、誰かの為に動いているんじゃないか?」

 

 今日の讃岐の言動は、白銀が知っている讃岐光谷の人物像と合わない。

「男子、三日会わざれば刮目して見よ」とは呉の武将呂蒙の故事から来る慣用句だ。白銀は讃岐と毎日顔を合わせる程の機会はなく、三日会わざる時も多い。だから讃岐が人の為に行動する人間になっていたとしても何ら不思議はない。けれど、そうだとしたら何が讃岐を変えたのか。白銀は興味がそそられた。

 視線の先にいる讃岐は、きょとんとした顔で2、3度瞬きをした。

 

 無自覚の行動だったのか? 

 

 そう思っていると、フッと笑うように讃岐の口から小さく空気が漏れた。

 

「そんなことか。その問いに対する解答は明白だよ」

「ほう?」

 

 普段より明確に讃岐の口元が弧を描いた。

 

「君の見立て違い。僕は利益より友情を優先させる、心の温かい人間だったのさ!」

「言ってろ。まぁいい、どういうつもりであったにせよ、お前のお陰で腹が決まったのは事実だ。感謝する」

「どう致しまして。僕は散歩を続けるよ。頑張ってね」

「ああ、校内徘徊も程々にしておけよ」

 

 ひらひらと手を振る讃岐に背を向ける。足取り確かに四宮かぐやの居る保健室への道を進んだ。

 

 

 

 翌日、白銀御行を生徒会長とした新生徒会は、続投した副会長、四宮かぐや。書記、藤原千花。会計、石上優に加えて、会計監査に伊井野ミコを迎えて活動を再開した。

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