クソニブ神父とメスガキ敬語シスター 作:悲しいなぁ@silvie
やっぱ(強いお姉様を曇らせるのが)好きなんすねぇ〜。
「ごめんなぁ…ナナシ……愛し……」
あの時、お前は一体何て言いたかったんだ?
分かんねぇ。
愛してる?それとも…俺が都合良く聞き違えただけか?
分かんねぇ…わかんねぇよ。
アイツの側で泣いてる女がゆっくりと顔を起こすと此方に振り向く。
「なんで…何でイオリを殺した!!」
さぁな、何でなんだろうな…
俺が弱かったからだろうさ。
弱くて、薄弱だった。
魔術が下手だって回復魔術を覚えて無かった。
俺達なら大丈夫だって、回復用のポーションの量を少なくした。
あの魔王がイオリに取り憑いた時に、直ぐに斬り飛ばせなかった。
アイツの手を…取ってやれなかった。
アイツは、俺の手を取ってくれたのに。
「お前が、お前が!お前が死ねば良かったのに!」
朱い髪の女が泣き叫ぶ。
涙と鼻水とでグズグズの顔で俺に吼える。
そうさ、俺が死ねば良かった。
あの時に魔王に取り憑かれたのが俺なら良かった。
そうさナナシ…お前から
だから俺は…
「チッ…頭痛ェ…」
被ってた毛布を蹴飛ばして身体を起こす。
俺は、寝るのが嫌いだ。
…いつも、嫌な夢を見るから。
「あぁ…ベタベタじゃねぇかよ。」
下着が身体にへばりつく程に汗だくだ…まぁ、何時もの事だが。
顔も汗やらで気持ち悪ぃし…何より喉がカラカラだ。
「水…」
のそりとベッドから降りて水差しを取ろうとして…
「空かよ…」
止まった。
そういや、昨日は帰って直ぐに寝ちまったんだったか…
なら下に降りて…面倒くせぇ。
いっそ魔術で……駄目だな、んな事に使うモンでもねぇ。
「ご主人シャマ!起きられたんデシュか!?」
俺がベッドに腰掛けて下に降りるか迷っているとドアがブチ開かれてキンキン声が響いた。
入って来たのは蜂蜜色の髪に朱い首輪を着けた片腕の女。
俺の
「あぁ…今な。」
「昨日は帰って直ぐ寝ちゃいましたし!ワラヒ心配だったんデシュ!!」
ナイアはパタパタと走って来ると俺の胸元に飛び込んで来た。
…まぁ、実際には
手入れされた長髪から花の香りがふわりと広がる。
…俺と同じ洗髪剤使っててなんでこんなに違いが出んのかね?
わかんねぇ…
「ナイア…何時も言ってんだろ?お前はバランス悪ぃんだからあんまし走んじゃねぇよ。」
「れも!ワラヒを心配させたご主人シャマが悪いんデシュ!!」
ギュウと片腕で器用に抱き着くナイア。
ナイアは俺が買った時から片腕だった。
理由は知らん。聞くもんでもねぇし…聞かれたくもねぇだろ。
別に、コイツが片腕だろうがなんだろうが俺は困らねぇ。
コイツは困るだろうが…主人の俺が困ってねぇんだ、関係ねぇ。
「ほら、とっととこっち来い。」
俺はナイアを抱き寄せると枕元に置いてあった砂の小瓶を手に取る。
俺のコードの関係上、砂が無ぇと役に立たねぇからな。
寝てる時になんかあっても良いように準備はしっかりとしてある。
小瓶の栓を開けて中の砂を操る。
そして、ナイアの右腕を右肩の付け根辺りまで捲くって…そこに砂を這わせる。
「ん…ッ!ご、ごひゅひんシャマ…ぁっ…!」
ナイアの声が震える。
欠損したトコとかデケェ傷の痕とかは神経が過敏になるらしい。
まぁ、痛ぇだろうが関係ねぇな。
俺はコイツの主人なんだ。
主人がやる事に奴隷が文句なんざ言えるかよ。
ナイアの腕を這っていた砂が徐々に色とカタチを変えて…ナイアの右腕になる。
「もう動かして良いぜ。」
「ハァ…ハァ…ハァ、あ…ありがとう、ごじゃいまシュ…」
ナイアは息を切らせながら礼を言ってくる。
別にコイツの為じゃねぇ。
人間の神経に繋いでも動くように調整したり、質感やら色を調節する訓練だ。
コイツは俺の奴隷だから俺の訓練に付き合わせる。
なんにもおかしかねぇ。
ソレに、片腕だと家事も出来ねぇからな。
コイツがサボれねぇようにしてんだ…
「水…持ってきてくれ。」
「お、お水デシュね…直ぐ取って来まシュ!」
パタパタと走っていく。
バランス治っても根本的にドジなんだから走んじゃねぇよ…危なっかしい。
「はい!ご主人シャマ、お水取って来ました!!」
と、ナイアは桶一杯に水を張って持ってきた。タオル付きで。
………飲み水が欲しかったんだがな。
まぁ、寝汗やらでベタベタだったし顔洗や良いか。
「ご主人シャマ!昨日はお風呂も入って無いデシュね?
ワラヒが拭いてあげまシュ!!」
ナイアは桶を足元に叩き付けるとタオルを絞り始めた。
…滅茶苦茶溢れてんだけどな。
まぁ、最近暑いしな…打ち水だと思や良いか。
「あー、頼む。」
俺は下着を脱いで後ろを向く。
確かに汗でベタベタだったしな、素直に助かる。
…まぁ、今日は用事が有るから後で風呂入るけど。
「んしょ…んしょ…ん…」
若干たどたどしい手つきでナイアは俺の背中を拭う。
……実際には
まぁ、後で風呂入るし良いけどな。
……いつ気付くんだコイツ?
「あっさごっ飯っ!あっさごっ飯!」
キンキン声に急かされるように俺はスキレットに卵と厚切りのベーコンを落とす。
まぁ、アレだ…卵とベーコンを旨く焼ける温度に砂を維持する訓練だ。
当然だよな?
「ワラヒ、もうお腹ペコペコデシュ!!」
一応、昨日もラザニアを作って出たんだが…
まぁ、食べ盛りだしな。
ガリガリで病気にでもなられたら俺が面倒だからな。
「ほれ、熱いから気ぃ付けろよ。」
二人分を手早く準備して席に座る。
サラダにバゲット、それとベーコンエッグ。
ついでにこないだ庭で取れたヤマモモで作ったジャムとヨーグルトも出しておくか。
……まぁ、俺が食うんだから良いもん用意するさ。
「美味しいデシュ!美味しいデシュ!」
「あんま急いで食うな…ほら、口に付いてるぞ。」
口の端に付いた食べかすを拭く。
…まぁ、見窄らしい格好されてると俺の評判が落ちるからな。
「ナイア、風呂行くぞ。」
「ハイッ!わかりまひた!!」
朝食を終え、洗い物を済ませてからそう言うとナイアはパタパタと着替えを取りに行った。
当然、一緒に入る。
アイツは、奴隷なんだから背中の一つでも流させねぇとな。
…そうか、着替え取って来たか。
………まぁ、俺のは今日用事で出掛けるから自分で選びたかったしな。
「あぅ〜…気持ちぃデシュ……」
タオルでゆっくりと背中を洗う。
ん?何で俺が洗うのか…?
………まぁ、アレだ。
俺ぐらいになるとちょっとした事でも人ぐらいふっ飛ばしちまうからな。
繊細な力加減ってのが要るんだよ…で、コレはその訓練。
わかるだろ?
「今度はワラヒがご主人シャマのお背中お流ししまシュ!!」
ナイアはタオルを握り締めて俺の後ろに回る。
…まぁ、お湯掛けてくれるぐらいで良いんだけどな。
どうせ触れねぇし。
「んしょ…んしょ…」
さっきもやってなかったか?
……気のせいだろ。
違いねぇ。
「じゃあ、俺は出るから留守は頼む。
昼は机にミートパイとサラダがあるからな。
あと、庭の手入れは帰ってから俺がやるから置いとけ。
それと…」
「もう!わかってまシュよ!ワラヒだって出来る女なんデシュ!」
ナイアはそう言って胸を張る。
……デケェな、下手すると俺よりデカくねぇか?
…おんなじもん食っててなんで成長に差が出来んだ…?
まぁ、成長期……わかんねぇよ……
「良く来て下さいました勇者様。」
綺麗な銀髪をした女がそう言って恭しく頭を下げる。
「あー…何時も言ってっけど、その勇者様っての止めねぇ?
別に俺は勇者のコード持ちでも無ぇし、そういうガラでもねぇよ。
あと、あんましポンポン頭下げんなよ姫さん。俺は別にアンタより偉かねぇぜ?」
「いえ、幾度となく
貴女よりも尊重されるべき人間など、この国にはおりません。」
そう言い切ったのはこの国【サン・テレジア】の王女、ヨグ=テレジアだ。
美しい銀髪と透き通るような碧い瞳で正に触れれば壊れるような芸術品って感じのお姫さんだ。
あぁ、もうお姫さんじゃねぇな…こないだ戴冠式も終わった訳だし。
あのちっこいのが王女ねぇ…感慨深いっつーか、なんつーか…
「んな訳ねぇだろ。姫さんの国なんだからアンタが一番尊重されるべきだ。」
「私など…貴女に比べれば、飾りに過ぎません。
この国の国防の大半を一人で担っている貴女に比べれば、私が護れるモノなど…吹けば飛ぶ程度の瑣末事です。」
テレジアはそう言って顔を伏せる。
あぁー、そりゃ適材適所だろ。
俺だって姫さんの立場なら俺を使うしな。
ソレに、人材を適所に差配するのも上の仕事だ。
「お姫さん、アンタの仕事は傍から見りゃあわかりにくいかもだが…一番大変だぜ?」
「慰めなど要りません、私は…」
「何せ、
「…っ!はい…そうです、私はただ…」
「自分の差配を信じてただ待ってる…アンタにゃ一番辛ぇ仕事さ。
ソレに比べりゃ俺なんか気楽だぜ、お姫さんを信じて振られた仕事すりゃ良いだけだかんな。」
「……?それは、一体…どういう……」
テレジアは困惑したように顔を上げて俺の目を見る。
本当に、堅い奴だ…もっと気楽にすりゃあ良いもんを。
まぁ、だから王女なんてやってんだろうけどな。
「だから…信じろよ。
俺はテレジアを信じる…だから、テレジアは俺を信じろ。
今更護るモンの一つや二つ増えたって文句言わねぇからよ。」
ぐしゃぐしゃとテレジアの頭を撫でる。
……さらさらしてんな。
後で洗髪剤何使ってんのか聞こう。
「……ありがとう、ございます…。」
「構わねぇよ、王女様を支えられて国民として本望ってヤツさ。
ま、感謝してるってんなら……勇者様はヤメテな?」
「…まぁ、フフフ!
ありがとうございます、お姉様。」
………真面目じゃねぇよな?
お姉様って…背中が痒くなるわ。
「それもヤメテな?もっとガラじゃねぇ。」
「…へ?それ……!!!
ちっ!違いますわ!!これは…その………ろ、ロイヤルジョークです!オ、オホホホ……」
ロイヤルジョークて…偉いヤツの考える事はようわからんな。
「ですが…なんとお呼びすれば宜しいでしょうか?」
「あー?あぁー…」
ふむ、改めて聞かれると困るな。
一国の王女からなんて呼ばれたいか、か…
「普通に名前で良い。」
うん、別に奇をてらわんでもいいよな。
普通で良いんだ普通で。
「名前…!
で、では……れ、恋様…!」
「……何で下の方?」
てか、何で真っ赤になって言うんだ。
まるで俺が辱めてるみてぇだろうがよ。
「あえ!?ち、違いましたか!?」
「いや…別に姫さんの好きにすりゃあ良いけどよ…」
「恋様…」
「………やっぱ様はやめねぇ?
何度も言うが別に俺はアンタよか偉くねぇしさ。」
「!…で、では……恋姉様…っ!!」
……結局様付けだし姉様て…
ロイヤルジョークとやらは俺にはまだ理解できんな。
「…好きにしてくれ。」
「恋姉様に来て戴いたのは他でもありません…
近頃、この近辺で
その呼び名は継続なのか…
ロイヤルジョークとやらは奥が深いな。
「二つ名持ちねぇ…Codeは?」
「いえ…わかっておりません。」
「正体不明って訳ね…」
二つ名持ちの魔物…結構レアだな。
基本的に魔物ってのは数が少ねぇからな。
分母が少ないなら当然二つ名持ちも少ない。
そもそも人間だって二つ名持ちなんてレア中のレアだしな。
要はわからねぇけど危険だから狩ってこいと……
「まぁ、俺向きだな。」
相手の戦力が不明なら最高戦力で叩きに行く…まぁ若干の脳筋感が否めねぇが、それが出来るならやらねぇ理由はねぇな。
「恋姉様、どうか…ご武運を。」
「あぁ、サクっと終わらせて来っから姫さんはドーンと構えてな。」
「……必ず、帰って来て下さい。
貴女の居場所には成れずとも、止まり樹にならば私とて成ってみせますので!」
そう言って胸を張るテレジア。
……俺、んな酷ぇツラしてんのかね?
…してんだろうな。
血溜まりの上に立ち尽くす朱い髪の女は両手で顔を覆い、うわ言のように呟く。
「お前も…違った…
お前は
死ねない…死ななきゃ……違う、違うんだ…ナナシ…俺は…
そんな、そんな目で…俺を……俺を見ないでくれ…」
突き立てた爪は皮膚を破り肉にめり込んでいく。
ガリガリとえぐりながら掻き毟る、自分を罰するように…助けを求めるように。
「誰か…俺を、
涙と血が混ざった液体を止めどなく流しながら呟く。
誰にも触られない彼女は救われない。
差し伸べられる全てを払い除け、あらゆる救いを拒絶する。
全てを奪った
だから…彼女は今日も敵を求める。
より
時間軸はだいたい本編開始の1週間前ぐらいです
この小説のヒロインは?
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ライザちゃん
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シュライゼルちゃん
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メアリーちゃん
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ガルガくん
-
ロミィさん
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恋ちゃん
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ナナシちゃん
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アザトホート