クソニブ神父とメスガキ敬語シスター   作:悲しいなぁ@silvie

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別に要らねぇかと思いましたが皆様が深読みばかりするのでライザちゃんの過去編です。



天鼠の王と不信神者

我こそは遍く混沌と蝙蝠の主、斬り()す混沌のシュライゼル。

いみじくも混沌の五柱が第三柱に名を連ねる超越種である。

常ならば星と星の狭間にて揺蕩いながら我が永劫に近い生を思案しているが、時折こうして星に降り立っては()()をする。

我はこの食事が好きだ。

はっきり言うと、我が生とは無聊であり退屈に溢れている。

この手を少し伸ばせば何にでも届く。

我程の超越種ともなれば苦労する事にも苦労する。

苦労とは、すなわち潤いである。

生命は苦労により努力を覚え、苦労により達成を感じ、苦労により成長を遂げ、苦労により安楽を識るのだ。

なれば、苦労を得られぬ我が身は不完全である。

ヒトなどとは比較にもならぬ程に優れた我が、ただその一点のみはヒトに劣る。

優秀であるが故に劣るのだ。

苦労なくして進歩無し。

我が生には其れを彩る苦労に欠ける。

故に無聊なのだ。

だからこそ、その無聊を慰めるべく食事を摂る。

本来、この身に食事など必要ない。

食事とは己の生を自身で完結出来ぬ存在にしか必要ではない。

ならば…我のこれは食事というより嗜好品に近いか。

連連と思考を重ねながら男に手を引かれ夜の路地を歩く。

我が身は至高の領域にある。

この玉体を晒せば()()()共が勝手に己を捧げに(たか)る程に。

一糸纏わぬ姿なれど、我が玉体に服飾など必要ない。

我が威容から鑑みれば少しばかり小さいが…それでも至高の玉体である。

何が小さいか…?そんなもの聞くな。

男が立ち止まり我の玉体に手を伸ばす。

ふむ、そんなにも早く我が糧となりたいとは…見上げた志よ。

我は男を制し逆にこちらから近寄る。

我が糧となろうという志は認めんでも無いが…我とて超越種の誇りがある。

我は男の耳元に口を近付けその耳孔にそっと舌を挿し込み…

その奥にある甘露を()()()()()

男の身体が痙攣し手足がバタバタと溺れたように動く様を見ながらゆっくりと啜り上げる。

やはりこれだ。

時折我らへの供物として甘露を捧げるヒトは存在するが…奴らは食事の妙味というヤツを理解していない。

我から言わせればこの無様な舞こそが甘露を甘露たらしめんとする一因なのだ。

故に、ゆっくりと啜るのだ。

壊れきらぬようにゆっくりと…

少しでも長く足掻くようにと…

この加減が難しくも愉快なのだ。

我はたっぷりと数十分かけて男の甘露を啜りきると舌を引き抜き自身の腹を撫でる。

ふむ、やはり我が玉体は至高の領域にあれど…少し小さいな。

高々()()()を喰らった程度でここまで膨れるとは…

我はぽっこりと膨れた腹をさすりながら夜道を歩く。

夜は善い。我が眷属たる蝙蝠達が空を飛び交う時間だ。

自然と我の顔にも笑みが浮かぶ。

誠、()いヤツめ。

眷属達に甘露を分け与えていると、ゴボゴボと不快な水音が響き…先の男の身体から黒いヘドロに似た液体が溢れ出してくる。

ソレを観て、我の笑みが一層深くなる。

ああ…今日はなんと善き日だ。

我程の存在ともなれば苦労とは程遠いもの。

されど…そんな我にも苦労があるのだ。

オネェチャン、オネェチャン、オネェチャンアソボ、アソボ、アソボ、アソボ」    

  人を喰う悪鬼めが、拙者が征伐せん

タスケテ、タスケテ、タスケテ    

イタイヨゥ、イタイヨゥ、イタイヨゥ 

殺してくれ、もう混ざりたくない

 

数多の声が重なり合って聞こえる。

ゴボゴボと絶えず膨れ上がっては崩れ、再生と崩壊を続けるヘドロに似た身体と数百の魂から為る異様な精神。

此奴こそ、我と同じく混沌の五柱に名を連ねる者。

 

混沌の五柱(いつはしら) 継ぎ接ぐ混沌のビスケル

 

Code結束

Class数多の死と腐肉の洞ろ(エルドリッチ)

 

久しいなビスケルよ

久しぶり?久しぶり、久しぶりだ!久しぶりかな?アソンデ、アソンデ、アソンデ、アソンデ」    

  悪鬼の言なぞ聞く耳持たぬわ!

キエルキエルキエルルルル    

おまえもおまえもおまえも 

疲れたんだ、殺すのも殺されるのも

 

ふむ、相も変わらず何を言っているかもわからんな。

確か、接ぎ合わされた魂達が常に自我を喰い合っているのだったか?

自らの自我すらも保てんとは…やはり元ヒトの限界と言ったところか。

こんな獣風情が我より上の第二柱とは…片腹痛い。

今こそ苦難の時よ、艱難辛苦を乗り越え我が生に久しき潤いを求めようぞ!

 

五柱が第二柱の地位、獣風情にはさぞ重かろうぞ。

我が手ずから貰い受けよう…貴様の死を以てな!

 

そう吼えると見目麗しい姿の少女はその背から異形の羽を生やし音を超える速度にて飛翔した。

…うん?この後どうなったか?

…………聞くな。

いや、我は食後直ぐであったしビスケルは我を打倒せんと用意周到に準備してきていたのだ…まぁ仕方無いであろう。

全く、我が十全であれば奴なぞ一捻りだったのだがな!

………嘘ではないぞ?

虚言とは力無き者がするのであってだな…

…………………まぁ、この場では…いいか?この場に限っては我は負けたのだ。

 

ばっ、莫迦な…我の全てが……とっ…届かん…!?

 

ギュラァァァアアアアアオオオ!!!

 

不定形な泥が叫びながら少女の身体に纏わり付き末端の四肢から徐々に破砕し溶かすように捕食していく。

既に少女は両の脚と右腕の肘から先を喪失していた。

 

お、おのれ!離せ…離さんか!

 

泥を払わんと残された左腕を振るうも泥達が一層激しく肉体を破砕するのみであった。

自身の死を前に、初めて少女の目に涙が浮かぶ。

数万年を生きたシュライゼルが初めて恐怖から涙した。

不滅であると信じて疑わなかった自身の消滅を前に、シュライゼルは平時であれば決してとらぬ選択をする。

即ち

 

「たっ、助けて…助けて!!死にたくない!無くなりたくない消えたくない!!

ビスケル!我が悪かった!もうヒトを襲わぬ約束する!

だから…殺さないでくれ!!」

 

命乞い

片手間に星を消滅させることすら出来る超越種であるシュライゼルが自身の死を前にとったその行動はしかしてビスケルの琴線に触れる事はない。

絶えず自我を失い続けるビスケルは既に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

故に、この捕食を辞める事は無い。

533の肉が534に増えるだけ。

自らを構成する腐肉に超越種の腐肉が追加されるだけ。

シュライゼルが誇りを棄ててまで泣き叫んだ命乞いはビスケルになんの変化も齎さない。

そう、ビスケルには。

 

「困りますね、人の孤児院の近くでこんなに暴れられては。」

 

そう言って現れたのは黒いゆったりとした服を着た黒髪の男だった。

肩まで伸ばした黒髪を後ろで簡単に括っただけといった風情の男はシュライゼル達にズカズカと近付く。

 

「ギャアギャアと五月蝿いと思えば…大丈夫ですか?

怪我の割に顔色も悪くありませんし……御二方共人間ではなさそうですね。」

 

そう続ける男にビスケルが動く。

泥のようだった身体を急速に固めると黒い女性のような姿をとる。

オニイチャン、オニイチャン、オニイチャン誰だろ、誰かな、遊んでくれる?」    

  お腹すいた

キレイキレイキレイキレイキレイ    

ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ 

何か見たことあるなぁ

 

「ふむ、最近のスライムは結構進んでるんですね。

そう言えばスライムが強いかどうかがその世界の難易度の指標になると皆様も言っていましたし…」

 

男はぶつぶつと呟きながらシュライゼルに近付くとひょいと抱き上げる。

最早腰から上と頭が残るだけであったその身体は羽のようにという形容が似合う程度の重量であったし、趣味の筋トレがこうじてゆったりとした神父服の上からでもなお筋肉が浮き上がる男からすればなんら問題にならない。

 

「なっ、なんだ貴様は…?

我を…我をどうするというのだ!?」

 

抱き上げられたシュライゼルは困惑する。

人間などという嗜好品が自分を抱き上げるという蛮行が気にならない程に。

そして、確かに安堵する。

自身の声に応えたこの男に。

だからこそ…

うるさいうるさいうるさいうるさいそっちに行くの?残念、残念」    

  お腹すいた

どうかしらどうかしらどうかしらどうかしら    

邪魔だなぁ…喰べようよ 

誰だっけ?

 

「危ない!後ろだ人間!!」

 

後ろから迫る脅威(ビスケル)を伝える程度には男に頼ろうとしていた。

 

「昔から…蝙蝠って結構好きなんですよ。

アメコミでもバットマンが一番好きですし。」

 

男は後ろから振り翳されたビスケルの腕を振り向きもせずに片手で裏拳の要領で弾き飛ばす。

 

「なっ!!?い、一体どうなって…!?」

 

「ポケモンもよくゴルバットで殿堂入りしてました…よっ!と」

 

ふわりとシュライゼルを上に放ると共に振り向き、腕を弾かれ体勢の崩れたビスケルに両手でのラッシュを仕掛ける。

人外であると断定した上でシュライゼルの身を気遣いほんの2秒程の滞空時間であったがその間にビスケルに打ち込まれた拳撃は優に二十を超えていた。

 

「大丈夫でしたか?蝙蝠のお嬢さん。」

 

男は最後に一際強かにビスケルを殴り飛ばし、シュライゼルを受け止めた。

 

「何が…どうなって…??」

 

シュライゼルの脳内は混沌の限りを尽くしていた。

上位者である自身、そしてその自身をも超える怪物を高々ヒト風情が殴り飛ばす眼の前の光景は数万年もの時を生きるシュライゼルをして初めての体験であった。

しかし、眼の前に居るは混沌の五柱が第二柱。

例え優勢に見えようとも…

ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなイタイイタイイタイイタイイタイ」    

  怒った

腕をもいで、脚を折って、首を刎ねて飾りましょう    

ゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタ 

ここまで出てるんだけどなぁ…

 

ヒト如きに打倒せしめる存在ではない。

ビスケルは身体から更にヘドロを噴き出すとどんどんと大きく、見上げる程の巨体へと変貌していく。

 

「…はえー、すっごい巨大(おっ)きぃ…」

 

「言ってる場合か!どっ、どうするのだ!!」

 

高層ビルもかくやといったサイズにまで肥大したビスケルは再びその拳を振り翳す。

圧倒的な質量による攻撃。

その巨体もあわさって不可避の一撃であった。

 

「さて…どうしましょうかね。」

 

男は言いながらビスケルに背を向けシュライゼルを強く抱き締める。

放り投げようとも回避不能と判断し、せめて受けきれないかと一縷の望みを託し歯を食い縛った。

思い出した!
 

しかし、何時までたっても男の背に来るはずの衝撃は来なかった。

危ない危ない、イオリに怒られちゃうよ
 

「…イオリ?一体何を言って…」

 

ビスケルの声に男が振り向いた時には既に影一つなくなっていた。

 

「……取り敢えず、何とかなったのでしょうかね?」

 

男は一息つくと共にシュライゼルをそっと地に降ろす。

 

「何処の何方かはわかりかねますが、どうやらお困りのようですし…うちに来ますか?」

 

男は膝をつきシュライゼルに目線を合わせると人好きのする笑顔でそう手を差し伸べた。

 

「……?なんだ、我に言っているのか?」

 

「ええ、実はこの近くで孤児院を営んでおりまして…恥ずかしながら人手不足なので、手を貸して戴けると幸いです。」

 

シュライゼルにも目の前の男の言が嘘だと理解出来た。

先のビスケルが何故引いたかわからない以上、また襲撃してくる恐れもある。

この傷付いた身体では一溜りもない。

それを知ってか匿おうと言っているのだろう。

 

「……人間、名は何という。」

 

「私は孤児院エインカレムの園長をしております、輪島(わじま)いろりです。」

 

「我は混沌の五柱が第三柱、斬り()す混沌のシュライゼルである。

……此度の献身見事であった、その献身に免じて我が力を貸してやろうぞ…いろりとやら。」

 

斯くして、天鼠の王は孤児院にて働く事と相成った。

……時給670円で。

 

 


 

設定集

 

継ぎ接ぐ混沌のビスケル

533人の死体と782人の魂を継ぎ接いで造られた魔導生命体。

結束のコードにより無理矢理カタチを保っているだけの腐肉の塊である。

その姿は不定形の泥であり、腐臭を放つヘドロである。

 

輪島いろり

世の中のトラブルの八割は暴力で解決出来ると思っている生粋の蛮族。

この度邪神を雇用したが、匿う意味もあったが普通に人手は足りなかったのでラッキーだと思っている。

邪神には労基もなんにも無いからね。

 

『鉄拳』

あらゆる護りを穿つコード。

矛盾の矛の再現であり、ヒトが邪神に届きうる唯一のコード。

要は某幻想○しと一方○行の闘い的なアレである。

シュライゼルはその防御の殆どを魔術的な神秘で補っているため鉄拳の前では無力である。




なんか滅茶苦茶長くなったんで続きは明日投稿します。

この小説のヒロインは?

  • ライザちゃん
  • シュライゼルちゃん
  • メアリーちゃん
  • ガルガくん
  • ロミィさん
  • 恋ちゃん
  • ナナシちゃん
  • アザトホート
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