劇場版 僕のヒーローアカデミア×Fate Grand Order   作:小野屋陽一

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第10話

side立香

滝の周りは火の海と化していた。理性を無くしたキメラがただ私達を殺すことしか頭になく、森を焼き払い続ける。

「ガァアアアア!!!」

「っ!」

近づこうにも『高火力の火球』を放たれ動くことが出来ない。数発防ぐ事は出来るが盾で防ぐ度、火傷箇所が増える。他も皆も同様で、傷だらけだ。今は崖下に避難している。

「なんてパワーだ…」

「近づくことすらできないわ…」

悔しがる切島君に梅雨ちゃん。更に最悪な事が起こる。

「くっ、間もなくレシプロが終わる……!」

飯田君がふくらはぎの『エンジン』を見て焦燥を滲ませる。

「(考えろ…あの炎をどうにかすれば勝機がある…水系の英霊で…けど中途半端な冷たさで消せるものじゃ…)「皆…俺に…考えがある」焦凍君?」

その時、隣にいた焦凍君から案が出てきた。私と同じように必死で何か考えていたようだったけど…

「…皆、突破口を開いてくれ。俺が奴の懐に……「グガァアアアアアアアアア!!!!」ちぃ!」

どうやら作戦を立てる時間が無い。キメラの足音がこっちに近づいてきた。

「(けど…焦凍君には何か勝機があることは分かった!なら…)焦凍君…信じていい?」

私はそう聞くと、焦凍君は真剣な目で頷く。

「ああ。」

「…皆、何とかして焦凍君をキメラの懐に行かせよう!」

「藤丸くん…分かった!」

「これが最後のアタックだ!」

「ええ、分かったわ!」

私、飯田君、切島君、梅雨ちゃんは焦凍君の決断を信頼し頷き、各々動きだす。

「マシュ、憑依率上げるよ!」

―了解です!―

私はマシュとの憑依率を上げる。うす紫の髪、紫の瞳となり、そして大盾だけでなく、ゴーグル、ローラーのついた脚部装甲を身に纏う。

「飯田君!私らで惹きつけるよ!」

「心得た!これが最後のレシプロだぁあああ!!」

飯田君と私はキメラの前に姿を現し、左右に別れる。飯田君は『エンジン』で駆け、私は脚部のローラーで駆け巡る。

「ガァ!!」

当然、視界に私達を捉えたキメラは口から『火球』を連発する。

「オオオオ!!!」

飯田君は方向転換を繰り返し攻撃を避け続ける。私もまた、大盾で飛んでくる火球を弾きながら避ける。その隙にキメラの死角から焦凍君と切島君が『氷結』に乗って滑るように近づく。

「(二人の方に火球が行かないように…っ!)『アマルガムゴート』!」

「!」

スキル、ターゲット集中。キメラを私に注目させ、二人がいる方向に放とうとした火球を無理やり私がいる方に放たせる。

「っ―」

正面から大盾で火球を受け、後方に吹き飛ばされるが、注意は惹きつけれた!キメラと焦凍君達の距離が狭まる。

「!」

「『安無嶺過武瑠』!!」

キメラが焦凍君達に気付き、『高火力の炎』を放った。それを切島君が全身を『超硬化』した体で受け止める

「切島!」

「絶対に…倒れねぇ…っ!!」

高火力に戦闘衣装が燃えても、熱で皮膚が剥がれても、切島君は耐え続けた。そして…エネルギー切れで炎が枯れた。

「行け…」

「っ…ああ!!」

切島君が膝から崩れ落ちる。けど切島君のおかげで焦凍君がキメラの懐に入る事が出来た!

「あれは…!」

キメラの肩に乗った焦凍君。右腕に纏わり始めた氷を見た私は気付く。

「(エンデヴァーの『炎』の溜め方に似てる!)炎で出来たことを氷で…!!」

「くらえ…っ!」

「グルァ…!!」

焦凍君が攻撃しようとした時、キメラが爪で搔き殺そうと腕を動かす。

「させない!」

「ケロッ!」

それを私と梅雨ちゃんで防ぐ。私が大盾で防ぎ、木の上から飛び降りた梅雨ちゃんが『舌』で拘束。

「グッ!」

「うおりゃあ!」

今度は太い尻尾で払い落とそうとしたがそれを飯田君が蹴りで防ぎ、そのまま尻尾に抱き着いて止める。

「轟君!」

「焦凍君!!今!!」

「凍て尽くせ!!」

焦凍君は限界まで冷気を溜め、『氷結』した右腕をキメラの口へと突っ込む。体内からキメラを凍らせるつもりだ!

「グォ…ガァ…アアァア……ッ!!」

キメラは吐き出そうと炎を放とうとするが口内で『氷結』がぶつかり合い水蒸気が噴き出し始める。

「ガッ―」

「ケロッ―」

体の異変にもがき苦しむキメラ。梅雨ちゃんと飯田君が必死に押さえるが振り回され、反動で激突し、離れてしまう。

「(このままだと焦凍君が振り落とされる!)一か八か…っ『応急手当』!『瞬間強化』!」

「これは…っ!立香!」

咄嗟の判断だった。私の戦闘装束、『魔術礼装・カルデア』に備わっていた機能を発動させる。焦凍君に向けて『応急手当』でほんの少しだけ焦凍君の体に纏わりつき始めた霜を落とし、『瞬間強化』で口内で拮抗している『氷結』の温度を更に下げる!!

「いっけぇええ!!」

「ああ…!!凍てつけぇえ!!」

拮抗していた『炎』と『氷結』。しかし氷結が上回るとキメラの体は一気に凍り始める。

「ガッ………ァ………」

キメラの体表に霜が急速に広がり、空気さえも凍らせる。

「-」

「し、しばらく……冬眠してろ……」

「焦凍君!!」

完全にキメラが凍結した…けどそれは焦凍君も同様だった。限界まで温度を下げた冷気は焦凍君の体も蝕んでいく。氷の上で焦凍君は倒れ、私は直ぐに駆け寄る。

「待ってて!今体を温めるから!」

「…立香……お、俺の事は……いい……おま、え…は…早く……みど、りや……達のとこ、ろに……」

温めようとした時、最後の力を振り絞っているのか、焦凍君は私を止めてきた。

「けど…」

「せ……責務は……果たした……行って…くれ……っ…立香っ!」

「っ…」

それを最後に、焦凍君は気を失った。今大丈夫なのは私だけ…飯田君と梅雨ちゃんはさっきの激突で気絶して、切島君もあの炎に耐えて戦闘不能になった……

「…『降霊:ワルキューレ・オルトリンデ』っ!」

託された私はそれに応えるために、飛翔する。

 

 

side三人称

ナインとの激しい猛攻が続く。既に瀬呂、麗日はナインの『爪弾』、『使い魔』の攻撃により戦闘不能になってしまう。それでも緑谷と爆豪はナインへの攻撃を止めない。

「無駄だ」

「「っ―」」

『使い魔』二体が二人を襲い、喰らいつこうとした時だった。

「う…うう…ううおおおおおおおお―ううう!」

突如として、ナインは頭を抱え苦しみだす。その額にはひび割れのような傷が浮かんでいる。『使い魔』は姿が崩れる。

「こ、これは…来た!」

苦しみだすナインを見た緑谷、爆豪は待ち望んだ瞬間だった。

「限界時間!」

個性の使用限界を超え苦しむナインに、二人は勝機を感じ、速攻で飛び出す。

「さ、細胞活性さえ手に入れば……温存など……必要ない!」

ナインは激痛に身を悶えながら必死に考えを巡らす。そして服の下に来ていた、全身を覆う『個性制御装置』を操作。顔の下半分を覆っていたマスクが落ち、ひび割れた傷が小さくなる。白髪が乱れ、目は狂気に見開かれる。

「っ――――――!!!!!」

刹那、激情に天をあおぎ咆哮するナイン。突如として昼から夜に変化したかのような大きな暗雲が広がる。

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